第69話 封じ込めた思い

文字数 4,368文字

 新城医師と藤堂さんが部屋を去った後、私は佐藤さんと共に静かに茉凜の様子を見守っていた。部屋の中には、医師たちの忙しない足音が消えた後の、ほんのりとした静寂が漂っている。茉凜の横たわるベッドの周りに漂う安心感が、私の心にも少しずつ広がっていった。点滴の液体が彼女の身体にしっかりと行き渡っているのだろうか、その血色が徐々に戻り、彼女の呼吸が穏やかになっていくのを見るたびに、心の奥底に潜んでいた不安が少しずつ溶けていくのを感じる。

 茉凜の目元が少しずつ落ち着きを取り戻し、淡いピンク色が頬に戻ってくる様子は、私にとってもひとしおの安堵をもたらしていた。彼女の眉が優しく緩み、時折唇の端がわずかに上がるその表情が、私の胸に静かな希望をもたらす。私はその光景にじっと見入ってしまう。彼女の仕草ひとつひとつが、私の心に深い感動を与える。

 しかし、その背後で私の心は、さまざまな考えが渦巻いていた。茉凜が導き手であるという確信は揺るぎないものとなり、その一方で弓鶴の身体に迫っている限界を思えば、悠長に迷っている時間などない。冷静な判断を下そうと努める一方で、その判断の重さに怖れを抱く私がいる。心の中で葛藤が生まれ、理性と感情がぶつかり合う。

    ◇         ◇

 私は一晩中でも茉凜の傍にいたかった。それは、彼女のためでもあったけれど、何よりも私自身の心を守るためだったかもしれない。

 彼女の穏やかな呼吸を感じ、そのあたたかい存在に寄り添っているだけで、まるで不安や孤独が少しずつ和らいでいく気がした。こんなにも誰かの近くにいたいと強く思うことが、自分にとってどれほど大切で、どれほど切実なことだったのか、私はまだうまく言葉にできなかった。

 でも、佐藤さんがそっと私の肩に手を置き、「少しは身体を休めてください」と優しく諭してきたとき、私の心の中に張り詰めていた緊張がふっと解けた。抵抗しようという気持ちすら起こらず、ただ頷くしかできなかった。彼女の言葉には、母親のような温かさと、私をずっと見守ってくれてきた長い年月の重みがあって、その瞬間、自分の弱さを認めざるを得なかったのだ。

 佐藤さんは、私がまだ幼かった頃から柚羽家で働いていて、ずっと私を見守ってきてくれた人だ。私の成長、私の弱さ、そしてかつて身体に起こった異常さえも知っている、信頼できる大切な存在。そんな彼女が、今もこうして私を気遣い、静かに支えてくれていることが、何よりも心強かった。

 私は自室に戻った。それでも、ベッドに横たわることができなかった。安らかな眠りに身を委ねることは、今の私にはあまりにも遠い世界のようだった。

 机に向かい、引き出しの鍵を外すと、そこには四冊の日記帳が並んでいた。その中で、まだ書きかけの一冊が私を静かに待っていた。ページをめくりながら、胸の奥に澱んでいた感情が押し寄せてくるのを感じた。

 この日記は、私が深淵の巫女となってからの私の証でもあり、私の心の声を静かに刻んでいた。解呪に臨む前に、佐藤さんにお願いして、これらの日記を虎洞寺の叔父様に届けてもらうように頼んだ。あの屋敷が焼かれた時、彼女はなんとかこの三冊を抱えて逃げ延びたと聞いた。

 日記には、私が知り得た深淵の巫女としての情報が綴られていた。それは後世に伝えるべきものであり、私が歩んできた道を誰かに知ってほしいという、小さな願いでもあった。

 弓鶴がいつかこの日記を手に取る時、私という姉が、どんな思いで生きていたのかを少しでも理解してくれるかもしれないという淡い期待を抱きながら、私は日々文字を重ねていた。

