第39話 キャンプに行こう

文字数 5,606文字

 真凜のあの笑顔を、もっと見たいって願う気持ちが、私の胸の中で静かに、しかし確実に育っている。その願いが、私の心の隅に閉じ込められたかすかな想いと重なり合って、日々を彩っている。

 その願いを実現するためには、抱いてしまった想いを胸の奥に鍵をかけてしまうしかない。それが私に与えられた罰のように感じられて、その選択が私をじわじわと蝕んでいるのを実感する。心の奥底で温めるその想いが、甘い痛みを伴って私の内部で膨らみ、私を縛りつけていく。

 本当の事を何も言えず、ただ黙って真凜の側にいることを選んだのは、私が許された最善の道だと信じていたから。それでも真凜の温かな手が私の手に触れるたびに、私の決意は揺らいでしまう。

 彼女の温もりにもっと強く触れたいという、身勝手な願いが心の中に浮かび上がる。それは私の内なる葛藤を、ますます複雑にし、私の感情を押し込めることがどれほど難しいかを教えてくれる。

 いつか、真凜の前でこの感情が溢れてしまうのではないかという恐怖と不安が、私を包み込んでいる。私の心はその不安に圧倒され、どこかでこの感情をどうにかしようと必死に足掻いている。だから、今はこのままでいいって、自分に言い聞かせるしかない。

 この夢が覚めるその日まで、私は真凜の側にい続けよう。そして、消えてしまう前に、せめて彼女が幸せでいられるよう、心から願おう。それが私にできる唯一のことだと、自分に誓いながら。

 あなたの笑顔を守りたいから。それが私に別の生き方を教えてくれたあなたにできること。それだけが私の願い。

 その思いを胸に抱きながら、私は真凜を見つめていた。その瞳の中に映る彼女の姿は、私の中にある感情の全てを、静かに受け止めてくれるかのように感じられる。そして、彼女の幸せを守ることが、私の使命であり、私自身の生きる意味であると、改めて感じた。

       ◇          ◇

 虎洞寺邸は、海沿いの石与瀬の街から山中に分け入った高台にひっそりと位置しており、ほとんど人目に触れない場所に佇んでいた。周囲は厳重な警戒が施されており、ここにいる限りは襲撃の心配もなかった。静寂に包まれたその場所で、私たちは広大な敷地内に設けられた更地で日々の訓練を始めることができた。

 私には、黒鶴の使用練度を高め、呪いを解くという真の目的に向けて自身の器を拡大する必要があった。しかし、訓練の合間に何よりも大切だったのは、真凜と共に過ごす時間だった。その静かな環境の中で、彼女と共にいることで、日々の辛さや緊張感が少し和らぐのを感じていた。

 深淵の闇に向き合うとき、真凜の温かな手の感触が私を支えてくれる。手を重ねるたびに、胸の奥が熱くなるのを感じる。それはもう何度も触れ合っているはずなのに、毎回新たな感動を私にもたらす。どうしようもないほどの胸の高鳴りが、私の心を支配していた。

 真凜もまた、同じように感じているのかもしれない。彼女の微かな息遣いや、私の手のひらに伝わる彼女の温もりから、それが私に伝わってきた。その瞬間、私たちの心がどこかで交わるのを感じていた。

 この時間は私たちにとってただの訓練以上の意味を持っていた。深淵の闇の中でお互いを確認し合い、その絆を深めていくことこそが、私たちの心の繋がりを確かめる大切な瞬間だった。

        ◇          ◇

 夏休みが始まるやいなや、私たちは虎洞寺氏とその屋敷のメンバー全員で、泊まりがけのキャンプに出かけることになった。護衛を担当する天のメンバーも全車両フル装備でついてくることになり、その様子はさながら大名行列のようで、少々大げさに感じられた。

 キャンプの場所は、山深いホテルの周辺に併設されたグランピング施設で、手ぶらでも楽しめるという気楽なスタイルが売りだった。私たちは軽装で、気軽に出かけることができた。

