第14話 ヴィルとの狩り 場裏展開

文字数 4,652文字

 翌日、私はヴィルと一緒に魔獣狩りに出かけることに決めた。

 普段だったら、一人きりで決められた【湧き場】を巡って魔獣を探すのが習慣だったけれど、今日は二人だ。彼に私の実力を示したかったし、彼の魔獣戦における戦いぶりというものを見てみたかったからだ。

 湧き場というのは、魔獣の体内の魔石から漂う薄紫色の霧【魔素】が漂う場所で、これがはっきりと見えるような場所には魔獣がいる確率が高い。彼らには互いに引き寄せられて群れを作る習性があり、それに伴って魔素がどんどん濃く強くなるのだ。

 冷たい風が荒れ狂い、広大な大地を吹き抜ける。

 ヴィルの愛馬に乗せてもらっている私は、初めての騎乗であぶみに合わせるのもままならず、彼の背中にしがみついているのが精一杯だった。馬のたてがみが風に揺れ、蹄の音が地面に深く響き渡る。

 この馬はスレイドといって、ヴィルの大切な相棒で、体が大きくて力強く、太くて逞しい脚を持っていた。黒くてふさふさしたたてがみが特徴で、性格はとてもおとなしくて、初対面の私にも優しく愛嬌を振りまいてくれた。

 つぶらな瞳がほんとうに可愛らしくて、心の中で「お金が貯まったら、いつか馬を飼うのもいいな」と思ってしまうほど、その存在は魅力的だった。

 ヴィルの広い背中にしがみつきながら、私は景色が流れていくのを横目で見ていた。冷たい風が吹きすさぶ中で、何故か心がふっと温かくなった。

 彼の体温が感じられて守られていることに安心感を覚えた。スレイドの力強い足取りが大地を踏みしめ、私たちを前に進めていく。

「ヴィル、もう少しで着くんじゃない?」

 私は彼の背中に向かって問いかけた。ヴィルは振り返らずに頷いた。

「ああ、お前がくれた地図通りだと、あともう少しで着く」

 しばらくして予定していた湧き場に到着すると、私はこわごわとスレイドから降りて、周囲を慎重に見渡した。ヴィルも降りて、私の隣に立って冷静な目で辺りを見回してから尋ねた。

「何か気配を感じるか?」

 私は目を閉じて、意識を集中させて周囲の魔素を感じ取ろうとした。暗いイメージの中で薄紫色の霧の中に、微かな動きを感じ取ることができた。

「うん、感じる」

 ヴィルは満足そうに頷いた。

「魔獣から滲み出る魔力を探知するのは、魔術適性(※1)の高い魔術師の得意分野だからな。頼むぞ」

 吹きすさぶ風と砂埃が吹き付ける中、頭の中で次第にぼんやりとしたイメージが固まっていくのがわかる。

「いる」

 目を開けると、視界の遠くに渦巻く黒紫の霧が見えた。それはまるで蜃気楼のように揺らめいていた。私は白きマウザーグレイルに手を伸ばし、握りに触れた。

「やるよ、茉凜」



 伝わってくる調子の良い茉凜のおどけた言葉に、私はくすっと笑った。これから始まる魔獣との戦いに、心はわくわくしていた。

「あれだな。いくぞ」

「うん」

 ヴィルはスレイドに軽快に飛び乗り、私に手を差し伸べた。私がその大きな手をしっかりと掴むと、彼はぐいっと力強く私を馬上に引っ張り上げてくれた。その力には驚くばかりだった。

「おりゃあっ!!」

 ヴィルはスレイドに気合を入れて、手綱を引いた。

 馬の速度が増し、私たちは目標に向かって疾走した。風が顔を叩きつける中、私はヴィルの背中にしがみつきながら、心の中でこれからの戦いに胸が高鳴っていた。

「気を抜くなよ、ミツル」

「あたりまえよ!」



 その時、遠くの霧の中から幾つもの影が現れた。

 それは間違いなく魔獣の姿。こちらに気づくと、暗い霧の中から次々に姿を現し、獰猛な咆哮を上げながら一斉にこちらに迫ってきた。

 彼らの気配が徐々に強くなり、戦闘の緊張感が高まっていくのがわかった。私はマウザーグレイルをしっかりと握り、戦闘の準備を整えた。

「行くよ、ヴィル!」

 私たちはスレイドから飛び降り、魔獣の群れを見据えた。その数は確認できるだけで六体。タイプはここら辺りでは一般的なダイアーウルフだと分かった。

 しかし、その奥から現れた一際大きな影は、それらとは一線を画する巨体を持ち、ゆっくりと身体を揺らしていた。二本の角と大きく尖った牙を持ち、鋭い眼光を放つ赤い瞳、長い黒紫の毛並みが風に揺れ、その姿は、猛烈な威圧感を放っていた。

