第46話 恋なんて絶対にしない

文字数 6,862文字

  この恐怖と苦しみを乗り越えなければ、茉凜を守れない――その思いだけが、私を支えていた。

 私の声は震えていた。話し始めた途端、茉凜の目に浮かぶ光が微かに揺れたのを見逃すことはなかった。彼女はじっと私を見つめ、その視線に触れるたびに、私の胸に痛みが走った。それは、私が告げる残酷に真実が、彼女にどれだけの重荷を与えているかの証だった。

  ◇        ◇

 私は茉凜に、自分の目的と深淵の血族の成り立ち、その元凶となった力の根源デルワーズの存在を明かした。

 私は過去の傷を引き裂くような痛みを伴いながらも、冷静に語ろうと必死だった。

 茉凜はじっと俯いたまま、私の言葉を静かに受け止めていた。彼女の視線はじっと私に向けられたままで、肩がわずかに震えているのが見えた。その姿は、突き付けられた真実に対して成すがままに圧倒されていて、私の胸を締めつけた。

「私の両親は血族全体を呪いから救うために解呪を願い、極秘裏にその準備を進めていた。だが、現在の上帳の支配体制は、解呪を望む勢力と、力に固執し失いたくないとする勢力に二分されている。後者にとって、解呪は権力と影響力の喪失に直結する。だから両親を抹殺した……」

 私の声は、力を込めようとするたびに震え、痛みを伴っていた。茉凜の目に浮かぶ涙が、私の胸を締めつけ、心を引き裂くような感覚を引き起こす。

「それで、ご両親が……」

 茉凜の声は震えていて、心にさらなる重荷を加える。私は短く頷くだけで、言葉を返すことができなかった。その沈黙が、私たちの間に深い溝を作り、言葉では表せない痛みと理解が交錯した。

「そんな、ひどい……」

 茉凜の声が震える中、彼女の涙が頬を伝っていく様子を見ながら、私は自分がいかに彼女を傷つけているのかを痛感した。心臓が潰されるような感覚した。それでも、私は続けるしかなかった。

「それから俺は姉と共に叔父上に助けられ、すべてを知った。両親が何を願い、何故殺されなければならなかったのかをな……」

 言葉を続けるたびに、声が詰まりそうになった。弓鶴との別れの記憶が、脳裏に鮮明に浮かび上がっていた。

「“姉”は、その遺志を継ぐことを決意した。あえて自からを差し出して柚羽家の後継者となり、始まりの回廊で言霊を伝える巫女になった。禁忌対象で処分される運命が待っているだろう、この俺を守るためにな……」

 私は弓鶴を守りたかった。そのためにすべてを捨てる覚悟だった。その時のことを思い出しながら、言葉が自然と口からこぼれ落ちていたのだ。

 茉凜の涙が頬を伝うのを見て、私の心は言葉では表せないほどの痛みと後悔で満ちていた。

「でも、その姉も突然失踪した……。解呪に失敗したのか、解呪反対派の強硬勢力に察知されて処分されたのか、それは定かではないが……」

 沈黙が再び二人の間に広がり、その間に流れる感情の深さを感じる。茉凜の目に映る涙の一粒一粒が、私の胸を締めつけ、その痛みがどこまでも深く広がった。

 私の胸の中に渦巻く不安がますます膨れ上がっていった。

 結局のところ、私は真実を改ざんし、彼女に嘘をついている。その罪悪感が、私の心臓を締め付け、私の身体を支配し、思考を鈍らせる。

 それは彼女を守るための嘘。でも、そんな言い訳はただの方便に過ぎない。実際には、それは私自身を守ろうとする卑怯な手段であり、茉凜の優しさに依存していたいという私の傲慢さと狡さの表れに過ぎない。私の心の奥底には、彼女の純粋な愛情と信頼を裏切っているという現実が、重くのしかかっていた。

 彼女に対して本当の自分を見せることはできない。私が何を言おうとも、何をしようとも、彼女に対して嘘をつき続ける限り、その信頼は裏切りに変わってしまう。私の心がどれほど切なく、どれほど痛んでいても、その現実から逃れる術はない。私が彼女に与えるべきだったのは、真実であり、誠実さであったはずなのに。

