第66話 学園祭の打ち上げと洸人の追求と

文字数 7,269文字

 新城医師は、私が倒れた理由を「単なる過労」として説明してくれた。その決断は、私にとって大きな救いだった。

 信頼のおける相談相手である新城医師の説明を、茉凜は特に疑念も抱かず受け入れてくれた。だが、明の瞳にはわずかな不安が滲んでいた。彼女の瞳には、言葉では表現しきれない複雑な感情が潜んでいるように感じられた。それは単なる心配や疑念にとどまらず、私に対する深い感情が混じったものだった。

 私は言い訳をする勇気など持てなかった。自分の選択に対しても、その感情に対しても、正直に向き合うことができない自分が、ただ無力に思えた。彼女の不安がどこから来るのか、そして私がその不安にどう応えるべきなのかを考えると、自分の言葉がさらに軽く感じられるだけだった。

    ◇        ◇

 翌朝、私は茉凜の「しばらく休んだ方がいいよ」という勧めを断り、学校へと向かった。日常に戻ることで心を紛らわせようとするのは、いわば逃避行のようなものだった。

 放課後、私は早々に帰宅しようとしたが、茉凜は「今日は寄るところがあるから来て」と言って私を引き留めた。心の中で不安が広がりながらも、彼女の言葉には逆らえずに従った。茉凜がどこに向かうのか、そこに何が待っているのか、その先にどんな意味があるのか、私はただただ不安だった。

 連れて行かれた先は、演劇部の部室前だった。舞台を壊しかけ、カーテンコールにも出られなかったことを思い出し、どうしても気まずい思いがして、その場に立ち尽くした。

 部員の人たちがどんな顔をして私を迎えるのか、どんな事を言われるのか、不安で胸がきりきりと痛んだ。けれど、茉凜は私の感情などお構いなしに扉を開けた。

 部室の中には洸人と明、そして演劇部の部員たちが集まっていた。その表情は温かい笑顔で満ちていて、私の姿を見た瞬間、一斉に拍手と歓声を上げて迎えてくれた。

 その瞬間、私の心は驚きと喜びで満たされた。胸が高鳴り、目には自然と涙が溢れてきた。こんなに感動的な体験は、私にとって初めてだった。彼らの温かい心に、私は言葉を失い、ただその瞬間を受け入れるしかなかった。

 部員たちは口々に私に称賛と労いの言葉をかけてくれた。終演後に倒れてしまった私のために、彼らは打ち上げの予定をわざわざ繰り下げてくれていたのだ。

 その思いやりに触れた私は、心からの感動を覚え、暖かい涙が静かに頬を伝った。涙が流れるたびに、自分が感情を誰に対しても素直にさらけ出せるようになっていることに気づいた。

 両親の死後、感情を封じ込めることに必死だった私が、こんなにも簡単に涙を流せるようになるなんて、不思議で、少し戸惑っていた。それでも、その解放感は心地よく、涙の奥には嬉しさが広がっていた。

 部室内での打ち上げはとても和やかで、私はその温かい雰囲気にしばし浸っていた。皆の笑顔と賑やかな会話に心がほぐれていく中、ふと洸人の真剣な眼差しが近づいてきた。

 その瞬間、私の心は一気に緊張で凍りついた。彼の真剣な表情が、何か不穏な気配を漂わせているように感じられたからだ。

「少しだけ話をしたいんだ。場所を変えないか?」

 洸人の声には軽やかさが消え、重々しい響きがあった。茉凜が心配そうな顔をしたけれど、私は彼の言葉に従うしかなかった。心の中で不安が静かに膨らみながらも、私はその感情を押し込め、洸人についていった。

 部室の外に出ると、廊下の静けさが私たちを包み込んだ。洸人は私を無言で見つめており、その視線には深い意味が込められているように感じた。

 彼の目が私の心の奥底に潜む不安を引き出そうとしているかのようで、胸の奥でうごめく恐怖が膨らんでいくのを感じた。

 言葉が出ないまま立ち尽くす私の前で、洸人は一瞬の沈黙の後に、静かに口を開こうとした。その時、何を話されるのか、私の心は固く凍りついていた。

「文化祭が終わるまでは訊かないつもりでいたけれど、君にどうしても確かめたいことがあるんだ」

 洸人の声には普段の軽やかさがなく、真剣さが宿っていた。その瞳が私を鋭く捉え、私の心の奥底に潜む不安を刺激するような感覚があった。

「一体、何のことだ?」

 私は冷静を装いながら、彼の問いかけを受け止めた。しかし、その問いが何を意味するのか、私にはわかっていた。

 数年前に彼と直接会ったことがあり、その時に彼が舞を目にしていたことを考えると、演劇での舞に私のオリジナルの要素が含まれていることを見抜いているのは当然だろうと感じていた。

