痛みを知る者たち

文字数 4,708文字

「よかったわね……」

 私と茉凜の間に漂っていた温かな空気が、明の冷たい一言で一瞬にして凍りついた。その場で、私ははっとした。自分の言葉が、まるで彼女の存在を無視するかのように進んでいたことに、今更ながら気づいた。

 もっと早く気づくべきだった。茉凜には、もちろん悪意などなかった。ただ、私が導こうとした結論に、彼女が優しく応じてくれただけだ。しかし、その瞬間、明がどんな思いで私たちを見つめていたのか、私はまるで考えていなかった。

 「運命で結ばれて、運命に導かれたんだって? まるで絵に描いたような、理想的な出会い……よかったじゃない」

 彼女の声は淡々としていて、感情を感じさせなかった。それでも、私にはその言葉の一つ一つが胸に深く刺さった。彼女の表情はほとんど動かないままだったが、その無表情の裏には、きっと抑えきれない嘆きと怒りが渦巻いているのだろう。

 私の手は震えた。何を言うべきか、言葉を探したが、どれも無意味に思えた。彼女の心に触れるものなど、どこにも見つからなかった。気づけば、明はもう私たちに背を向けていた。

「馬鹿らしい……」

 彼女の冷たい言葉が、静かに漏れる。その背中は、冷たく、そしてどこか寂しげだった。彼女はきっと、感情を押し殺し、その冷たさで自分を守ろうとしているのだろう。そう思うと、私の胸はますます苦しくなった。

 私は本当に、彼女の苦しみに気づいていなかったのか?それとも、見て見ぬふりをしていただけなのか?

「明……」

 私の声はかすれていた。彼女の名前を呼ぶだけで、言葉は途切れてしまった。

 明はその呼びかけに応えず、ただ静かに歩みを進めた。その小さくなっていく背中を見つめながら、私は何も言えないままだった。彼女が弓鶴の元許嫁であったという事実が、この瞬間にどれほど彼女を苦しめているのか、私はその重さを痛感していた。

 彼女が見つめていたのは、過去の思い出と、失われた未来だったのだろう。弓鶴と共に過ごすはずだった日々、その先に待っていたはずの未来。なのに、それらすべてが、私と茉凜との出会いによって、壊されてしまったのだ。

 「アキラちゃん、そんなこと言わないで……」

 茉凜が震える声で言った。その声には、優しさと痛みが込められていた。彼女は一歩、明に近づこうとしたが、途中で足を止めた。彼女もまた、明の心の傷に気づいていたのかもしれない。

「わたしは……弓鶴くんと出会えたことが嬉しいよ。だけど、それは、そういう意味じゃ……」

 茉凜の声が詰まる。彼女は私を見つめ、その瞳には悩みと悲しみが映っていた。私たちの出会いは、確かに運命的なものだったかもしれない。だが、それが明にとって、どれだけ残酷な運命だったのか……私はその事実を無視できなかった。

「そうだね……運命ってひどいよね……」

 明は振り返らずに呟いた。その言葉には自嘲が込められていて、茉凜の小さな声が彼女に届くことはなかった。彼女の冷たく遠ざかっていく背中を見つめながら、私は自分の無力さを感じていた。こんなにも大切な人の痛みに、何もしてあげられない自分を、どうしても責めずにはいられなかった。

 このままじゃいけない。だけど、どうすればいいのだろう。私は心の中で何度もその問いを繰り返した。

    ◇          ◇

 明が去った部屋に残された静寂の中で、私は気づけば拳を固く握りしめていた。指先が白くなるほど力を込めて、その震えを止めようとしていたのだ。胸の中に広がるのは、明を失望させてしまった自分への怒り。そしてその怒りが行き場を失い、どうしようもなく押し寄せてくる焦燥感に支配されていた。

 でも、何かを壊したところで、この感情が晴れるわけじゃない。それはただの自己満足だと分かっていた。それよりも、私が大切に思う弟、弓鶴のこと。そして、彼の許嫁だった明のことを考えるべきだ。二人の途切れてしまった時間を、私は呪いを解くことで取り戻してあげたいとずっと思っていた。それが私の原動力の一つになっていたはずだった。

