元子のつぶやき2

文字数 497文字

 驚いた。まさか兄さんがそんな馬鹿なことを考えていたなんて。あたしはそれを察知することができなかった。
 情けない。タケの情報網の方がよっぽど機能していた。兄さんを追い出すだけの理由はあった。ずっと前から兄さんの不正を掴んでいた。でも肉親であるが故に決心がつかなかった。
 もっと早く決断していれば、今回のことはそもそも起こらなかっただろう。あの事を掴んでいても、今回の様なことを漏らしていては意味がない。結果的に兄さんは追い出されてしまったのだから、早めに決断していても良かった。
 あたしがあの事を追求すれば兄さんは納得してくれたと思う。兄さんはあたしの前では良い兄さんだから。今回の様にタケを憎まずに済んだかもしれない。
 このままではいけない。この時のあたしは自分の未熟さに苛立つことしかなかった。
 その未熟さ故に父さんを救うこともできなかった。この時のあたしはまだ気が付いていなかった。
 情けない、あたしがもう少し目を光らせていれば防げた凶行だった。あれは計画的に行われたもの。ならばそれを察知することも可能だったはずだ。他でもない、それがあたしの仕事なのだから。
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