 それにもかかわらず、私は弓鶴を遠ざけ、一度たりとも彼と会おうとはしなかった。手紙さえも送らず、ただ彼と距離を置いてしまった。

 弓鶴がそんな私をどう思っていたのかを考えるだけで、胸が痛む。私の背を向けた姉としての姿が、彼にどれほどの寂しさを与えたのか、想像するだけで涙がこぼれそうになる。

 彼の部屋を調べたとき、日記の一つも見つけられなかった。スマホにも過去の記録はなく、叔父様の話によれば、彼は過去のことについて何も語ろうとはしなかったという。私が深淵に囚われ、両親の仇の側で道具に成り果てたことに、彼がどれほど失望したのかを思うと、胸が締め付けられるような寂しさが押し寄せてきた。

 それでも、それでよかったのだと自分に言い聞かせた。

 弓鶴には、私のように何かを背負わされず、ただ普通の男の子として、新しい人生を生きてほしかったから。私の選んだ道が彼にどれほどの痛みをもたらすかを思うと、彼には何も知らずに、幸せな日常を歩んでほしいと願った。

 今更、彼に謝ることなどできるはずもない。私ができることはただ一つ、この身体を早く彼に返すことだ。それ以上の贖いは、もうできないのだ。私の心に残された悔いは、この一つの願いに込められている。それが、私が彼にできる唯一の償いであり、私の心が少しでも軽くなるための唯一の手段なのだ。

 そして、もう一冊。今年になってから書き始めた日記帳があった。茉凜と出会い、その後しばらくしてから、私はそのページに新しい日々を書き綴るようになった。

 茉凜と過ごす日々の中で、私の心には変化が次第に現れていった。最初は彼女に対する驚きと戸惑いでいっぱいだった。それから、感謝と信頼が深まり、時間が経つにつれて、その感情は予想もしない方向に変わり始めた。最初はその感情を無視し、自分の中で消し去ろうとしていたが、次第にそれが避けられない事実であると痛感するようになった。

 茉凜と出会ってから、私の世界は光と色を取り戻し、彼女がいない未来を想像することができなくなっていた。茉凜は私にとってただの友人でも、単なる相棒でもなかった。彼女は私にとってのすべてだった。彼女と過ごす時間が、私の存在の意味を支えていた。

 私の茉凜への思いは、友情を超えたものであり、もしかすると初めからその感情はそれ以上のものであったのかもしれない。

 彼女と過ごす一瞬一瞬が、私にとってかけがえのないものであり、彼女のひまわりのような笑顔、その優しい瞳、時折見せる不安な仕草に、私は胸が締め付けられるような感覚を覚えた。茉凜の存在は、私の心に静かに、そして深く根を張っていった。

 けれど、学園祭が終わったあの日から、私の手は止まったままだった。書きたいことが山ほどあったのに、それを言葉にすることができなかった。心の中で、いろいろな感情がせめぎ合い、整理がつかず、言葉にすることでそれらがすべて壊れてしまうのではないかと恐れた。

 彼女への本当の気持ちを言葉にすることが、あまりにも怖かった。もしそれを言葉にしてしまえば、茉凜との関係が何か変わってしまうのではないかという恐怖があった。その思いと、抑えきれない感情が私を揺さぶり、日記のページにペンを走らせることができなくなっていた。

 私の使命と、私の願い。そして、茉凜への抑えきれない気持ち。それらが胸の中で激しく渦巻き、私はどうしようもなく心が壊れかけていた。

 茉凜の笑顔を思い浮かべるたびに、私はほんの一瞬だけ心の鎖が解ける気がした。彼女と過ごす静かなひととき、手を取り合い、その温もりを感じる瞬間だけが、私の心を支えていた。その優しさに触れるたび、私は本当に弱くなってしまう。こんなにも強く生きなければならないのに、彼女の前ではただの一人の女の子に戻ってしまう。

 とはいえ、今の私の身体は弓鶴という男の子であり、こうして心の中の感情と現実の自分とのギャップに苛まれるのは、本当に愚かな話だと自分でも思う。

 だとしても、茉凜の存在は、私の唯一の救いであり、心の灯火だった。彼女に触れている時だけ、私は使命の重さから解放され、自分自身でいられる気がした。それが罪であるならば、その罪に溺れてしまいたいとさえ思っていた。

