第22話 運命の出会い

文字数 4,550文字

 連日のように繰り返される夢は、現実と見紛うほど鮮やかな色彩に包まれていた。その夢の中で私が見た光景は、現実の世界と溶け合い、私の心に深く刻まれていた。

 高台から見下ろす海沿いの町並みが、まるで私を優しく包み込むように広がっている。その向こうには果てしなく広がる海が、穏やかな青から深い群青へと変わり、左手には白く静かな灯台がそびえていた。夕暮れ時、沈みゆく太陽が空と海を紅と紫で染め上げる様子は、現実のものとは思えないほど美しく、まるで夢の中の魔法にかけられたような錯覚を覚えた。

 私はベンチに一人座り、長い髪が海風に揺れるたびに、かつてここにいた自分が懐かしく思い起こされてきた。どうしてここにいるのか、その理由はわからなかった。ただ、夕日に照らされながら、心の奥底に静かな感情がじわりと湧き上がってくるのを感じた。

 自然に昔のことが思い出され、無意識に涙が頬を伝った。「ごめんね、ごめんね……」と呟く私の声は、風に乗って消えていくように響いた。自分の声が、まるで私自身の内なる切なさを反映するように感じられた。

 その時、背後から誰かが近づいてくる気配を感じた。振り返るべきかどうか決断がつかず、ためらいが胸に広がった。そんな中、耳に届いた声は、まるで温かい手で心を包み込むように触れてきた。その声は、男女の区別がつかない不思議な響きを持ち、胸の奥がほんのりと温かくなった。

 恐る恐る振り返ろうとした瞬間、夢は突然途切れ、現実へと引き戻された。その度に、胸の奥に残る余韻が、静かに広がっていった。私の心に残ったその感触は、夢と現実の境界が曖昧になった一瞬の余韻だった。
       
       ◇       ◇
 
 その夢が私に何を伝えようとしていたのか、全くわからなかった。夢はただ記憶の断片が再構成されたもので、未来を予見するものではないと理解していた。しかし、心の奥底で、どうしてもその夢に特別な意味が込められているのではないかという期待を抱かずにはいられなかった。

 もしかすると、これはデルワーズが言っていた「導き手」を示しているのかもしれない――そんな考えが私の心をよぎった。デルワーズは、異界に移動するための場所と時間の座標を指し示す羅針盤が、この世界に降臨し、誰かの中に存在すると語っていた。そして、その人物を探し出すようにと、私に命じてきたのだった。

 しかし、その人物をどうやって見つけ出せばいいのか、何の手がかりもなく、私は途方に暮れるばかりだった。何度も頭の中で考えを巡らせたけれど、答えは見つからなかった。

 それでも、立ち止まるわけにはいかなかった。夢の中で感じたあの温かな感情が、私を突き動かしていた。その感情は、どこかで希望を見つけるようにと私に囁いているようだった。

 どこかに手がかりがあるはずだと信じ、私は決意を固めた。少しでも可能性があるなら、どんな小さな手がかりでも見逃さないようにしようと、心に誓ったのだった。

 私は虎洞寺氏に夢の話を伝え、その夢に登場した場所を探してもらうことにした。すると、それが私が住む屋敷のある石寄瀬の街に存在する「石御台公園」であることが判明した。

 夕暮れ時、その公園を初めて訪れたとき、一目見てこの場所だと確信した。夢で見た景色が、現実に存在しているのだと実感した瞬間、胸の中で静かな感動が広がった。公園のベンチに腰を下ろし、目の前に広がる光景が夢の中のそれと重なることで、私は深い安堵感とともに、少しだけ希望を感じた。

 それからというもの、私は連日のように夕暮れ時に石御台公園へ足を運ぶようになった。ベンチに一人静かに座り、あの夢の中で現れた人物が現れるのをひたすら待ち続けた。しかし、どれほど待っても、あの夢に出てきたような雰囲気を持つ人は一向に現れなかった。

 それでも、私は諦めたくなかった。この場所が私にとって特別な意味を持つように感じられたからだ。夢の中でのあの感情が、私をここに留め続けていた。天候が悪くない限り、毎日通い続けることを決意した。毎日のように公園に足を運び、その場所が持つ不思議な魅力に引かれ続けた。公園の静けさと夕暮れの光が、私の心に希望と安らぎを与えてくれるように感じられた。

