第21話 氷の王子様

文字数 5,054文字

 失意のどん底にいた私は、まるで深い水の中に沈んでいくように、時間の感覚すら失っていた。部屋の壁に囲まれて、ただひたすら静けさと孤独に包まれていた。時計の針が動く音だけが響く中、私は何も考えられず、何も感じられない。ただ、自分の存在が霧のように薄れていくのを感じるだけだった。

 そんな中、虎洞寺氏がやってきた。彼の姿が扉の向こうに見えた瞬間、現実が突然私に襲いかかる。彼の表情は冷静で、声もいつものように淡々としていた。

 「柚羽の家が火に包まれたそうだ」と告げるその声は、私の心に突き刺さる氷のようだった。

 その瞬間、私の中で閉じ込めていたものが、急激に溶け出していく。心の奥底に眠っていた悲しみが、冷たく脈打ち、胸を締め付けた。私には隠すことなどできなかった。すべてを話さなければならなかった。恐ろしい夜の出来事を、すべて打ち明けるしかなかった。涙が喉を塞ぎ、言葉が震えながらも、あの暗闇の中で何が起こったのかを話した。

 意外にも、虎洞寺氏は冷静に受け止めてくれた。ただ、そっと私の肩に手を置き、低い声で優しく言った。

「今は何も考えるな。君は何も悪くないのだ……」

 その言葉は、まるで遠くから響く音のようで、私の心には届かなかった。

 深く刻まれた罪悪感が、私を覆っていた。弟を守りたい、そう思って必死に行動したはずだったのに、結果として私は何もかも失ってしまった。

 そして何より、私を蝕んでいたのは、この身体だった。

 突然、男の子の身体に押し込められた私の感覚は崩壊し、女としての自分が失われていく。身体の何もかもがかつての私とは違っていた。かつて当たり前だった感覚が、すべて異物に感じられる。自分が自分でなくなる感覚に、息苦しさを感じ、胸の奥で恐怖が膨らんでいく。

 物語やファンタジーでは、こうした入れ替わりがしばしば軽妙に描かれるが、現実的には残酷で生易しいものではない。性別が異なる身体に変わるということは、単なる肉体の変化ではなく、自分のアイデンティティそのものが根底から揺らぐことだ。これまでの生理的な反応はもちろん、目に映るもの、耳に聞こえる音、触れるものすべてが、新しい身体に合わせた別の感覚を持っている。

 その変化により、かつての私の感覚がすべて異物に変わり、自分の存在が崩れていくような感覚に包まれる。これまで当然だったものが、全て違和感を伴って私を取り囲む。それでも、これは血を分けた大切な弟の身体なのだからと、自分に言い聞かせ、耐えるしかなかった。彼の存在を守るために、私はこの異質な感覚と向き合い、ただ耐えるしかなかった。

 その時、佐藤さんが現れた。

 彼女は無事だった。そのことに安堵する一方で、再会を喜んでいいのかどうか、私は戸惑っていた。しかし、彼女は何も言わず、私をじっと見つめていた。そして、私の苦しみを一瞬で理解し、無言で私を抱きしめてくれた。その瞬間、堰を切ったように涙が溢れ、私は自分の心の中に渦巻いていたすべてを、初めて言葉にして吐き出した。

 佐藤さんは、私の全てを静かに受け止めてくれた。彼女の優しさと理解は、私にとって光だった。私の胸の奥にあった重く暗い感情が、彼女の温もりによって少しずつ解けていくのを感じた。まるで氷が溶けるように、私の心はようやく解放され始めた。

      ◇      ◇

 新しい現実と向き合うためには、弟の弓鶴として生きなければならず、男らしく振る舞う必要があった。しかし、その重圧は想像を遥かに超えるものだった。毎朝、鏡に映る自分の姿を見ては、そこに映るのは自分ではない「誰か」。そう、弟の顔だと理解しているはずなのに、その表情には私自身の感情がまるで滲んでいない。それに気づくたび、心の奥に鈍い痛みが広がっていった。

 それでも、ひとつの小さな救いがあった。私と弓鶴の顔立ちはとてもよく似ていた。血を分けた姉弟であるという事実が、せめてもの拠り所だった。その共通点があったからこそ、私は彼として生きられるのだと、そう思い込もうとした。