 夏の装いに身を包んだ真凜は、澄み渡る青空の下で、まるで光そのもののように輝いていた。彼女の姿は、まるで陽光を浴びた花のように美しく、伸びやかな肢体が青空に溶け込むようで、そのまばゆい存在感に心を奪われた。

 彼女の一挙一動が、私の心をときめかせる。真凜の笑顔、軽やかな歩き方、そしてその輝きが、私の内なる渇望を呼び覚ます。私はいつも通り無愛想な表情を保ち、「まあ、いいんじゃないか」と何気なく言葉を漏らすだけで、私の心の動揺を隠そうと努めた。だが、真凜はその言葉の裏に潜む私の気持ちを見透かすように、微笑んで「そっか」と頷いた。

 彼女が楽しそうに佐藤さんたちと共に料理の支度を始める様子を横目に、私の心は葛藤していた。一緒に手伝いたいという気持ちと、そこに溶け込みたくてもどうしても引っ込んでしまう自分がいた。心の中でふわりとした温かな気持ちを抱えつつ、私は静かにその場を離れることに決めた。

 グランピングの外に出ると、森の中へと足を運んだ。そこは静寂に包まれた場所で、澄んだ空気が深く肺に染み渡り、木々のざわめきや鳥たちのさえずりが耳に届く。心が次第に落ち着いていくのを感じると同時に、森の深い静けさが私の内なる動揺を少しずつ和らげていくのがわかる。

 この静寂の中で、ふと懐かしい思い出が蘇ってきた。生まれ育った柚羽の家での山奥での生活は、不便なことも多かったけれど、確かに楽しかった。両親や弟と共に過ごした日々の記憶が、今でも心の奥に深く刻まれている。あのころの笑い声や温かな家族の姿が、心の隅で静かに輝いているのを感じた。

 そんなことを思い出していると、突然、真凜の声が森の中に響いた。おそらく、私を心配して探しに来てくれたのだろう。柔らかな声が木々の間を通り抜け、私の名前を呼ぶその響きが、心の奥に微かな刺激をもたらした。

 そこで、私は少し意地悪な気持ちが芽生えた。真凜にちょっとした驚きをプレゼントしてみようと思ったのだ。静かに草むらに身を潜め、息を殺しながら彼女の足音が近づいてくるのを待った。心臓の鼓動が高まり、わずかな動きに敏感になる。

 真凜が私の近くに差し掛かると、私はそっと立ち上がり、草むらからひょっこりと顔を出した。彼女の反応が楽しみで、私の心は少しドキドキしていた。

 「きゃっ!」と驚いた真凜の反応があまりにも可愛らしくて、私は思わず笑ってしまった。その笑い声が森の静けさに溶け込んで、ほんの少しだけその空気を明るくしていた。

 しかし、すぐに彼女も笑いながら、「なによ、子供みたいなことして。やめてよね」と軽く叱ってきた。彼女の声には、優しさと少しの甘さが混じっていた。

 その言葉に、私は一瞬子供の頃に戻ったような感覚を覚えた。まるで過去の記憶の中にタイムスリップして、弟と一緒に笑い合っていたあの頃の無邪気な日々が蘇ったような気がした。

 私たちは、そのまま自然な流れで無邪気に笑い合った。真凜の笑顔は、まるで春の陽射しのように暖かくて、私の心の中にある寂しさや不安をすっかり溶かしてくれた。

 「ごめん、真凜。つい、昔みたいに遊びたくなったんだ」と、私は申し訳なさそうに言いながらも、心の中ではその時間がずっと続けばいいのにと願っていた。

 その後、私たちは森の中を並んで歩き、小さな池のほとりに腰を下ろした。静かな水面が風に揺れ、陽の光が優しく反射している様子に、心が自然と落ち着いていくのを感じた。

 私は、心の奥にしまい込んでいた過去の話を、自然に語り始めた。これまで、彼女には自分の過去についてほとんど語ったことがなかったけれど、今日はなぜか、その話をしてみたいという気持ちになっていた。