 しばらくして、虎洞寺氏から連絡があった。深淵の上層部、上帳で動きがあると報告された。それは、後継者を失った柚羽家の今後の扱いについてのもので、私を失った以上、次の後継者としてこの弓鶴を求めるのは自然な流れだろう。

 私は行動に慎重さを求められ、虎洞寺氏も深淵を警戒し、監視と警護を行う部隊、通称【天】を編成して、私を守る手配をしてくれた。このようにして、私は運命の日を迎えた。

       ◇       ◇

 それは年が明けて、三月に入った時のことだった。まだこの辺りには春の訪れが感じられず、海風は冷たく肌に染みるようだった。私はいつものように夕暮れ時に石御台公園にやってきた。海を臨む展望台で、海と沈みゆく夕日を見つめながら、その冷たい風に頬を撫でられていた。

 その時、突然、一人の少女が現れた。彼女の登場は、まるで周囲の空気を一変させるような存在感を持っていた。短い明るい色の髪が風に揺れ、その姿はすらっとしていて、ひと目でモデルのように美しいと感じられた。

 彼女は静かに景色を見つめながら、涙を浮かべていた。その涙は夕日の光を受けて、まるで宝石のように輝いていた。その光景は、私の心に深い印象を残し、まるで時間が一瞬止まったかのような感覚を覚えた。彼女の涙が放つ光と、沈みゆく夕日が織り成す美しさは、言葉では言い表せないほどの神秘的な雰囲気を醸し出していた。

 何か特別な思い出がこの場所にあるのだろうか、それともただこの美しい景色に心を動かされたのか。彼女の涙の理由がわからず、私はますます彼女に興味を抱いた。彼女の涙が何を意味するのか、心の奥にどんな物語が潜んでいるのかを探りたいという衝動に駆られた。

 しかし、次の瞬間、彼女は静かに涙をぬぐい、晴れやかな笑顔を浮かべた。その笑顔は、まるで先ほどの涙が嘘だったかのように自然で、心を温かくするものだった。夕日の光を受けて輝くその笑顔は、まるで新たな希望が宿るかのように美しく、私の心に深い印象を残した。

 その変わりように私は驚き、彼女から目が離せなくなった。涙と笑顔の対比があまりにも鮮明で、その変化が私を魅了した。彼女の心の中に何があるのか、その笑顔の裏にどんな感情が隠されているのか、知りたくて無意識のうちに彼女を見つめ続けていた。

 すると、彼女は私に気が付き、ゆっくりと近づいてきた。私は驚き、どう対応すべきか迷った。いつものように冷たい眼差しで警戒していたのだが、その目を向けると、彼女は一瞬驚いたように見えた。自分でもわかっていた。氷のように冷たい態度と人が近づくと威嚇するように睨んでしまう癖が、彼女に不安を与えたのだろう。

 それでも彼女はおそるおそる、しかし確固たる意志を持って私に挨拶をしてきた。彼女の声は柔らかく、心からのものであったが、その温かさとは裏腹に、私は冷淡な言葉で返すしかできなかった。それでも、彼女とのやり取りの中で、彼女の存在が私の心に静かに響くのを感じていた。

 彼女は自分が旅行者で、夢で見た場所を探し続けていると告げた。その瞬間、私は衝撃を受けた。夢で見た場所とは、まさにここ、石御台公園のことであると彼女が言うのを聞いて、私の頭は混乱し、どう反応していいかわからなかった。偶然にも、同じ理由でここにいるなんて、信じられない話だった。私は言葉を失い、彼女の言葉の意味を噛み締めながら、ただただ困惑していた。

「夢なんて理由がくだらない。ナンセンスだ」

なぜだろうか、私は恐怖心からそんな言葉を口走ってしまっていた。心の中の焦燥と不安が、無意識のうちに私を突き動かしたのだ。

 一瞬の感情に流されて、彼女の夢を完全に否定してしまった。その言葉を口にした瞬間、後悔が込み上げてきた。彼女を傷つけてしまったのではないか、泣き出してしまうのではないかと心配になった。自分がどれほど無神経だったかを悔い、心が痛んだ。