「あれは……!?」

 私が警戒の声を上げると、ヴィルがすぐさま答えた。

「あれはシャドウファングだ。ダイアーウルフのユニークタイプって奴だな。大きいだけじゃない。魔素を操り、霧に紛れて攻撃してくる、なかなか賢い奴だ」

「わかった。気を抜かないようにする」

 シャドウファングは巨大な体躯を揺らしながら近づいてきた。

 そして、まるで指図をするかのように首をふるって咆哮を上げた。すると、周囲のダイアーウルフが疾風のように駆け出して私たちに迫ってきた。

「ヴィル、雑魚は任せるわ。私はあいつをやる!」

「いいだろう。ミツル、お前が持っている力、存分に振るってみせろ!」

 ヴィルは力強く頷き、前へと進み出た。そして、次々と襲いくるダイアーウルフを、その豪快な剣さばきで軽々と弾き飛ばしていく。その戦いぶりは、まさに鉄壁の守りといえた。私はいつも一人で戦っていたから、頼れる前衛がいることの心強さが、これほど有り難いものとは思わなかった。

 その間に、私はマウザーグレイルを構えて精神を集中させた。

 ここからは私の独壇場。剣で戦うにはまだまだだけけれど、魔術であれば絶対の自信がある。今持てる力を惜しみなく引き出す時だ。

「黒鶴っ! 場裏(じょうり)展開!!」



 気合を込めた私たち二人の声がぴったりと重なったその瞬間、周囲に力の源のようなものが集い、私という器にどっと注がれてくるのをイメージとして感じる。同時に心が高揚し、まるで身体の隅々まで熱い血が流れ込んでいくように、一瞬のうちに力が満ちていく。

 次いで、私の背後で黒く大きな翼が音もなく広がった。茉凜が言うには物質としての特性はなくて、触ろうとしても素通りしてしまうのだそうだ。

 そして、周りに急速展開されていくバレーボール大くらいの大きさの領域が、私の周囲に無数に展開され、互いに連携し合いながら精緻なパターンを描いていく。それは白い膜に包まれ、陽光を反射して幻想的な光を放っていた。

 これが私の持つ異能、【深淵(しんえん)】の根幹を成す【場裏(場裏)】という技術(スキル)だ。

 事象を操作するための限定された領域で、この中でのみ私の思い描いた現象が具現化される。そして、場裏は私の意思に従って自在に位置を変える事が出来る。

 一般的なこの世界の魔術は魔石を動力源(パワーソース)とし、そこから事象を具現化させるために、煩雑な手続きを必要とする。それが長大な呪文詠唱だったり、複雑怪奇な魔法陣術式だったりする。魔術師とはその適性だけでなく、豊富な知識と経験が必要になる。

 けれど、私の能力は根本からして違う。動力源になるのはこの世界に認識できない形で漂っている精霊の残滓、精霊子(※2)。私はそれを脳内にある受容器官で集め、蓄積することで場裏に変換する。

 私のイメージは、ただの願いに過ぎない。精神の中で描かれるビジョン、私の心の投影に過ぎない。しかし、この技術の真の強みは、そのイメージを瞬時に現実へと具現化できる点にある。成果を頭の中で鮮明に描き、ただ集中するだけで、無詠唱、無遅延の魔術が発動する。

 その現象は、集積された精霊子が一時的に生み出す疑似精霊体との交感、そしてイメージの共有によって成り立っている。私の内なる願いを精霊たちが感じ取り、それを具現化することで、私の思考が現実となる。精霊たちとの交感は、目に見えない力を私に与え、限られた時間の中で私の願いを形にするのだ。

 場裏で扱える術は五つの色の流儀に分類される。それぞれが異なる要素を操り、『白』は大気に関連し、『赤』は熱操作、『青』は水操作、『黄』は地質操作といった具合だ。私はその中に当てはまらない、番外の『黒』という禁忌の流儀を持っていた。

