第70話 可能性を覗く瞳

文字数 5,562文字

 気づけば、朝が来ていた。窓の外が明るくなっているのをぼんやりと認識し、私は一瞬、今がいつなのかが分からなくなった。ずっと日記と向き合っていて、時間の流れすら感じ取る余裕がなかった。手の中にあるペンが震える。夜の静けさに埋もれた自分の思い出を、必死に書き留めていたから。

 その時、不意にスマホが鳴った。画面を見ると、佐藤さんの名前が光っていて、心が締めつけられるような感覚が広がった。すぐに察した。茉凜が、ようやく意識を取り戻したのだ。

 不安と期待が入り混じり、胸の奥がざわめく。私は立ち上がり、鏡を見た。そこに映っていたのは、ひどく泣き腫らした顔の私だった。頬には涙の痕が残り、瞼は腫れて重くなっている。まるで弓鶴の仮面が崩れて、ずっと隠していた本当の「美鶴」が浮かび上がっているかのようだった。

 このままの顔で茉凜に会うなんて、到底できるはずがなかった。だって、こんなにも脆くて弱い自分を見せるなんて、考えただけで怖い。

 「少し時間を置いてから伺います」と、スマホに短く打ち込んで送信する。すぐに行くべきだとわかっていても、今の私は無理だ。泣きすぎて心も乱れたままでは、彼女にちゃんと向き合えない。だから、まずはシャワーを浴びて、気持ちを整えようと思った。

 服を脱ぎ、勢いよくシャワーの下に飛び込んだ。冷水を選んだのは、心を一瞬でもクリアにしたかったから。でも、その冷たさに耐えられず、すぐに温水に切り替えた。冷水の刺激は、むしろ心の中にあった不安やモヤモヤを、より浮き彫りにしてしまった。

 シャワールームの壁に映るのは弟の弓鶴の姿。鏡の中のその姿を見つめながら、私はいつも感じている心と身体の違和感を思い知らされる。どれだけ頑張って「男の子」になろうとしても、心は美鶴という女の子であることに変わりはない。

 真凛の前では、弓鶴として振る舞わなければならない。彼女が私に期待して求めているものは男の子の弓鶴であって、女の子である美鶴ではない。

 私は彼女に対して特別な感情を抱いている。だけど、その感情は男の子としてのものではなく、心の中の女の子の美鶴として彼女に惹かれている。

 そんなお互いの不一致に気づくたび、どうしようもない違和感と苦しさが私の中を埋め尽くした。

 もし、彼女との関係がもっと深くなったら、この不一致が、この繊細な関係を壊してしまうのではないかと、いつも不安だった。男の子の身体を持つ自分が、どうやって彼女に向き合えばいいのか、答えは見つからないままだった。

 性欲があるかないか、といったら、ないとは言い切れない。でもそれは一番怖ろしいことで、想像するだけでも怖ろしかった。

 彼女にそんな私の悩みや不安を押しつけることなど、できるわけもなく、私は自分の中で抱える葛藤となんとか向き合ってきた。それが彼女を守るために必要なことだと信じていた。けれど、その決意が、今では少しずつ揺らぎ始めているのがわかる。

 温かいシャワーが、冷たく凝り固まっていた私の心にそっと染み渡る。でも、それだけではこの感情の深い傷を癒すことはできなかった。

    ◇         ◇

 私は深呼吸をして、茉凜の部屋のドアをノックした。できるだけ、いつもの冷淡な顔を作り出そうと必死だった。

 佐藤さんが出てきて、私を導き入れた。元々ゲストルームだったその部屋は、私の部屋と同じで一人で使うには広すぎて、華美な装飾などない洗練されたインテリアも、どこか無機質に感じられて、私にとってはあまり居心地のいいものではなかった。

 広いリビングスペースを抜けて、茉凜のベッドルームに足を踏み入れると、そこにはシンプルでありながらも女性らしい温かみのある空間が広がっていた。

 ベッドは無地の淡い色合いのカバーで整えられ、ベッドサイドには手にしっくりくるサイズのぬいぐるみたちが並んでいる。大きなクマやかわいらしい小さなウサギ、シンプルなリボンをつけた猫のぬいぐるみが、愛されているのが伝わるように、静かに寄り添っていた。