 柚羽の家に戻った後、私は弓鶴とは一度も連絡を取ることなく、冷たい姉として距離を保ち続けた。それは、巫女としての立場だけではなく、私自身の内面の選択でもあった。冷たく振る舞うことで、彼が過去を断ち切り、自分自身の人生を歩む助けになるのではないか、と信じていた。しかし、それが本当に正しかったのか、今となってはわからない。彼の心の中で何が起こっていたのか、その想いがどのように成長していったのか、私には知る術がなかった。

 そして、今や私は彼の身体の中にいる。彼が感じていた喜び、そして痛み、それらは私には到底理解できない。しかし、鏡越しに見える彼の姿から、彼が立派に成長していたことはひしひしと伝わってきた。それが私にとって唯一の救いだった。彼はちゃんと自分の道を歩んでいたのだ。

 だからこそ、私は彼を取り戻さなければならない。彼がこれまで築いてきた人生が、私の過去の選択によって破壊されることがないように、私には彼の未来を守る責任がある。その責任感は、私の中で重く、そして確固たる決意として根を下ろしていた。

 しかし、それだけではどうしようもなかった。人と接するたびに、女としての自分が無意識に表に出てしまう。言葉遣いや仕草、ふとした表情が、どうしても女性らしさを滲ませてしまうのだ。その違和感に気づくたびに、私は自分自身を抑え込むように必死になった。

 それが、屋敷の外に出ることをますます難しくしていた。周囲の目を気にしてしまうたび、私はますます閉じこもり、自分を隠し続ける日々が続いた。

      ◇      ◇  

 屋敷の内外での接触が避けられない中、虎洞寺氏や佐藤さんをはじめ、招かれた医師やカウンセラーから指導を受ける日々が続いた。彼らは私が少しでも自然に振る舞えるよう、言葉遣いから歩き方に至るまで、細やかなアドバイスをくれた。まるで私は弟の姿で、もう一度生まれ直すかのように一からすべてを学び直していた。

 指導の場では、彼らの前で完璧に「弓鶴」を演じる練習が続いたが、どれほど努力しても心の中の葛藤は消えることはなかった。弟の姿でありながら、女としての自分がどこかで滲み出るのではないかという不安が常に付きまとった。そんな心配を拭い去ることはできず、演技が完成するたびに、一層自分を見失っていくような気さえした。

 そして何より――私はまだ、心のどこかで弟を取り戻すという願いを抱くことができずにいた。彼を取り戻すこと。それは私にとっても、あまりに大きな責任であり、恐怖だった。

 弓鶴は高校一年生で、まだ入学したばかり。できることなら彼の人生を代わりに歩み、彼の進むべき道を守りたいと願っていた。けれど、そのために学校に通うというのは、あまりにも現実的ではない挑戦だった。彼が築き上げてきた友人や先生、クラスメイトとの関係を理解し、自然に振る舞う自信は私にはなかった。知らない街、知らない学校、知らない人々――私の知らない彼の世界。

 見知らぬ世界で、どうやって自分の居場所を見つければいいのか。まるで全てが未知の領域に思えた。弟が作り上げてきたものを壊さずに保つことができるのか、それとも私自身がそれを壊してしまうのか。その恐怖が、足を引っ張り続けた。

 結局、学校に通えるようになったのは、その年の秋が深まり始めた頃だった。季節の変わり目が私の心にわずかな変化をもたらしたのかもしれない。それでも、不安と戸惑いは消えることなく、私はただ彼の足跡をなぞるように一歩ずつ進んでいくしかなかった。

      ◇      ◇  

 学校に足を踏み入れるとき、私の胸は不安でいっぱいだった。山奥での孤独な暮らしが長かったせいで、他人と触れ合うことに慣れていなかったのはもちろん、何よりも自分が「弓鶴」としてその場に立つことに強い恐れを抱いていた。心の奥深くで、女としての自分が抑えきれずに存在している。それが、私をさらに動揺させた。こんな状態でうまくいくはずがない――そう自分に言い聞かせながらも、足を止めることはできなかった。

 学校の門をくぐると、周囲の喧騒が耳に押し寄せ、緊張が一層強まった。教室に向かう足取りが重く感じられ、無意識に深呼吸をしていた。自分が「本当の弓鶴」として振る舞えるのか、周囲の目が自分の中の秘密に気づくのではないかという恐怖で、心が張り詰めていた。