 黙り込むしかなかった私に茉凜が、優しく語りかけた。

「弓鶴くんは、そんなにも辛い思いをしてきたんだね……」

 彼女の声は柔らかく、まるで壊れものを扱うかのように優しい。私の痛みを感じ取り、私の悲しみを分かち合おうとしてくれている。彼女のその優しさが、私の心に刺さり、深い痛みとなって迫ってくる。

 その痛みを感じながらも、私は前に進まなければならない。それだけは絶対に曲げられないのだと、自分に言い聞かせる。しかし、その決意が、彼女の言葉と優しさによって揺らいでしまいそうになる。

「だから、俺はなんとしても、この力で解呪を達成させなければならない。それが残された者の義務なんだ」

「弓鶴くん……無理をしたらだめだよ。思い詰め過ぎたら、いいことなんてない」

 彼女の声は震えていた。その震えが、私の心に深く届き、彼女の心配が私の中に響く。しかし、私にはその願いを受け入れる余裕がなかった。

「大丈夫だ。俺はやらなきゃいけない。これだけは絶対に譲れないんだ……」

 私はそう言いながらも、彼女の顔を見ることができなかった。見てしまえば、きっと心が揺らいでしまうから。彼女の優しさに触れれば、決意が揺らいでしまうから。彼女のために、強くあろうとする自分と、それでも彼女の優しさに甘えたい自分が、心の中でせめぎ合っていた。

 茉凜は黙ったまま、私の手を握りしめた。その手の温もりが、私の心に温かい感情をもたらし、しかしそれと同時に、私の決意を試すような力が込められていた。

 茉凜の視線に秘められた思いが、私の心を深く揺さぶり、静かに流れる時間の中で、私たちの間に流れる感情の深さを感じさせた。

 それでも、私は自分の使命を忘れることはできなかった。そして、もう一度強い意志を持って前を向いた。

「これは俺にしか出来ないことだ。俺がやらなければ、みんなは救われない……」

 そう呟いた私の言葉は、風のように茉凜の耳をかすめた。彼女の瞳に浮かぶ涙が、私の胸を締めつけていた。

 それでも私は前に進むしかなかった。それが、私が選んだ道であり、彼女を守るための唯一の方法だと思っていたから。

「そうしなければ、血族の悲劇の連鎖は断ち切れない。あの鳴海沢洸人も、真坂明も、みんな力に生き方を捻じ曲げられてしまった犠牲者なんだ」

 彼らは、それぞれの事情で力と呪いに捕らわれ、犠牲になった。それと同じ運命を弟には辿らせたくない──その思いが、私の行動の原動力だった。

「俺が憎むべきは上帳ではない。この呪いにも等しい力そのものだ。こんなものは、この世から消し去らねばならない」

 そう言いながらも、私は耐えがたい罪悪感を覚えていた。彼女のそっと触れた手が、私の腕を優しく包み込む感触が、心に重くのしかかっていた。

「もし、呪いが解けたなら、弓鶴くんも自由になれるんだよね?」

 茉凜の声には、これまでとは違う明確な期待が込められていた。その期待が私の心を揺さぶり、応えたいという強い欲望と、恐怖が交錯していた。自由という概念があまりにも美しすぎて、私には手が届かない遠い夢のようだったのだ。

 解呪が成し遂げられ、弟を取り戻せたとしても、私にはもう一つの運命が待っている。弟を救うために、私自身がこの世界から消えるしかない。それは最初からわかっていたことだった。自分の存在がこの世界から消えるという現実を、茉凜には絶対に話せなかった。彼女の純粋な希望を壊すわけにはいかないからだ。それに、知らなくてもいいことだし、これは私だけの問題でしかないのだから。

 私が消え、弓鶴として戻れば、茉凜との大切な思い出は消え去る。医学的には単なる記憶喪失として片付けられるだろう。その一抹の卑怯さが私の胸を締めつける。でも、正体を知られるよりは、その方がずっとましだと思う。