 ところが、彼女は私の言葉に激しく反応した。激しい口調で私に対抗してきたのだ。その様子に私は当惑し、言葉が出ずにただ立ち尽くすしかなかった。彼女の失望と怒りが、私の心に深く突き刺さった。

 そして、彼女は寂しそうにその場を立ち去り、私の視界から消えた。

 翌日も、私はいつものように公園に向かっていた。心の中には彼女への申し訳なさが募り、どうにかして謝りたいという気持ちが強くなっていた。しかし、彼女はもうここにはいないだろうと半ば諦めていた。でも、とせうしても彼女のことが頭から離れず、どんな言葉で謝ればいいのか心配だった。

 それでも、驚くことに彼女はそこにいた。展望台のベンチに腰掛け、夕日が海を赤く染める中でひとり、じっと景色を見つめていた。その姿はどこか寂しげにも見えた。彼女の横顔は、柔らかい夕日を浴びて美しかった。

 驚かせるつもりはなかったけれど、背後から静かに近づき声をかけると、彼女はびっくりして振り向いた。その瞬間、彼女の目には一瞬の驚きとともに、微妙に不機嫌な表情が浮かんでいた。私の心臓は早鐘のように打ち、彼女の反応に対する不安がさらに募った。

 私はぎこちなく会話の糸口を探った。彼女の語る言葉に耳を傾けながら、どうしていいのか分からないまま、心の中で混乱が広がっていた。

 そして、彼女は自分が夢の場所を探していた理由を話し始めた。

「わたしが夢の場所を探していたのは、自分の中で一つの区切りをつけるためだったんだ。実は、一年くらい前にちょっとした事故に遭ってしまって、雷が頭に落ちたの……。たまたま運が良くて助かったんだけど、いろいろとね、だめになっちゃったんだ……。それから、続けて変な夢を見るようになってしまって、それがこことよく似た景色だった。そこには一人の女の子がベンチに座っていて、とても悲しそうに泣いていたんだ」

 彼女の話を聞いた瞬間、私の身体に電流が走ったような感覚が広がった。彼女が語る夢の内容が、私が感じていた夢の情景と奇妙に一致しているように思えたからだ。

 彼女が見た夢の中の少女が、もしかしたら私自身であるのかもしれないという考えが、頭をかすめた。しかし、そんな運命が巧妙に絡み合うことなどあり得ないと、自分に言い聞かせた。

 彼女が「導き手」と呼ばれるべき存在である可能性があると考えるには、あまりにも唐突すぎると感じていた。私はただ、彼女の話を信じられず、確かな証拠も得られないまま、言葉を紡ぐことができなかった。

 「お前にはここに来るべき確かな理由があったのだと思う」と、どうにかして彼女に伝えるのが精一杯だった。その言葉が、私の心にぽっかりと開いた穴を埋めるように、静かに響いていった。

 彼女の真剣な眼差しと、私の心に残る温かい言葉が、後に私にとって大切なものとなることは、この瞬間にはまだ分からなかった。

 それが私にとってかけがえのない人となる、加茂野茉凜(かものまりん)との出会いだったのだ。
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登場人物紹介

ミツル・グロンダイルのキャラクター設定

基本情報年齢: 12歳(外見年齢)


外見: この大陸では珍しい黒髪と薄緑の透き通った瞳。美しい容貌だが、体型は少し少年のようで、まな板の寸胴であることに敏感。自称年齢: 21歳(前世の記憶を持つため)


性格: 冷淡に見えながらも実は直情的で、一人でいることを好む。時折無邪気な一面を見せることがある。前世の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動き、冷静な大人の一面と子供っぽさが共存する複雑なキャラクター。


好物

食事に関しては美味しいものを少しだけなタイプ。剣の中の茉凜がアルコール依存になってしまったため。最近はお酒も嗜む。


社会的関係: 引っ込み思案で人付き合いが苦手なため、孤独を好む。しかし、孤独を埋めるために時折無邪気な一面を見せる。自分の力や能力に対する内なる葛藤と向き合いながら、過去の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動く。