 舞は代々継承されるものであり、あくまで雛形として存在している。それが演者の心象によって独創的な表現を加えられるのは当然のことだった。私の舞は、私の心そのままを表現していた。

「……君はいったい何者なんだ?」

 洸人の問いは、私の予想通りのものであった。私は心の中で深呼吸しながら、静かに答える準備をしていた。

「洸人、お前は何が言いたい? 意味がわからない」

 私はとぼけるしかなかった。彼の言葉が持つ重さに対抗するため、冷静さを保つ努力をしながらも、心の中では動揺していた。

「君のあの舞を、僕はよく覚えている」

 洸人の言葉は、私の内心にじわじわと迫ってきた。彼の記憶の中で私の舞がどのように残っているのだろうか。

「ふーん……。それが誰の舞の事を指しているのか、わからなくもないが」

 私の言葉は、彼の記憶の中の私の舞と直接対峙するかのように響いていた。

「見たのは一度きりだったけれど、その流れるような美しさと深い悲しみは、今も僕の心に深く刻まれている」

 彼の感情が、私の心の深い部分に触れてくる。洸人が語る美しさと深い悲しみが、彼にどのような影響を与えたのか、私には完全には理解できていなかったが、その言葉の重さがじわじわと私を包み込み始めていた。

「劇に取り組む前に僕は言ったよね、君には面影があるって。でも、僕には劇中での君が、彼女、いや、美鶴さんそのものにしか見えなかったんだ。これは決して気のせいなんかじゃない」

 洸人の言葉が核心を突いた瞬間、私の心は砕かれるような感覚に襲われた。
 
 でも、言い逃れの余地は確かにある。この身体は弓鶴のものであり、私はそこに取り憑いている怨念のような存在で、論理的に考えて私との結びつけは不可能だ。そうやって、自分を納得させようとした。しかし、その理屈が脆く揺らいでいる自分がいた。

「そんなことか。一応姉上の舞も見ていたからな。なぜか俺は一度見た動きなら、それを丸々自分に落とし込むことができるんだ。だからうまくできたわけさ」

 平静を装ってその場を切り抜けようとしたが、洸人の目はさらに鋭さを増していた。その目に映る私は、どうにも隠し切れない何かを抱えているように思えた。

「そうだね、動きはコピーできるかもしれない。でも、抱いている想いまで忠実にコピーできるものなのかな? 僕はそうは思わない」

 洸人の言葉が、私の心に重くのしかかった。その言葉に、私の指は震え、顔に動揺が浮かんでいくのを必死に抑えようとした。感情の制御が次第に難しくなってきていた。彼の言葉が私の心の奥深くにある秘密に触れようとしているのがわかり、その圧力に私は耐えきれないような気がしていた。

「そうか、お前にはそう感じられたのか。だとしたら、よかった……」

 私はその言葉を口にしながら、できるだけ優しく、自然に微笑んだ。それは、彼に対して何も隠していないと強がって見せるためで、これが最も無難な対応だと感じたのだが――その瞬間、彼の反応が予想外の方向へ進んでいった。

 彼は私の顔を見た途端、言葉を失った。そして、その表情には驚きと困惑が浮かんでいた。私は彼がなぜそんな反応を示したのか理解できなかったが、その動揺はあまりにも強く、彼の心に何か深い衝撃が走ったことが見て取れた。

「君は……いや、そんなはずがない。君はどう見ても男だし、背丈だって全然違う。」

 彼の言葉が、波紋のように私の心を侵食していた。

 今まで仮面をかぶってきた自分——「氷の王子」としての私がもはや完全に崩れ去っているのかもしれないという不安が急に押し寄せてきた。

 美鶴としての内なる私が外に漏れ出してしまったのだろうか。

 その考えが頭をよぎるたび、私は冷静を保とうと必死だった。表情を引き締め、心の揺れを悟られないように努める。それでも、彼の視線が鋭く私を捉えたままであることに気づき、冷たく振る舞うほど、その眼差しは私の内面に食い込んでいくような気がした。