 私は必死に、弓鶴としての役割を全うしようと努力した。しかし、心の中ではいつも葛藤が渦巻いていた。女である自分を隠しながら、男として、弟として振る舞う――その違和感は、周囲の何気ないやりとり一つ一つが私を引き離す感覚に繋がった。みんなが持つ「普通」が、私には遠いものであり、自分はその中で異質な存在だと痛感せざるを得なかった。

 そして、私は一つの決断を下した。誰にも近づかないこと、誰とも話さないこと。一人でいることで、少しでも安心できる空間を守ろうとした。もし私が誰かと心を通わせれば、その瞬間、仮面が剥がれ、本当の私が露わになってしまう。そんな恐怖に耐えられなかった。

 だから、私は氷のように冷たい仮面を被り、周囲と距離を取ることにした。クラスメイトの無邪気な問いかけや、友人になろうとする誘いも、私には無関係なものに感じられた。笑顔を見せることも、親しみを示すこともなく、必要最低限の言葉で相手を遠ざけた。

 その態度は私を守る防波堤となり、同時に孤独を深める盾でもあった。誰にも心の奥の葛藤を見せることなく、私はただ、一人でその冷たい世界に閉じこもっていた。

 いつしか、私に近づこうとする人はいなくなり、教室の中での存在は静かに孤立していった。人々の視線は遠巻きに私を見つめ、そして陰でこんなあだ名で呼ばれるようになっていた――『氷の王子様』と。

 『氷の』という部分が示す通り、私が周囲に作り上げた冷たく無感情な態度は、手が届かない存在としての私を形作っていた。クラスメイトたちは、私がその壁を崩すことなく、自分だけの領域に閉じこもっていることに気づき、次第に私に近づくことを避け始めた。その結果、ますます孤立し、心の中に冷たい風が吹き続けていた。

 『王子様』というあだ名も、ある意味では納得せざるを得なかった。弓鶴の美貌は本当に際立っていた。母親譲りの端正な顔立ちに、男としての精悍さが加わり、その姿は、姉である私ですら美しいと感じるほどだった。周囲の生徒たちも、弓鶴のその容姿と存在感に魅了されていたことは容易に想像できた。

 また、クラス内外で多くの人から話しかけられたことから考えて、弓鶴は性格の良さや人望から、とても人気があったに違いない。彼は、容姿だけでなく、人としても愛されていたのだ。だからこそ、彼がその冷たい『王子様』に変わってしまった今、彼の本当の姿を知る者たちは、その変化に戸惑い、私を避けているのだろう。

 私は――そんな彼の人間関係さえも壊してしまったのだ。彼が築き上げてきた友情や信頼を、私が彼のふりをして振る舞うことで、無意識のうちに崩してしまった……。

 どうして私は、彼の世界に足を踏み入れてしまったのだろう。弓鶴として生きることで、彼のすべてを奪ってしまったのではないかという罪悪感が、私の胸に重くのしかかる。

 その瞬間、私は心の中で、どうしようもなく彼に謝りたくなった。

「ごめんね、弓鶴。馬鹿なお姉さんでごめんね……」

 その言葉が、静かに私の内面を浸食していく。心の中で彼に謝罪を繰り返すたびに、喉の奥に苦い感情が広がり、涙が滲むのを感じた。けれど、泣くわけにはいかなかった。ここで涙を流すことは、彼の未来への背信行為になると分かっていたからだ。

 私は、彼を守るためにこの役割を引き受けたのだ。彼の人生が台無しにならないように、私が彼の代わりに立ち続けると決めたのだから、弱音を吐くことは許されない。

 それでも、心のどこかで叫びたい衝動があった。彼に戻ってきてほしい、私の肩からこの重荷を下ろしてほしい、と。

 だが、そんな願いを叶えるのは簡単なことではない。待ち受ける道のりは果てしなく長く、見通しさえ立たない。だから私は、ただ心の中で何度も何度も謝ることしかできなかった。氷のように固い仮面の下で、私は一人、孤独に苦しんでいた。

 その頃からだろうか、私は変な夢を見るようになった。
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登場人物紹介

ミツル・グロンダイルのキャラクター設定

基本情報年齢: 12歳(外見年齢)


外見: この大陸では珍しい黒髪と薄緑の透き通った瞳。美しい容貌だが、体型は少し少年のようで、まな板の寸胴であることに敏感。自称年齢: 21歳(前世の記憶を持つため)