ミツル・グロンダイルの物語における役割

憧れの存在: ユベル・グロンダイル(父)の影響を強く受けており、彼の戦闘スタイルや技術に憧れを抱く。父の遺志を継いで魔獣を狩る役割を担う。

遺産と使命: 父が遺した白きマウザーグレイルを持ち、彼の意志を継ぐ重要な役割を果たしている。彼女の能力と背景は、物語の重要な要素となっている。

謎と葛藤: 彼女の能力と前世の記憶には深い謎があり、物語の進行とともにその全容が明かされる可能性がある。彼女の内面的な葛藤や成長は、物語の核心に深く関わっている。


前世の名前: 柚羽 美鶴(ゆずは みつる)

年齢: 不明(死後、弟の弓鶴に憑依しているため、年齢としては弓鶴の年齢に準じる)

性別: 女性(現在は弟の弓鶴に憑依中)

出身地:九州地方某県の山中の柚羽家(深淵の三家の一つ、始まりの回廊の守護者)

職業: 柚羽家の後継者で深淵の始まりの回廊の巫女


 美鶴は深淵の三家の一つである柚羽家の長女であり、始まりの回廊の守護者。柚羽家襲撃事件で両親を失った後、叔父の虎洞寺氏に保護された。その後、両親の死の真相を知り、自ら人身御供になる覚悟を決め、柚羽家の後継者となった。彼女は密かに深淵の根源の再生を図り、解呪に臨んだが、その試みは失敗し、死亡した。


その後

 美鶴はデルワーズの画策により、弟の弓鶴と意識と記憶の全情報を交換させることで、彼に憑依する形で生き延びる。弟を取り戻すために再び解呪に進もうとした際、茉凜と出会う。茉凜が持つ「黒」の力の安全装置としての役割によって、二人は運命共同体となることが決まる。


 自らが女性であることに対する戸惑いと、茉凜に対する淡い感情を抱くようになり、自分が本当は弟ではないことや、茉凜が見ているのは弟であることに苦悩する。


 美鶴は両親の死の真相を知った後、自らが柚羽家の後継者として深淵の根源の再生を図ろうとしたが、その試みが失敗したことに対する責任感を抱えている。


 茉凜の猛烈なアタックに対して、次第に閉じていた心を開き始めると共に、彼女に対して淡い心を抱く。しかし、自分が本来女性であることや、それを知られることを怖れて受け入れることに苦しんでいる。


 美鶴は茉凜と共に深淵の根源の解呪に挑む中で、茉凜の存在が自らにとってどれほど重要であるかを認識し始める。しかし、彼女は自分の感情と状況に苦悩し、特に自分が女性として抱く感情や、茉凜が見ているのが自分ではなく弟であることに対して深い悩みを抱えている。


深淵の黒鶴

 精霊子に対する感受性が極めて高く、世界に漂うすべての精霊子を集積できる。彼女の前世の名前(美鶴)と組み合わせて【黒鶴】と呼ばれる。限定された空間(場裏)を形成し、その中でイメージ通りの現象を具現化。四大元素すべてを制御可能で、並列起動による複合行使も可能。背中に現れる翼は物質的ではなく、彼女の願望を投影したもの。


場裏

 限定された空間を形成し、その中で事象を操作。色で呼称される流儀に基づき、たとえば赤であれば熱の操作に関わり、イメージのままに具現化できる。詠唱や魔道具を必要としない強力な魔術として認識されている。戦闘と


能力の影響

 ミツルの戦闘スタイルは、前世の影響を色濃く受け継いでおり、流動的で柔軟な戦術が特徴。彼女の能力は瞬時に強力な現象を引き起こすことができ、そのため精神的な負荷が非常に大きい。精神崩壊や自我喪失のリスクが伴う。


精神的負荷

 精霊子の収集と能力の使用により、大脳辺縁系に過大な負荷がかかり、精神的な負担が大きい。特に精霊子への感受性が高い彼女は、負荷に耐えきれず暴走する危険がある。

ヴィル・ブルフォード

 ミツルの前にふらりと現れた、ぼさぼさ頭の無精髭の中年剣士。『黒髪のグロンダイル』の噂を聞きつけて訪れたという、彼の真意と思惑は?