 それなのに、現実はどうだろう。解呪のためにはどうしても茉凜の力が必要で、そして美鶴である私にとって、彼女が何よりも大切だった。だから私は、明の気持ちを知らず知らずのうちに蔑ろにしてしまっていた。自分の思いだけに囚われて、彼女の心の痛みを見て見ぬふりをしてきたのだ。今になってわだかまりをなくそうなんて思うこと自体が、浅はかだった。明と向き合うことを怯えていた私には、その資格がない。

 このままでは、明は本当にどこか遠くへ行ってしまうだろう。彼女を絶望させてはいけない。彼女の中にまだ残っているかもしれない希望の光を、私の無理解で消してしまってはいけない。私は……弓鶴の姉として、彼女のためにできることをしなければならない。

 拳を解き、私はゆっくりと深呼吸をした。その一呼吸の重さが、私が今、取るべき道を示しているようだった。明の心に向き合い、彼女を救うために、私は何を犠牲にしてでも動く覚悟を決めなければならないのだ。

 拳を解いて、深く息を吸い込んだとき、その重さが胸にずしりと響いた。まるでその呼吸が、私が進むべき道を明確に示してくれているかのようだった。明の心と向き合い、彼女の苦しみを救うためには、もう何も恐れず、何を犠牲にしてでも動く覚悟が必要だった。

「俺、行ってくる……」

 私は茉凜をじっと見つめながら言葉を絞り出した。そこには私のすべての思いが込められていた。明に対する後悔と、今からでも彼女に何かできるかもしれないという決意が、重く胸に響いていた。

 茉凜は、私の決意を受け止めるように、優しく、しかし真剣な眼差しで答えた。

「うん、行ってあげて……」

 彼女の目には強い願いが込められていた。それが背中を押してくれた。茉凜の言葉はいつもそうだ。優しいけれど、確かな力がある。彼女の信頼が、私に勇気を与えてくれるのだ。

 私の足は自然と前に向き、決して引き返さない覚悟がそこにあった。明の痛み、彼女の孤独、そのすべてに向き合うために。弓鶴の姉として、私はその道を歩まなければならない。

  ◇         ◇

 私は明の部屋の前に立った。何度かノックをして呼びかけたものの返事はなく、私はドアノブに手を掛けた。鍵はかかっておらず、私は何度も躊躇しながら、勇気をもってドアを開けた。

 部屋は私や茉凜と同じ元はゲストルームで、構造もインテリアもほぼ共通だった。明はこの部屋を自分らしくアレンジすることもしていなかったようで、殺風景なままで、およそ生活感というものは感じられなかった。

 明は居間の白く大きなソファの上に、まるで心の奥に閉じ込められたかのようにうずくまっていた。彼女の身体がいつもよりも小さく見え、その姿に切なさがこみ上げる。虚ろな目は、どこか遠くを見つめていて、その視線の先には絶望しかないことが痛いほど伝わってきた。

「明……」

 その名を呼んでも、彼女はまるで私の声が届かないかのように反応しなかった。心の中で焦りと無力感が募る。何とか彼女の心に触れたくて、私は懇願するように言った。

「頼む、俺の話を聞いてくれないか」

 すると明は私を見ずに、ぼそりと拒絶の言葉を口にした。

「出てって……」

 その一言は、まるで刃物のように私の胸を刺した。しかし、ここで引き下がるわけにはいかなかった。私は彼女を一人にすることができないと強く思った。

「俺は出ていかない。今のお前を一人にはさせるわけには……」

「なんでそういうこと言うかな……。どうでもいいじゃん」

「どうでもいいわけがないだろ!」

 私は自分でも驚くほど大きな声を張り上げていた。明の弓鶴への気持ちを踏みにじるわけにはいかない。その思いが、自分への怒りと交錯し、さらに声を荒げる原因となった。

 私が息を荒げているのに、明は無言で重い沈黙を保ち、周囲の空気が一層冷たく感じられた。やがて、彼女がぽつりと口を開いた。

「安心してよ。あたし、ここから出ていくから。もう、あんたたちの邪魔はしない……」

「出ていくだと?」

 低い声でそう言うと、明は小さなため息をつき、続けた。

「あたしの役目は終わったんだ。弓鶴くんはもう十分戦える。教えることなんて何もない。これ以上、ここに留まる理由なんてない。元々あたしの居場所なんて無かったんだから……」