性格: 冷淡に見えながらも実は直情的で、一人でいることを好む。時折無邪気な一面を見せることがある。前世の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動き、冷静な大人の一面と子供っぽさが共存する複雑なキャラクター。


好物

食事に関しては美味しいものを少しだけなタイプ。剣の中の茉凜がアルコール依存になってしまったため。最近はお酒も嗜む。


社会的関係: 引っ込み思案で人付き合いが苦手なため、孤独を好む。しかし、孤独を埋めるために時折無邪気な一面を見せる。自分の力や能力に対する内なる葛藤と向き合いながら、過去の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動く。


ミツル・グロンダイルの物語における役割

憧れの存在: ユベル・グロンダイル(父)の影響を強く受けており、彼の戦闘スタイルや技術に憧れを抱く。父の遺志を継いで魔獣を狩る役割を担う。

遺産と使命: 父が遺した白きマウザーグレイルを持ち、彼の意志を継ぐ重要な役割を果たしている。彼女の能力と背景は、物語の重要な要素となっている。

謎と葛藤: 彼女の能力と前世の記憶には深い謎があり、物語の進行とともにその全容が明かされる可能性がある。彼女の内面的な葛藤や成長は、物語の核心に深く関わっている。


前世の名前: 柚羽 美鶴(ゆずは みつる)

年齢: 不明(死後、弟の弓鶴に憑依しているため、年齢としては弓鶴の年齢に準じる)

性別: 女性(現在は弟の弓鶴に憑依中)

出身地:九州地方某県の山中の柚羽家(深淵の三家の一つ、始まりの回廊の守護者)

職業: 柚羽家の後継者で深淵の始まりの回廊の巫女


 美鶴は深淵の三家の一つである柚羽家の長女であり、始まりの回廊の守護者。柚羽家襲撃事件で両親を失った後、叔父の虎洞寺氏に保護された。その後、両親の死の真相を知り、自ら人身御供になる覚悟を決め、柚羽家の後継者となった。彼女は密かに深淵の根源の再生を図り、解呪に臨んだが、その試みは失敗し、死亡した。


その後

 美鶴はデルワーズの画策により、弟の弓鶴と意識と記憶の全情報を交換させることで、彼に憑依する形で生き延びる。弟を取り戻すために再び解呪に進もうとした際、茉凜と出会う。茉凜が持つ「黒」の力の安全装置としての役割によって、二人は運命共同体となることが決まる。


 自らが女性であることに対する戸惑いと、茉凜に対する淡い感情を抱くようになり、自分が本当は弟ではないことや、茉凜が見ているのは弟であることに苦悩する。


 美鶴は両親の死の真相を知った後、自らが柚羽家の後継者として深淵の根源の再生を図ろうとしたが、その試みが失敗したことに対する責任感を抱えている。


 茉凜の猛烈なアタックに対して、次第に閉じていた心を開き始めると共に、彼女に対して淡い心を抱く。しかし、自分が本来女性であることや、それを知られることを怖れて受け入れることに苦しんでいる。


 美鶴は茉凜と共に深淵の根源の解呪に挑む中で、茉凜の存在が自らにとってどれほど重要であるかを認識し始める。しかし、彼女は自分の感情と状況に苦悩し、特に自分が女性として抱く感情や、茉凜が見ているのが自分ではなく弟であることに対して深い悩みを抱えている。


深淵の黒鶴

 精霊子に対する感受性が極めて高く、世界に漂うすべての精霊子を集積できる。彼女の前世の名前(美鶴)と組み合わせて【黒鶴】と呼ばれる。限定された空間(場裏)を形成し、その中でイメージ通りの現象を具現化。四大元素すべてを制御可能で、並列起動による複合行使も可能。背中に現れる翼は物質的ではなく、彼女の願望を投影したもの。


場裏

 限定された空間を形成し、その中で事象を操作。色で呼称される流儀に基づき、たとえば赤であれば熱の操作に関わり、イメージのままに具現化できる。詠唱や魔道具を必要としない強力な魔術として認識されている。戦闘と


能力の影響

 ミツルの戦闘スタイルは、前世の影響を色濃く受け継いでおり、流動的で柔軟な戦術が特徴。彼女の能力は瞬時に強力な現象を引き起こすことができ、そのため精神的な負荷が非常に大きい。精神崩壊や自我喪失のリスクが伴う。


精神的負荷

 精霊子の収集と能力の使用により、大脳辺縁系に過大な負荷がかかり、精神的な負担が大きい。特に精霊子への感受性が高い彼女は、負荷に耐えきれず暴走する危険がある。

ヴィル・ブルフォード

 ミツルの前にふらりと現れた、ぼさぼさ頭の無精髭の中年剣士。『黒髪のグロンダイル』の噂を聞きつけて訪れたという、彼の真意と思惑は?