 自らを『放浪のしがない剣士』と言う割に、その剣技は一流で、歴戦の強者。『雷光』とあだ名されると対魔獣戦のエキスパートで、その戦いぶりはミツルも舌を巻く。


年齢 48歳

身長 190センチ近い

体格 大柄で強靭

出身地 不明

職業  剣士、冒険者、元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長

髪: ぼさぼさの金髪。長さは無造作に伸びており、戦いの中で乱れたまま放置されている。

顔 無精ひげが顔全体に生えており、荒々しさと共に風格を漂わせている。

武器 中央に深い溝が彫られたブロードソード。鍛造で作られており、適度な粘りを持ち、滅多に折れない。


剣術スタイル

流派 雷光(らいこう)

特徴 巨体とその質量を生かした高速ダッシュ


戦闘スタイル

高速ダッシュ 雷のようなスピードで踏み込み、敵の懐に入り込む

敵の死角利用 相手の身体を死角として利用し、瞬時に繰り出される高速の斬撃で敵を仕留める

左手の傷 突きを繰り出す際に意図的に剣の先に左手を添え、敵の注意を引き付ける。実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、非常に巧妙。猪突猛進型でありながらも、臨機応変に対応できる柔軟さを持つ。これは、変幻自在で『型』のないユベルと毎日修練を積み重ねた結果(苦肉の策)による。


戦闘技術

片手剣術 基本的には片手でブロードソードを操るが、必要に応じて両刀も使うことができる。戦況に応じて剣の使い方を変え、迅速かつ的確に対応。


特殊技

雷光突き 瞬時に高速で踏み込み、突きを繰り出す技

閃光斬り 一瞬の隙を突き、相手の死角から高速で斬撃を繰り出す技


特徴と戦術

巨体と速度を生かして、魔獣の懐に入り込み、致命的な攻撃を繰り出す。視線誘導の技術で、敵の視線を引き付けてから攻撃する。


心理と性格

戦場での冷静な判断力と卓越した技術で、数々の戦場で名を馳せる。敵の動きを見極め、最適な攻撃や防御を選択する。どんな状況でも冷静に対応し、自信を持って戦う。猪突猛進型でありながら、変幻自在の戦術を使いこなす柔軟さを持つ。


元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長を務めた経験を持つ。騎士団時代の訓練と経験が、彼の戦術的な判断力と剣術の技術に大いに寄与している。特に、ユベルとの修練で得た経験が、彼の変幻自在な戦術に大きな影響を与えている。


その戦闘スタイル

一九〇センチ近い大柄な体躯を持ちながらも、その強靭な体に似合わぬほどの軽快さを誇る剣士。彼の手に握られているのは、ロングソードよりも短いブロードソードに近いもので、中央には深い溝が彫られている。この剣は鍛造で、適度な粘りを持ち、使い手によっては滅多に折れることがない。


ヴィルの剣術のスタイルは「雷光」と呼ばれ、彼の巨体とその質量を生かした高速ダッシュが特徴。彼は特に大きな魔獣を相手にするのが得意で、雷のようなスピードで踏み込むと、敵の懐に入り込み、相手の身体自体を死角として利用する。瞬時に繰り出される高速の斬撃で、敵を一気に仕留める。


特筆すべきは、彼の左手に傷が絶えないこと。これは、突きを繰り出す際に意図的に剣の先に手を添えて、その手に注意を引き付けるためだ。敵がその手に視線を奪われている間に、実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、彼の戦術は非常に巧妙。


ヴィルの剣は基本的に片手で操られることが多いが、必要に応じて双剣で戦うこともできる。その柔軟な使い方と、雷光のような素早さを駆使して、彼は戦場でその名を轟かせた。

茉凜(マリン)のキャラクター設定


基本情報年齢: 17歳

身長: 173センチ

プロポーション:高跳びの選手かファッションモデルのようなスラリとしたかっこいいスタイル。ただし本人は自覚なしで自信がない。 


外見: ミルクティーブラウンの髪、大きな瞳、お日様のような笑顔。純粋で優しい少女の姿が特徴的。


性格: 天真爛漫でポジティブ。どんな困難な状況でも明るさを失わず、死の淵の絶対的不利な状況でも輝く。特に追い込まれるとスイッチが切り替わり、予知視界を用いる能力が発揮される。


