第58話 扉を開けて 1

文字数 10,571文字

 学園祭の朝が、明るく華やかな色で校内を包んでいた。透き通るような青空の下、風船が空高く舞い上がり、色とりどりのテントが並んでいる。生徒たちは制服の上にカラフルなエプロンを重ね、笑顔を浮かべながら屋台の準備に取り組んでいた。軽やかな風が頬を撫で、ポップなBGMが校内に響き渡る中、期待感が一層高まっていくのが感じられた。

 その一方で、私たち演劇部の部室には緊張が漂っていた。舞台裏では、役者たちが繰り返しリハーサルを行い、スタッフたちは舞台装置や小道具の最終チェックを慌ただしく進めていた。部室の空気は、舞台の幕が上がる瞬間を待ち望むかのように張り詰めていた。

 私はメイヴィス役の衣装に身を包み、鏡の前でじっと自分を見つめていた。緑色の長いウィッグがふわりと肩の上に流れ、軽やかなメイクが施された顔立ちは、まるで物語の一幕から抜け出したかのように輝いていた。鏡の中の自分は、まるで異世界の少女が現実世界に迷い込んできたように、幻想的で美しかった。

 けれど、心の奥底には微かな期待とともに、大きな不安が渦巻いていた。鏡に映る自分に向かって深呼吸をし、静かにセリフを呟きながら、心の中で自分を鼓舞しようとしていた。鏡越しに見つめる自分の目が、まるで不安に押し潰されそうな小さな星のように輝いていた。

 そのとき、控室のドアが静かに開き、茉凜が姿を現した。彼女は男子の制服をまとい、腰に長い剣を下げていた。その姿はまるで伝説の戦士のようで、白銀のウィッグが彼女の長身と精悍な表情を一層引き立てていた。彼女の立ち姿は、まるで物語の中から飛び出してきた王子様のように、堂々としていて、見る者を圧倒する美しさを持っていた。

 その瞬間、胸が急にときめき、心の奥から「かっこいいな」という言葉が自然に湧き上がってきた。まるで夢の中で憧れていた王子様が、現実の世界に降り立ったかのような感覚に包まれてしまったのだ。

 しかし、茉凜はいつものように明るい笑顔を浮かべ、緊張感など微塵も感じさせなかった。彼女の笑顔はまるで春の陽光のように温かく、心を和ませる力を持っていた。その姿は、どんな困難な状況でも冷静さを保つ彼女の強さと頼もしさを象徴していた。私の心はいつも、彼女の存在に深く引き込まれてしまうのだった。

「緊張するなって言うのは無理な話だよね。でも、その緊張感を楽しむことができれば、きっと素敵な舞台になるよ。『為せば成る』ってね」

 茉凜の声には、優しさと共に穏やかな励ましの風が吹いていて、その言葉は私の心に深く染み込んでいった。

 その言葉を聞いた瞬間、私は少しだけ微笑みを返しながら、自分の心を整え始めた。頬に浮かんだ微笑みは、心の奥底から自然に湧き上がったもので、茉凜の言葉によって私の緊張が徐々に溶けていくのを感じた。

「うん、ありがとう。がんばるよ」

 静かに返すと、自分の心が少しずつ整っていくのを感じながら、再び深呼吸をした。心の中に広がる静けさと安心感が、私を落ち着かせてくれるのだった。

 そのとき、洸人と明が私に近づいてきた。洸人は長髪とメガネはそのままに、暗いアイメイクと深いシャドウが彼の顔立ちを際立たせていた。鋭い目元に宿る冷酷な光が、まるで悪魔将軍そのもののようで、普段の飄々とした姿とはまるで別人のようだった。その存在感は圧倒的で、私はただただ感心するばかりだった。

 一方、明は自分の流儀赤に合わせた赤いウィッグと赤いカラコンで、内に秘めた熱情を如実に表していた。彼女の姿は舞台上での迫力を想像させ、まるで火のように燃え盛る情熱が伝わってきた。

 明が私の仕上がりを見て、目を丸くしていた。

「ほんと、弓鶴くん、めちゃくちゃきれいだよ。まじで天使みたい。ねぇ、ラストバトルでこいつぶん殴って、あなたをさらって逃げてもいい?」

 その言葉に私は思わずくすっと笑ってしまった。

「明、いい加減にしろ。お前は舞台クラッシャーか」

 明はその言葉を聞いて、さらに明るく笑った。

「半分は本気だけどね。弓鶴くんがすごく輝いてるから、つい言いたくなっちゃったんだぞ」

 その時、茉凜が楽しげに反応した。

「ふふふ、サランよ。そのような不埒な真似はこのわたしが許さぬ。返り討ちにして刀の錆にしてくれよう」

 彼女の冗談めいた言葉には、明らかな対抗心が込められていて、まるで二人の間に火花が散るような光景が浮かんだ。茉凜の楽しそうな口調と、その挑戦的な発言が、場の雰囲気を一層盛り上げていた。

 明はその反応に目を輝かせ、「いいね、その意気込みだ!でも、気をつけてね。あたしは本気でいくから!」と挑戦的に言った。

 そのやり取りを見ていると、自然と肩の力が抜け、心の奥底に静かな安心感が広がっていった。

 私は深呼吸をしながら、穏やかに微笑んで言った。

「みんな、ありがとう。おかげで心が軽くなった」

 その言葉と共に、私は一人一人の顔を見渡しながら、再び深呼吸をした。彼らの表情には、それぞれの思いが込められていて、その暖かさが私の心に深く響いた。

 そして、力強く言葉を続けた。

「いよいよここが正念場だ。この一ヶ月あまり、本当に大変だった。だからこそ、今までの努力の集大成をここで見せよう。皆の力を合わせれば、きっと成功するはずだ」

 その言葉が空気に溶け込むと、皆の顔が一斉に引き締まり、気持ちが高まっていった。彼らの目には、決意の輝きが宿り、その光が私たちの準備が整ったことを示していた。場の雰囲気が力強く、充実したものに変わり、心地よい緊張感が広がっていった。