 自らを『放浪のしがない剣士』と言う割に、その剣技は一流で、歴戦の強者。『雷光』とあだ名されると対魔獣戦のエキスパートで、その戦いぶりはミツルも舌を巻く。


年齢 48歳

身長 190センチ近い

体格 大柄で強靭

出身地 不明

職業  剣士、冒険者、元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長

髪: ぼさぼさの金髪。長さは無造作に伸びており、戦いの中で乱れたまま放置されている。

顔 無精ひげが顔全体に生えており、荒々しさと共に風格を漂わせている。

武器 中央に深い溝が彫られたブロードソード。鍛造で作られており、適度な粘りを持ち、滅多に折れない。


剣術スタイル

流派 雷光(らいこう)

特徴 巨体とその質量を生かした高速ダッシュ


戦闘スタイル

高速ダッシュ 雷のようなスピードで踏み込み、敵の懐に入り込む

敵の死角利用 相手の身体を死角として利用し、瞬時に繰り出される高速の斬撃で敵を仕留める

左手の傷 突きを繰り出す際に意図的に剣の先に左手を添え、敵の注意を引き付ける。実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、非常に巧妙。猪突猛進型でありながらも、臨機応変に対応できる柔軟さを持つ。これは、変幻自在で『型』のないユベルと毎日修練を積み重ねた結果(苦肉の策)による。


戦闘技術

片手剣術 基本的には片手でブロードソードを操るが、必要に応じて両刀も使うことができる。戦況に応じて剣の使い方を変え、迅速かつ的確に対応。


特殊技

雷光突き 瞬時に高速で踏み込み、突きを繰り出す技

閃光斬り 一瞬の隙を突き、相手の死角から高速で斬撃を繰り出す技


特徴と戦術

巨体と速度を生かして、魔獣の懐に入り込み、致命的な攻撃を繰り出す。視線誘導の技術で、敵の視線を引き付けてから攻撃する。


心理と性格

戦場での冷静な判断力と卓越した技術で、数々の戦場で名を馳せる。敵の動きを見極め、最適な攻撃や防御を選択する。どんな状況でも冷静に対応し、自信を持って戦う。猪突猛進型でありながら、変幻自在の戦術を使いこなす柔軟さを持つ。


元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長を務めた経験を持つ。騎士団時代の訓練と経験が、彼の戦術的な判断力と剣術の技術に大いに寄与している。特に、ユベルとの修練で得た経験が、彼の変幻自在な戦術に大きな影響を与えている。


その戦闘スタイル

一九〇センチ近い大柄な体躯を持ちながらも、その強靭な体に似合わぬほどの軽快さを誇る剣士。彼の手に握られているのは、ロングソードよりも短いブロードソードに近いもので、中央には深い溝が彫られている。この剣は鍛造で、適度な粘りを持ち、使い手によっては滅多に折れることがない。


ヴィルの剣術のスタイルは「雷光」と呼ばれ、彼の巨体とその質量を生かした高速ダッシュが特徴。彼は特に大きな魔獣を相手にするのが得意で、雷のようなスピードで踏み込むと、敵の懐に入り込み、相手の身体自体を死角として利用する。瞬時に繰り出される高速の斬撃で、敵を一気に仕留める。


特筆すべきは、彼の左手に傷が絶えないこと。これは、突きを繰り出す際に意図的に剣の先に手を添えて、その手に注意を引き付けるためだ。敵がその手に視線を奪われている間に、実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、彼の戦術は非常に巧妙。


ヴィルの剣は基本的に片手で操られることが多いが、必要に応じて双剣で戦うこともできる。その柔軟な使い方と、雷光のような素早さを駆使して、彼は戦場でその名を轟かせた。