 しかし、その優しさを受け入れることは、同時に彼女を失う恐怖でもあった。私という偽物の仮りそめの存在が、茉凜のように純粋なものと交わるべきではないと感じていた。

 茉凜が私を見つめるその瞬間、私は彼女にすべてを告げたい衝動に駆られてしまう。でも、口を開こうとするたびに、どうしても言葉が喉で詰まってしまう。もし、彼女が私の本当の姿を知ったら?私が背負っている運命のすべてを告げたら?その時、茉凜の瞳が失望に曇るのではないかと考えると、恐怖で心が締め付けられてしまう。

 私は何度も心の中で彼女の名前を呼び、心の奥底で彼女に謝り続けた。彼女に触れたい、彼女を守りたい、彼女を愛したい――それなのに、私はただ、彼女を苦しめるだけな存在に過ぎないと感じる。

 それでも、私は進まなければならない。茉凜へのこの気持ちを抱えながら、壊れかけた心を無理やり繕って、使命のために歩み続けるしかないのだ。それが私に与えられた運命なのだから。

 私はその決意を固め、震える手で日記帳にペンを走らせていった。一文字一文字に茉凜への感謝と私自身の心の奥深くから湧き上がる思いを込めて。

 それは、これから消えゆく私が迷いと恐れを振り切るための儀式のようなもので、すべてをここに吐き出せば、心の整理がつくと信じていた。

 机に鍵を閉めておけば、これが茉凜の目に入ることはないだろう。私の気持ちはここに封じ込められ、永遠に隠される。そう願いながら、涙をこらえきれずにペンを進めた。

 一文字一文字を記すたびに、理由もわからず涙が溢れて止まらなかった。涙がぽたりぽたりと落ち、綴られた文字が滲んでいく。

 こんなにも切ない感情があふれ出す理由を、私自身でも理解できなかった。それでも、私はその涙を拭うこともなく、止めどなく湧き上がる感情のままに日記を書き続けた。

 それは時を忘れるほどに、私のすべてをさらけ出すように。

 書いているうちに、思い出が次々と浮かんできた。茉凜と過ごしたいろいろな瞬間、彼女の笑顔、それに自然に応えることができるようになった私。時には笑いがこみ上げ、時には泣いてしまう、そんな自分の感情の鮮やかさに驚いてしまった。私の中にこんなにも深い感情が満ちていたなんて、信じられない気持ちだった。

「ありがとう、茉凜。あなたが私にくれたたくさんのものが、私に生きることの本当の意味を教えてくれた。あなたの存在がどれほど私に力をくれたか、言葉では表しきれないくらい。ほんの短い間だったけれど、その一瞬一瞬が、私にとってかけがえのない宝物になった。心の底から感謝している。私は……あなたが……」

 その最後の一文字を、涙をこらえきれず、震える手で慎重に記した。涙が頬を伝い、紙に落ちるひとしずくひとしずくが、文字をゆっくりと滲ませていった。
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登場人物紹介

ミツル・グロンダイルのキャラクター設定

基本情報年齢: 12歳(外見年齢)


外見: この大陸では珍しい黒髪と薄緑の透き通った瞳。美しい容貌だが、体型は少し少年のようで、まな板の寸胴であることに敏感。自称年齢: 21歳(前世の記憶を持つため)


性格: 冷淡に見えながらも実は直情的で、一人でいることを好む。時折無邪気な一面を見せることがある。前世の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動き、冷静な大人の一面と子供っぽさが共存する複雑なキャラクター。


好物

食事に関しては美味しいものを少しだけなタイプ。剣の中の茉凜がアルコール依存になってしまったため。最近はお酒も嗜む。


社会的関係: 引っ込み思案で人付き合いが苦手なため、孤独を好む。しかし、孤独を埋めるために時折無邪気な一面を見せる。自分の力や能力に対する内なる葛藤と向き合いながら、過去の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動く。