 それはすべての流儀を兼ね備え、組み合わせる能力。

 例えば私なら、青の水操作で作った水を、赤の熱操作で急速冷却させて凍結させ、白の大気操作で打ち出すといったことも可能になる。この世界での氷魔術は二つの属性を用いるから、かなり特殊な部類だし、それを打ち出せるような人はまずいない。

 そして、私は規格外の精霊子に対する感受性を持ち、その底無しの容量で全ての精霊子を呑み尽くす怪物と恐れられていた。それだけにとどまらず、私は敵対する術者からも蓄積された精霊子と流儀を奪い取ることが出来、すべての流儀を兼ね備えるに至り、それらを同時に並列起動させて、複合的に行使する力を獲得した。

 もちろん、無敵にも見える力には代償が伴う。精霊子の過剰な集中と蓄積は、脳に対して多大な負担をかける。それは大脳辺縁系に強い影響を与え、感情が激しく揺れ動く。その結果、負の感情が私を蝕み、忘れ去りたい忌まわしい記憶までもが蘇ってしまう。

 強い力を使えば使えほど、それに伴う負荷が大きいほど、精神崩壊による暴走と自滅のリスクも高まる。まさに呪いにも等しい、扱い方を誤れば命を落とすかもしれない危険を伴う術なのだ。

 私は常に暴走の危険と隣合わせで、いつ死んでも不思議ではなかった。そして、深淵の血族の上層部【上帳(うえのとばり)】は、私を危険視してこう呼んだ。【深淵の黒鶴】と……。

 私は、精霊子の根源である、『とある存在との約定』に従って、この危険極まりない黒の力をより強く成長させていく必要があった。でも、こんな不安定な力をどう制御すればいいというのか。一度使えば、待っているのは暴走と自滅しかないのだから。

 絶望の淵にあったそんな私の前に、突然現れたのが茉凜だった。彼女は私の安全装置(セーフティ)であり、そして、目的を実現させるために必要不可欠な導き手だったのだ。

 けれど、私はすぐにその事実を受け入れられなかった。何も知らない普通の子を、そんな過酷な運命に巻き込みたくはなかったから。

 それから、私と彼女は相棒としての関係になり、同じお屋敷で一緒に生活し、一緒に学校に通い、常に行動を共にするようになった。

 彼女は私にとっての精神的な支えとなり、身体的接触と心を通わせる呼びかけが、何度も私の暴走を防いでくれた。彼女の差し伸べる手が、私を救けたいという純粋な気持ちが、私を力の狂気から救ってくれたのだ。そして、今は……彼女は剣の中から私のことを護ってくれている。

「いつもありがとう、茉凜」

 心の中で彼女に感謝の気持ちを伝えると、茉凜はいつものように明るく返事をした。



 私はその言葉に励まされ、心を落ち着けて、前方に立ち向かう準備を整えた。この瞬間、私の心は高揚し、戦いの興奮とともに力がみなぎっていくのを感じていた。



※1魔術適性 魔石から魔力を感じ取り引き出せる適性。この世界の人間であれば、強弱はあれど誰もが持っている。適性が高ければ、より強く効率よく魔力を引き出せる。ただし、術として行使できるのは通常一属性か二属性。発明された属性転換術式によって、一般魔道具レベルであれば誰でも属性縛り無しに使うことができるようになった。

※2精霊子 この世界における純粋精霊はすでに姿を消しており、それが分解した残滓である精霊子が漂っている。伝承ではそれを集める器が存在するといわれている。ミツルはそれに類似した能力を持っていることになる。
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登場人物紹介

ミツル・グロンダイルのキャラクター設定

基本情報年齢: 12歳(外見年齢)


外見: この大陸では珍しい黒髪と薄緑の透き通った瞳。美しい容貌だが、体型は少し少年のようで、まな板の寸胴であることに敏感。自称年齢: 21歳(前世の記憶を持つため)


性格: 冷淡に見えながらも実は直情的で、一人でいることを好む。時折無邪気な一面を見せることがある。前世の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動き、冷静な大人の一面と子供っぽさが共存する複雑なキャラクター。