 山奥での生活は決して楽ではなかったが、自然の恵みを身近に感じることができた。水の確保や畑作り、そして時には野生動物との共存の問題。様々な苦労もあったけれど、それでも、家族と過ごした日々は温かい思い出として心に残っている。

 真凜は、私の話に真剣に耳を傾け、時には目を輝かせながら頷いてくれた。話し終えると、私は池のほとりに視線を落とし、静かに呟いた。

「何も知らないあの頃に戻れたら、どんなにいいか……」

 その言葉が、私の心に深い感傷を呼び起こした。真凜は心配そうに私を見つめ、「何かあったの?」と優しく尋ねてきた。その問いに、私は少し戸惑いを覚えた。彼女にすべてを話すべきか、それともこのまま黙っているべきか──心の中で迷いが渦巻いていた。

 その迷いは、私の胸を締め付けるような重い感情を呼び起こし、どこから話せば良いのかが分からなくなってしまった。でも、真凜の優しい瞳が私を見つめる中で、少しずつ心が開かれていくのを感じた。彼女には、ただの友人としてではない、もっと深い信頼を置いている自分がいることに気付いていた。

 私は「真凜には言いたくない」と、声を絞り出すように呟いた。彼女の目に一瞬だけ寂しさが浮かび、その表情が私の心に深い波紋を広げた。

 「言いたくないなら、無理に話さなくてもいいよ。でも、できるだけ打ち明けてほしいな。私たちは友達なんだから。それで少しでもあなたが楽になれたらいいと思うんだ」と、真凜は静かに言った。

 彼女の言葉は、まるで心の奥深くに優しく触れるようで、私の胸にじわりと温かさを広げていった。真凜の優しさに触れることで、心の中に渦巻く葛藤が少しずつ和らいでいくのを感じた。しかし、同時に自分の痛みを彼女に分け与えることへの躊躇も、私の心を締めつけていた。

 それでも、私は真凜にできるだけのことを話す決心をした。自分の正体については触れず、両親の死と、その後の姉と弟との別れについてだけを静かに語った。話が進むにつれて、真凜の表情は次第に深刻さを増し、その瞳に浮かぶ涙が私の心に重くのしかかるようだった。

「ひどすぎる……。そんなの、あまりにひどすぎるよ……」

 真凜がつぶやいたその言葉に、私の胸の奥で強い痛みが広がった。彼女の悲しみが私の痛みを映し出し、私がどれだけ彼女に重荷を背負わせてしまったのかを痛感させられた。

 言葉がうまく出てこないまま、真凜がさらに問いかけてきた瞬間、心臓が凍りついた。

「行方不明になったお姉さん、今どうしてるんだろう? どこにいるんだろう?」

 その質問が、私の心の奥底で眠っていた痛みを引きずり出し、心がざわめくのを感じた。予感はしていたものの、その問いに対する答えがどうしても見つからなかった。心の中で葛藤しながら、私はただ首を横に振るしかできなかった。

 「姉は、柚羽美鶴は……おそらくもうこの世にはいないだろう」と、私はか細い声で呟いた。その声はまるで風に消え去るように、儚くも切なかった。

 私は解呪に失敗して命を落とした。今の私は、弟の弓鶴の中に宿る幻影、怨念のような存在に過ぎない。本当なら、彼女にこうして向き合うことなど許されるはずもないのだ。この現実を受け入れることがどれほど辛いか、心の奥底からひしひしと感じていた。

「そう、なんだ……」

 真凜の口元がわずかに震えているのがわかった。私の言葉が、彼女の心にどれほどの影響を与えたのかを考えると、心が苦しくなった。

「ごめんね、悪いこと聞いちゃったね。でも、わたしはあなたがどれほど辛かったか知りたいって思うんだ」と真凜は言った。

 その言葉に応えるように、私は静かに目を閉じた。そして、「ありがとう、真凜。少し楽になった」とだけ静かに結んだ。

 その瞬間、私たちの間に流れる空気が、わずかに変わったように感じられた。実際に静かに水面を見つめる私の心は、ほんの少しだけ軽くなっていた。

 「そろそろ戻ろう。みんなを心配させると悪いから」と、私は強がりながら言った。心の中では、どれだけの罪悪感と後悔が渦巻いているか分からなかったが、それでも彼女を心配させたくはなかったのだ。