ミツル・グロンダイルの物語における役割

憧れの存在: ユベル・グロンダイル(父)の影響を強く受けており、彼の戦闘スタイルや技術に憧れを抱く。父の遺志を継いで魔獣を狩る役割を担う。

遺産と使命: 父が遺した白きマウザーグレイルを持ち、彼の意志を継ぐ重要な役割を果たしている。彼女の能力と背景は、物語の重要な要素となっている。

謎と葛藤: 彼女の能力と前世の記憶には深い謎があり、物語の進行とともにその全容が明かされる可能性がある。彼女の内面的な葛藤や成長は、物語の核心に深く関わっている。


前世の名前: 柚羽 美鶴(ゆずは みつる)

年齢: 不明(死後、弟の弓鶴に憑依しているため、年齢としては弓鶴の年齢に準じる)

性別: 女性(現在は弟の弓鶴に憑依中)

出身地:九州地方某県の山中の柚羽家(深淵の三家の一つ、始まりの回廊の守護者)

職業: 柚羽家の後継者で深淵の始まりの回廊の巫女


 美鶴は深淵の三家の一つである柚羽家の長女であり、始まりの回廊の守護者。柚羽家襲撃事件で両親を失った後、叔父の虎洞寺氏に保護された。その後、両親の死の真相を知り、自ら人身御供になる覚悟を決め、柚羽家の後継者となった。彼女は密かに深淵の根源の再生を図り、解呪に臨んだが、その試みは失敗し、死亡した。


その後

 美鶴はデルワーズの画策により、弟の弓鶴と意識と記憶の全情報を交換させることで、彼に憑依する形で生き延びる。弟を取り戻すために再び解呪に進もうとした際、茉凜と出会う。茉凜が持つ「黒」の力の安全装置としての役割によって、二人は運命共同体となることが決まる。


 自らが女性であることに対する戸惑いと、茉凜に対する淡い感情を抱くようになり、自分が本当は弟ではないことや、茉凜が見ているのは弟であることに苦悩する。


 美鶴は両親の死の真相を知った後、自らが柚羽家の後継者として深淵の根源の再生を図ろうとしたが、その試みが失敗したことに対する責任感を抱えている。


 茉凜の猛烈なアタックに対して、次第に閉じていた心を開き始めると共に、彼女に対して淡い心を抱く。しかし、自分が本来女性であることや、それを知られることを怖れて受け入れることに苦しんでいる。


 美鶴は茉凜と共に深淵の根源の解呪に挑む中で、茉凜の存在が自らにとってどれほど重要であるかを認識し始める。しかし、彼女は自分の感情と状況に苦悩し、特に自分が女性として抱く感情や、茉凜が見ているのが自分ではなく弟であることに対して深い悩みを抱えている。


深淵の黒鶴

 精霊子に対する感受性が極めて高く、世界に漂うすべての精霊子を集積できる。彼女の前世の名前(美鶴)と組み合わせて【黒鶴】と呼ばれる。限定された空間(場裏)を形成し、その中でイメージ通りの現象を具現化。四大元素すべてを制御可能で、並列起動による複合行使も可能。背中に現れる翼は物質的ではなく、彼女の願望を投影したもの。


場裏

 限定された空間を形成し、その中で事象を操作。色で呼称される流儀に基づき、たとえば赤であれば熱の操作に関わり、イメージのままに具現化できる。詠唱や魔道具を必要としない強力な魔術として認識されている。戦闘と


能力の影響

 ミツルの戦闘スタイルは、前世の影響を色濃く受け継いでおり、流動的で柔軟な戦術が特徴。彼女の能力は瞬時に強力な現象を引き起こすことができ、そのため精神的な負荷が非常に大きい。精神崩壊や自我喪失のリスクが伴う。


精神的負荷

 精霊子の収集と能力の使用により、大脳辺縁系に過大な負荷がかかり、精神的な負担が大きい。特に精霊子への感受性が高い彼女は、負荷に耐えきれず暴走する危険がある。

ヴィル・ブルフォード

 ミツルの前にふらりと現れた、ぼさぼさ頭の無精髭の中年剣士。『黒髪のグロンダイル』の噂を聞きつけて訪れたという、彼の真意と思惑は?