好物

食事に関しては美味しいものを少しだけなタイプ。剣の中の茉凜がアルコール依存になってしまったため。最近はお酒も嗜む。


社会的関係: 引っ込み思案で人付き合いが苦手なため、孤独を好む。しかし、孤独を埋めるために時折無邪気な一面を見せる。自分の力や能力に対する内なる葛藤と向き合いながら、過去の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動く。


ミツル・グロンダイルの物語における役割

憧れの存在: ユベル・グロンダイル(父)の影響を強く受けており、彼の戦闘スタイルや技術に憧れを抱く。父の遺志を継いで魔獣を狩る役割を担う。

遺産と使命: 父が遺した白きマウザーグレイルを持ち、彼の意志を継ぐ重要な役割を果たしている。彼女の能力と背景は、物語の重要な要素となっている。

謎と葛藤: 彼女の能力と前世の記憶には深い謎があり、物語の進行とともにその全容が明かされる可能性がある。彼女の内面的な葛藤や成長は、物語の核心に深く関わっている。


前世の名前: 柚羽 美鶴(ゆずは みつる)

年齢: 不明(死後、弟の弓鶴に憑依しているため、年齢としては弓鶴の年齢に準じる)

性別: 女性(現在は弟の弓鶴に憑依中)

出身地:九州地方某県の山中の柚羽家(深淵の三家の一つ、始まりの回廊の守護者)

職業: 柚羽家の後継者で深淵の始まりの回廊の巫女


 美鶴は深淵の三家の一つである柚羽家の長女であり、始まりの回廊の守護者。柚羽家襲撃事件で両親を失った後、叔父の虎洞寺氏に保護された。その後、両親の死の真相を知り、自ら人身御供になる覚悟を決め、柚羽家の後継者となった。彼女は密かに深淵の根源の再生を図り、解呪に臨んだが、その試みは失敗し、死亡した。


その後

 美鶴はデルワーズの画策により、弟の弓鶴と意識と記憶の全情報を交換させることで、彼に憑依する形で生き延びる。弟を取り戻すために再び解呪に進もうとした際、茉凜と出会う。茉凜が持つ「黒」の力の安全装置としての役割によって、二人は運命共同体となることが決まる。


 自らが女性であることに対する戸惑いと、茉凜に対する淡い感情を抱くようになり、自分が本当は弟ではないことや、茉凜が見ているのは弟であることに苦悩する。


 美鶴は両親の死の真相を知った後、自らが柚羽家の後継者として深淵の根源の再生を図ろうとしたが、その試みが失敗したことに対する責任感を抱えている。


 茉凜の猛烈なアタックに対して、次第に閉じていた心を開き始めると共に、彼女に対して淡い心を抱く。しかし、自分が本来女性であることや、それを知られることを怖れて受け入れることに苦しんでいる。


 美鶴は茉凜と共に深淵の根源の解呪に挑む中で、茉凜の存在が自らにとってどれほど重要であるかを認識し始める。しかし、彼女は自分の感情と状況に苦悩し、特に自分が女性として抱く感情や、茉凜が見ているのが自分ではなく弟であることに対して深い悩みを抱えている。


深淵の黒鶴

 精霊子に対する感受性が極めて高く、世界に漂うすべての精霊子を集積できる。彼女の前世の名前(美鶴)と組み合わせて【黒鶴】と呼ばれる。限定された空間(場裏)を形成し、その中でイメージ通りの現象を具現化。四大元素すべてを制御可能で、並列起動による複合行使も可能。背中に現れる翼は物質的ではなく、彼女の願望を投影したもの。


場裏

 限定された空間を形成し、その中で事象を操作。色で呼称される流儀に基づき、たとえば赤であれば熱の操作に関わり、イメージのままに具現化できる。詠唱や魔道具を必要としない強力な魔術として認識されている。戦闘と


能力の影響

 ミツルの戦闘スタイルは、前世の影響を色濃く受け継いでおり、流動的で柔軟な戦術が特徴。彼女の能力は瞬時に強力な現象を引き起こすことができ、そのため精神的な負荷が非常に大きい。精神崩壊や自我喪失のリスクが伴う。


精神的負荷

 精霊子の収集と能力の使用により、大脳辺縁系に過大な負荷がかかり、精神的な負担が大きい。特に精霊子への感受性が高い彼女は、負荷に耐えきれず暴走する危険がある。

ヴィル・ブルフォード

 ミツルの前にふらりと現れた、ぼさぼさ頭の無精髭の中年剣士。『黒髪のグロンダイル』の噂を聞きつけて訪れたという、彼の真意と思惑は?

