武のつぶやき3
文字数 709文字
ふと視線を感じ、誰かに見られている気がした。しかし、向かいのタバコ屋には梅婆さんしか住んでいないはずだし、タバコ屋の二階に設置されている防犯用のカメラは公園の方を向いている。どうやら気のせいだったようだ。
引き金を引く時、大輔の鼓動を感じた。それは奴がその時しっかりと生きていたという証だった。それを俺が止めた。大輔の脳味噌が混じった血は暖かく、ドロッとしていた。
大輔の死体は生きている時とは比べ物にならないくらいに重かった。魂とやらが抜けている分軽くはなるのではないのか。不思議なものだ。
担いでいるうちに身体の熱は失われ冷たくなっていく。人間が死体に――物に変わる瞬間だった。それを俺は『元舞会』のお歴々の前に放り投げた。一様に違う表情をしていた。死体に恐怖する者、戦争できずに悔しがる者、親父の采配に感心する者、逆に激高する者、ただ金が欲しい者、様々だった。特に会長の横で、一際大きな声で喚いている男が印象的だった。執念深そうな男だ。
『元舞会』会長はさすがに親父と争うだけはあると思わせる男だった。七〇歳近いはずだが、背筋は真っ直ぐ伸び、身体中から他者を威圧する空気を感じた。
印象的だったのは目。親父の射るような熱い目とは対照的に、氷のように冷淡な目を持っていた。
大輔は俺が殺した二人目の人間だった。あの場で親父の手を汚すわけにはいかない。俺が殺るしかなかった。星壱が怒るのも無理はない。星壱はちゃんと解っていた。あの状況では大輔を生かしておくことはできないことを。星壱は自分の手で処理したかったのだ。それが弟分にしてやれる最後の優しさだったに違いない。俺が間違っていたのだ。
引き金を引く時、大輔の鼓動を感じた。それは奴がその時しっかりと生きていたという証だった。それを俺が止めた。大輔の脳味噌が混じった血は暖かく、ドロッとしていた。
大輔の死体は生きている時とは比べ物にならないくらいに重かった。魂とやらが抜けている分軽くはなるのではないのか。不思議なものだ。
担いでいるうちに身体の熱は失われ冷たくなっていく。人間が死体に――物に変わる瞬間だった。それを俺は『元舞会』のお歴々の前に放り投げた。一様に違う表情をしていた。死体に恐怖する者、戦争できずに悔しがる者、親父の采配に感心する者、逆に激高する者、ただ金が欲しい者、様々だった。特に会長の横で、一際大きな声で喚いている男が印象的だった。執念深そうな男だ。
『元舞会』会長はさすがに親父と争うだけはあると思わせる男だった。七〇歳近いはずだが、背筋は真っ直ぐ伸び、身体中から他者を威圧する空気を感じた。
印象的だったのは目。親父の射るような熱い目とは対照的に、氷のように冷淡な目を持っていた。
大輔は俺が殺した二人目の人間だった。あの場で親父の手を汚すわけにはいかない。俺が殺るしかなかった。星壱が怒るのも無理はない。星壱はちゃんと解っていた。あの状況では大輔を生かしておくことはできないことを。星壱は自分の手で処理したかったのだ。それが弟分にしてやれる最後の優しさだったに違いない。俺が間違っていたのだ。