 ドレッサーの上には、必要最低限のコスメが整然と置かれており、華美さはないけれど、彼女の清潔感と繊細さが感じられる。リップやアイシャドウ、パウダーケースがシンプルに並び、使い込まれたブラシやパフも自然に置かれている。

 全体に、茉凜らしい落ち着いた温かさが感じられるこの部屋は、シンプルでありながらも彼女の個性と心地よさをしっかりと表現している空間だった。

 ベッドの中の茉凜は、まだぼーっと天井を見つめたままで、目には生気が感じられず、心をどこかに置き去りにしてしまったように見えた。乱れていた髪の毛は、佐藤さんが整えてくれたようだったが、その静けさの中で彼女の心の痛みはまだ深く、漂うような静けさを保っていた。

 私は驚かせないように、静かに近づき、茉凜の視線の先に顔を伸ばした。それでも、彼女の瞳には輝きが薄く、焦点が定まらないままだった。まるでその目が、どこか遠い場所に心を置き去りにしているように感じられた。

「茉凜……」

 私は何度も優しく声をかけた。その声には、地獄のような苦しみから彼女をなんとしても救い出したいという強い思いが込められていた。茉凜を見守る私の心には、彼女を助けたいという切実な気持ちでいっぱいだった。

 やがて、茉凜の口が微かに動き、目の焦点が次第に合ってきた。私はその変化を見逃さず、さらに呼びかけを続けた。

「……づるくん……」

 彼女の呟きを聞いて、私は思わず身を乗り出した。

「茉凜、俺だ。わかるか……?」

 その声が届いたのか、茉凜ははっと目を見開いた。しかし、その口から漏れた言葉は、深い悲しみを含んでいた。

「あれ、ゆづるくん……つぶされちゃったのに……」

 おそらく彼女の心は、あの異常な事態に心を囚われたままで、現実の時が進んでいないのかもしれなかった。

「しっかりしろ、俺は潰されてもいないし、こうしてちゃんと生きている。ほら!」

 私は茉凜の右手を取り、その震える手のひらを自分の頬に触れさせた。自分が生きているという証を彼女に伝えたかった。私の温かい頬を感じ取ってもらい、少しでも安心してほしかった。

 それでも、茉凜の手の震えはなかなか収まらなかった。だから私は、彼女を安心させるように微笑み続けた。涙がこぼれそうになるのを必死に抑えながら、彼女に心の温かさを伝えようとした。

「温かいね……」

「ああ……。お前の手はちょっと冷たいな」

 お互いの体温を確かめ合いながら、茉凜の目には少しずつ光が戻っていった。彼女の心に少しずつ温もりが戻り、私の存在が再び彼女の中にしっかりと刻まれていくのを感じた。

「生きてる……ちゃんと生きてる」

「ああ……生きてるぞ」

 その言葉に応じるように、茉凜の顔にふわっと柔らかな笑みが浮かんだ。それはまるで、雲間から差し込む陽光のような、温かさと安心感をもたらす笑みだった。その笑みを見て、私はようやくほっと息をついた。

 いつもの茉凜が戻ってきたのだ。彼女の瞳には再び輝きが戻り、深い悲しみの中にもあった彼女の本来の温かさと強さが見えた。

     ◇         ◇

 茉凜は「もう、大丈夫だよ」と言って、起き上がろうとした。けれど、その姿からは、彼女が何かに焦り、それを隠そうとしているように見えた。彼女の目には、どこか遠くに心を置き去りにしてしまったかのような虚ろさが漂っていて、私は慌てて彼女の手を押さえ、「待て、無理をするな」と静かに制止した。

 私は彼女が好きな温かい豆乳ラテを用意し、彼女の近くに座った。私には彼女の気持ちを優しく包み込むしかできないと思ったから、あまり口を挟まず、彼女の反応を静かに見守った。茉凜の心を安らげるために、ただそっとそばにいることが、今は最も大切なことだと感じていた。