 茉凜なら、記憶のない弓鶴を前にしても、大丈夫なはず。その先で二人の関係がどうなるかはわからないけれど、彼女なら安心して弓鶴のことを託せる。そう信じていた。

「ああ、自由になれるかもしれない」

 できるだけ穏やかに、そして優しくその言葉を返す。心の奥深くで私がどれほどの覚悟を決めているかを、茉凜には伝えたくなかった。彼女の前で強くあり続けようと決意していたからだ。

 茉凜の目に映る私が、希望を持ち続けられるように、彼女の期待に応えられるように、私はその決意を守り続けるつもりだった。彼女の心が私に寄り添い、私の痛みを分かち合ってくれるその瞬間を、大切にしながら、私の覚悟を貫こうと心に誓っていた。

「弓鶴くん……」

 茉凜の声は、私の心に柔らかく触れた。その声が耳に届いた瞬間、全てを忘れ、ただ彼女の温もりに包まれたいという衝動が一瞬だけ湧き上がる。しかし、それは許されない。私が抱える宿命を、彼女に押し付けるわけにはいかないから。

「茉凜。お前が信じてくれるなら、俺もそのために全力を尽くせる。リスクがあろうとも、俺たちの絆があれば、きっと乗り越えていけるはずだ」

 ぎこちなく微笑みながらも、心の奥底で決意を新たにした。ただただ切なさに打ちひしがれながらも、彼女のために強くあろうとする自分を誇りに思い、また一歩、前へ進もうとしていた。

 茉凜は小さく頷き、その頬に温かい微笑みを浮かべた。

「うん、今は辛いかもしれないけど、呪いが解けて自由になったら、きっと楽しいことがいっぱい待ってるよ。その時は、一緒にいろんな場所に行こう。たくさん遊んで、美味しいものをたくさん食べよう!」

 彼女の言葉には、茉凜らしい無邪気さと純粋さが込められていた。その未来を描く彼女の目は、まるで太陽のように輝いていたその光に照らされながら、彼女が夢見る未来がどこまでも明るく、希望に満ちているのを感じていた。

「お前ってやつは、本当に欲望に忠実だな……」

 軽く息をつきながらも、茉凜の言葉に心からの感謝の気持ちを抱いていた。彼女が描く未来が、たとえ私には届かないものであっても、彼女の幸せに満ちた笑顔を思い浮かべるだけで、私の胸は少しだけ軽くなるのだ。

 しかし、それと同時に、自分が彼女に背負わせる重荷の大きさを深く感じる。私の選んだ道が、彼女の未来に暗い影を落とす可能性があることを考えると、心が締め付けられる。

 解呪の場所で、私が何も言わず消えてしまうのを目にする時、彼女がどれほど傷つくかを思うと、切なさが胸に広がり、まるで鋭い刃物で切り刻まれるような痛みが襲う。

「こんな俺のわがままに巻き込んでしまって、本当に申し訳ない」

 その言葉が私の口から漏れると、心の奥底で深い痛みが広がった。自分の選んだ道が、彼女の幸せを壊してしまうかもしれない。その恐れと不安が、心に刻まれた傷をさらに深めていき、私はただ切なさに打ちひしがれていた。

 けれど、茉凜の反応は、私の心の痛みを優しく包み込むようなものであった。彼女は驚きに目を見開き、深呼吸をしながら、静かに、しかし確固たる決意を込めて言った。

「気にしないで。わたしは、あなたが抱えている痛みや苦しみを、少しでも分けてもらいたいの。だって、私たちはふたつでひとつの翼なんだから。それが、わたしのしたいことで……ちょっとしたわがままかな。うふへへ……」

 その言葉とともに放たれた彼女の小さな笑い声は、私にとってあまりにも優しく、切なさが一層深まった。彼女が示すその笑顔には、私がどれほど苦しんでいても、共にその痛みを分かち合いたいという真摯な思いが込められていた。

 彼女が選んだこの道は、単なる思いつきや衝動ではなく、私との深い絆から生まれたものであることが痛いほどに伝わってきた。そのシンプルで純粋な理由が、私の心に深く刻まれ、彼女と共に歩む道がどれほど意味のあるものであるかを再認識させられた。