 私は手を差し出し、できる限りの勇気を振り絞って彼女に向けた。真凜は私の手をじっと見つめた後、涙を拭き取りながら、柔らかな微笑みを浮かべて静かに私の手を取った。彼女の手の温もりが、私の冷たくなった指先にじんわりと広がり、ほんの少しだけ安堵をもたらしてくれた。

 「うん……戻ろう」と、真凜の声はやわらかく、穏やかで、私への優しい励ましが込められていた。その声が、私の心にほんのりと温かな光を灯し、暗闇の中に一筋の希望を差し込んだ。

 真凜の存在が、私の痛みを少しでも和らげてくれることに感謝しつつ、これからの時間を大切にしようと心に誓った。彼女と共に過ごすこの瞬間が、どれほど私にとっての支えとなるかを実感しながら、私たちはキャンプの場へと向かって歩みを進めていった。

 歩きながら、私の心は痛みと罪悪感で重く押しつぶされていた。深い闇の中で、自分の存在がどれほど虚しいものかを思い知っていた。真凜の前で、少しでも過去の自分を取り戻したい、彼女との温かな時間を心から楽しみたいという気持ちがあった。しかし、そのたびに私は本当の姿を隠さなければならず、心の中で抑え込んでいる苦しみが、私を切り裂いていた。

 真凜と過ごす時間は、まるで夢のようなものであり、現実の冷たい刃に触れることを避ける一瞬の逃避だった。彼女と向き合い、彼女の手のぬくもりを感じるたびに、自分が本当はどれほど脆く、無力であるかを痛感していた。彼女にとって、私はただの幻想であり、過去の影でしかない。それがどれほど辛いことであっても、私はその現実を受け入れなければならなかった。

 真凜が私に寄せる温かな感情が、私の心に一瞬の希望を灯すが、その希望が瞬く間に消え去るのは、私の運命の一部なのだろう。私たちの絆が深まるほど、その間にある深い溝が広がるように感じていた。真凜のために、私はただの幻影であり続けるしかないのだと、心の奥で痛みを抱えながら、静かにその現実と向き合っていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ミツル・グロンダイルのキャラクター設定

基本情報年齢: 12歳(外見年齢)


外見: この大陸では珍しい黒髪と薄緑の透き通った瞳。美しい容貌だが、体型は少し少年のようで、まな板の寸胴であることに敏感。自称年齢: 21歳(前世の記憶を持つため)


性格: 冷淡に見えながらも実は直情的で、一人でいることを好む。時折無邪気な一面を見せることがある。前世の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動き、冷静な大人の一面と子供っぽさが共存する複雑なキャラクター。


好物

食事に関しては美味しいものを少しだけなタイプ。剣の中の茉凜がアルコール依存になってしまったため。最近はお酒も嗜む。


社会的関係: 引っ込み思案で人付き合いが苦手なため、孤独を好む。しかし、孤独を埋めるために時折無邪気な一面を見せる。自分の力や能力に対する内なる葛藤と向き合いながら、過去の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動く。


ミツル・グロンダイルの物語における役割

憧れの存在: ユベル・グロンダイル(父)の影響を強く受けており、彼の戦闘スタイルや技術に憧れを抱く。父の遺志を継いで魔獣を狩る役割を担う。

遺産と使命: 父が遺した白きマウザーグレイルを持ち、彼の意志を継ぐ重要な役割を果たしている。彼女の能力と背景は、物語の重要な要素となっている。

謎と葛藤: 彼女の能力と前世の記憶には深い謎があり、物語の進行とともにその全容が明かされる可能性がある。彼女の内面的な葛藤や成長は、物語の核心に深く関わっている。


前世の名前: 柚羽 美鶴(ゆずは みつる)