「どうした? 何かおかしいか?」

 自分でもわかるほど、いつもの冷淡な声が少し硬くなっていた。洸人の動揺はまだ止まらなかった。

「いや、何も……」

「普通に考えてありえない事だろうが、馬鹿かお前は。いつもの冷静な診断力はどこへ行った?」

 私の言葉には苛立ちが混じり、彼に対するしてま非難の響きがあった。洸人は私の言葉に少し驚き、さらにその顔には困惑の色が強まった。

「確かに君は君のはずだ。だが、君が演じていたものはただの演技じゃない、何かもっと深いものが感じられて仕方がなかった」

 彼の言葉が、私の心にそっと入り込んできた。彼が抱く私への感情が何であれ、それは私が内面に抱える苦しみや願いと重なる部分があるのかもしれないと思った。彼が感じ取った「深いもの」という言葉が、私の心の隅々にまで届き、その理解は、ある意味安堵にも繋がった。

 洸人の瞳に映るものが何かを求めているようだった。私はそれに応えるべきか、言葉を飲み込むべきか、一瞬迷ったが、ゆっくりと口を開いた。

「お前が俺をヒロイン役に推した理由は、そんなところだろうと思っていた。姉上の境遇とメイヴィスの物語が重なる……それは、確かに感じていた。」

 彼の微かな頷きは、私の言葉を正しいものとして受け止めた証拠だった。

「望まぬ生き方を強いられて、それ以外の選択肢などない……俺はそんな姉上の悲しみを感じていたから、メイヴィスという役柄に対しても同じ感情を抱くことができたのかもしれない」

 洸人の表情が少し和らぎ、彼の目が私の言葉に深く触れたのが分かった。

「そうか。君がそう言うなら、やっぱりそうだったんだな。僕は君の中に、美鶴さんと重なるものをずっと感じていた。その正体が何なのか確かめたくて、ずっと考えていたんだ。でも、今の君の話を聞いて、少し分かった気がする」

 「なら、それでいい」と短く返したが、心の中では何かが引き裂かれるような痛みを感じていた。

 そこで、私は洸人に、心の奥でずっと抱えていた問いを投げかけてみた。

「どうして、そこまで姉上のことを気にかけるんだ?」

 彼は私の目から逃げるように視線を落とし、しばらく黙り込んでから、ゆっくりと口を開いた。

「こんなことを言っていいのか分からないけれど……彼女は僕にとって、救いの手であり、そして一方的な初恋の人だったんだ」

 その言葉に、私は驚きで体が硬直してしまった。彼がかつて私に対して、そんな深い感情を抱いていたとは、思いもよらなかった。

 洸人はまるで遠い過去を見つめるように目を遠くに向け、続けた。

「その頃の僕は完全に壊れていた。生きる意味を見失い、虚無に漂っていた。そんな僕に、再び生きる希望をくれたのが、美鶴さんだったんだ」

 その言葉は、私の心に深く響いた。私が彼にかけた言葉は、実は自分自身にも向けられた励ましだったのだとしみじみと思い返した。

「おい、そんな話をしていいのか? 灯子に知られたら、まずくないか?」

 洸人の口元に浮かんだ小さな微笑みは、どこか切ないほどに温かかった。

「もう何年も前の話だから。ただ、彼女には本当に感謝しているんだ。できることなら、もう一度会ってお礼が言いたい」

 彼は、その目にほんのりと涙を浮かべながら、もう一度、躊躇いながら訊ねてきた。

「それで……美鶴さんはやはり……」

 その問いに対して、私は深い息を吐き、心を込めて答えた。

「ああ、叔父上からの情報では、おそらく姉上は解呪に挑んで失敗し、命を落とした。もはや、この世にはいないと見ていいだろう……。だから俺は、彼女の遺志を継ぐと決めたんだ」

 洸人は沈んだ顔で頷いた。彼の視線は、どこか遠くを見つめているようだった。

 洸人の問いかけが、私の胸の奥にしまい込んでいた不安をゆっくりと浮き上がらせた。彼の瞳がまっすぐ私を見つめていて、逃げ場がないように感じられた。

「姉上は……運命を受け入れるしかなかった。それでも、最後まで戦い抜いたんだ。俺は、その強さを見習いたかった。彼女が生きた意味を、無駄にしたくなかったからな」

 自分の声が震えていないか、心配だった。洸人がじっとこちらを見つめているのがわかった。その目の奥には彼の葛藤が見え隠れしていた。私も、彼もそれぞれの戦いを抱えている。

「それで君は、あの舞を……」

 洸人の言葉に一瞬、鼓動が跳ねた。

「そうだ。あれは俺なりの覚悟の表明だ。姉上が選んだ道を、俺も歩むと決めた。だから、なんとしても俺が成し遂げなければならない。たとえ、それがどんなに険しい道であっても……」