 沈黙が流れる中、茉凜の手がカップを持つ手が微かに震えていた。彼女はゆっくりとカップに唇をつけ、温かい飲み物の感触を確かめるように、慎重に飲み進めた。そんな彼女の姿を見守りながら、私は心の中で彼女の傷が癒えるのを願っていた。

 ふうっ、とため息をついた後、茉凜がぽつりと口を開いた。

「ごめんね、なんかひどいことになっちゃって……」

 彼女の言葉に、私は少し驚きながらも、静かに答えた。

「いや、何よりお前が無事でよかった」

 私の声がどこか冷たく、堅苦しく感じられるのが、心の奥でじわじわと悔しさを募らせていた。もっと優しく、彼女の心に寄り添う言葉をかけたかったけれど、弓鶴の仮面を被る私には、どうしてもそれがうまく言えなくて、苛立っていた。

「わたしね、あの時変になっちゃったんだ……」

 彼女の声は小さく、か細い。目を伏せながら、どうしても言い出せずにいたことを打ち明けるようなその姿に、私の胸が痛んだ。

「変になった?あ、 無理に言わなくてもいい……」

 私は言いながらも、好奇心が少しだけ顔を出してしまうのを抑えた。

 茉凜はそれに構わず続けた。

「あのね、こんなおかしな話信じてもらえないと思って、今まで誰にも話したくはなかったんだけど、わたし、時々物の見え方がおかしくなるときがあるの」

「見え方?」

「うん……。目を閉じたわけじゃないのに、急に世界が真っ暗になって、何も見えなくなってしまうの」

 その言葉に、私は少し困惑しながらも、茉凜の話に耳を傾けた。

「でも、すぐにその中に何かが浮かび上がってきて、それがなぜだか、白い靄みたいなものに包まれていて、ゆらゆらして見えるの」

「それは幻か?」

 私はつい口にしてしまったが、茉凜は首を横に振り、ゆっくりと話し始めた。

「ううん、それは違うって思う。実はこれって、今まで何度もあったの」

「以前から、なのか? それはいつだ?」

 茉凜は少し考え込み、記憶を辿りながら答えた。

「弓鶴くんと最初に会った時……。それから、アキラちゃんと向き合った時……。あと、曽良木っていう人が現れた時……」

 その言葉に、私は驚きとともに、心の中がぐらぐらと揺れるような感覚に襲われた。全てが一つの真実に結びつこうとしていたのだ。

 石御台公園での私の暴走。あの時、天のメンバーが誰一人として突破できなかった、私の無意識の自己防衛機構を潜り抜けた事。超一流の明の剣戟をことごとく回避した事。曽良木の時も、彼女はそれを察知していたという。そして、今ここで、彼女の言葉がすべてをつなぎ合わせていた。

「今回起こったことも、お前にはそういう風に見えていたということか?」

 茉凜は頷きながら、震える声で話し続けた。

「あの時、真っ白にぼやけた弓鶴くんがどんどん遠ざかっていって、そこに上から大きな白い塊が降ってきて……」

 彼女の手が震え始め、ラテがカップから零れそうになるのを見て、私は慌ててその手を支えた。茉凜の恐怖が私にまで伝わってきた。彼女の顔色は青ざめ、目の中には深い不安が広がっていた。

「茉凜、もういい……」

 それでも、茉凜は止まらなかった。彼女の声が、切なさと恐怖に満ちたまま続いた。

「わたし、だめって叫ぼうとしたけど、声が出なくて、身体が重くてなかなか動けなくて、見えているのに何もできなくて……。そうしたら、弓鶴くんが下敷きになってしまうのが見えて……」

 その言葉を聞くたびに、私の心は重く圧し掛かるような感覚に包まれた。茉凜の目は大きく開かれ、体は激しく震え、恐怖と絶望の入り混じった感情が私に痛いほど伝わってきた。