 自らを『放浪のしがない剣士』と言う割に、その剣技は一流で、歴戦の強者。『雷光』とあだ名されると対魔獣戦のエキスパートで、その戦いぶりはミツルも舌を巻く。


年齢 48歳

身長 190センチ近い

体格 大柄で強靭

出身地 不明

職業  剣士、冒険者、元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長

髪: ぼさぼさの金髪。長さは無造作に伸びており、戦いの中で乱れたまま放置されている。

顔 無精ひげが顔全体に生えており、荒々しさと共に風格を漂わせている。

武器 中央に深い溝が彫られたブロードソード。鍛造で作られており、適度な粘りを持ち、滅多に折れない。


剣術スタイル

流派 雷光(らいこう)

特徴 巨体とその質量を生かした高速ダッシュ


戦闘スタイル

高速ダッシュ 雷のようなスピードで踏み込み、敵の懐に入り込む

敵の死角利用 相手の身体を死角として利用し、瞬時に繰り出される高速の斬撃で敵を仕留める

左手の傷 突きを繰り出す際に意図的に剣の先に左手を添え、敵の注意を引き付ける。実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、非常に巧妙。猪突猛進型でありながらも、臨機応変に対応できる柔軟さを持つ。これは、変幻自在で『型』のないユベルと毎日修練を積み重ねた結果(苦肉の策)による。


戦闘技術

片手剣術 基本的には片手でブロードソードを操るが、必要に応じて両刀も使うことができる。戦況に応じて剣の使い方を変え、迅速かつ的確に対応。


特殊技

雷光突き 瞬時に高速で踏み込み、突きを繰り出す技

閃光斬り 一瞬の隙を突き、相手の死角から高速で斬撃を繰り出す技


特徴と戦術

巨体と速度を生かして、魔獣の懐に入り込み、致命的な攻撃を繰り出す。視線誘導の技術で、敵の視線を引き付けてから攻撃する。


心理と性格

戦場での冷静な判断力と卓越した技術で、数々の戦場で名を馳せる。敵の動きを見極め、最適な攻撃や防御を選択する。どんな状況でも冷静に対応し、自信を持って戦う。猪突猛進型でありながら、変幻自在の戦術を使いこなす柔軟さを持つ。


元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長を務めた経験を持つ。騎士団時代の訓練と経験が、彼の戦術的な判断力と剣術の技術に大いに寄与している。特に、ユベルとの修練で得た経験が、彼の変幻自在な戦術に大きな影響を与えている。


その戦闘スタイル

一九〇センチ近い大柄な体躯を持ちながらも、その強靭な体に似合わぬほどの軽快さを誇る剣士。彼の手に握られているのは、ロングソードよりも短いブロードソードに近いもので、中央には深い溝が彫られている。この剣は鍛造で、適度な粘りを持ち、使い手によっては滅多に折れることがない。


ヴィルの剣術のスタイルは「雷光」と呼ばれ、彼の巨体とその質量を生かした高速ダッシュが特徴。彼は特に大きな魔獣を相手にするのが得意で、雷のようなスピードで踏み込むと、敵の懐に入り込み、相手の身体自体を死角として利用する。瞬時に繰り出される高速の斬撃で、敵を一気に仕留める。


特筆すべきは、彼の左手に傷が絶えないこと。これは、突きを繰り出す際に意図的に剣の先に手を添えて、その手に注意を引き付けるためだ。敵がその手に視線を奪われている間に、実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、彼の戦術は非常に巧妙。


ヴィルの剣は基本的に片手で操られることが多いが、必要に応じて双剣で戦うこともできる。その柔軟な使い方と、雷光のような素早さを駆使して、彼は戦場でその名を轟かせた。

茉凜(マリン)のキャラクター設定


基本情報年齢: 17歳

身長: 173センチ

プロポーション:高跳びの選手かファッションモデルのようなスラリとしたかっこいいスタイル。ただし本人は自覚なしで自信がない。 


外見: ミルクティーブラウンの髪、大きな瞳、お日様のような笑顔。純粋で優しい少女の姿が特徴的。


性格: 天真爛漫でポジティブ。どんな困難な状況でも明るさを失わず、死の淵の絶対的不利な状況でも輝く。特に追い込まれるとスイッチが切り替わり、予知視界を用いる能力が発揮される。