 自分の言葉が鋭く響くのを感じながら、同時にその裏に隠れた脆さも洸人には見抜かれている気がして、少しだけ息苦しかった。

「俺には……姉上には無かったものがある。それが黒鶴であり、そして茉凜だ。彼女がいれば、俺は───」

 声がかすれそうになるのを必死にこらえながら、私は言葉を続けた。

「───始まりの回廊で器を完全に解放し、根源を再生させられるはずだ。そうすれば、異界への門は開き、血族の呪いはこの世界から消える」

 自分の口から出たその言葉の響きが、どこか虚ろに感じられた。計画の裏にはまだ多くの曖昧さが潜んでいる。洸人の顔にはさらなる不安の色が浮かんでいた。そしてその不安は、私自身の中にも根を張っていた。

 洸人は何も知らない。茉凜は確かに黒鶴の安全装置として機能しいる。だが、儀式に不可欠な「導き手」の真贋を確かめる術がない。デルワーズの示した情報は漠然としていて、確信を持つには遠い。心のどこかで、「それでも、なんとかなる」という願いにすがろうとしている自分がいることが、痛いほど分かっていた。

「でも、成功したとしても───」

 洸人の声が、私を現実に引き戻す。彼の問いが、私の心に鋭く突き刺さる。

「───君と茉凜ちゃんはどうなるんだ? 本当にリスクはないのか?」

 その問いは、私が一番恐れていたものだった。答えを持たない不安が、心の奥から浮かび上がり、胸を締め付ける。私の口は言葉を発することを拒んでいるように感じられた。

「それについては、まだ何も……はっきりとは分かっていない……」

 力なく答えた私の声は、震えを含んでいた。心の奥でざわめく不安が、私の表情に現れていた。視線を合わせることすら怖かった。

 洸人はそれを聞いて、じっと私を見つめた。彼の眼差しが、まるで私の内面を掘り下げるように鋭く、私を追い詰める。

「そんな重要なことをまだ伝えていないのか? 彼女には、それを知る権利があるんじゃないのか?」

 私の心はその問いに打ちひしがれた。彼の言葉が私の心の中で反響する。もちろん分かっている。茉凜には真実を伝えるべきだということも、彼女が背負うべき責任とリスクを知る権利があるということも。

「……今はまだ……伝えていない。まあ、どうにかなるだろう」

 その瞬間、自分がどれほど無責任なことを言っているか、改めて痛感した。現実から目を逸らすための言葉に過ぎなかった。自分が言った言葉が、あまりにも無力で空虚に思えた。

 洸人はその言葉を聞いた後、無言でしばらく私を見つめた。そして、ゆっくりと私の肩に手を置いた。彼の手のひらから伝わる圧力が、私の心を押しつぶすように感じられた。

「“どうにかなる”なんて、そんな曖昧な言葉で済む問題じゃないだろう?」

 洸人の声は私の心の奥に潜む弱さを暴露し、心の奥底に眠る恐怖を引き出した。

 彼の言葉が、私の心の奥に潜む弱さをえぐり出す。洸人が正しい。これはただの怠慢だ。逃げ続けていた自分の愚かさを、彼の言葉がまざまざと映し出していた。彼の目の前で、私はどれほど無力に見えているのか、その瞬間に痛感した。

「茉凜は君にとって大切な存在なんだろう? 彼女に全てを隠したまま、ただ前に進むなんて、それでいいのか?」

 洸人の問いが、私の心に深く刻まれた。茉凜のことを思うと、胸が痛んでたまらない。彼女のためにこそ、この決断を下さなければならないというのに、その重さに押しつぶされそうだった。

 私は彼の手を振り払うようにして、自分の決意を強固なものにしようとした。洸人の言葉がどうであれ、私の気持ちは揺るがなかった。

「俺は茉凜を死なせるつもりはない。必ず解呪を成就させて、一緒に帰ってくる。それだけは絶対だ」

 洸人はしばらくの沈黙の後、軽くため息をついた。その息が、私に現実を突きつけるようだった。彼の目には、私の覚悟に対する複雑な感情が浮かんでいた。

「君がそう決めたのなら、それを尊重するよ。だが、いずれ茉凜ちゃんには話さなきゃいけない時が来る。その時には、彼女に嘘をつかず、正直に話すべきだ」

「分かっている」

 その言葉は、心の奥底からこみ上げてきた苦悩を垣間見せるものだった。それは嘘を重ねることで自分を守ろうとする、情けない私の姿だった。

 「いまさら本当のことを言ったところで、何も変わらない。かえってみんなを傷つけるだけ」と、自分に言い聞かせるように、心の中で呟く。

 しかし、その背後には、真実を隠し続けることの重さが、時折深い影となって現れる。嘘が積もるにつれて、自分の中で真実がますます手の届かないものになり、解放されることがないまま日々が過ぎていく。