茉凜(マリン)のキャラクター設定


基本情報年齢: 17歳

身長: 173センチ

プロポーション:高跳びの選手かファッションモデルのようなスラリとしたかっこいいスタイル。ただし本人は自覚なしで自信がない。 


外見: ミルクティーブラウンの髪、大きな瞳、お日様のような笑顔。純粋で優しい少女の姿が特徴的。


性格: 天真爛漫でポジティブ。どんな困難な状況でも明るさを失わず、死の淵の絶対的不利な状況でも輝く。特に追い込まれるとスイッチが切り替わり、予知視界を用いる能力が発揮される。


背景前世: 元々は私たちの世界に住んでいた人物。異世界に突然放り込まれ、さらに剣の中に転生させられるという過酷な運命を辿る。


役割: ミツルの相棒であり、恋人(?)。彼女の無条件の愛情と楽観的な性格がミツルの心の支えとなっている。過去のトラウマ: 落雷事故によるトラウマがあるが、それを嘆くことなく明るさを保ち続ける。ミツルにとっては大きな支え。


能力と役割能力: マウザーグレイル経由の予知視界。死の淵での絶対的不利な状況でも特に有効で、剣の中にあるこの能力が最大の武器である。


役割: ミツルの『深淵の黒鶴』を制御するための安全装置(セーフティ)として機能。暴走を防ぐ唯一の手段として、ミツルとの接触と精神的な感応が必要。自身の全てを捧げる覚悟を持ち、ミツルを守ることを使命としている。


心情と内面愛情: ミツルに対して無条件の愛情を注いでおり、彼女の存在はミツルにとって欠かせない心の拠り所となっている。愛情が恋であることに気づきながらも、その感情を告白することはできない。


支え: ミツルの冷たい態度や無口さの裏に隠された繊細な心を理解し、彼の孤独や苦しみを誰よりも感じ取っている。彼の心の支えとなることを自分の使命と感じ、彼を守るために自分の全てを捧げる覚悟を持っている。


内面の葛藤: 弓鶴(ミツル)が自分にとって特別でなくなるのではないかという不安を抱えながらも、彼の幸せを最優先に考え、自分の感情を抑え込んでいる。仲直りを図る際には自分を押し殺して彼らの関係を修復しようとするなど、内面的には複雑な感情が渦巻いている。

白きマウザーグレイル

基本情報正式名称: 精霊器接続式対魔族兵装 MW-CSV-DD MAUSER-GRELL(マウザーグレイル)

形状: 純白のロングソード

特徴: 刃に相当する部分がなく、実質的には何物も斬れない

構造と材質材質: 不明。構成素材については詳細が不明だが、非常に高い堅牢さを誇る。

耐久性: どんな魔獣の攻撃にもヒビ一つ入らないほどの堅牢さを持つ。

重量: 見た目よりも軽量で、非力なミツルでも自在に扱える。

機能と特性魔導兵装: 剣の形をとった魔導兵装であり、実際には物理的に斬ることはできない。

潜在能力: 現在のところ、ミツルもその実体と潜在能力については把握していない。

補助機能: ミツルの持つスキル「真凜」が安全装置として補助を行っている。

戦闘における役割安全装置: ミツルが持つ「深淵の黒鶴」の能力を制御するための安全装置として機能する。マウザーグレイルが実際の戦闘では使われないが、その存在がミツルの能力の安定に寄与している。

象徴的な意味: 剣そのものは物理的な攻撃力を持たないが、深い意味や力を秘めている可能性がある。特に、ミツルの精神的、象徴的な支えとしての役割を果たしている。

謎と疑問実体の不明: 現状、剣の具体的な機能やその実体についてはミツル自身も把握していない。剣の持つ潜在的な力や目的については謎に包まれている。発見される

可能性: 今後のストーリー展開で、その真の力や役割が明らかになる可能性がある。

ユベル・グロンダイル

 ミツルの父で、『閃光』の異名を持つ変幻自在の剣術を操る天才。すでに故人である。


ユベル・グロンダイルのキャラクター概要

年齢と外見:

年齢:50代外見:かつて金髪だったが、現在は黒く染めている。無精髭を蓄え、スリムで筋肉質な体型。優雅な立ち姿と流れるような戦闘動作が特徴。


役割と経歴:

元リーディス王国銀翼騎士団右翼リーダーであり、対魔獣戦のエキスパート。リーディス王国の銀翼騎士団に所属し、多くの戦場を経験。特に魔獣戦においてその名を馳せた。


基本戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の極みであり、その動きは流動的でまるで水のように変幻自在。力強さでは他の剣士に劣ることもあるが、素早さと身軽さで魔獣を屠る。ステップワークや変則的な体術を駆使し、敵の動きを予測させない巧妙な戦術を展開。回転しながらの斬撃や舞うような動きで敵の意識を散らし、戦局を有利に進める。