 その言葉に、心の奥で何かが音を立てて崩れ落ちるのを感じた。

「そんなことはない。俺たちは同じ目的で戦っている同志だろ?」

 明は私の言葉に目を閉じ、苦痛に満ちた表情を浮かべた。

「いまさらあたしに何ができるっていうの? なにもないじゃん。あたしにはあんたのためになる特別な何かなんて無い。あたしは用済みなんだよ」

 その瞬間、彼女の声は私の心に重くのしかかり、何もできない自分の無力感が一層募っていった。明が自らの存在意義を否定している姿を見て、どうすれば彼女の心の壁を崩せるのか、ただひたすらに考えるばかりだった。

「そんなことはない。お前は誤解している。」

「何が誤解なの? 言ってみてよ?」

 明の瞳には、悲しみと怒りが交錯していた。その姿を見ると、胸の奥がざわめくような思いが湧き上がった。彼女を救うためには、どんな言葉をかければいいのか、私の心は迷い続けた。

「言えないでしょ? そりゃそうだ。あんたは、なんだかんだであいつのことばかり見てて、あいつもあんたのことばかり見てる。“私たちは付き合ってません。そんなつもりはありませーん”なんて見え透いた言い訳をして、私から見たら、本当に馬鹿じゃないのって思うわ。」

 明の言葉は鋭く、私の心に生々しい痛みを刻んだ。

「あんたはあいつを選んだ。私は選ばれなかった。それだけのことよ。あいつが気を遣ったとしても、私には入り込む余地なんて、どこにもないんだから。それなのに、今度は運命だって? 本当に呆れる……。私を馬鹿にするのもいい加減にしろ。」

 彼女の声は震えていたが、その奥に宿る怒りと悲しみは渦巻いていた。涙がその目に宿り、明の強がりが痛々しさを増していった。

「……お前はそれで諦めてしまうのか?」

 私は感情に流され、つい彼女を逆撫でるような言葉を口にしてしまった。

 明は苦々しい顔をして答えた。

「あいつと同じようなことを言うんだね。そうだよ、そうするしかないんだよ。そうしなきゃ、あいつを殺すかもしれないからね!」

 彼女の言葉に込められた痛みや悲しみの大きさに、私の心は激しく揺れた。その苦悩が、まるで私自身の心に引き裂かれるように響いてきた。

「あたし、おかしくなってる。いいや、もうずっと前から壊れてたんだろうな……」

 そう言うと、明は突然、服を脱ぎ始めた。私はその行動に驚き、止めることもできずに立ち尽くしてしまった。

 彼女の定番、フィットした黒のクロップトップが床に無造作に投げ捨てられた。

 目の前には、涙ぐんだ明が立っていた。彼女の上半身はさらけ出され、何の飾り気もないワイヤーレスのブラジャーだけが残っていた。そして、胸元には、大きな火傷のような痛々しい傷痕があった。それは赤黒く変色し、不規則な形状をしていて、まるで彼女の心の傷をそのまま映し出しているかのようだった。

 明の肩は小刻みに震えていた。その震えが彼女の中の苦しみを物語っていることがわかり、私は胸が苦しくなった。それは彼女が最も見せたくなかったものなのだと理解できた。彼女がそれを見せようとする理由もなんとなく察していた。明は自分の痛みを、私に伝えようとしているのだ。彼女の心の叫びが、静かに耳に届いた。
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登場人物紹介

ミツル・グロンダイルのキャラクター設定

基本情報年齢: 12歳(外見年齢)


外見: この大陸では珍しい黒髪と薄緑の透き通った瞳。美しい容貌だが、体型は少し少年のようで、まな板の寸胴であることに敏感。自称年齢: 21歳(前世の記憶を持つため)


性格: 冷淡に見えながらも実は直情的で、一人でいることを好む。時折無邪気な一面を見せることがある。前世の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動き、冷静な大人の一面と子供っぽさが共存する複雑なキャラクター。


好物

食事に関しては美味しいものを少しだけなタイプ。剣の中の茉凜がアルコール依存になってしまったため。最近はお酒も嗜む。


社会的関係: 引っ込み思案で人付き合いが苦手なため、孤独を好む。しかし、孤独を埋めるために時折無邪気な一面を見せる。自分の力や能力に対する内なる葛藤と向き合いながら、過去の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動く。