 自らを『放浪のしがない剣士』と言う割に、その剣技は一流で、歴戦の強者。『雷光』とあだ名されると対魔獣戦のエキスパートで、その戦いぶりはミツルも舌を巻く。


年齢 48歳

身長 190センチ近い

体格 大柄で強靭

出身地 不明

職業  剣士、冒険者、元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長

髪: ぼさぼさの金髪。長さは無造作に伸びており、戦いの中で乱れたまま放置されている。

顔 無精ひげが顔全体に生えており、荒々しさと共に風格を漂わせている。

武器 中央に深い溝が彫られたブロードソード。鍛造で作られており、適度な粘りを持ち、滅多に折れない。


剣術スタイル

流派 雷光(らいこう)

特徴 巨体とその質量を生かした高速ダッシュ


戦闘スタイル

高速ダッシュ 雷のようなスピードで踏み込み、敵の懐に入り込む

敵の死角利用 相手の身体を死角として利用し、瞬時に繰り出される高速の斬撃で敵を仕留める

左手の傷 突きを繰り出す際に意図的に剣の先に左手を添え、敵の注意を引き付ける。実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、非常に巧妙。猪突猛進型でありながらも、臨機応変に対応できる柔軟さを持つ。これは、変幻自在で『型』のないユベルと毎日修練を積み重ねた結果(苦肉の策)による。


戦闘技術

片手剣術 基本的には片手でブロードソードを操るが、必要に応じて両刀も使うことができる。戦況に応じて剣の使い方を変え、迅速かつ的確に対応。


特殊技

雷光突き 瞬時に高速で踏み込み、突きを繰り出す技

閃光斬り 一瞬の隙を突き、相手の死角から高速で斬撃を繰り出す技


特徴と戦術

巨体と速度を生かして、魔獣の懐に入り込み、致命的な攻撃を繰り出す。視線誘導の技術で、敵の視線を引き付けてから攻撃する。


心理と性格

戦場での冷静な判断力と卓越した技術で、数々の戦場で名を馳せる。敵の動きを見極め、最適な攻撃や防御を選択する。どんな状況でも冷静に対応し、自信を持って戦う。猪突猛進型でありながら、変幻自在の戦術を使いこなす柔軟さを持つ。


元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長を務めた経験を持つ。騎士団時代の訓練と経験が、彼の戦術的な判断力と剣術の技術に大いに寄与している。特に、ユベルとの修練で得た経験が、彼の変幻自在な戦術に大きな影響を与えている。


その戦闘スタイル

一九〇センチ近い大柄な体躯を持ちながらも、その強靭な体に似合わぬほどの軽快さを誇る剣士。彼の手に握られているのは、ロングソードよりも短いブロードソードに近いもので、中央には深い溝が彫られている。この剣は鍛造で、適度な粘りを持ち、使い手によっては滅多に折れることがない。


ヴィルの剣術のスタイルは「雷光」と呼ばれ、彼の巨体とその質量を生かした高速ダッシュが特徴。彼は特に大きな魔獣を相手にするのが得意で、雷のようなスピードで踏み込むと、敵の懐に入り込み、相手の身体自体を死角として利用する。瞬時に繰り出される高速の斬撃で、敵を一気に仕留める。


特筆すべきは、彼の左手に傷が絶えないこと。これは、突きを繰り出す際に意図的に剣の先に手を添えて、その手に注意を引き付けるためだ。敵がその手に視線を奪われている間に、実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、彼の戦術は非常に巧妙。


ヴィルの剣は基本的に片手で操られることが多いが、必要に応じて双剣で戦うこともできる。その柔軟な使い方と、雷光のような素早さを駆使して、彼は戦場でその名を轟かせた。

茉凜(マリン)のキャラクター設定


基本情報年齢: 17歳

身長: 173センチ

プロポーション:高跳びの選手かファッションモデルのようなスラリとしたかっこいいスタイル。ただし本人は自覚なしで自信がない。 


外見: ミルクティーブラウンの髪、大きな瞳、お日様のような笑顔。純粋で優しい少女の姿が特徴的。


性格: 天真爛漫でポジティブ。どんな困難な状況でも明るさを失わず、死の淵の絶対的不利な状況でも輝く。特に追い込まれるとスイッチが切り替わり、予知視界を用いる能力が発揮される。