家族との関係:

妻:メイレア(元リーディス王国の第三王女)。非常に深い愛情を持ち、二人の関係はミツルにとって時折恥ずかしくなるほどの愛情表現がなされていた。娘:ミツルにとってユベルは憧れの対象であり、彼の戦闘スタイルや技術に強く影響を受けている。

最後の旅と戦い:

妻メイレアの行方不明後、ユベルは娘ミツルを連れて探索の旅に出る。愛する妻を取り戻すため、家族の絆を守るための決意を持っていた。未知の魔獣との戦いで命を落とし、その犠牲によってミツルは生き延びることができた。

白きマウザーグレイル:

ユベルが妻との絆として持っていた白きマウザーグレイルは、ミツルに託された。この剣はユベルの思いと愛情を象徴し、ミツルにとっては父の遺志を継ぐ重要なアイテム。


お尋ね者:

尊敬を集める存在だったが、妻を誘拐した罪が科せられ、お尋ね者として追われていた。ユベル・グロンダイルの戦闘スタイル


「柔」の戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の戦術を体現し、流動的で変幻自在な動きが特徴。彼の動きは舞踏家のように優雅でありながら、非常に戦術的で緻密。


ステップワークと回転体術:

軽やかなステップワークで敵の攻撃を避け、回転しながらの斬撃で敵を翻弄。体操選手やフィギュアスケーターを彷彿とさせる華麗な動きが特徴。


対魔獣戦の特化:

魔獣の懐に自在に出入りし、相手の身体を盾として利用することで最短距離からの攻撃を実現。風のように迅速で、敵の反応を許さない。

彼の戦闘スタイルを際立たせている。

前世での二人

 それは第二章で語られる。

虎洞寺健

美鶴と弓鶴の叔父で、保護者であり協力者。

能力が実用に耐えない血族が所属する郭外のリーダーで、自身は多数の企業を成功に導いた実業家で資産家。その貢献によって上層部にも大きな発言力を持ち、水面下で二人の活動をサポートする。彼の目的は深淵の呪いからの解放と深淵の解体である。

佐藤さん

 柚羽家のお手伝いさんで、美鶴の理解者。昔からの柚羽家のお手伝いさんで、その家事能力は超人。茉凜の料理の師匠。

真坂明

 15歳の少女で、身長は152センチメートル。黒のショートカットが特徴的で、衣装は、黒のクロップトップと高腰のパンツ、袖にディテールが施されたオープンジャケットで、全体的にクールでスタイリッシュな印象。均整の取れたスタイルも、洗練された雰囲気に一役買っている。

性格は情熱的で、自分が思ったことをはっきりと口にするタイプ。弓鶴の元許嫁であり、真坂家の次期後継者としての重責を担っている。また、「深淵の赤の流儀」の高度な術者でもあり、その実力は並外れている。彼女の存在感は、その内に秘めた強い意志と、家の名に恥じない実力から来ている。

明は破談後も弓鶴を想い続けており、それが彼女の能力の原動力になっている。自身が家の後継者となり、弓鶴を婿として迎えようと決意した結果、兄二人を殺害してしまう。

柚羽 美鶴

 ミツルの前世で転生時二十歳。その過去はダイジェストとして第二章で語られる。ミツルの内向的なところは彼女の成分。

 前世では茉凜に対して次第に恋心を抱いていくが、さまざまな問題が障害となって、素直に気持ちを伝えられずにいた。

 彼女のバルファへの転生がグロンダイル家にもたらした影響が、ミツルが戦い旅する理由。

鳴海沢洸人

深淵の血族、上帳を構成する三家の一つ、鳴海沢の長子。流儀青の強力な使い手。弓鶴の確保のために遣わされるが敗退し、その後弓鶴と茉凜の監視役として転校してくる。

数年前に暗殺に失敗し、その後始末として対象を家族諸共惨殺したことがきっかけで、殺せない欠陥品になってしまった。強力な血を残すために家に留め置かれ、鬱々とした日々を送っていた彼を変えたのは、深淵の始まりの回廊の巫女からの言葉だった。 

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