 力強い気勢が場を包み込み、私たちは一丸となって舞台へと向かっていった。その背中には、共に歩んできた日々の思いが乗せられていた。目の前に広がる舞台に向けて、私たちは心を一つにし、これからの瞬間を迎える準備を整えた。

        ◇         ◇

 劇の進行とともに、私は次第にメイヴィスというキャラクターそのものに溶け込んでいった。舞台上での私の一挙手一投足が、まるで心の奥深くから響く彼女の声となり、私の体の一部として自然に流れ込んでくるような感覚だった。台詞が口をついて出るたびに、メイヴィスの喜びと切ない思いが私の言葉となり、観客に届けられていくのが、まるで夢の中での出来事のように感じられた。

 茉凜もまた、その変わり身の巧みさと内に秘めた強さを発揮していた。彼女はウォルターという役に完全に入り込み、その誠実さと強さを見事に体現していた。舞台上での私のメイヴィスに引き寄せられるように、彼女もまたウォルターの内面を深く掘り下げていった。二人のキャラクターが互いに影響し合いながら、舞台の上で美しい調和を生み出していくのが、まるで魔法のように感じられた。

 泉での出会いの場面では、私は淡い照明の下で神秘的な巫女の舞を披露し、その美しさが観客の心を釘付けにした。光が優しく私を包み込み、まるで幻想の中にいるかのような気持ちにさせるその瞬間、メイヴィスとウォルターの初対面が、運命の糸に導かれるように描かれていた。

 随行騎士の選定の場面では、緊迫感が漂い、観客の息を呑む瞬間が続いていた。緊張と期待が入り混じる中で、メイヴィスとウォルターの意外な再会が静かに、しかし深く心に刻まれていった。

 躊躇いと戸惑いの旅立ちのシーンでは、二人が背負う運命と、そこから生まれる感情の揺れ動きが鮮やかに描かれていた。初めて外の世界に触れるメイヴィスの無邪気な喜びや楽しい毎日が、舞台上で豊かに表現され、その温かさが観客の心に深く染み込んでいった。

 しかし、物語が進むにつれて、暗転し魔族の襲撃が始まる。劇中の緊張感が高まり、サランとの激しい戦闘シーンが展開される中で、二人に待ち受ける現実と苦悩がキャラクターたちの心に深い傷を残し、その表情や動きに刻まれていった。痛みと葛藤が舞台上にリアルに反映され、観客はその苦しみを共に感じ取っていた。

 そして、劇の終幕に向けて、第五幕が始まった。物語の集大成として、メイヴィスとウォルターの関係の深化と、その結末が織り成す感動的なクライマックスが舞台上に広がっていく。観客の期待と緊張がピークに達し、私たちの演技はその集大成を迎えようとしていた。

 その時、私は完全にメイヴィスその人になっていた。心の奥底で彼女の感情が渦巻き、運命の重みを深く受け入れながら、最後の場所へと進む覚悟を決めていた。

        ◇         ◇

 私たちはついに辿り着いた。長い旅路の果てに、探し求めていたその場所に。

 泉が目の前に広がった瞬間、私の心の中で、長い間張り詰めていた緊張の糸がふっと切れたような感覚が広がった。喜びと安堵が波のように押し寄せてきたけれど、それと同時に、何かを失ったかのような寂しさも心にひっかかった。ここが私たちの旅の終わりを意味しているという事実が、嬉しさとともに切なさをもたらした。

 泉の水面は、まるで穏やかな時間の流れを映し出す鏡のように澄み渡っていた。風がそっと水面を撫でるたびに、小さなさざ波が美しく広がり、その音さえも心を癒す旋律のように感じられた。私はその泉を見つめながら、心が静かに洗われていく感覚を味わっていた。今、この世界を脅かしている魔族の脅威など、遠く彼方の出来事のように感じられた。

 ウォルターが頬に当たる風に目を細めながら、微笑を浮かべた。その顔は、少年のように無邪気で、旅の苦難を全て忘れたかのような安らぎが滲んでいた。彼のその笑顔が、泉の静けさと相まって、私の心をやさしく包み込むようだった。

「やっとたどり着いたな。これが聖なる泉か……本当に、素晴らしいところだ」

 彼の言葉を聞いて、私はこの場所が持つ特別な意味を改めて実感していた。

「ええ、ここが私が探していた場所です。そして、私たちの旅の終着点です」

 言葉を紡ぎながら、胸に湧き上がる感情をどう表現すればよいのか、少し迷った。そこには喜びと安堵、そして終わりに対する名残惜しさが入り混じっていた。私の心の奥にひっかかるものが、言葉にならないほど強く、私の言葉が震えていた。

 ウォルターは泉の輝きを見つめながら、感慨深げに頷いた。その眼差しは、これまでの旅路を振り返るように優しく、しかしどこか切ないものだった。

「そうか……終わってしまうんだな、この旅も……」

 彼の低く抑えた声には、旅の終わりに対する寂しさがはっきりと表れていた。それは私が感じているものとは違う感情であり、その言葉が私の心に深く響いた。

 私はこれまでの旅の思い出を胸に抱きしめながら、精一杯の感謝を込めて、彼に言葉を贈る。

「はい。ここまで来られたのは、すべてあなたのおかげです。ありがとう、ウォルター。あなたの支えがなければ、ここまで辿り着けなかった」

 彼は微笑みを浮かべ、柔らかな眼差しを私に向けた。その笑顔は、私の心を温かく包み込んでくれるものだったが、同時にどこか物足りなさそうな、何かを言いたげな様子も見え隠れしていた。