 もう手遅れであることを痛感しつつも、嘘をつき続けることでしか自分を保つことができないという矛盾した現実が広がっていた。
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登場人物紹介

ミツル・グロンダイルのキャラクター設定

基本情報年齢: 12歳(外見年齢)


外見: この大陸では珍しい黒髪と薄緑の透き通った瞳。美しい容貌だが、体型は少し少年のようで、まな板の寸胴であることに敏感。自称年齢: 21歳(前世の記憶を持つため)


性格: 冷淡に見えながらも実は直情的で、一人でいることを好む。時折無邪気な一面を見せることがある。前世の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動き、冷静な大人の一面と子供っぽさが共存する複雑なキャラクター。


好物

食事に関しては美味しいものを少しだけなタイプ。剣の中の茉凜がアルコール依存になってしまったため。最近はお酒も嗜む。


社会的関係: 引っ込み思案で人付き合いが苦手なため、孤独を好む。しかし、孤独を埋めるために時折無邪気な一面を見せる。自分の力や能力に対する内なる葛藤と向き合いながら、過去の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動く。


ミツル・グロンダイルの物語における役割

憧れの存在: ユベル・グロンダイル(父)の影響を強く受けており、彼の戦闘スタイルや技術に憧れを抱く。父の遺志を継いで魔獣を狩る役割を担う。

遺産と使命: 父が遺した白きマウザーグレイルを持ち、彼の意志を継ぐ重要な役割を果たしている。彼女の能力と背景は、物語の重要な要素となっている。

謎と葛藤: 彼女の能力と前世の記憶には深い謎があり、物語の進行とともにその全容が明かされる可能性がある。彼女の内面的な葛藤や成長は、物語の核心に深く関わっている。


前世の名前: 柚羽 美鶴(ゆずは みつる)

年齢: 不明(死後、弟の弓鶴に憑依しているため、年齢としては弓鶴の年齢に準じる)

性別: 女性(現在は弟の弓鶴に憑依中)

出身地:九州地方某県の山中の柚羽家(深淵の三家の一つ、始まりの回廊の守護者)

職業: 柚羽家の後継者で深淵の始まりの回廊の巫女


 美鶴は深淵の三家の一つである柚羽家の長女であり、始まりの回廊の守護者。柚羽家襲撃事件で両親を失った後、叔父の虎洞寺氏に保護された。その後、両親の死の真相を知り、自ら人身御供になる覚悟を決め、柚羽家の後継者となった。彼女は密かに深淵の根源の再生を図り、解呪に臨んだが、その試みは失敗し、死亡した。


その後

 美鶴はデルワーズの画策により、弟の弓鶴と意識と記憶の全情報を交換させることで、彼に憑依する形で生き延びる。弟を取り戻すために再び解呪に進もうとした際、茉凜と出会う。茉凜が持つ「黒」の力の安全装置としての役割によって、二人は運命共同体となることが決まる。


 自らが女性であることに対する戸惑いと、茉凜に対する淡い感情を抱くようになり、自分が本当は弟ではないことや、茉凜が見ているのは弟であることに苦悩する。


 美鶴は両親の死の真相を知った後、自らが柚羽家の後継者として深淵の根源の再生を図ろうとしたが、その試みが失敗したことに対する責任感を抱えている。


 茉凜の猛烈なアタックに対して、次第に閉じていた心を開き始めると共に、彼女に対して淡い心を抱く。しかし、自分が本来女性であることや、それを知られることを怖れて受け入れることに苦しんでいる。


 美鶴は茉凜と共に深淵の根源の解呪に挑む中で、茉凜の存在が自らにとってどれほど重要であるかを認識し始める。しかし、彼女は自分の感情と状況に苦悩し、特に自分が女性として抱く感情や、茉凜が見ているのが自分ではなく弟であることに対して深い悩みを抱えている。


深淵の黒鶴

 精霊子に対する感受性が極めて高く、世界に漂うすべての精霊子を集積できる。彼女の前世の名前(美鶴)と組み合わせて【黒鶴】と呼ばれる。限定された空間(場裏)を形成し、その中でイメージ通りの現象を具現化。四大元素すべてを制御可能で、並列起動による複合行使も可能。背中に現れる翼は物質的ではなく、彼女の願望を投影したもの。