ミツル・グロンダイルの物語における役割

憧れの存在: ユベル・グロンダイル(父)の影響を強く受けており、彼の戦闘スタイルや技術に憧れを抱く。父の遺志を継いで魔獣を狩る役割を担う。

遺産と使命: 父が遺した白きマウザーグレイルを持ち、彼の意志を継ぐ重要な役割を果たしている。彼女の能力と背景は、物語の重要な要素となっている。

謎と葛藤: 彼女の能力と前世の記憶には深い謎があり、物語の進行とともにその全容が明かされる可能性がある。彼女の内面的な葛藤や成長は、物語の核心に深く関わっている。


前世の名前: 柚羽 美鶴(ゆずは みつる)

年齢: 不明(死後、弟の弓鶴に憑依しているため、年齢としては弓鶴の年齢に準じる)

性別: 女性(現在は弟の弓鶴に憑依中)

出身地:九州地方某県の山中の柚羽家(深淵の三家の一つ、始まりの回廊の守護者)

職業: 柚羽家の後継者で深淵の始まりの回廊の巫女


 美鶴は深淵の三家の一つである柚羽家の長女であり、始まりの回廊の守護者。柚羽家襲撃事件で両親を失った後、叔父の虎洞寺氏に保護された。その後、両親の死の真相を知り、自ら人身御供になる覚悟を決め、柚羽家の後継者となった。彼女は密かに深淵の根源の再生を図り、解呪に臨んだが、その試みは失敗し、死亡した。


その後

 美鶴はデルワーズの画策により、弟の弓鶴と意識と記憶の全情報を交換させることで、彼に憑依する形で生き延びる。弟を取り戻すために再び解呪に進もうとした際、茉凜と出会う。茉凜が持つ「黒」の力の安全装置としての役割によって、二人は運命共同体となることが決まる。


 自らが女性であることに対する戸惑いと、茉凜に対する淡い感情を抱くようになり、自分が本当は弟ではないことや、茉凜が見ているのは弟であることに苦悩する。


 美鶴は両親の死の真相を知った後、自らが柚羽家の後継者として深淵の根源の再生を図ろうとしたが、その試みが失敗したことに対する責任感を抱えている。


 茉凜の猛烈なアタックに対して、次第に閉じていた心を開き始めると共に、彼女に対して淡い心を抱く。しかし、自分が本来女性であることや、それを知られることを怖れて受け入れることに苦しんでいる。


 美鶴は茉凜と共に深淵の根源の解呪に挑む中で、茉凜の存在が自らにとってどれほど重要であるかを認識し始める。しかし、彼女は自分の感情と状況に苦悩し、特に自分が女性として抱く感情や、茉凜が見ているのが自分ではなく弟であることに対して深い悩みを抱えている。


深淵の黒鶴

 精霊子に対する感受性が極めて高く、世界に漂うすべての精霊子を集積できる。彼女の前世の名前(美鶴)と組み合わせて【黒鶴】と呼ばれる。限定された空間(場裏)を形成し、その中でイメージ通りの現象を具現化。四大元素すべてを制御可能で、並列起動による複合行使も可能。背中に現れる翼は物質的ではなく、彼女の願望を投影したもの。


場裏

 限定された空間を形成し、その中で事象を操作。色で呼称される流儀に基づき、たとえば赤であれば熱の操作に関わり、イメージのままに具現化できる。詠唱や魔道具を必要としない強力な魔術として認識されている。戦闘と


能力の影響

 ミツルの戦闘スタイルは、前世の影響を色濃く受け継いでおり、流動的で柔軟な戦術が特徴。彼女の能力は瞬時に強力な現象を引き起こすことができ、そのため精神的な負荷が非常に大きい。精神崩壊や自我喪失のリスクが伴う。


精神的負荷

 精霊子の収集と能力の使用により、大脳辺縁系に過大な負荷がかかり、精神的な負担が大きい。特に精霊子への感受性が高い彼女は、負荷に耐えきれず暴走する危険がある。

ヴィル・ブルフォード

 ミツルの前にふらりと現れた、ぼさぼさ頭の無精髭の中年剣士。『黒髪のグロンダイル』の噂を聞きつけて訪れたという、彼の真意と思惑は?