「なあ、メイヴィス、君にとってこの旅の目的は何だったんだ?本当のことを教えてくれないか?」

 ウォルターの問いかけは、静かな湖面に投げ込まれた石のように、私の心に波紋を広げた。彼の眉はわずかにひそめられ、その瞳には微かな疑念の影が浮かんでいた。

「王様からの命令は、『特別な泉を探し出せ』だった。その場所へと至る道のりで『君を守れ』、と。ただそれだけだった。でも、それに何の意味があるのか、俺にはわからなかった。君にとってこの場所は、何か特別な意味を持つということなのか?」

 その問いに対して、私は一瞬沈黙した。言葉を絞り出すのが難しく、胸の奥底で渦巻く感情が私を縛っていた。

「はい……」

 一言だけを、苦しげに絞り出すように答えた。視線を外すと、泉の静けさが一層際立ち、私の心の中の波紋が静まっていくのを感じた。心の奥深くに秘めていた感情が、胸の内で暴れ回っていた。

 ウォルターは、私の反応に何かを感じ取ったのか、さらに一歩踏み込んできた。彼の顔には、ただの疑問以上のものが映っていた。その瞳が私を見つめ、まるで私の心の奥底に触れようとするように、深く深く見つめてきた。

「それは一体何だ? 教えてはもらえないのか?」

 ウォルターの真剣な瞳が私を捉えて離さない。彼の期待と疑念が入り混じった視線に晒され、私の心は揺れ動いた。でも、私はどうすることもできず、胸が締め付けられるのを感じながら答えた。

「いずれわかります。その時が来れば……」

 私は視線を足元に落とし、声が小さくなるのを感じた。言葉にすることが恐ろしかった。心の奥底で沸き上がる恐れと不安が、私の言葉をもつれていくようだった。

 ウォルターはしばらく私を見つめていたが、やがてため息をつき、肩が少し落ちたように見えた。その姿に、私の心もまた、静かに痛むのを感じた。

「君を最初に見たのは……森の奥の小さな泉でのことだ。君は覚えているかい?」

 ウォルターの問いかけに、私はその時の情景が鮮明に蘇ってくるのを感じた。静寂な森の奥にひっそりと佇む泉、その周囲を包むように揺れる薄青い光。それは現実離れした幻想のようでありながら、確かに私の中に刻まれた記憶の一部だった。

「そうですね。でも、その時の私自身は王宮の奥で、夢の中にいましたから」

 私はそう答えながら、当時の不思議な感覚を思い返した。あの時の自分はまるで異世界に迷い込んだかのようで、すべてが曖昧で遠い記憶の中に溶け込んでいくようだった。

「夢?」

 ウォルターの声には驚きと好奇心が混ざっていた。彼の反応を見て、私は少しだけ安心したような気がした。

「ええ、気付いたらあの場所に立っていて、不思議な光を放っていた泉に吸い寄せられるままに足を踏み入れようとしたら、なぜか水面の上を滑るように歩いていて、ああ、これは夢なんだとわかりました」

 私は自分の体験を言葉にしながら、心の奥底で響く違和感を感じていた。夢と現実が交錯するあの瞬間、私の心はどこかに迷い込んでしまったように感じていた。

「じゃあ俺が見ていたのは?」

 ウォルターが身を乗り出して問い詰めてきた。その眼差しの強さに、私は一瞬ためらったが、目を伏せることで彼の追求を避けた。

「私の幻みたいなものでしょうね」

 私の言葉には、どこか儚さが含まれていた。幻のような、夢のようなその体験が、現実にどれほど意味を持つのか、私自身にもわからないまま、ただ心の奥で静かに響き続けていた。

「そんなばかな、俺はたしかに君を見た。そこで舞っている姿も……。それが君の夢だったというのか?」

 ウォルターの声には困惑が混ざっていたが、私はその疑問に答えるために過去の記憶を辿った。あの泉の神秘的な輝きと、私の内面で響く不思議な感覚が、彼の言葉と重なっていくようだった。

「よくはわかりません。あなたがその場所に居たのは本当でしょう。おそらくは、私自身の魂みたいなものが、あの泉に引き寄せられていたのだと思います」

「本体ではない、魂……」

 ウォルターの声には一抹の驚きが感じられた。その反応に、私は小さく息を吐いた。自分の魂があの場所に引き寄せられ、そこで舞いを始めたことを思い返しながら、それがどうしてこんなにも自然だったのか、私自身も理解に苦しんでいた。

「ええ、そして私はそこで舞いを始めた……誰に習ったわけでもないのに、身体が自然に動いて、まるで生まれる前からそれを知っていて、そうすることが決められていたように」

 それは、巫女として受け継がれた血の中に組み込まれた何かだったのだと、今になってようやく理解できた。あの小さな泉は、私の魂を呼び寄せ、舞いを通じて聖なる泉の場所を伝えたのだ。

「あの舞いを見ていて、心から美しいと思った。戦うことしか知らない俺でも、それがわかったんだ。それが何か特別なものに感じられた」

 その言葉を聞いた瞬間、私の心がぎゅっと縮むのを感じた。ウォルターが私の舞いに対してどのような感情を抱いたのか、その感情が彼にとって何を意味するのか、私は少し怖かった。彼の思いが私にどれほど影響を及ぼすのか、心の奥で恐れと期待が交錯していた。