背景前世: 元々は私たちの世界に住んでいた人物。異世界に突然放り込まれ、さらに剣の中に転生させられるという過酷な運命を辿る。


役割: ミツルの相棒であり、恋人(?)。彼女の無条件の愛情と楽観的な性格がミツルの心の支えとなっている。過去のトラウマ: 落雷事故によるトラウマがあるが、それを嘆くことなく明るさを保ち続ける。ミツルにとっては大きな支え。


能力と役割能力: マウザーグレイル経由の予知視界。死の淵での絶対的不利な状況でも特に有効で、剣の中にあるこの能力が最大の武器である。


役割: ミツルの『深淵の黒鶴』を制御するための安全装置(セーフティ)として機能。暴走を防ぐ唯一の手段として、ミツルとの接触と精神的な感応が必要。自身の全てを捧げる覚悟を持ち、ミツルを守ることを使命としている。


心情と内面愛情: ミツルに対して無条件の愛情を注いでおり、彼女の存在はミツルにとって欠かせない心の拠り所となっている。愛情が恋であることに気づきながらも、その感情を告白することはできない。


支え: ミツルの冷たい態度や無口さの裏に隠された繊細な心を理解し、彼の孤独や苦しみを誰よりも感じ取っている。彼の心の支えとなることを自分の使命と感じ、彼を守るために自分の全てを捧げる覚悟を持っている。


内面の葛藤: 弓鶴(ミツル)が自分にとって特別でなくなるのではないかという不安を抱えながらも、彼の幸せを最優先に考え、自分の感情を抑え込んでいる。仲直りを図る際には自分を押し殺して彼らの関係を修復しようとするなど、内面的には複雑な感情が渦巻いている。

白きマウザーグレイル

基本情報正式名称: 精霊器接続式対魔族兵装 MW-CSV-DD MAUSER-GRELL(マウザーグレイル)

形状: 純白のロングソード

特徴: 刃に相当する部分がなく、実質的には何物も斬れない

構造と材質材質: 不明。構成素材については詳細が不明だが、非常に高い堅牢さを誇る。

耐久性: どんな魔獣の攻撃にもヒビ一つ入らないほどの堅牢さを持つ。

重量: 見た目よりも軽量で、非力なミツルでも自在に扱える。

機能と特性魔導兵装: 剣の形をとった魔導兵装であり、実際には物理的に斬ることはできない。

潜在能力: 現在のところ、ミツルもその実体と潜在能力については把握していない。

補助機能: ミツルの持つスキル「真凜」が安全装置として補助を行っている。

戦闘における役割安全装置: ミツルが持つ「深淵の黒鶴」の能力を制御するための安全装置として機能する。マウザーグレイルが実際の戦闘では使われないが、その存在がミツルの能力の安定に寄与している。

象徴的な意味: 剣そのものは物理的な攻撃力を持たないが、深い意味や力を秘めている可能性がある。特に、ミツルの精神的、象徴的な支えとしての役割を果たしている。

謎と疑問実体の不明: 現状、剣の具体的な機能やその実体についてはミツル自身も把握していない。剣の持つ潜在的な力や目的については謎に包まれている。発見される

可能性: 今後のストーリー展開で、その真の力や役割が明らかになる可能性がある。

ユベル・グロンダイル

 ミツルの父で、『閃光』の異名を持つ変幻自在の剣術を操る天才。すでに故人である。


ユベル・グロンダイルのキャラクター概要

年齢と外見:

年齢:50代外見:かつて金髪だったが、現在は黒く染めている。無精髭を蓄え、スリムで筋肉質な体型。優雅な立ち姿と流れるような戦闘動作が特徴。


役割と経歴:

元リーディス王国銀翼騎士団右翼リーダーであり、対魔獣戦のエキスパート。リーディス王国の銀翼騎士団に所属し、多くの戦場を経験。特に魔獣戦においてその名を馳せた。


基本戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の極みであり、その動きは流動的でまるで水のように変幻自在。力強さでは他の剣士に劣ることもあるが、素早さと身軽さで魔獣を屠る。ステップワークや変則的な体術を駆使し、敵の動きを予測させない巧妙な戦術を展開。回転しながらの斬撃や舞うような動きで敵の意識を散らし、戦局を有利に進める。