 茉凜の視線が空間の奥を見つめるその様子から、彼女がどれほど恐ろしい光景を目にしていたのかがわかった。彼女の呼吸は荒く、言葉を続けるたびに体が震えていた。

 彼女を抱きしめたい衝動が私の心を支配したが、その感情を必死に抑えた。

 私の心の中で、茉凜が持つ力の意味が次第に明確になってきた。彼女が、自身や身近な人が絶対的な死の危険に晒されるときに、得体の知れない予知めいた視界を得る特別な力を持っているという確信が深まってきた。

 それは、デルワーズが語った「異なる世界の異なる時間と場所を指し示す」という説明にもリンクしている。異なる世界の場所と時間を指し示すということは、その場所のその時を覗き見ることが可能になるということだ。茉凜の瞳に浮かぶぼやけた白い像がゆらめく様子は、複数の不確定な未来の断片が重なり合っているのかもしれないと解釈できる。

 私はSF作品がそこそこ好きで、そうした作品をいくつか読んだことがあったため、このような想像が頭をよぎったのだ。未来の断片が重なり合う状態は、茉凜が見ているさまざまな可能性が交錯する視界であり、それが彼女にとっては「未来の影」として映っているのではないかと考えた。

 私は静かに声をかけた。

「怖かっただろう。誰だってそんなものを見せられたら、どうしていいかわからなくなる。でも、これだけははっきりしている。それはお前を守り、俺を守ったんだ。これはお前だけが持っている特別な力だ」

 茉凜は驚いたように私を見上げ、「とくべつな……ちから……?」と呟いた。その言葉には、まだ恐怖と不安が混じっていた。

 私は微笑みながら頷いた。

「ああ、そうだ。これこそが、茉凜の中に宿っている力。“導き手”の力だ」

「みちびきて……? なんなのそれ? どうして、わたしにそんなものが……」

 その言葉が口から出ると、茉凜の目にわずかな希望の光が宿ったように見えた。

 その本当の意味について、彼女はまだ何も知らない。それでも、何か重要な役割を果たすものであることを理解し始めたのかもしれなかった。

 私はその瞬間を見守りながら、茉凜の存在が持つ意味を確信していた。それは、もう逃れられない結末へと進むしかないことを意味していた。
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登場人物紹介

ミツル・グロンダイルのキャラクター設定

基本情報年齢: 12歳(外見年齢)


外見: この大陸では珍しい黒髪と薄緑の透き通った瞳。美しい容貌だが、体型は少し少年のようで、まな板の寸胴であることに敏感。自称年齢: 21歳(前世の記憶を持つため)


性格: 冷淡に見えながらも実は直情的で、一人でいることを好む。時折無邪気な一面を見せることがある。前世の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動き、冷静な大人の一面と子供っぽさが共存する複雑なキャラクター。


好物

食事に関しては美味しいものを少しだけなタイプ。剣の中の茉凜がアルコール依存になってしまったため。最近はお酒も嗜む。


社会的関係: 引っ込み思案で人付き合いが苦手なため、孤独を好む。しかし、孤独を埋めるために時折無邪気な一面を見せる。自分の力や能力に対する内なる葛藤と向き合いながら、過去の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動く。


ミツル・グロンダイルの物語における役割

憧れの存在: ユベル・グロンダイル(父)の影響を強く受けており、彼の戦闘スタイルや技術に憧れを抱く。父の遺志を継いで魔獣を狩る役割を担う。

遺産と使命: 父が遺した白きマウザーグレイルを持ち、彼の意志を継ぐ重要な役割を果たしている。彼女の能力と背景は、物語の重要な要素となっている。

謎と葛藤: 彼女の能力と前世の記憶には深い謎があり、物語の進行とともにその全容が明かされる可能性がある。彼女の内面的な葛藤や成長は、物語の核心に深く関わっている。


前世の名前: 柚羽 美鶴(ゆずは みつる)

年齢: 不明(死後、弟の弓鶴に憑依しているため、年齢としては弓鶴の年齢に準じる)