「そうだったんですか……。恥ずかしいな、隠れて覗きだなんて」

 本当は彼にそんな意図がないことは分かっていた。それでも、私はわざと意地悪な物言いをして、彼の反応を見たくなった。自分の心を軽くしようとする、ほんの小さな悪戯だった。

 ウォルターはその言葉に急に目を見開き、慌てふためいて答えた。

「お、おい。俺はそういうつもりであそこにいたわけじゃないからな」

 ウォルターの焦った声と、突然赤くなった顔を見て、私はどうしても笑いを堪えることができなかった。彼の素直な反応が、私の心をほんのりと温かくした。

「ふふふ、冗談です。わかっていますよ」

「まったくもう、からかうんじゃない」

 彼の顔が真っ赤になっている様子がとても可愛らしくて、私はその姿に心が和んだ。普段の彼が持つ硬い印象とは裏腹に、こんなに愛らしい一面を見せてくれるのが嬉しく、私の笑顔は自然と広がった。

「ごめんなさい」

 謝りながらも、私の笑みは止まらなかった。ウォルターが咳払いをして、改めて真剣な表情に戻ろうとする姿を見て、その姿がさらにおかしくて、私はほんの少しだけ再び笑ってしまった。

「だが……」

 彼は気を取り直して、私に尋ねた。焦りを抑えつつも、その眼差しには深い探求心が宿っていた。

「あの舞は単なる美しさだけじゃなかった。何か儚げで、とても寂しそうで、悲しいものに感じられた気がするんだ。この女の子はどんなことを考えてあの舞を表現しているのだろうって、気になった。君からの依頼を受けたのも、その理由が知りたかったからだ」

 ウォルターの言葉は私の胸に深く響いた。彼が私の舞を見て、その奥に潜む寂しさや悲しみまで感じ取っていたとは、思いもよらなかった。私の心の奥底に眠っていた感情が、彼の鋭い感受性によって掘り起こされるようで、私は思わず息を呑んだ。

 あれは、私が閉じた世界の中で生きてきた証であり、代々の巫女たちが抱えてきた悲しい運命そのものだった。その舞には、私が抱えていた孤独や哀しみが滲み出ており、何度も繰り返される運命の輪廻を象徴するものだった。

 そして、その舞にはもう一つの意味が隠されている。私がそれを踊ることによって、聖なる泉への道が開かれ、私の使命が果たされるのだと感じていた。

「そうだったんですか……。もしかすると、あなたも泉に呼ばれたのかもしれないですね」

「だといいな。なにせ君と出会うことができたんだから……。その泉とやらに礼を言いたいくらいさ」

 ウォルターが微笑むと、その瞬間、私の心はふわりと包み込まれる感覚に満たされた。彼と出会えたことが、私にとっても特別な意味を持っていることを改めて感じた。

「そうですね……。私があなたを随行者に選んだのも、そんな理由だったのだと思います。あの時、私を必死に護ってくれた人がどんな方なのか、単純な好奇心から始まったのです」

「ははは」

 私は真剣な気持ちで言ったつもりだったが、彼が突然笑い出したので、少しだけむっとしてしまった。彼の笑顔は、私にはちょっと不意打ちだったから。

「なんで笑うんですか?」

「いや、すまない。人の縁って、不思議なもんだなって、思ったんだ。俺は君と出会えて良かったよ」

 その言葉に、私は心がぎゅっと締め付けられるような感覚を覚えた。彼にとっても、私との出会いが意味あるものであったことが嬉しくもあり、同時に切なさが胸に込み上げてきた。自分が彼を選んだことが、彼にとっても良い選択であったと信じたい反面、それが今の私にとってどれほど悲しくて苦しいものとなっているかを思うと、言葉が詰まってしまった。

 それでも、私は心の奥に秘めた思いを素直に伝えなければならないと感じていた。胸の奥から溢れる感謝の気持ちが、言葉と共に私の心を震わせた。

「私も、ですよ……。あなたと出会えて、本当によかったと思っています」

 その瞬間、ウォルターは静かに頷き、微笑みを浮かべたけれど、その微笑みには何か言いにくいことを抱えているような、複雑な感情が滲んでいた。

 私の言葉が彼の心に届いたのかどうか、確かめることができないまま、その微笑みに少しだけ安堵しながら、私の胸は切ないほどに温かかった。

「そうか……」

 彼の声には、ほんの少しの躊躇いが込められていた。それでも、彼はその躊躇いを振り払うように、問いかけた。

「それで……君はこの泉で、またあの舞をするのかい?」

 私の心の中には、複雑な感情が渦巻いていた。その問いに対して、私は少し自嘲気味に、そしてどこか寂しげに答えた。

「……はい、そんなところです」

 言葉が口から漏れるたびに、私の胸の奥に潜む決意と虚無感が交錯していた。ウォルターの目には、私がどんな答えを返すのか、深い関心と少しの不安が込められているようだった。

「じゃあ、それが済んだら、君はどうするんだ……?」

 その問いに、私は苦笑を浮かべながら答えた。

「そこで私はお役御免です。この緑色の髪はあの国では不吉なものとして忌み嫌われていますし、帰るところなんてありません」

 その髪色が示すように、王室にとって私はただの使い捨ての道具であり、役目を終えれば消えていく存在だった。帰るべき場所などなく、ただその目的のために存在することが許されていたに過ぎないのだ。その事実を思い出すたびに、私の心は切なく、虚しい感情で満たされていった。