 自らを『放浪のしがない剣士』と言う割に、その剣技は一流で、歴戦の強者。『雷光』とあだ名されると対魔獣戦のエキスパートで、その戦いぶりはミツルも舌を巻く。


年齢 48歳

身長 190センチ近い

体格 大柄で強靭

出身地 不明

職業  剣士、冒険者、元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長

髪: ぼさぼさの金髪。長さは無造作に伸びており、戦いの中で乱れたまま放置されている。

顔 無精ひげが顔全体に生えており、荒々しさと共に風格を漂わせている。

武器 中央に深い溝が彫られたブロードソード。鍛造で作られており、適度な粘りを持ち、滅多に折れない。


剣術スタイル

流派 雷光(らいこう)

特徴 巨体とその質量を生かした高速ダッシュ


戦闘スタイル

高速ダッシュ 雷のようなスピードで踏み込み、敵の懐に入り込む

敵の死角利用 相手の身体を死角として利用し、瞬時に繰り出される高速の斬撃で敵を仕留める

左手の傷 突きを繰り出す際に意図的に剣の先に左手を添え、敵の注意を引き付ける。実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、非常に巧妙。猪突猛進型でありながらも、臨機応変に対応できる柔軟さを持つ。これは、変幻自在で『型』のないユベルと毎日修練を積み重ねた結果(苦肉の策)による。


戦闘技術

片手剣術 基本的には片手でブロードソードを操るが、必要に応じて両刀も使うことができる。戦況に応じて剣の使い方を変え、迅速かつ的確に対応。


特殊技

雷光突き 瞬時に高速で踏み込み、突きを繰り出す技

閃光斬り 一瞬の隙を突き、相手の死角から高速で斬撃を繰り出す技


特徴と戦術

巨体と速度を生かして、魔獣の懐に入り込み、致命的な攻撃を繰り出す。視線誘導の技術で、敵の視線を引き付けてから攻撃する。


心理と性格

戦場での冷静な判断力と卓越した技術で、数々の戦場で名を馳せる。敵の動きを見極め、最適な攻撃や防御を選択する。どんな状況でも冷静に対応し、自信を持って戦う。猪突猛進型でありながら、変幻自在の戦術を使いこなす柔軟さを持つ。


元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長を務めた経験を持つ。騎士団時代の訓練と経験が、彼の戦術的な判断力と剣術の技術に大いに寄与している。特に、ユベルとの修練で得た経験が、彼の変幻自在な戦術に大きな影響を与えている。


その戦闘スタイル

一九〇センチ近い大柄な体躯を持ちながらも、その強靭な体に似合わぬほどの軽快さを誇る剣士。彼の手に握られているのは、ロングソードよりも短いブロードソードに近いもので、中央には深い溝が彫られている。この剣は鍛造で、適度な粘りを持ち、使い手によっては滅多に折れることがない。


ヴィルの剣術のスタイルは「雷光」と呼ばれ、彼の巨体とその質量を生かした高速ダッシュが特徴。彼は特に大きな魔獣を相手にするのが得意で、雷のようなスピードで踏み込むと、敵の懐に入り込み、相手の身体自体を死角として利用する。瞬時に繰り出される高速の斬撃で、敵を一気に仕留める。


特筆すべきは、彼の左手に傷が絶えないこと。これは、突きを繰り出す際に意図的に剣の先に手を添えて、その手に注意を引き付けるためだ。敵がその手に視線を奪われている間に、実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、彼の戦術は非常に巧妙。


ヴィルの剣は基本的に片手で操られることが多いが、必要に応じて双剣で戦うこともできる。その柔軟な使い方と、雷光のような素早さを駆使して、彼は戦場でその名を轟かせた。

茉凜(マリン)のキャラクター設定


基本情報年齢: 17歳

身長: 173センチ

プロポーション:高跳びの選手かファッションモデルのようなスラリとしたかっこいいスタイル。ただし本人は自覚なしで自信がない。 


外見: ミルクティーブラウンの髪、大きな瞳、お日様のような笑顔。純粋で優しい少女の姿が特徴的。


性格: 天真爛漫でポジティブ。どんな困難な状況でも明るさを失わず、死の淵の絶対的不利な状況でも輝く。特に追い込まれるとスイッチが切り替わり、予知視界を用いる能力が発揮される。