性別: 女性(現在は弟の弓鶴に憑依中)

出身地:九州地方某県の山中の柚羽家(深淵の三家の一つ、始まりの回廊の守護者)

職業: 柚羽家の後継者で深淵の始まりの回廊の巫女


 美鶴は深淵の三家の一つである柚羽家の長女であり、始まりの回廊の守護者。柚羽家襲撃事件で両親を失った後、叔父の虎洞寺氏に保護された。その後、両親の死の真相を知り、自ら人身御供になる覚悟を決め、柚羽家の後継者となった。彼女は密かに深淵の根源の再生を図り、解呪に臨んだが、その試みは失敗し、死亡した。


その後

 美鶴はデルワーズの画策により、弟の弓鶴と意識と記憶の全情報を交換させることで、彼に憑依する形で生き延びる。弟を取り戻すために再び解呪に進もうとした際、茉凜と出会う。茉凜が持つ「黒」の力の安全装置としての役割によって、二人は運命共同体となることが決まる。


 自らが女性であることに対する戸惑いと、茉凜に対する淡い感情を抱くようになり、自分が本当は弟ではないことや、茉凜が見ているのは弟であることに苦悩する。


 美鶴は両親の死の真相を知った後、自らが柚羽家の後継者として深淵の根源の再生を図ろうとしたが、その試みが失敗したことに対する責任感を抱えている。


 茉凜の猛烈なアタックに対して、次第に閉じていた心を開き始めると共に、彼女に対して淡い心を抱く。しかし、自分が本来女性であることや、それを知られることを怖れて受け入れることに苦しんでいる。


 美鶴は茉凜と共に深淵の根源の解呪に挑む中で、茉凜の存在が自らにとってどれほど重要であるかを認識し始める。しかし、彼女は自分の感情と状況に苦悩し、特に自分が女性として抱く感情や、茉凜が見ているのが自分ではなく弟であることに対して深い悩みを抱えている。


深淵の黒鶴

 精霊子に対する感受性が極めて高く、世界に漂うすべての精霊子を集積できる。彼女の前世の名前(美鶴)と組み合わせて【黒鶴】と呼ばれる。限定された空間(場裏)を形成し、その中でイメージ通りの現象を具現化。四大元素すべてを制御可能で、並列起動による複合行使も可能。背中に現れる翼は物質的ではなく、彼女の願望を投影したもの。


場裏

 限定された空間を形成し、その中で事象を操作。色で呼称される流儀に基づき、たとえば赤であれば熱の操作に関わり、イメージのままに具現化できる。詠唱や魔道具を必要としない強力な魔術として認識されている。戦闘と


能力の影響

 ミツルの戦闘スタイルは、前世の影響を色濃く受け継いでおり、流動的で柔軟な戦術が特徴。彼女の能力は瞬時に強力な現象を引き起こすことができ、そのため精神的な負荷が非常に大きい。精神崩壊や自我喪失のリスクが伴う。


精神的負荷

 精霊子の収集と能力の使用により、大脳辺縁系に過大な負荷がかかり、精神的な負担が大きい。特に精霊子への感受性が高い彼女は、負荷に耐えきれず暴走する危険がある。

ヴィル・ブルフォード

 ミツルの前にふらりと現れた、ぼさぼさ頭の無精髭の中年剣士。『黒髪のグロンダイル』の噂を聞きつけて訪れたという、彼の真意と思惑は?

 自らを『放浪のしがない剣士』と言う割に、その剣技は一流で、歴戦の強者。『雷光』とあだ名されると対魔獣戦のエキスパートで、その戦いぶりはミツルも舌を巻く。


年齢 48歳

身長 190センチ近い

体格 大柄で強靭

出身地 不明

職業  剣士、冒険者、元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長

髪: ぼさぼさの金髪。長さは無造作に伸びており、戦いの中で乱れたまま放置されている。

顔 無精ひげが顔全体に生えており、荒々しさと共に風格を漂わせている。

武器 中央に深い溝が彫られたブロードソード。鍛造で作られており、適度な粘りを持ち、滅多に折れない。


剣術スタイル

流派 雷光(らいこう)