年齢: 不明(死後、弟の弓鶴に憑依しているため、年齢としては弓鶴の年齢に準じる)

性別: 女性(現在は弟の弓鶴に憑依中)

出身地:九州地方某県の山中の柚羽家(深淵の三家の一つ、始まりの回廊の守護者)

職業: 柚羽家の後継者で深淵の始まりの回廊の巫女


 美鶴は深淵の三家の一つである柚羽家の長女であり、始まりの回廊の守護者。柚羽家襲撃事件で両親を失った後、叔父の虎洞寺氏に保護された。その後、両親の死の真相を知り、自ら人身御供になる覚悟を決め、柚羽家の後継者となった。彼女は密かに深淵の根源の再生を図り、解呪に臨んだが、その試みは失敗し、死亡した。


その後

 美鶴はデルワーズの画策により、弟の弓鶴と意識と記憶の全情報を交換させることで、彼に憑依する形で生き延びる。弟を取り戻すために再び解呪に進もうとした際、茉凜と出会う。茉凜が持つ「黒」の力の安全装置としての役割によって、二人は運命共同体となることが決まる。


 自らが女性であることに対する戸惑いと、茉凜に対する淡い感情を抱くようになり、自分が本当は弟ではないことや、茉凜が見ているのは弟であることに苦悩する。


 美鶴は両親の死の真相を知った後、自らが柚羽家の後継者として深淵の根源の再生を図ろうとしたが、その試みが失敗したことに対する責任感を抱えている。


 茉凜の猛烈なアタックに対して、次第に閉じていた心を開き始めると共に、彼女に対して淡い心を抱く。しかし、自分が本来女性であることや、それを知られることを怖れて受け入れることに苦しんでいる。


 美鶴は茉凜と共に深淵の根源の解呪に挑む中で、茉凜の存在が自らにとってどれほど重要であるかを認識し始める。しかし、彼女は自分の感情と状況に苦悩し、特に自分が女性として抱く感情や、茉凜が見ているのが自分ではなく弟であることに対して深い悩みを抱えている。


深淵の黒鶴

 精霊子に対する感受性が極めて高く、世界に漂うすべての精霊子を集積できる。彼女の前世の名前(美鶴)と組み合わせて【黒鶴】と呼ばれる。限定された空間(場裏)を形成し、その中でイメージ通りの現象を具現化。四大元素すべてを制御可能で、並列起動による複合行使も可能。背中に現れる翼は物質的ではなく、彼女の願望を投影したもの。


場裏

 限定された空間を形成し、その中で事象を操作。色で呼称される流儀に基づき、たとえば赤であれば熱の操作に関わり、イメージのままに具現化できる。詠唱や魔道具を必要としない強力な魔術として認識されている。戦闘と


能力の影響

 ミツルの戦闘スタイルは、前世の影響を色濃く受け継いでおり、流動的で柔軟な戦術が特徴。彼女の能力は瞬時に強力な現象を引き起こすことができ、そのため精神的な負荷が非常に大きい。精神崩壊や自我喪失のリスクが伴う。


精神的負荷

 精霊子の収集と能力の使用により、大脳辺縁系に過大な負荷がかかり、精神的な負担が大きい。特に精霊子への感受性が高い彼女は、負荷に耐えきれず暴走する危険がある。

ヴィル・ブルフォード

 ミツルの前にふらりと現れた、ぼさぼさ頭の無精髭の中年剣士。『黒髪のグロンダイル』の噂を聞きつけて訪れたという、彼の真意と思惑は?