背景前世: 元々は私たちの世界に住んでいた人物。異世界に突然放り込まれ、さらに剣の中に転生させられるという過酷な運命を辿る。


役割: ミツルの相棒であり、恋人(?)。彼女の無条件の愛情と楽観的な性格がミツルの心の支えとなっている。過去のトラウマ: 落雷事故によるトラウマがあるが、それを嘆くことなく明るさを保ち続ける。ミツルにとっては大きな支え。


能力と役割能力: マウザーグレイル経由の予知視界。死の淵での絶対的不利な状況でも特に有効で、剣の中にあるこの能力が最大の武器である。


役割: ミツルの『深淵の黒鶴』を制御するための安全装置(セーフティ)として機能。暴走を防ぐ唯一の手段として、ミツルとの接触と精神的な感応が必要。自身の全てを捧げる覚悟を持ち、ミツルを守ることを使命としている。


心情と内面愛情: ミツルに対して無条件の愛情を注いでおり、彼女の存在はミツルにとって欠かせない心の拠り所となっている。愛情が恋であることに気づきながらも、その感情を告白することはできない。


支え: ミツルの冷たい態度や無口さの裏に隠された繊細な心を理解し、彼の孤独や苦しみを誰よりも感じ取っている。彼の心の支えとなることを自分の使命と感じ、彼を守るために自分の全てを捧げる覚悟を持っている。


内面の葛藤: 弓鶴(ミツル)が自分にとって特別でなくなるのではないかという不安を抱えながらも、彼の幸せを最優先に考え、自分の感情を抑え込んでいる。仲直りを図る際には自分を押し殺して彼らの関係を修復しようとするなど、内面的には複雑な感情が渦巻いている。

白きマウザーグレイル

基本情報正式名称: 精霊器接続式対魔族兵装 MW-CSV-DD MAUSER-GRELL(マウザーグレイル)

形状: 純白のロングソード

特徴: 刃に相当する部分がなく、実質的には何物も斬れない

構造と材質材質: 不明。構成素材については詳細が不明だが、非常に高い堅牢さを誇る。

耐久性: どんな魔獣の攻撃にもヒビ一つ入らないほどの堅牢さを持つ。

重量: 見た目よりも軽量で、非力なミツルでも自在に扱える。

機能と特性魔導兵装: 剣の形をとった魔導兵装であり、実際には物理的に斬ることはできない。

潜在能力: 現在のところ、ミツルもその実体と潜在能力については把握していない。

補助機能: ミツルの持つスキル「真凜」が安全装置として補助を行っている。

戦闘における役割安全装置: ミツルが持つ「深淵の黒鶴」の能力を制御するための安全装置として機能する。マウザーグレイルが実際の戦闘では使われないが、その存在がミツルの能力の安定に寄与している。

象徴的な意味: 剣そのものは物理的な攻撃力を持たないが、深い意味や力を秘めている可能性がある。特に、ミツルの精神的、象徴的な支えとしての役割を果たしている。

謎と疑問実体の不明: 現状、剣の具体的な機能やその実体についてはミツル自身も把握していない。剣の持つ潜在的な力や目的については謎に包まれている。発見される

可能性: 今後のストーリー展開で、その真の力や役割が明らかになる可能性がある。

ユベル・グロンダイル

 ミツルの父で、『閃光』の異名を持つ変幻自在の剣術を操る天才。すでに故人である。


ユベル・グロンダイルのキャラクター概要

年齢と外見:

年齢:50代外見:かつて金髪だったが、現在は黒く染めている。無精髭を蓄え、スリムで筋肉質な体型。優雅な立ち姿と流れるような戦闘動作が特徴。


役割と経歴:

元リーディス王国銀翼騎士団右翼リーダーであり、対魔獣戦のエキスパート。リーディス王国の銀翼騎士団に所属し、多くの戦場を経験。特に魔獣戦においてその名を馳せた。


基本戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の極みであり、その動きは流動的でまるで水のように変幻自在。力強さでは他の剣士に劣ることもあるが、素早さと身軽さで魔獣を屠る。ステップワークや変則的な体術を駆使し、敵の動きを予測させない巧妙な戦術を展開。回転しながらの斬撃や舞うような動きで敵の意識を散らし、戦局を有利に進める。