背景前世: 元々は私たちの世界に住んでいた人物。異世界に突然放り込まれ、さらに剣の中に転生させられるという過酷な運命を辿る。


役割: ミツルの相棒であり、恋人(?)。彼女の無条件の愛情と楽観的な性格がミツルの心の支えとなっている。過去のトラウマ: 落雷事故によるトラウマがあるが、それを嘆くことなく明るさを保ち続ける。ミツルにとっては大きな支え。


能力と役割能力: マウザーグレイル経由の予知視界。死の淵での絶対的不利な状況でも特に有効で、剣の中にあるこの能力が最大の武器である。


役割: ミツルの『深淵の黒鶴』を制御するための安全装置(セーフティ)として機能。暴走を防ぐ唯一の手段として、ミツルとの接触と精神的な感応が必要。自身の全てを捧げる覚悟を持ち、ミツルを守ることを使命としている。


心情と内面愛情: ミツルに対して無条件の愛情を注いでおり、彼女の存在はミツルにとって欠かせない心の拠り所となっている。愛情が恋であることに気づきながらも、その感情を告白することはできない。


支え: ミツルの冷たい態度や無口さの裏に隠された繊細な心を理解し、彼の孤独や苦しみを誰よりも感じ取っている。彼の心の支えとなることを自分の使命と感じ、彼を守るために自分の全てを捧げる覚悟を持っている。


内面の葛藤: 弓鶴(ミツル)が自分にとって特別でなくなるのではないかという不安を抱えながらも、彼の幸せを最優先に考え、自分の感情を抑え込んでいる。仲直りを図る際には自分を押し殺して彼らの関係を修復しようとするなど、内面的には複雑な感情が渦巻いている。

白きマウザーグレイル

基本情報正式名称: 精霊器接続式対魔族兵装 MW-CSV-DD MAUSER-GRELL(マウザーグレイル)

形状: 純白のロングソード

特徴: 刃に相当する部分がなく、実質的には何物も斬れない

構造と材質材質: 不明。構成素材については詳細が不明だが、非常に高い堅牢さを誇る。

耐久性: どんな魔獣の攻撃にもヒビ一つ入らないほどの堅牢さを持つ。

重量: 見た目よりも軽量で、非力なミツルでも自在に扱える。

機能と特性魔導兵装: 剣の形をとった魔導兵装であり、実際には物理的に斬ることはできない。

潜在能力: 現在のところ、ミツルもその実体と潜在能力については把握していない。

補助機能: ミツルの持つスキル「真凜」が安全装置として補助を行っている。

戦闘における役割安全装置: ミツルが持つ「深淵の黒鶴」の能力を制御するための安全装置として機能する。マウザーグレイルが実際の戦闘では使われないが、その存在がミツルの能力の安定に寄与している。

象徴的な意味: 剣そのものは物理的な攻撃力を持たないが、深い意味や力を秘めている可能性がある。特に、ミツルの精神的、象徴的な支えとしての役割を果たしている。

謎と疑問実体の不明: 現状、剣の具体的な機能やその実体についてはミツル自身も把握していない。剣の持つ潜在的な力や目的については謎に包まれている。発見される

可能性: 今後のストーリー展開で、その真の力や役割が明らかになる可能性がある。

ユベル・グロンダイル

 ミツルの父で、『閃光』の異名を持つ変幻自在の剣術を操る天才。すでに故人である。


ユベル・グロンダイルのキャラクター概要

年齢と外見:

年齢:50代外見:かつて金髪だったが、現在は黒く染めている。無精髭を蓄え、スリムで筋肉質な体型。優雅な立ち姿と流れるような戦闘動作が特徴。


役割と経歴:

元リーディス王国銀翼騎士団右翼リーダーであり、対魔獣戦のエキスパート。リーディス王国の銀翼騎士団に所属し、多くの戦場を経験。特に魔獣戦においてその名を馳せた。


基本戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の極みであり、その動きは流動的でまるで水のように変幻自在。力強さでは他の剣士に劣ることもあるが、素早さと身軽さで魔獣を屠る。ステップワークや変則的な体術を駆使し、敵の動きを予測させない巧妙な戦術を展開。回転しながらの斬撃や舞うような動きで敵の意識を散らし、戦局を有利に進める。