 ウォルターが黙り込んでからの長い沈黙が、私の心をさらにざわつかせた。彼の沈黙が私に不安を与えるのは、彼の心が何か深いところで揺れているのだと感じるからかもしれない。その思いが、私の胸に小さな不安の種を蒔いた。

 そして、次に彼が口にした言葉は、私の心に冷たい鋭さで突き刺さった。

「そうか……。なら、一緒に旅を続けてみないか?」

 そこには普段の彼の落ち着いた調子とは違い、明らかな焦りや躊躇が感じられた。

 私にとってはその提案があまりにも唐突で、頭は一瞬で混乱に陥った。驚きと戸惑いで、私はただ口を開けて言葉を発することしかできなかった。

「え……?」

 その短い返事が、私の心を乱す波紋を広げた。彼の言葉が私の思考を掻き乱し、何をどう考えればよいのかがわからなくなってしまった。

 私の胸は高鳴り、全身が熱くなっていくのを感じた。ウォルターの言葉が、私の心に新たな希望の灯をともすと同時に、未知の未来への期待を抱かせた。

「旅を続けて、もっといろんなところを見て回って、もっと楽しいことを見つけよう。きっと面白いぞ?」

 その言葉が私の心に響き、ウォルターと共に新しい旅に出ることができたら、どれほど素晴らしいだろうと、心が浮かれるのを抑えきれなかった。

「それもいいですね……。できたら、そうしたいです」

 その言葉は、私が密かに抱いていた願いを象徴していた。彼との未来を夢見ていたその瞬間、まるで奇跡のように希望が溢れ、心が満たされるのを感じた。

 しかし、その希望が現実になる可能性については、心の奥で冷静な自分が否定せざるを得なかった。現実の厳しさが、私の希望を押し潰し、どんなに願ってもその未来が実現することはないのだという痛切な現実を、私は痛感していた。心の中で揺れる希望と現実の狭間で、私の思考は迷子になっていた。

 だって私は……

 その言葉が心の奥底から静かに湧き上がり、冷たい現実を突きつけてくる。現実が私の心を締め付け、未来を描くことの空しさを感じさせる。心の中で希望と現実の狭間で揺れる感情が、思考を複雑にし、胸の奥に重くのしかかっていた。

 ウォルターは私の答えに反応し、静かに言った。「じゃあ、さっさと終わらせようじゃないか」

その言葉が、さらに私の心に重くのしかかり、私の中で何かが葛藤しているのを感じた。終わりが近づくことが、私の心の奥底にある恐怖や不安を呼び起こす。私たちの旅が終わってしまうことが、感情を大きく揺さぶっていた。

「は、はい……。その前に、ウォルター?」

 私は言いたくなってしまう気持ちが湧き上がり、苦しくてたまらなかった。ウォルターが怪訝そうな顔で私を見つめていた。

「なんだ、メイヴィス?」

 その問いに、私は心の中で渦巻く感情を言葉にするのが辛いと感じた。終わりたくない、という気持ちが胸の奥で膨らみ、それを抑えきれない自分がいる。彼に伝えなければならない思いが、もどかしくて辛い。心はこの瞬間だけは続けていたいと願っていた。

「わたしは……まだ……」

 言葉が途切れ、心の奥底から湧き上がる感情が口をついて出る。終わりたくないという気持ちが、私の心を締め付け、ウォルターにその真意を伝えたいと切望していた。

 でも、私はその思いをぐっと堪えた。心の奥底で渦巻く現実の厳しさと希望の光の間で揺れる感情を、必死に押さえ込んでいた。涙が滲むのを必死にこらえながら、表情には決してその辛さを見せないように努めた。

「……ごめんなさい。なんでもないです」

 その言葉が、私の口から出ると同時に、胸の奥の痛みが少し和らぐような気がした。ウォルターが真剣な眼差しで私を見つめる中で、私は自分の気持ちを抑え込みながらも、無理に作り笑顔を浮かべるしかなかった。

 彼の真剣な表情が、私の心の奥底にある葛藤を照らし出す。何かを言おうとしても、言葉が喉に詰まってしまう。ウォルターに対する感謝と別れの痛みが混じり合い、どちらに向かうべきか迷いながらも、今はこの瞬間を大切にしたいと思う。

「本当に、なんでもないです」

 その言葉に込めたのは、彼への感謝の気持ちと、これ以上自分の弱さを見せたくないという強い意志だった。どんなに辛くても、彼の前では明るく、前向きな姿を見せ続けたいと願っていた。心の奥でひっそりと鳴り響く痛みを、彼に感じさせるわけにはいかない。

 ウォルターが何かを言おうとする前に、私は深呼吸してから、作り笑顔をもう一度浮かべた。
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登場人物紹介

ミツル・グロンダイルのキャラクター設定

基本情報年齢: 12歳(外見年齢)


外見: この大陸では珍しい黒髪と薄緑の透き通った瞳。美しい容貌だが、体型は少し少年のようで、まな板の寸胴であることに敏感。自称年齢: 21歳(前世の記憶を持つため)


性格: 冷淡に見えながらも実は直情的で、一人でいることを好む。時折無邪気な一面を見せることがある。前世の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動き、冷静な大人の一面と子供っぽさが共存する複雑なキャラクター。


好物

食事に関しては美味しいものを少しだけなタイプ。剣の中の茉凜がアルコール依存になってしまったため。最近はお酒も嗜む。


社会的関係: 引っ込み思案で人付き合いが苦手なため、孤独を好む。しかし、孤独を埋めるために時折無邪気な一面を見せる。自分の力や能力に対する内なる葛藤と向き合いながら、過去の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動く。