背景前世: 元々は私たちの世界に住んでいた人物。異世界に突然放り込まれ、さらに剣の中に転生させられるという過酷な運命を辿る。


役割: ミツルの相棒であり、恋人(?)。彼女の無条件の愛情と楽観的な性格がミツルの心の支えとなっている。過去のトラウマ: 落雷事故によるトラウマがあるが、それを嘆くことなく明るさを保ち続ける。ミツルにとっては大きな支え。


能力と役割能力: マウザーグレイル経由の予知視界。死の淵での絶対的不利な状況でも特に有効で、剣の中にあるこの能力が最大の武器である。


役割: ミツルの『深淵の黒鶴』を制御するための安全装置(セーフティ)として機能。暴走を防ぐ唯一の手段として、ミツルとの接触と精神的な感応が必要。自身の全てを捧げる覚悟を持ち、ミツルを守ることを使命としている。


心情と内面愛情: ミツルに対して無条件の愛情を注いでおり、彼女の存在はミツルにとって欠かせない心の拠り所となっている。愛情が恋であることに気づきながらも、その感情を告白することはできない。


支え: ミツルの冷たい態度や無口さの裏に隠された繊細な心を理解し、彼の孤独や苦しみを誰よりも感じ取っている。彼の心の支えとなることを自分の使命と感じ、彼を守るために自分の全てを捧げる覚悟を持っている。


内面の葛藤: 弓鶴(ミツル)が自分にとって特別でなくなるのではないかという不安を抱えながらも、彼の幸せを最優先に考え、自分の感情を抑え込んでいる。仲直りを図る際には自分を押し殺して彼らの関係を修復しようとするなど、内面的には複雑な感情が渦巻いている。

白きマウザーグレイル

基本情報正式名称: 精霊器接続式対魔族兵装 MW-CSV-DD MAUSER-GRELL(マウザーグレイル)

形状: 純白のロングソード

特徴: 刃に相当する部分がなく、実質的には何物も斬れない

構造と材質材質: 不明。構成素材については詳細が不明だが、非常に高い堅牢さを誇る。

耐久性: どんな魔獣の攻撃にもヒビ一つ入らないほどの堅牢さを持つ。

重量: 見た目よりも軽量で、非力なミツルでも自在に扱える。

機能と特性魔導兵装: 剣の形をとった魔導兵装であり、実際には物理的に斬ることはできない。

潜在能力: 現在のところ、ミツルもその実体と潜在能力については把握していない。

補助機能: ミツルの持つスキル「真凜」が安全装置として補助を行っている。

戦闘における役割安全装置: ミツルが持つ「深淵の黒鶴」の能力を制御するための安全装置として機能する。マウザーグレイルが実際の戦闘では使われないが、その存在がミツルの能力の安定に寄与している。

象徴的な意味: 剣そのものは物理的な攻撃力を持たないが、深い意味や力を秘めている可能性がある。特に、ミツルの精神的、象徴的な支えとしての役割を果たしている。

謎と疑問実体の不明: 現状、剣の具体的な機能やその実体についてはミツル自身も把握していない。剣の持つ潜在的な力や目的については謎に包まれている。発見される

可能性: 今後のストーリー展開で、その真の力や役割が明らかになる可能性がある。

ユベル・グロンダイル

 ミツルの父で、『閃光』の異名を持つ変幻自在の剣術を操る天才。すでに故人である。


ユベル・グロンダイルのキャラクター概要

年齢と外見:

年齢:50代外見:かつて金髪だったが、現在は黒く染めている。無精髭を蓄え、スリムで筋肉質な体型。優雅な立ち姿と流れるような戦闘動作が特徴。


役割と経歴:

元リーディス王国銀翼騎士団右翼リーダーであり、対魔獣戦のエキスパート。リーディス王国の銀翼騎士団に所属し、多くの戦場を経験。特に魔獣戦においてその名を馳せた。


基本戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の極みであり、その動きは流動的でまるで水のように変幻自在。力強さでは他の剣士に劣ることもあるが、素早さと身軽さで魔獣を屠る。ステップワークや変則的な体術を駆使し、敵の動きを予測させない巧妙な戦術を展開。回転しながらの斬撃や舞うような動きで敵の意識を散らし、戦局を有利に進める。