家族との関係:

妻:メイレア(元リーディス王国の第三王女)。非常に深い愛情を持ち、二人の関係はミツルにとって時折恥ずかしくなるほどの愛情表現がなされていた。娘:ミツルにとってユベルは憧れの対象であり、彼の戦闘スタイルや技術に強く影響を受けている。

最後の旅と戦い:

妻メイレアの行方不明後、ユベルは娘ミツルを連れて探索の旅に出る。愛する妻を取り戻すため、家族の絆を守るための決意を持っていた。未知の魔獣との戦いで命を落とし、その犠牲によってミツルは生き延びることができた。

白きマウザーグレイル:

ユベルが妻との絆として持っていた白きマウザーグレイルは、ミツルに託された。この剣はユベルの思いと愛情を象徴し、ミツルにとっては父の遺志を継ぐ重要なアイテム。


お尋ね者:

尊敬を集める存在だったが、妻を誘拐した罪が科せられ、お尋ね者として追われていた。ユベル・グロンダイルの戦闘スタイル


「柔」の戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の戦術を体現し、流動的で変幻自在な動きが特徴。彼の動きは舞踏家のように優雅でありながら、非常に戦術的で緻密。


ステップワークと回転体術:

軽やかなステップワークで敵の攻撃を避け、回転しながらの斬撃で敵を翻弄。体操選手やフィギュアスケーターを彷彿とさせる華麗な動きが特徴。


対魔獣戦の特化:

魔獣の懐に自在に出入りし、相手の身体を盾として利用することで最短距離からの攻撃を実現。風のように迅速で、敵の反応を許さない。

彼の戦闘スタイルを際立たせている。

前世での二人

 それは第二章で語られる。

虎洞寺健

美鶴と弓鶴の叔父で、保護者であり協力者。

能力が実用に耐えない血族が所属する郭外のリーダーで、自身は多数の企業を成功に導いた実業家で資産家。その貢献によって上層部にも大きな発言力を持ち、水面下で二人の活動をサポートする。彼の目的は深淵の呪いからの解放と深淵の解体である。

佐藤さん

 柚羽家のお手伝いさんで、美鶴の理解者。昔からの柚羽家のお手伝いさんで、その家事能力は超人。茉凜の料理の師匠。

真坂明

 15歳の少女で、身長は152センチメートル。黒のショートカットが特徴的で、衣装は、黒のクロップトップと高腰のパンツ、袖にディテールが施されたオープンジャケットで、全体的にクールでスタイリッシュな印象。均整の取れたスタイルも、洗練された雰囲気に一役買っている。

性格は情熱的で、自分が思ったことをはっきりと口にするタイプ。弓鶴の元許嫁であり、真坂家の次期後継者としての重責を担っている。また、「深淵の赤の流儀」の高度な術者でもあり、その実力は並外れている。彼女の存在感は、その内に秘めた強い意志と、家の名に恥じない実力から来ている。

明は破談後も弓鶴を想い続けており、それが彼女の能力の原動力になっている。自身が家の後継者となり、弓鶴を婿として迎えようと決意した結果、兄二人を殺害してしまう。

柚羽 美鶴

 ミツルの前世で転生時二十歳。その過去はダイジェストとして第二章で語られる。ミツルの内向的なところは彼女の成分。

 前世では茉凜に対して次第に恋心を抱いていくが、さまざまな問題が障害となって、素直に気持ちを伝えられずにいた。

 彼女のバルファへの転生がグロンダイル家にもたらした影響が、ミツルが戦い旅する理由。

鳴海沢洸人

深淵の血族、上帳を構成する三家の一つ、鳴海沢の長子。流儀青の強力な使い手。弓鶴の確保のために遣わされるが敗退し、その後弓鶴と茉凜の監視役として転校してくる。

数年前に暗殺に失敗し、その後始末として対象を家族諸共惨殺したことがきっかけで、殺せない欠陥品になってしまった。強力な血を残すために家に留め置かれ、鬱々とした日々を送っていた彼を変えたのは、深淵の始まりの回廊の巫女からの言葉だった。 

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