ミツル・グロンダイルの物語における役割

憧れの存在: ユベル・グロンダイル(父)の影響を強く受けており、彼の戦闘スタイルや技術に憧れを抱く。父の遺志を継いで魔獣を狩る役割を担う。

遺産と使命: 父が遺した白きマウザーグレイルを持ち、彼の意志を継ぐ重要な役割を果たしている。彼女の能力と背景は、物語の重要な要素となっている。

謎と葛藤: 彼女の能力と前世の記憶には深い謎があり、物語の進行とともにその全容が明かされる可能性がある。彼女の内面的な葛藤や成長は、物語の核心に深く関わっている。


前世の名前: 柚羽 美鶴(ゆずは みつる)

年齢: 不明(死後、弟の弓鶴に憑依しているため、年齢としては弓鶴の年齢に準じる)

性別: 女性(現在は弟の弓鶴に憑依中)

出身地:九州地方某県の山中の柚羽家(深淵の三家の一つ、始まりの回廊の守護者)

職業: 柚羽家の後継者で深淵の始まりの回廊の巫女


 美鶴は深淵の三家の一つである柚羽家の長女であり、始まりの回廊の守護者。柚羽家襲撃事件で両親を失った後、叔父の虎洞寺氏に保護された。その後、両親の死の真相を知り、自ら人身御供になる覚悟を決め、柚羽家の後継者となった。彼女は密かに深淵の根源の再生を図り、解呪に臨んだが、その試みは失敗し、死亡した。


その後

 美鶴はデルワーズの画策により、弟の弓鶴と意識と記憶の全情報を交換させることで、彼に憑依する形で生き延びる。弟を取り戻すために再び解呪に進もうとした際、茉凜と出会う。茉凜が持つ「黒」の力の安全装置としての役割によって、二人は運命共同体となることが決まる。


 自らが女性であることに対する戸惑いと、茉凜に対する淡い感情を抱くようになり、自分が本当は弟ではないことや、茉凜が見ているのは弟であることに苦悩する。


 美鶴は両親の死の真相を知った後、自らが柚羽家の後継者として深淵の根源の再生を図ろうとしたが、その試みが失敗したことに対する責任感を抱えている。


 茉凜の猛烈なアタックに対して、次第に閉じていた心を開き始めると共に、彼女に対して淡い心を抱く。しかし、自分が本来女性であることや、それを知られることを怖れて受け入れることに苦しんでいる。


 美鶴は茉凜と共に深淵の根源の解呪に挑む中で、茉凜の存在が自らにとってどれほど重要であるかを認識し始める。しかし、彼女は自分の感情と状況に苦悩し、特に自分が女性として抱く感情や、茉凜が見ているのが自分ではなく弟であることに対して深い悩みを抱えている。


深淵の黒鶴

 精霊子に対する感受性が極めて高く、世界に漂うすべての精霊子を集積できる。彼女の前世の名前(美鶴)と組み合わせて【黒鶴】と呼ばれる。限定された空間(場裏)を形成し、その中でイメージ通りの現象を具現化。四大元素すべてを制御可能で、並列起動による複合行使も可能。背中に現れる翼は物質的ではなく、彼女の願望を投影したもの。


場裏

 限定された空間を形成し、その中で事象を操作。色で呼称される流儀に基づき、たとえば赤であれば熱の操作に関わり、イメージのままに具現化できる。詠唱や魔道具を必要としない強力な魔術として認識されている。戦闘と


能力の影響

 ミツルの戦闘スタイルは、前世の影響を色濃く受け継いでおり、流動的で柔軟な戦術が特徴。彼女の能力は瞬時に強力な現象を引き起こすことができ、そのため精神的な負荷が非常に大きい。精神崩壊や自我喪失のリスクが伴う。


精神的負荷

 精霊子の収集と能力の使用により、大脳辺縁系に過大な負荷がかかり、精神的な負担が大きい。特に精霊子への感受性が高い彼女は、負荷に耐えきれず暴走する危険がある。

ヴィル・ブルフォード

 ミツルの前にふらりと現れた、ぼさぼさ頭の無精髭の中年剣士。『黒髪のグロンダイル』の噂を聞きつけて訪れたという、彼の真意と思惑は?

 自らを『放浪のしがない剣士』と言う割に、その剣技は一流で、歴戦の強者。『雷光』とあだ名されると対魔獣戦のエキスパートで、その戦いぶりはミツルも舌を巻く。


年齢 48歳

身長 190センチ近い

体格 大柄で強靭

出身地 不明

職業  剣士、冒険者、元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長

髪: ぼさぼさの金髪。長さは無造作に伸びており、戦いの中で乱れたまま放置されている。

顔 無精ひげが顔全体に生えており、荒々しさと共に風格を漂わせている。

武器 中央に深い溝が彫られたブロードソード。鍛造で作られており、適度な粘りを持ち、滅多に折れない。


剣術スタイル

流派 雷光(らいこう)

特徴 巨体とその質量を生かした高速ダッシュ


戦闘スタイル

高速ダッシュ 雷のようなスピードで踏み込み、敵の懐に入り込む

敵の死角利用 相手の身体を死角として利用し、瞬時に繰り出される高速の斬撃で敵を仕留める

左手の傷 突きを繰り出す際に意図的に剣の先に左手を添え、敵の注意を引き付ける。実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、非常に巧妙。猪突猛進型でありながらも、臨機応変に対応できる柔軟さを持つ。これは、変幻自在で『型』のないユベルと毎日修練を積み重ねた結果(苦肉の策)による。