家族との関係:

妻:メイレア(元リーディス王国の第三王女)。非常に深い愛情を持ち、二人の関係はミツルにとって時折恥ずかしくなるほどの愛情表現がなされていた。娘:ミツルにとってユベルは憧れの対象であり、彼の戦闘スタイルや技術に強く影響を受けている。

最後の旅と戦い:

妻メイレアの行方不明後、ユベルは娘ミツルを連れて探索の旅に出る。愛する妻を取り戻すため、家族の絆を守るための決意を持っていた。未知の魔獣との戦いで命を落とし、その犠牲によってミツルは生き延びることができた。

白きマウザーグレイル:

ユベルが妻との絆として持っていた白きマウザーグレイルは、ミツルに託された。この剣はユベルの思いと愛情を象徴し、ミツルにとっては父の遺志を継ぐ重要なアイテム。


お尋ね者:

尊敬を集める存在だったが、妻を誘拐した罪が科せられ、お尋ね者として追われていた。ユベル・グロンダイルの戦闘スタイル


「柔」の戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の戦術を体現し、流動的で変幻自在な動きが特徴。彼の動きは舞踏家のように優雅でありながら、非常に戦術的で緻密。


ステップワークと回転体術:

軽やかなステップワークで敵の攻撃を避け、回転しながらの斬撃で敵を翻弄。体操選手やフィギュアスケーターを彷彿とさせる華麗な動きが特徴。


対魔獣戦の特化:

魔獣の懐に自在に出入りし、相手の身体を盾として利用することで最短距離からの攻撃を実現。風のように迅速で、敵の反応を許さない。

彼の戦闘スタイルを際立たせている。

前世での二人

 それは第二章で語られる。

虎洞寺健

美鶴と弓鶴の叔父で、保護者であり協力者。

能力が実用に耐えない血族が所属する郭外のリーダーで、自身は多数の企業を成功に導いた実業家で資産家。その貢献によって上層部にも大きな発言力を持ち、水面下で二人の活動をサポートする。彼の目的は深淵の呪いからの解放と深淵の解体である。

佐藤さん

 柚羽家のお手伝いさんで、美鶴の理解者。昔からの柚羽家のお手伝いさんで、その家事能力は超人。茉凜の料理の師匠。

真坂明

 15歳の少女で、身長は152センチメートル。黒のショートカットが特徴的で、衣装は、黒のクロップトップと高腰のパンツ、袖にディテールが施されたオープンジャケットで、全体的にクールでスタイリッシュな印象。均整の取れたスタイルも、洗練された雰囲気に一役買っている。

性格は情熱的で、自分が思ったことをはっきりと口にするタイプ。弓鶴の元許嫁であり、真坂家の次期後継者としての重責を担っている。また、「深淵の赤の流儀」の高度な術者でもあり、その実力は並外れている。彼女の存在感は、その内に秘めた強い意志と、家の名に恥じない実力から来ている。

明は破談後も弓鶴を想い続けており、それが彼女の能力の原動力になっている。自身が家の後継者となり、弓鶴を婿として迎えようと決意した結果、兄二人を殺害してしまう。

柚羽 美鶴

 ミツルの前世で転生時二十歳。その過去はダイジェストとして第二章で語られる。ミツルの内向的なところは彼女の成分。

 前世では茉凜に対して次第に恋心を抱いていくが、さまざまな問題が障害となって、素直に気持ちを伝えられずにいた。

 彼女のバルファへの転生がグロンダイル家にもたらした影響が、ミツルが戦い旅する理由。

鳴海沢洸人

深淵の血族、上帳を構成する三家の一つ、鳴海沢の長子。流儀青の強力な使い手。弓鶴の確保のために遣わされるが敗退し、その後弓鶴と茉凜の監視役として転校してくる。

数年前に暗殺に失敗し、その後始末として対象を家族諸共惨殺したことがきっかけで、殺せない欠陥品になってしまった。強力な血を残すために家に留め置かれ、鬱々とした日々を送っていた彼を変えたのは、深淵の始まりの回廊の巫女からの言葉だった。 

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