場裏

 限定された空間を形成し、その中で事象を操作。色で呼称される流儀に基づき、たとえば赤であれば熱の操作に関わり、イメージのままに具現化できる。詠唱や魔道具を必要としない強力な魔術として認識されている。戦闘と


能力の影響

 ミツルの戦闘スタイルは、前世の影響を色濃く受け継いでおり、流動的で柔軟な戦術が特徴。彼女の能力は瞬時に強力な現象を引き起こすことができ、そのため精神的な負荷が非常に大きい。精神崩壊や自我喪失のリスクが伴う。


精神的負荷

 精霊子の収集と能力の使用により、大脳辺縁系に過大な負荷がかかり、精神的な負担が大きい。特に精霊子への感受性が高い彼女は、負荷に耐えきれず暴走する危険がある。

ヴィル・ブルフォード

 ミツルの前にふらりと現れた、ぼさぼさ頭の無精髭の中年剣士。『黒髪のグロンダイル』の噂を聞きつけて訪れたという、彼の真意と思惑は?

 自らを『放浪のしがない剣士』と言う割に、その剣技は一流で、歴戦の強者。『雷光』とあだ名されると対魔獣戦のエキスパートで、その戦いぶりはミツルも舌を巻く。


年齢 48歳

身長 190センチ近い

体格 大柄で強靭

出身地 不明

職業  剣士、冒険者、元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長

髪: ぼさぼさの金髪。長さは無造作に伸びており、戦いの中で乱れたまま放置されている。

顔 無精ひげが顔全体に生えており、荒々しさと共に風格を漂わせている。

武器 中央に深い溝が彫られたブロードソード。鍛造で作られており、適度な粘りを持ち、滅多に折れない。


剣術スタイル

流派 雷光(らいこう)

特徴 巨体とその質量を生かした高速ダッシュ


戦闘スタイル

高速ダッシュ 雷のようなスピードで踏み込み、敵の懐に入り込む

敵の死角利用 相手の身体を死角として利用し、瞬時に繰り出される高速の斬撃で敵を仕留める

左手の傷 突きを繰り出す際に意図的に剣の先に左手を添え、敵の注意を引き付ける。実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、非常に巧妙。猪突猛進型でありながらも、臨機応変に対応できる柔軟さを持つ。これは、変幻自在で『型』のないユベルと毎日修練を積み重ねた結果(苦肉の策)による。


戦闘技術

片手剣術 基本的には片手でブロードソードを操るが、必要に応じて両刀も使うことができる。戦況に応じて剣の使い方を変え、迅速かつ的確に対応。


特殊技

雷光突き 瞬時に高速で踏み込み、突きを繰り出す技

閃光斬り 一瞬の隙を突き、相手の死角から高速で斬撃を繰り出す技


特徴と戦術

巨体と速度を生かして、魔獣の懐に入り込み、致命的な攻撃を繰り出す。視線誘導の技術で、敵の視線を引き付けてから攻撃する。


心理と性格

戦場での冷静な判断力と卓越した技術で、数々の戦場で名を馳せる。敵の動きを見極め、最適な攻撃や防御を選択する。どんな状況でも冷静に対応し、自信を持って戦う。猪突猛進型でありながら、変幻自在の戦術を使いこなす柔軟さを持つ。


元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長を務めた経験を持つ。騎士団時代の訓練と経験が、彼の戦術的な判断力と剣術の技術に大いに寄与している。特に、ユベルとの修練で得た経験が、彼の変幻自在な戦術に大きな影響を与えている。


その戦闘スタイル

一九〇センチ近い大柄な体躯を持ちながらも、その強靭な体に似合わぬほどの軽快さを誇る剣士。彼の手に握られているのは、ロングソードよりも短いブロードソードに近いもので、中央には深い溝が彫られている。この剣は鍛造で、適度な粘りを持ち、使い手によっては滅多に折れることがない。


ヴィルの剣術のスタイルは「雷光」と呼ばれ、彼の巨体とその質量を生かした高速ダッシュが特徴。彼は特に大きな魔獣を相手にするのが得意で、雷のようなスピードで踏み込むと、敵の懐に入り込み、相手の身体自体を死角として利用する。瞬時に繰り出される高速の斬撃で、敵を一気に仕留める。


特筆すべきは、彼の左手に傷が絶えないこと。これは、突きを繰り出す際に意図的に剣の先に手を添えて、その手に注意を引き付けるためだ。敵がその手に視線を奪われている間に、実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、彼の戦術は非常に巧妙。