戦闘技術

片手剣術 基本的には片手でブロードソードを操るが、必要に応じて両刀も使うことができる。戦況に応じて剣の使い方を変え、迅速かつ的確に対応。


特殊技

雷光突き 瞬時に高速で踏み込み、突きを繰り出す技

閃光斬り 一瞬の隙を突き、相手の死角から高速で斬撃を繰り出す技


特徴と戦術

巨体と速度を生かして、魔獣の懐に入り込み、致命的な攻撃を繰り出す。視線誘導の技術で、敵の視線を引き付けてから攻撃する。


心理と性格

戦場での冷静な判断力と卓越した技術で、数々の戦場で名を馳せる。敵の動きを見極め、最適な攻撃や防御を選択する。どんな状況でも冷静に対応し、自信を持って戦う。猪突猛進型でありながら、変幻自在の戦術を使いこなす柔軟さを持つ。


元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長を務めた経験を持つ。騎士団時代の訓練と経験が、彼の戦術的な判断力と剣術の技術に大いに寄与している。特に、ユベルとの修練で得た経験が、彼の変幻自在な戦術に大きな影響を与えている。


その戦闘スタイル

一九〇センチ近い大柄な体躯を持ちながらも、その強靭な体に似合わぬほどの軽快さを誇る剣士。彼の手に握られているのは、ロングソードよりも短いブロードソードに近いもので、中央には深い溝が彫られている。この剣は鍛造で、適度な粘りを持ち、使い手によっては滅多に折れることがない。


ヴィルの剣術のスタイルは「雷光」と呼ばれ、彼の巨体とその質量を生かした高速ダッシュが特徴。彼は特に大きな魔獣を相手にするのが得意で、雷のようなスピードで踏み込むと、敵の懐に入り込み、相手の身体自体を死角として利用する。瞬時に繰り出される高速の斬撃で、敵を一気に仕留める。


特筆すべきは、彼の左手に傷が絶えないこと。これは、突きを繰り出す際に意図的に剣の先に手を添えて、その手に注意を引き付けるためだ。敵がその手に視線を奪われている間に、実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、彼の戦術は非常に巧妙。


ヴィルの剣は基本的に片手で操られることが多いが、必要に応じて双剣で戦うこともできる。その柔軟な使い方と、雷光のような素早さを駆使して、彼は戦場でその名を轟かせた。

茉凜(マリン)のキャラクター設定


基本情報年齢: 17歳

身長: 173センチ

プロポーション:高跳びの選手かファッションモデルのようなスラリとしたかっこいいスタイル。ただし本人は自覚なしで自信がない。 


外見: ミルクティーブラウンの髪、大きな瞳、お日様のような笑顔。純粋で優しい少女の姿が特徴的。


性格: 天真爛漫でポジティブ。どんな困難な状況でも明るさを失わず、死の淵の絶対的不利な状況でも輝く。特に追い込まれるとスイッチが切り替わり、予知視界を用いる能力が発揮される。


背景前世: 元々は私たちの世界に住んでいた人物。異世界に突然放り込まれ、さらに剣の中に転生させられるという過酷な運命を辿る。


役割: ミツルの相棒であり、恋人(?)。彼女の無条件の愛情と楽観的な性格がミツルの心の支えとなっている。過去のトラウマ: 落雷事故によるトラウマがあるが、それを嘆くことなく明るさを保ち続ける。ミツルにとっては大きな支え。


能力と役割能力: マウザーグレイル経由の予知視界。死の淵での絶対的不利な状況でも特に有効で、剣の中にあるこの能力が最大の武器である。


役割: ミツルの『深淵の黒鶴』を制御するための安全装置(セーフティ)として機能。暴走を防ぐ唯一の手段として、ミツルとの接触と精神的な感応が必要。自身の全てを捧げる覚悟を持ち、ミツルを守ることを使命としている。


心情と内面愛情: ミツルに対して無条件の愛情を注いでおり、彼女の存在はミツルにとって欠かせない心の拠り所となっている。愛情が恋であることに気づきながらも、その感情を告白することはできない。


支え: ミツルの冷たい態度や無口さの裏に隠された繊細な心を理解し、彼の孤独や苦しみを誰よりも感じ取っている。彼の心の支えとなることを自分の使命と感じ、彼を守るために自分の全てを捧げる覚悟を持っている。


内面の葛藤: 弓鶴(ミツル)が自分にとって特別でなくなるのではないかという不安を抱えながらも、彼の幸せを最優先に考え、自分の感情を抑え込んでいる。仲直りを図る際には自分を押し殺して彼らの関係を修復しようとするなど、内面的には複雑な感情が渦巻いている。

白きマウザーグレイル

基本情報正式名称: 精霊器接続式対魔族兵装 MW-CSV-DD MAUSER-GRELL(マウザーグレイル)

形状: 純白のロングソード

特徴: 刃に相当する部分がなく、実質的には何物も斬れない

構造と材質材質: 不明。構成素材については詳細が不明だが、非常に高い堅牢さを誇る。

耐久性: どんな魔獣の攻撃にもヒビ一つ入らないほどの堅牢さを持つ。

重量: 見た目よりも軽量で、非力なミツルでも自在に扱える。

機能と特性魔導兵装: 剣の形をとった魔導兵装であり、実際には物理的に斬ることはできない。

潜在能力: 現在のところ、ミツルもその実体と潜在能力については把握していない。

補助機能: ミツルの持つスキル「真凜」が安全装置として補助を行っている。

戦闘における役割安全装置: ミツルが持つ「深淵の黒鶴」の能力を制御するための安全装置として機能する。マウザーグレイルが実際の戦闘では使われないが、その存在がミツルの能力の安定に寄与している。