 自らを『放浪のしがない剣士』と言う割に、その剣技は一流で、歴戦の強者。『雷光』とあだ名されると対魔獣戦のエキスパートで、その戦いぶりはミツルも舌を巻く。


年齢 48歳

身長 190センチ近い

体格 大柄で強靭

出身地 不明

職業  剣士、冒険者、元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長

髪: ぼさぼさの金髪。長さは無造作に伸びており、戦いの中で乱れたまま放置されている。

顔 無精ひげが顔全体に生えており、荒々しさと共に風格を漂わせている。

武器 中央に深い溝が彫られたブロードソード。鍛造で作られており、適度な粘りを持ち、滅多に折れない。


剣術スタイル

流派 雷光(らいこう)

特徴 巨体とその質量を生かした高速ダッシュ


戦闘スタイル

高速ダッシュ 雷のようなスピードで踏み込み、敵の懐に入り込む

敵の死角利用 相手の身体を死角として利用し、瞬時に繰り出される高速の斬撃で敵を仕留める

左手の傷 突きを繰り出す際に意図的に剣の先に左手を添え、敵の注意を引き付ける。実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、非常に巧妙。猪突猛進型でありながらも、臨機応変に対応できる柔軟さを持つ。これは、変幻自在で『型』のないユベルと毎日修練を積み重ねた結果(苦肉の策)による。


戦闘技術

片手剣術 基本的には片手でブロードソードを操るが、必要に応じて両刀も使うことができる。戦況に応じて剣の使い方を変え、迅速かつ的確に対応。


特殊技

雷光突き 瞬時に高速で踏み込み、突きを繰り出す技

閃光斬り 一瞬の隙を突き、相手の死角から高速で斬撃を繰り出す技


特徴と戦術

巨体と速度を生かして、魔獣の懐に入り込み、致命的な攻撃を繰り出す。視線誘導の技術で、敵の視線を引き付けてから攻撃する。


心理と性格

戦場での冷静な判断力と卓越した技術で、数々の戦場で名を馳せる。敵の動きを見極め、最適な攻撃や防御を選択する。どんな状況でも冷静に対応し、自信を持って戦う。猪突猛進型でありながら、変幻自在の戦術を使いこなす柔軟さを持つ。


元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長を務めた経験を持つ。騎士団時代の訓練と経験が、彼の戦術的な判断力と剣術の技術に大いに寄与している。特に、ユベルとの修練で得た経験が、彼の変幻自在な戦術に大きな影響を与えている。


その戦闘スタイル

一九〇センチ近い大柄な体躯を持ちながらも、その強靭な体に似合わぬほどの軽快さを誇る剣士。彼の手に握られているのは、ロングソードよりも短いブロードソードに近いもので、中央には深い溝が彫られている。この剣は鍛造で、適度な粘りを持ち、使い手によっては滅多に折れることがない。


ヴィルの剣術のスタイルは「雷光」と呼ばれ、彼の巨体とその質量を生かした高速ダッシュが特徴。彼は特に大きな魔獣を相手にするのが得意で、雷のようなスピードで踏み込むと、敵の懐に入り込み、相手の身体自体を死角として利用する。瞬時に繰り出される高速の斬撃で、敵を一気に仕留める。


特筆すべきは、彼の左手に傷が絶えないこと。これは、突きを繰り出す際に意図的に剣の先に手を添えて、その手に注意を引き付けるためだ。敵がその手に視線を奪われている間に、実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、彼の戦術は非常に巧妙。


ヴィルの剣は基本的に片手で操られることが多いが、必要に応じて双剣で戦うこともできる。その柔軟な使い方と、雷光のような素早さを駆使して、彼は戦場でその名を轟かせた。

茉凜(マリン)のキャラクター設定


基本情報年齢: 17歳

身長: 173センチ

プロポーション:高跳びの選手かファッションモデルのようなスラリとしたかっこいいスタイル。ただし本人は自覚なしで自信がない。 


外見: ミルクティーブラウンの髪、大きな瞳、お日様のような笑顔。純粋で優しい少女の姿が特徴的。


性格: 天真爛漫でポジティブ。どんな困難な状況でも明るさを失わず、死の淵の絶対的不利な状況でも輝く。特に追い込まれるとスイッチが切り替わり、予知視界を用いる能力が発揮される。


背景前世: 元々は私たちの世界に住んでいた人物。異世界に突然放り込まれ、さらに剣の中に転生させられるという過酷な運命を辿る。


役割: ミツルの相棒であり、恋人(?)。彼女の無条件の愛情と楽観的な性格がミツルの心の支えとなっている。過去のトラウマ: 落雷事故によるトラウマがあるが、それを嘆くことなく明るさを保ち続ける。ミツルにとっては大きな支え。


