このお話は百合的? 設定の狙いとか
文字数 2,764文字
弓鶴(美鶴)が茉凜に惹かれる理由は、単なる外見的な魅力や恋愛感情だけでなく、精神的な支えや魂の共鳴、そして深い依存や信頼に根ざしています。これは百合作品でよく見られる、「友情以上恋愛未満」のような、強い絆が中心に据えられる描写です。恋愛感情が明確でなくても、お互いが必要不可欠な存在であること。ある意味離れたくても離れられない縛り。
2. 理想像と憧れ
茉凜が美鶴にとって「王子様」のように映るという設定は、百合作品でしばしば見られる要素です。同性に対する強い憧れや尊敬の念が、次第に愛情に発展することは、百合のテーマとして非常に共感を呼ぶ……か?
美鶴が茉凜を「頼りがいのある存在」として見ることで、自分にはないものに憧れ、そこから恋愛的な感情が芽生えるという流れはとても自然です。
3. 性別を超えた絆
この物語では、魂の性別と身体の性別が一致しないという要素があり、それがより深いテーマを探るための道具となります。弓鶴の中の魂が女性である美鶴であることが、百合設定として新鮮でありながらも、性別を超えた感情の描写が重要な要素として機能します。これにより、性別の枠を超えた真の愛情や精神的な結びつきを描くことができます。
4. 精神的な依存と支え
茉凜が弓鶴の力を制御する役割を担っているという設定は、二人の関係性における依存と支えのダイナミクスを強調します。これは、百合作品でよく見られる「強さと弱さ」の対比や、パートナー同士が互いを補い合う関係性だす。茉凜が弓鶴にとって安全装置であることが、単なる感情的な支えだけでなく、物理的・魔法的な意味でも相手に対する必要性を強調し、離れがたい関係をより強固なものにします。
この設定は、いくつかの要素が百合作品のテンプレートに沿ったものではありますが、全体的に見るとテンプレートにとどまらないところが盛り込まれています。
テンプレート的な要素
百合作品でよく見られる「片方が強く、もう片方が弱い」という構造は、この作品にもあります。弓鶴(美鶴)は感情的に不安定で孤独感を抱えているキャラクターであり、茉凜は彼女を支える強く頼りがいのある存在です。このようなダイナミクスは、多くの百合作品で見られる構成の一つです。
百合作品では、登場人物同士が心の奥底で共鳴し合い、互いに癒されていく展開が多いです。弓鶴(美鶴)と茉凜の関係も、このパターンに当てはまります。孤独なキャラクターが他者の優しさに触れ、心を開くという流れは、百合ジャンルでは比較的定番です。
同性同士の深い感情的なつながりや、恋愛感情に発展する描写は、百合作品の主要なテーマです。この作品でも、弓鶴が茉凜に対して抱く感情が、友情や憧れから始まり、やがて特別な存在として認識されるという展開は、百合作品においてよく見られるものです。
独自性要素
魂の性別や異世界的な設定。弓鶴(美鶴)の魂が女性でありながら、外見や状況によっては男性的に振る舞うという設定は、テンプレートにはあまり見られないユニークな要素です。また、異世界や特殊な能力に関連した設定が絡んでいるため、単なる学園ものや日常系の百合作品とは異なり、ファンタジーや冒険の要素が加わっています。
茉凜が単に弓鶴(美鶴)を支える存在として描かれるのではなく、彼女の力の制御に関わる「安全装置」としての役割を持っている点は、物語において独自の展開を生む可能性があります。このような要素は、百合作品において珍しく、物語の進行において重要な意味を持ちます。
弓鶴=美鶴が茉凜に惹かれていった理由は、内面的な孤独と心の葛藤に深く関わっているように感じます。普段、感情を抑え、他人との距離を保つことが多いキャラクターです。そんな彼女にとって、茉凜は唯一無二の存在です。彼女の明るさと優しさ、そして彼の心を理解しようとするその姿勢は、彼が無意識のうちに求めていたものだったのでしょう。
茉凜は彼女の表面的な冷たさや無口さに怯まず、細かな表情や言葉の裏に隠された本音を感じ取り、自然に理解する存在です。このような茉凜の共感力や包容力が、弓鶴にとって安心感を与え、次第に彼女に心を開き、彼女の存在が不可欠なものとなっていきます。
また、茉凜はただ優しいだけでなく、弓鶴の力を制御する重要な役割を果たしているため、彼女がそばにいることで自分を制御しやすくなります。この「安全装置」としての役割も、茉凜が弓鶴にとって大切な存在である理由の一つです。彼女との精神的なつながりが、力や心のバランスを保つ助けとなり、不安や孤独を和らげているのです。
同性の茉凜に惹かれることは、一見すると矛盾のように感じられるかもしれません。しかし、魂の性別や物理的な性別、そして感情的な繋がりは、必ずしも一律には一致しない複雑なものです。
弓鶴(美鶴)が茉凜に惹かれる理由は、単なる恋愛感情以上の、深い魂の共鳴や精神的な結びつきに基づいています。茉凜は単に女性としての存在だけでなく、弓鶴の内なる葛藤や孤独、そして力の制御に関して、彼(彼女)の心を救う存在です。魂が女性であっても、茉凜の優しさや温かさ、理解力に惹かれるのは自然なことです。
美鶴の魂が茉凜に対して抱く感情は、愛情や友情、信頼、依存など、複雑な感情の交錯から成り立っているかもしれません。それは必ずしも性的な愛情とは限らず、魂の絆や精神的なつながりとして描かれることで、同性という枠を超えた特別な関係性が成立します。
美鶴から見ると、茉凜はまさに「王子様」のように映るのでしょうね。茉凜は、彼女の持つ明るさや優しさ、そして弓鶴を理解し支えるその力強さが、まるで自分が持っていない何かを体現しているように感じさせるのかもしれません。美鶴にとって、茉凜は単に優しい女の子というだけではなく、憧れや尊敬の対象でもあるのでしょう。
茉凜が持つその頼りがいは、美鶴にとって特別な魅力に映るはずです。美鶴自身は、もしかすると自分の不安定さや孤独感に悩んでいたのかもしれませんが、茉凜の存在がそれらを補い、守ってくれるような感覚を抱いているのかもしれません。茉凜はその温かさとともに、必要なときには強く、自分の力で問題を解決する王子様のような存在であり、美鶴にとって理想的な人物像を象徴しているのです。
また、美鶴は自分にはないものを茉凜に見出しているからこそ、その魅力に惹かれ、茉凜の存在がますます特別に感じられていくのでしょう。同性であっても、茉凜の堂々とした姿や優しさは、美鶴にとって「憧れ」や「愛着」として強く心に刻まれていくのです。それが単なる恋愛感情かどうかに関わらず、茉凜は美鶴にとってかけがえのない「王子様」なのだと思います。