特徴 巨体とその質量を生かした高速ダッシュ


戦闘スタイル

高速ダッシュ 雷のようなスピードで踏み込み、敵の懐に入り込む

敵の死角利用 相手の身体を死角として利用し、瞬時に繰り出される高速の斬撃で敵を仕留める

左手の傷 突きを繰り出す際に意図的に剣の先に左手を添え、敵の注意を引き付ける。実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、非常に巧妙。猪突猛進型でありながらも、臨機応変に対応できる柔軟さを持つ。これは、変幻自在で『型』のないユベルと毎日修練を積み重ねた結果(苦肉の策)による。


戦闘技術

片手剣術 基本的には片手でブロードソードを操るが、必要に応じて両刀も使うことができる。戦況に応じて剣の使い方を変え、迅速かつ的確に対応。


特殊技

雷光突き 瞬時に高速で踏み込み、突きを繰り出す技

閃光斬り 一瞬の隙を突き、相手の死角から高速で斬撃を繰り出す技


特徴と戦術

巨体と速度を生かして、魔獣の懐に入り込み、致命的な攻撃を繰り出す。視線誘導の技術で、敵の視線を引き付けてから攻撃する。


心理と性格

戦場での冷静な判断力と卓越した技術で、数々の戦場で名を馳せる。敵の動きを見極め、最適な攻撃や防御を選択する。どんな状況でも冷静に対応し、自信を持って戦う。猪突猛進型でありながら、変幻自在の戦術を使いこなす柔軟さを持つ。


元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長を務めた経験を持つ。騎士団時代の訓練と経験が、彼の戦術的な判断力と剣術の技術に大いに寄与している。特に、ユベルとの修練で得た経験が、彼の変幻自在な戦術に大きな影響を与えている。


その戦闘スタイル

一九〇センチ近い大柄な体躯を持ちながらも、その強靭な体に似合わぬほどの軽快さを誇る剣士。彼の手に握られているのは、ロングソードよりも短いブロードソードに近いもので、中央には深い溝が彫られている。この剣は鍛造で、適度な粘りを持ち、使い手によっては滅多に折れることがない。


ヴィルの剣術のスタイルは「雷光」と呼ばれ、彼の巨体とその質量を生かした高速ダッシュが特徴。彼は特に大きな魔獣を相手にするのが得意で、雷のようなスピードで踏み込むと、敵の懐に入り込み、相手の身体自体を死角として利用する。瞬時に繰り出される高速の斬撃で、敵を一気に仕留める。


特筆すべきは、彼の左手に傷が絶えないこと。これは、突きを繰り出す際に意図的に剣の先に手を添えて、その手に注意を引き付けるためだ。敵がその手に視線を奪われている間に、実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、彼の戦術は非常に巧妙。


ヴィルの剣は基本的に片手で操られることが多いが、必要に応じて双剣で戦うこともできる。その柔軟な使い方と、雷光のような素早さを駆使して、彼は戦場でその名を轟かせた。

茉凜(マリン)のキャラクター設定


基本情報年齢: 17歳

身長: 173センチ

プロポーション:高跳びの選手かファッションモデルのようなスラリとしたかっこいいスタイル。ただし本人は自覚なしで自信がない。 


外見: ミルクティーブラウンの髪、大きな瞳、お日様のような笑顔。純粋で優しい少女の姿が特徴的。


性格: 天真爛漫でポジティブ。どんな困難な状況でも明るさを失わず、死の淵の絶対的不利な状況でも輝く。特に追い込まれるとスイッチが切り替わり、予知視界を用いる能力が発揮される。


背景前世: 元々は私たちの世界に住んでいた人物。異世界に突然放り込まれ、さらに剣の中に転生させられるという過酷な運命を辿る。


役割: ミツルの相棒であり、恋人(?)。彼女の無条件の愛情と楽観的な性格がミツルの心の支えとなっている。過去のトラウマ: 落雷事故によるトラウマがあるが、それを嘆くことなく明るさを保ち続ける。ミツルにとっては大きな支え。