能力と役割能力: マウザーグレイル経由の予知視界。死の淵での絶対的不利な状況でも特に有効で、剣の中にあるこの能力が最大の武器である。


役割: ミツルの『深淵の黒鶴』を制御するための安全装置(セーフティ)として機能。暴走を防ぐ唯一の手段として、ミツルとの接触と精神的な感応が必要。自身の全てを捧げる覚悟を持ち、ミツルを守ることを使命としている。


心情と内面愛情: ミツルに対して無条件の愛情を注いでおり、彼女の存在はミツルにとって欠かせない心の拠り所となっている。愛情が恋であることに気づきながらも、その感情を告白することはできない。


支え: ミツルの冷たい態度や無口さの裏に隠された繊細な心を理解し、彼の孤独や苦しみを誰よりも感じ取っている。彼の心の支えとなることを自分の使命と感じ、彼を守るために自分の全てを捧げる覚悟を持っている。


内面の葛藤: 弓鶴(ミツル)が自分にとって特別でなくなるのではないかという不安を抱えながらも、彼の幸せを最優先に考え、自分の感情を抑え込んでいる。仲直りを図る際には自分を押し殺して彼らの関係を修復しようとするなど、内面的には複雑な感情が渦巻いている。

白きマウザーグレイル

基本情報正式名称: 精霊器接続式対魔族兵装 MW-CSV-DD MAUSER-GRELL(マウザーグレイル)

形状: 純白のロングソード

特徴: 刃に相当する部分がなく、実質的には何物も斬れない

構造と材質材質: 不明。構成素材については詳細が不明だが、非常に高い堅牢さを誇る。

耐久性: どんな魔獣の攻撃にもヒビ一つ入らないほどの堅牢さを持つ。

重量: 見た目よりも軽量で、非力なミツルでも自在に扱える。

機能と特性魔導兵装: 剣の形をとった魔導兵装であり、実際には物理的に斬ることはできない。

潜在能力: 現在のところ、ミツルもその実体と潜在能力については把握していない。

補助機能: ミツルの持つスキル「真凜」が安全装置として補助を行っている。

戦闘における役割安全装置: ミツルが持つ「深淵の黒鶴」の能力を制御するための安全装置として機能する。マウザーグレイルが実際の戦闘では使われないが、その存在がミツルの能力の安定に寄与している。

象徴的な意味: 剣そのものは物理的な攻撃力を持たないが、深い意味や力を秘めている可能性がある。特に、ミツルの精神的、象徴的な支えとしての役割を果たしている。

謎と疑問実体の不明: 現状、剣の具体的な機能やその実体についてはミツル自身も把握していない。剣の持つ潜在的な力や目的については謎に包まれている。発見される

可能性: 今後のストーリー展開で、その真の力や役割が明らかになる可能性がある。

ユベル・グロンダイル

 ミツルの父で、『閃光』の異名を持つ変幻自在の剣術を操る天才。すでに故人である。


ユベル・グロンダイルのキャラクター概要

年齢と外見:

年齢:50代外見:かつて金髪だったが、現在は黒く染めている。無精髭を蓄え、スリムで筋肉質な体型。優雅な立ち姿と流れるような戦闘動作が特徴。


役割と経歴:

元リーディス王国銀翼騎士団右翼リーダーであり、対魔獣戦のエキスパート。リーディス王国の銀翼騎士団に所属し、多くの戦場を経験。特に魔獣戦においてその名を馳せた。


基本戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の極みであり、その動きは流動的でまるで水のように変幻自在。力強さでは他の剣士に劣ることもあるが、素早さと身軽さで魔獣を屠る。ステップワークや変則的な体術を駆使し、敵の動きを予測させない巧妙な戦術を展開。回転しながらの斬撃や舞うような動きで敵の意識を散らし、戦局を有利に進める。


家族との関係:

妻:メイレア(元リーディス王国の第三王女)。非常に深い愛情を持ち、二人の関係はミツルにとって時折恥ずかしくなるほどの愛情表現がなされていた。娘:ミツルにとってユベルは憧れの対象であり、彼の戦闘スタイルや技術に強く影響を受けている。

最後の旅と戦い:

妻メイレアの行方不明後、ユベルは娘ミツルを連れて探索の旅に出る。愛する妻を取り戻すため、家族の絆を守るための決意を持っていた。未知の魔獣との戦いで命を落とし、その犠牲によってミツルは生き延びることができた。

白きマウザーグレイル:

ユベルが妻との絆として持っていた白きマウザーグレイルは、ミツルに託された。この剣はユベルの思いと愛情を象徴し、ミツルにとっては父の遺志を継ぐ重要なアイテム。


お尋ね者:

尊敬を集める存在だったが、妻を誘拐した罪が科せられ、お尋ね者として追われていた。ユベル・グロンダイルの戦闘スタイル


「柔」の戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の戦術を体現し、流動的で変幻自在な動きが特徴。彼の動きは舞踏家のように優雅でありながら、非常に戦術的で緻密。


ステップワークと回転体術:

軽やかなステップワークで敵の攻撃を避け、回転しながらの斬撃で敵を翻弄。体操選手やフィギュアスケーターを彷彿とさせる華麗な動きが特徴。


対魔獣戦の特化:

魔獣の懐に自在に出入りし、相手の身体を盾として利用することで最短距離からの攻撃を実現。風のように迅速で、敵の反応を許さない。

彼の戦闘スタイルを際立たせている。

前世での二人

 それは第二章で語られる。

虎洞寺健

美鶴と弓鶴の叔父で、保護者であり協力者。

能力が実用に耐えない血族が所属する郭外のリーダーで、自身は多数の企業を成功に導いた実業家で資産家。その貢献によって上層部にも大きな発言力を持ち、水面下で二人の活動をサポートする。彼の目的は深淵の呪いからの解放と深淵の解体である。

佐藤さん

 柚羽家のお手伝いさんで、美鶴の理解者。昔からの柚羽家のお手伝いさんで、その家事能力は超人。茉凜の料理の師匠。

真坂明

 15歳の少女で、身長は152センチメートル。黒のショートカットが特徴的で、衣装は、黒のクロップトップと高腰のパンツ、袖にディテールが施されたオープンジャケットで、全体的にクールでスタイリッシュな印象。均整の取れたスタイルも、洗練された雰囲気に一役買っている。

性格は情熱的で、自分が思ったことをはっきりと口にするタイプ。弓鶴の元許嫁であり、真坂家の次期後継者としての重責を担っている。また、「深淵の赤の流儀」の高度な術者でもあり、その実力は並外れている。彼女の存在感は、その内に秘めた強い意志と、家の名に恥じない実力から来ている。

明は破談後も弓鶴を想い続けており、それが彼女の能力の原動力になっている。自身が家の後継者となり、弓鶴を婿として迎えようと決意した結果、兄二人を殺害してしまう。

柚羽 美鶴

 ミツルの前世で転生時二十歳。その過去はダイジェストとして第二章で語られる。ミツルの内向的なところは彼女の成分。

 前世では茉凜に対して次第に恋心を抱いていくが、さまざまな問題が障害となって、素直に気持ちを伝えられずにいた。

 彼女のバルファへの転生がグロンダイル家にもたらした影響が、ミツルが戦い旅する理由。

鳴海沢洸人

深淵の血族、上帳を構成する三家の一つ、鳴海沢の長子。流儀青の強力な使い手。弓鶴の確保のために遣わされるが敗退し、その後弓鶴と茉凜の監視役として転校してくる。

数年前に暗殺に失敗し、その後始末として対象を家族諸共惨殺したことがきっかけで、殺せない欠陥品になってしまった。強力な血を残すために家に留め置かれ、鬱々とした日々を送っていた彼を変えたのは、深淵の始まりの回廊の巫女からの言葉だった。 

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み