家族との関係:

妻:メイレア(元リーディス王国の第三王女)。非常に深い愛情を持ち、二人の関係はミツルにとって時折恥ずかしくなるほどの愛情表現がなされていた。娘:ミツルにとってユベルは憧れの対象であり、彼の戦闘スタイルや技術に強く影響を受けている。

最後の旅と戦い:

妻メイレアの行方不明後、ユベルは娘ミツルを連れて探索の旅に出る。愛する妻を取り戻すため、家族の絆を守るための決意を持っていた。未知の魔獣との戦いで命を落とし、その犠牲によってミツルは生き延びることができた。

白きマウザーグレイル:

ユベルが妻との絆として持っていた白きマウザーグレイルは、ミツルに託された。この剣はユベルの思いと愛情を象徴し、ミツルにとっては父の遺志を継ぐ重要なアイテム。


お尋ね者:

尊敬を集める存在だったが、妻を誘拐した罪が科せられ、お尋ね者として追われていた。ユベル・グロンダイルの戦闘スタイル


「柔」の戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の戦術を体現し、流動的で変幻自在な動きが特徴。彼の動きは舞踏家のように優雅でありながら、非常に戦術的で緻密。


ステップワークと回転体術:

軽やかなステップワークで敵の攻撃を避け、回転しながらの斬撃で敵を翻弄。体操選手やフィギュアスケーターを彷彿とさせる華麗な動きが特徴。


対魔獣戦の特化:

魔獣の懐に自在に出入りし、相手の身体を盾として利用することで最短距離からの攻撃を実現。風のように迅速で、敵の反応を許さない。

彼の戦闘スタイルを際立たせている。

前世での二人

 それは第二章で語られる。

虎洞寺健

美鶴と弓鶴の叔父で、保護者であり協力者。

能力が実用に耐えない血族が所属する郭外のリーダーで、自身は多数の企業を成功に導いた実業家で資産家。その貢献によって上層部にも大きな発言力を持ち、水面下で二人の活動をサポートする。彼の目的は深淵の呪いからの解放と深淵の解体である。

佐藤さん

 柚羽家のお手伝いさんで、美鶴の理解者。昔からの柚羽家のお手伝いさんで、その家事能力は超人。茉凜の料理の師匠。

真坂明

 15歳の少女で、身長は152センチメートル。黒のショートカットが特徴的で、衣装は、黒のクロップトップと高腰のパンツ、袖にディテールが施されたオープンジャケットで、全体的にクールでスタイリッシュな印象。均整の取れたスタイルも、洗練された雰囲気に一役買っている。

性格は情熱的で、自分が思ったことをはっきりと口にするタイプ。弓鶴の元許嫁であり、真坂家の次期後継者としての重責を担っている。また、「深淵の赤の流儀」の高度な術者でもあり、その実力は並外れている。彼女の存在感は、その内に秘めた強い意志と、家の名に恥じない実力から来ている。

明は破談後も弓鶴を想い続けており、それが彼女の能力の原動力になっている。自身が家の後継者となり、弓鶴を婿として迎えようと決意した結果、兄二人を殺害してしまう。

柚羽 美鶴

 ミツルの前世で転生時二十歳。その過去はダイジェストとして第二章で語られる。ミツルの内向的なところは彼女の成分。

 前世では茉凜に対して次第に恋心を抱いていくが、さまざまな問題が障害となって、素直に気持ちを伝えられずにいた。

 彼女のバルファへの転生がグロンダイル家にもたらした影響が、ミツルが戦い旅する理由。

鳴海沢洸人

深淵の血族、上帳を構成する三家の一つ、鳴海沢の長子。流儀青の強力な使い手。弓鶴の確保のために遣わされるが敗退し、その後弓鶴と茉凜の監視役として転校してくる。

数年前に暗殺に失敗し、その後始末として対象を家族諸共惨殺したことがきっかけで、殺せない欠陥品になってしまった。強力な血を残すために家に留め置かれ、鬱々とした日々を送っていた彼を変えたのは、深淵の始まりの回廊の巫女からの言葉だった。 

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