ヴィルの剣は基本的に片手で操られることが多いが、必要に応じて双剣で戦うこともできる。その柔軟な使い方と、雷光のような素早さを駆使して、彼は戦場でその名を轟かせた。

茉凜(マリン)のキャラクター設定


基本情報年齢: 17歳

身長: 173センチ

プロポーション:高跳びの選手かファッションモデルのようなスラリとしたかっこいいスタイル。ただし本人は自覚なしで自信がない。 


外見: ミルクティーブラウンの髪、大きな瞳、お日様のような笑顔。純粋で優しい少女の姿が特徴的。


性格: 天真爛漫でポジティブ。どんな困難な状況でも明るさを失わず、死の淵の絶対的不利な状況でも輝く。特に追い込まれるとスイッチが切り替わり、予知視界を用いる能力が発揮される。


背景前世: 元々は私たちの世界に住んでいた人物。異世界に突然放り込まれ、さらに剣の中に転生させられるという過酷な運命を辿る。


役割: ミツルの相棒であり、恋人(?)。彼女の無条件の愛情と楽観的な性格がミツルの心の支えとなっている。過去のトラウマ: 落雷事故によるトラウマがあるが、それを嘆くことなく明るさを保ち続ける。ミツルにとっては大きな支え。


能力と役割能力: マウザーグレイル経由の予知視界。死の淵での絶対的不利な状況でも特に有効で、剣の中にあるこの能力が最大の武器である。


役割: ミツルの『深淵の黒鶴』を制御するための安全装置(セーフティ)として機能。暴走を防ぐ唯一の手段として、ミツルとの接触と精神的な感応が必要。自身の全てを捧げる覚悟を持ち、ミツルを守ることを使命としている。


心情と内面愛情: ミツルに対して無条件の愛情を注いでおり、彼女の存在はミツルにとって欠かせない心の拠り所となっている。愛情が恋であることに気づきながらも、その感情を告白することはできない。


支え: ミツルの冷たい態度や無口さの裏に隠された繊細な心を理解し、彼の孤独や苦しみを誰よりも感じ取っている。彼の心の支えとなることを自分の使命と感じ、彼を守るために自分の全てを捧げる覚悟を持っている。


内面の葛藤: 弓鶴(ミツル)が自分にとって特別でなくなるのではないかという不安を抱えながらも、彼の幸せを最優先に考え、自分の感情を抑え込んでいる。仲直りを図る際には自分を押し殺して彼らの関係を修復しようとするなど、内面的には複雑な感情が渦巻いている。

白きマウザーグレイル

基本情報正式名称: 精霊器接続式対魔族兵装 MW-CSV-DD MAUSER-GRELL(マウザーグレイル)

形状: 純白のロングソード

特徴: 刃に相当する部分がなく、実質的には何物も斬れない

構造と材質材質: 不明。構成素材については詳細が不明だが、非常に高い堅牢さを誇る。

耐久性: どんな魔獣の攻撃にもヒビ一つ入らないほどの堅牢さを持つ。

重量: 見た目よりも軽量で、非力なミツルでも自在に扱える。

機能と特性魔導兵装: 剣の形をとった魔導兵装であり、実際には物理的に斬ることはできない。

潜在能力: 現在のところ、ミツルもその実体と潜在能力については把握していない。

補助機能: ミツルの持つスキル「真凜」が安全装置として補助を行っている。

戦闘における役割安全装置: ミツルが持つ「深淵の黒鶴」の能力を制御するための安全装置として機能する。マウザーグレイルが実際の戦闘では使われないが、その存在がミツルの能力の安定に寄与している。

象徴的な意味: 剣そのものは物理的な攻撃力を持たないが、深い意味や力を秘めている可能性がある。特に、ミツルの精神的、象徴的な支えとしての役割を果たしている。

謎と疑問実体の不明: 現状、剣の具体的な機能やその実体についてはミツル自身も把握していない。剣の持つ潜在的な力や目的については謎に包まれている。発見される

可能性: 今後のストーリー展開で、その真の力や役割が明らかになる可能性がある。

ユベル・グロンダイル

 ミツルの父で、『閃光』の異名を持つ変幻自在の剣術を操る天才。すでに故人である。


ユベル・グロンダイルのキャラクター概要

年齢と外見:

年齢:50代外見:かつて金髪だったが、現在は黒く染めている。無精髭を蓄え、スリムで筋肉質な体型。優雅な立ち姿と流れるような戦闘動作が特徴。


役割と経歴:

元リーディス王国銀翼騎士団右翼リーダーであり、対魔獣戦のエキスパート。リーディス王国の銀翼騎士団に所属し、多くの戦場を経験。特に魔獣戦においてその名を馳せた。


基本戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の極みであり、その動きは流動的でまるで水のように変幻自在。力強さでは他の剣士に劣ることもあるが、素早さと身軽さで魔獣を屠る。ステップワークや変則的な体術を駆使し、敵の動きを予測させない巧妙な戦術を展開。回転しながらの斬撃や舞うような動きで敵の意識を散らし、戦局を有利に進める。


家族との関係:

妻:メイレア(元リーディス王国の第三王女)。非常に深い愛情を持ち、二人の関係はミツルにとって時折恥ずかしくなるほどの愛情表現がなされていた。娘:ミツルにとってユベルは憧れの対象であり、彼の戦闘スタイルや技術に強く影響を受けている。

最後の旅と戦い:

妻メイレアの行方不明後、ユベルは娘ミツルを連れて探索の旅に出る。愛する妻を取り戻すため、家族の絆を守るための決意を持っていた。未知の魔獣との戦いで命を落とし、その犠牲によってミツルは生き延びることができた。

白きマウザーグレイル:

ユベルが妻との絆として持っていた白きマウザーグレイルは、ミツルに託された。この剣はユベルの思いと愛情を象徴し、ミツルにとっては父の遺志を継ぐ重要なアイテム。


お尋ね者:

尊敬を集める存在だったが、妻を誘拐した罪が科せられ、お尋ね者として追われていた。ユベル・グロンダイルの戦闘スタイル


「柔」の戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の戦術を体現し、流動的で変幻自在な動きが特徴。彼の動きは舞踏家のように優雅でありながら、非常に戦術的で緻密。


ステップワークと回転体術:

軽やかなステップワークで敵の攻撃を避け、回転しながらの斬撃で敵を翻弄。体操選手やフィギュアスケーターを彷彿とさせる華麗な動きが特徴。


対魔獣戦の特化:

魔獣の懐に自在に出入りし、相手の身体を盾として利用することで最短距離からの攻撃を実現。風のように迅速で、敵の反応を許さない。

彼の戦闘スタイルを際立たせている。

前世での二人

 それは第二章で語られる。

虎洞寺健

美鶴と弓鶴の叔父で、保護者であり協力者。

能力が実用に耐えない血族が所属する郭外のリーダーで、自身は多数の企業を成功に導いた実業家で資産家。その貢献によって上層部にも大きな発言力を持ち、水面下で二人の活動をサポートする。彼の目的は深淵の呪いからの解放と深淵の解体である。

佐藤さん

 柚羽家のお手伝いさんで、美鶴の理解者。昔からの柚羽家のお手伝いさんで、その家事能力は超人。茉凜の料理の師匠。

真坂明

 15歳の少女で、身長は152センチメートル。黒のショートカットが特徴的で、衣装は、黒のクロップトップと高腰のパンツ、袖にディテールが施されたオープンジャケットで、全体的にクールでスタイリッシュな印象。均整の取れたスタイルも、洗練された雰囲気に一役買っている。

性格は情熱的で、自分が思ったことをはっきりと口にするタイプ。弓鶴の元許嫁であり、真坂家の次期後継者としての重責を担っている。また、「深淵の赤の流儀」の高度な術者でもあり、その実力は並外れている。彼女の存在感は、その内に秘めた強い意志と、家の名に恥じない実力から来ている。

明は破談後も弓鶴を想い続けており、それが彼女の能力の原動力になっている。自身が家の後継者となり、弓鶴を婿として迎えようと決意した結果、兄二人を殺害してしまう。

柚羽 美鶴

 ミツルの前世で転生時二十歳。その過去はダイジェストとして第二章で語られる。ミツルの内向的なところは彼女の成分。

 前世では茉凜に対して次第に恋心を抱いていくが、さまざまな問題が障害となって、素直に気持ちを伝えられずにいた。

 彼女のバルファへの転生がグロンダイル家にもたらした影響が、ミツルが戦い旅する理由。

鳴海沢洸人

深淵の血族、上帳を構成する三家の一つ、鳴海沢の長子。流儀青の強力な使い手。弓鶴の確保のために遣わされるが敗退し、その後弓鶴と茉凜の監視役として転校してくる。

数年前に暗殺に失敗し、その後始末として対象を家族諸共惨殺したことがきっかけで、殺せない欠陥品になってしまった。強力な血を残すために家に留め置かれ、鬱々とした日々を送っていた彼を変えたのは、深淵の始まりの回廊の巫女からの言葉だった。 

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