家族との関係:

妻:メイレア(元リーディス王国の第三王女)。非常に深い愛情を持ち、二人の関係はミツルにとって時折恥ずかしくなるほどの愛情表現がなされていた。娘:ミツルにとってユベルは憧れの対象であり、彼の戦闘スタイルや技術に強く影響を受けている。

最後の旅と戦い:

妻メイレアの行方不明後、ユベルは娘ミツルを連れて探索の旅に出る。愛する妻を取り戻すため、家族の絆を守るための決意を持っていた。未知の魔獣との戦いで命を落とし、その犠牲によってミツルは生き延びることができた。

白きマウザーグレイル:

ユベルが妻との絆として持っていた白きマウザーグレイルは、ミツルに託された。この剣はユベルの思いと愛情を象徴し、ミツルにとっては父の遺志を継ぐ重要なアイテム。


お尋ね者:

尊敬を集める存在だったが、妻を誘拐した罪が科せられ、お尋ね者として追われていた。ユベル・グロンダイルの戦闘スタイル


「柔」の戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の戦術を体現し、流動的で変幻自在な動きが特徴。彼の動きは舞踏家のように優雅でありながら、非常に戦術的で緻密。


ステップワークと回転体術:

軽やかなステップワークで敵の攻撃を避け、回転しながらの斬撃で敵を翻弄。体操選手やフィギュアスケーターを彷彿とさせる華麗な動きが特徴。


対魔獣戦の特化:

魔獣の懐に自在に出入りし、相手の身体を盾として利用することで最短距離からの攻撃を実現。風のように迅速で、敵の反応を許さない。

彼の戦闘スタイルを際立たせている。

前世での二人

 それは第二章で語られる。

虎洞寺健

美鶴と弓鶴の叔父で、保護者であり協力者。

能力が実用に耐えない血族が所属する郭外のリーダーで、自身は多数の企業を成功に導いた実業家で資産家。その貢献によって上層部にも大きな発言力を持ち、水面下で二人の活動をサポートする。彼の目的は深淵の呪いからの解放と深淵の解体である。

佐藤さん

 柚羽家のお手伝いさんで、美鶴の理解者。昔からの柚羽家のお手伝いさんで、その家事能力は超人。茉凜の料理の師匠。

真坂明

 15歳の少女で、身長は152センチメートル。黒のショートカットが特徴的で、衣装は、黒のクロップトップと高腰のパンツ、袖にディテールが施されたオープンジャケットで、全体的にクールでスタイリッシュな印象。均整の取れたスタイルも、洗練された雰囲気に一役買っている。

性格は情熱的で、自分が思ったことをはっきりと口にするタイプ。弓鶴の元許嫁であり、真坂家の次期後継者としての重責を担っている。また、「深淵の赤の流儀」の高度な術者でもあり、その実力は並外れている。彼女の存在感は、その内に秘めた強い意志と、家の名に恥じない実力から来ている。

明は破談後も弓鶴を想い続けており、それが彼女の能力の原動力になっている。自身が家の後継者となり、弓鶴を婿として迎えようと決意した結果、兄二人を殺害してしまう。

柚羽 美鶴

 ミツルの前世で転生時二十歳。その過去はダイジェストとして第二章で語られる。ミツルの内向的なところは彼女の成分。

 前世では茉凜に対して次第に恋心を抱いていくが、さまざまな問題が障害となって、素直に気持ちを伝えられずにいた。

 彼女のバルファへの転生がグロンダイル家にもたらした影響が、ミツルが戦い旅する理由。

鳴海沢洸人

深淵の血族、上帳を構成する三家の一つ、鳴海沢の長子。流儀青の強力な使い手。弓鶴の確保のために遣わされるが敗退し、その後弓鶴と茉凜の監視役として転校してくる。

数年前に暗殺に失敗し、その後始末として対象を家族諸共惨殺したことがきっかけで、殺せない欠陥品になってしまった。強力な血を残すために家に留め置かれ、鬱々とした日々を送っていた彼を変えたのは、深淵の始まりの回廊の巫女からの言葉だった。 

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