象徴的な意味: 剣そのものは物理的な攻撃力を持たないが、深い意味や力を秘めている可能性がある。特に、ミツルの精神的、象徴的な支えとしての役割を果たしている。

謎と疑問実体の不明: 現状、剣の具体的な機能やその実体についてはミツル自身も把握していない。剣の持つ潜在的な力や目的については謎に包まれている。発見される

可能性: 今後のストーリー展開で、その真の力や役割が明らかになる可能性がある。

ユベル・グロンダイル

 ミツルの父で、『閃光』の異名を持つ変幻自在の剣術を操る天才。すでに故人である。


ユベル・グロンダイルのキャラクター概要

年齢と外見:

年齢:50代外見:かつて金髪だったが、現在は黒く染めている。無精髭を蓄え、スリムで筋肉質な体型。優雅な立ち姿と流れるような戦闘動作が特徴。


役割と経歴:

元リーディス王国銀翼騎士団右翼リーダーであり、対魔獣戦のエキスパート。リーディス王国の銀翼騎士団に所属し、多くの戦場を経験。特に魔獣戦においてその名を馳せた。


基本戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の極みであり、その動きは流動的でまるで水のように変幻自在。力強さでは他の剣士に劣ることもあるが、素早さと身軽さで魔獣を屠る。ステップワークや変則的な体術を駆使し、敵の動きを予測させない巧妙な戦術を展開。回転しながらの斬撃や舞うような動きで敵の意識を散らし、戦局を有利に進める。


家族との関係:

妻:メイレア(元リーディス王国の第三王女)。非常に深い愛情を持ち、二人の関係はミツルにとって時折恥ずかしくなるほどの愛情表現がなされていた。娘:ミツルにとってユベルは憧れの対象であり、彼の戦闘スタイルや技術に強く影響を受けている。

最後の旅と戦い:

妻メイレアの行方不明後、ユベルは娘ミツルを連れて探索の旅に出る。愛する妻を取り戻すため、家族の絆を守るための決意を持っていた。未知の魔獣との戦いで命を落とし、その犠牲によってミツルは生き延びることができた。

白きマウザーグレイル:

ユベルが妻との絆として持っていた白きマウザーグレイルは、ミツルに託された。この剣はユベルの思いと愛情を象徴し、ミツルにとっては父の遺志を継ぐ重要なアイテム。


お尋ね者:

尊敬を集める存在だったが、妻を誘拐した罪が科せられ、お尋ね者として追われていた。ユベル・グロンダイルの戦闘スタイル


「柔」の戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の戦術を体現し、流動的で変幻自在な動きが特徴。彼の動きは舞踏家のように優雅でありながら、非常に戦術的で緻密。


ステップワークと回転体術:

軽やかなステップワークで敵の攻撃を避け、回転しながらの斬撃で敵を翻弄。体操選手やフィギュアスケーターを彷彿とさせる華麗な動きが特徴。


対魔獣戦の特化:

魔獣の懐に自在に出入りし、相手の身体を盾として利用することで最短距離からの攻撃を実現。風のように迅速で、敵の反応を許さない。

彼の戦闘スタイルを際立たせている。

前世での二人

 それは第二章で語られる。

虎洞寺健

美鶴と弓鶴の叔父で、保護者であり協力者。

能力が実用に耐えない血族が所属する郭外のリーダーで、自身は多数の企業を成功に導いた実業家で資産家。その貢献によって上層部にも大きな発言力を持ち、水面下で二人の活動をサポートする。彼の目的は深淵の呪いからの解放と深淵の解体である。

佐藤さん

 柚羽家のお手伝いさんで、美鶴の理解者。昔からの柚羽家のお手伝いさんで、その家事能力は超人。茉凜の料理の師匠。

真坂明

 15歳の少女で、身長は152センチメートル。黒のショートカットが特徴的で、衣装は、黒のクロップトップと高腰のパンツ、袖にディテールが施されたオープンジャケットで、全体的にクールでスタイリッシュな印象。均整の取れたスタイルも、洗練された雰囲気に一役買っている。

性格は情熱的で、自分が思ったことをはっきりと口にするタイプ。弓鶴の元許嫁であり、真坂家の次期後継者としての重責を担っている。また、「深淵の赤の流儀」の高度な術者でもあり、その実力は並外れている。彼女の存在感は、その内に秘めた強い意志と、家の名に恥じない実力から来ている。

明は破談後も弓鶴を想い続けており、それが彼女の能力の原動力になっている。自身が家の後継者となり、弓鶴を婿として迎えようと決意した結果、兄二人を殺害してしまう。

柚羽 美鶴

 ミツルの前世で転生時二十歳。その過去はダイジェストとして第二章で語られる。ミツルの内向的なところは彼女の成分。

 前世では茉凜に対して次第に恋心を抱いていくが、さまざまな問題が障害となって、素直に気持ちを伝えられずにいた。

 彼女のバルファへの転生がグロンダイル家にもたらした影響が、ミツルが戦い旅する理由。

鳴海沢洸人

深淵の血族、上帳を構成する三家の一つ、鳴海沢の長子。流儀青の強力な使い手。弓鶴の確保のために遣わされるが敗退し、その後弓鶴と茉凜の監視役として転校してくる。

数年前に暗殺に失敗し、その後始末として対象を家族諸共惨殺したことがきっかけで、殺せない欠陥品になってしまった。強力な血を残すために家に留め置かれ、鬱々とした日々を送っていた彼を変えたのは、深淵の始まりの回廊の巫女からの言葉だった。 

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