能力と役割能力: マウザーグレイル経由の予知視界。死の淵での絶対的不利な状況でも特に有効で、剣の中にあるこの能力が最大の武器である。


役割: ミツルの『深淵の黒鶴』を制御するための安全装置(セーフティ)として機能。暴走を防ぐ唯一の手段として、ミツルとの接触と精神的な感応が必要。自身の全てを捧げる覚悟を持ち、ミツルを守ることを使命としている。


心情と内面愛情: ミツルに対して無条件の愛情を注いでおり、彼女の存在はミツルにとって欠かせない心の拠り所となっている。愛情が恋であることに気づきながらも、その感情を告白することはできない。


支え: ミツルの冷たい態度や無口さの裏に隠された繊細な心を理解し、彼の孤独や苦しみを誰よりも感じ取っている。彼の心の支えとなることを自分の使命と感じ、彼を守るために自分の全てを捧げる覚悟を持っている。


内面の葛藤: 弓鶴(ミツル)が自分にとって特別でなくなるのではないかという不安を抱えながらも、彼の幸せを最優先に考え、自分の感情を抑え込んでいる。仲直りを図る際には自分を押し殺して彼らの関係を修復しようとするなど、内面的には複雑な感情が渦巻いている。

白きマウザーグレイル

基本情報正式名称: 精霊器接続式対魔族兵装 MW-CSV-DD MAUSER-GRELL(マウザーグレイル)

形状: 純白のロングソード

特徴: 刃に相当する部分がなく、実質的には何物も斬れない

構造と材質材質: 不明。構成素材については詳細が不明だが、非常に高い堅牢さを誇る。

耐久性: どんな魔獣の攻撃にもヒビ一つ入らないほどの堅牢さを持つ。

重量: 見た目よりも軽量で、非力なミツルでも自在に扱える。

機能と特性魔導兵装: 剣の形をとった魔導兵装であり、実際には物理的に斬ることはできない。

潜在能力: 現在のところ、ミツルもその実体と潜在能力については把握していない。

補助機能: ミツルの持つスキル「真凜」が安全装置として補助を行っている。

戦闘における役割安全装置: ミツルが持つ「深淵の黒鶴」の能力を制御するための安全装置として機能する。マウザーグレイルが実際の戦闘では使われないが、その存在がミツルの能力の安定に寄与している。

象徴的な意味: 剣そのものは物理的な攻撃力を持たないが、深い意味や力を秘めている可能性がある。特に、ミツルの精神的、象徴的な支えとしての役割を果たしている。

謎と疑問実体の不明: 現状、剣の具体的な機能やその実体についてはミツル自身も把握していない。剣の持つ潜在的な力や目的については謎に包まれている。発見される

可能性: 今後のストーリー展開で、その真の力や役割が明らかになる可能性がある。

ユベル・グロンダイル

 ミツルの父で、『閃光』の異名を持つ変幻自在の剣術を操る天才。すでに故人である。


ユベル・グロンダイルのキャラクター概要

年齢と外見:

年齢:50代外見:かつて金髪だったが、現在は黒く染めている。無精髭を蓄え、スリムで筋肉質な体型。優雅な立ち姿と流れるような戦闘動作が特徴。


役割と経歴:

元リーディス王国銀翼騎士団右翼リーダーであり、対魔獣戦のエキスパート。リーディス王国の銀翼騎士団に所属し、多くの戦場を経験。特に魔獣戦においてその名を馳せた。


基本戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の極みであり、その動きは流動的でまるで水のように変幻自在。力強さでは他の剣士に劣ることもあるが、素早さと身軽さで魔獣を屠る。ステップワークや変則的な体術を駆使し、敵の動きを予測させない巧妙な戦術を展開。回転しながらの斬撃や舞うような動きで敵の意識を散らし、戦局を有利に進める。


家族との関係:

妻:メイレア(元リーディス王国の第三王女)。非常に深い愛情を持ち、二人の関係はミツルにとって時折恥ずかしくなるほどの愛情表現がなされていた。娘:ミツルにとってユベルは憧れの対象であり、彼の戦闘スタイルや技術に強く影響を受けている。

最後の旅と戦い:

妻メイレアの行方不明後、ユベルは娘ミツルを連れて探索の旅に出る。愛する妻を取り戻すため、家族の絆を守るための決意を持っていた。未知の魔獣との戦いで命を落とし、その犠牲によってミツルは生き延びることができた。

白きマウザーグレイル:

ユベルが妻との絆として持っていた白きマウザーグレイルは、ミツルに託された。この剣はユベルの思いと愛情を象徴し、ミツルにとっては父の遺志を継ぐ重要なアイテム。


お尋ね者:

尊敬を集める存在だったが、妻を誘拐した罪が科せられ、お尋ね者として追われていた。ユベル・グロンダイルの戦闘スタイル


「柔」の戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の戦術を体現し、流動的で変幻自在な動きが特徴。彼の動きは舞踏家のように優雅でありながら、非常に戦術的で緻密。


ステップワークと回転体術:

軽やかなステップワークで敵の攻撃を避け、回転しながらの斬撃で敵を翻弄。体操選手やフィギュアスケーターを彷彿とさせる華麗な動きが特徴。


対魔獣戦の特化:

魔獣の懐に自在に出入りし、相手の身体を盾として利用することで最短距離からの攻撃を実現。風のように迅速で、敵の反応を許さない。

彼の戦闘スタイルを際立たせている。

前世での二人

 それは第二章で語られる。

虎洞寺健

美鶴と弓鶴の叔父で、保護者であり協力者。

能力が実用に耐えない血族が所属する郭外のリーダーで、自身は多数の企業を成功に導いた実業家で資産家。その貢献によって上層部にも大きな発言力を持ち、水面下で二人の活動をサポートする。彼の目的は深淵の呪いからの解放と深淵の解体である。

佐藤さん

 柚羽家のお手伝いさんで、美鶴の理解者。昔からの柚羽家のお手伝いさんで、その家事能力は超人。茉凜の料理の師匠。

真坂明

 15歳の少女で、身長は152センチメートル。黒のショートカットが特徴的で、衣装は、黒のクロップトップと高腰のパンツ、袖にディテールが施されたオープンジャケットで、全体的にクールでスタイリッシュな印象。均整の取れたスタイルも、洗練された雰囲気に一役買っている。

性格は情熱的で、自分が思ったことをはっきりと口にするタイプ。弓鶴の元許嫁であり、真坂家の次期後継者としての重責を担っている。また、「深淵の赤の流儀」の高度な術者でもあり、その実力は並外れている。彼女の存在感は、その内に秘めた強い意志と、家の名に恥じない実力から来ている。

明は破談後も弓鶴を想い続けており、それが彼女の能力の原動力になっている。自身が家の後継者となり、弓鶴を婿として迎えようと決意した結果、兄二人を殺害してしまう。

柚羽 美鶴

 ミツルの前世で転生時二十歳。その過去はダイジェストとして第二章で語られる。ミツルの内向的なところは彼女の成分。

 前世では茉凜に対して次第に恋心を抱いていくが、さまざまな問題が障害となって、素直に気持ちを伝えられずにいた。

 彼女のバルファへの転生がグロンダイル家にもたらした影響が、ミツルが戦い旅する理由。

鳴海沢洸人

深淵の血族、上帳を構成する三家の一つ、鳴海沢の長子。流儀青の強力な使い手。弓鶴の確保のために遣わされるが敗退し、その後弓鶴と茉凜の監視役として転校してくる。

数年前に暗殺に失敗し、その後始末として対象を家族諸共惨殺したことがきっかけで、殺せない欠陥品になってしまった。強力な血を残すために家に留め置かれ、鬱々とした日々を送っていた彼を変えたのは、深淵の始まりの回廊の巫女からの言葉だった。 

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