「ありがとう、茉凜」

 私は彼女の瞳の中に映る自分の姿を見つめながら、私の胸には、彼女に対する深い感謝の気持ちと、共に進む道の険しさへの覚悟が交錯していた。

「わたしたちなら、きっとできるよ」

 茉凜のその言葉が、私の心に力強く響いた。彼女の言葉と、その瞳に映る期待が、私にとっての支えとなり、全力で自分の役割を果たす決意を新たにさせた。

「自由か。それは私が決して手に入れることのできないものかもしれないけれど、彼女に残す唯一の贈り物になるのかもしれない」

 心の中でそう思いながら、茉凜が涙を優しく拭ってくれるその手のひらを感じると、彼女の笑顔がまるで暗闇に輝く一筋の光のように、私の心に温かさをもたらした。彼女の優しさち微笑みがどれほど私にとって大切なものであるかを再確認させた。

「輝ける未来を信じて、頑張ろう」

 茉凜の、ちょっと恥ずかしくなるようなその明るい言葉に、私は心から感謝の気持ちを込めた微笑みを返した。

 彼女の存在が、どれほど私にとって大切で、支えとなっているかを深く感じながら、私は全てを捧げる覚悟を新たにした。

 この先に待っているだろう終着点で、彼女が感じるであろう失望や悲しみが、私にはどうしようもないものであると知りつつも、彼女の幸せを願う気持ちが、私の中でますます強くなる。茉凜がどんなに辛い思いをすることになっても、その笑顔を守りたい、そして彼女にとっての輝ける未来を信じて、私自身の苦しみを超えて進む覚悟を決めるのだった。

「ありがとう、茉凜」

 私が茉凜に感謝の言葉を述べると、その言葉が心の奥深くに響いた。彼女が涙を拭いながら微笑む姿は、私にとっての光であり、同時に私が背負うべき重荷の象徴でもあった。彼女の笑顔には、私がこの道を進む上での支えとなる希望と共に、私が抱える痛みと苦しみも含まれていた。だから、私はこれ以上の苦しみから逃れたくて、誓いを立てた。

「だから、私は恋なんてしない……。彼女を好きになるなんてこは絶対にしない。それだけは心に刻んでおく。そして、私は黙ったまま彼女を裏切って、惨めに消えていく。憎まれっていい。私のことなんて、すぐに忘れてほしいから。私の存在が彼女の未来に影を落とさないように、そっとこの世界からいなくなりたい」

 この決意を心の奥底で呟くたびに、私の胸は苦しさでいっぱいになった。その辛さと痛みは、彼女のために何をしても決して和らぐことはない。彼女の幸せを願う気持ちと、自分が背負うべき重荷の現実との間で揺れ動く自分を感じながら、私はただ打ちひしがれていた。

「茉凜、本当にありがとう」

 その一言に込めた感謝の気持ちは、涙と共に溢れ出ていた。彼女が私にくれた希望と温かさは、言葉では表しきれないほど深かった。

 茉凜が私の手を優しく握り返し、その瞳に揺るがぬ決意と優しさを映し出しているのを見つめると、私の心は切なさでいっぱいになる。

「わたしも覚悟を決めたからね。こうなったら、もう一蓮托生さ」

 彼女の勇猛なその言葉は、単なる激励ではなく、彼女の覚悟がどれほど深いものであるかを示すもので、私の胸を圧倒的な感動で満たした。そして、同時に深い切なさも込められていた。

「茉凜……」

 その名前が私の口から漏れると、私の声は震え、言葉が途切れてしまった。感情があふれ出し、思考が混乱して言葉が詰まる。

 彼女の姿が目の前に浮かび、心の奥深くに響き渡る。茉凜の強さと優しさは、私の心の中で一層鮮明に輝き、感謝と切なさが交錯する。

「どんなに辛くたって、どんなに厳しくたって、いっしょなら、きっと大丈夫だよ」

 彼女のその言葉が、私にとって最高の慰めであり、勇気づけられるものであると同時に、私の心に痛みをもたらす。

「お前がいてくれるから、俺は前に進むことができるんだ」

 その言葉を最後に、私たちは微笑み合った。心の奥底で抱えていた痛みや苦しみが、ほんの少しだけ和らぐ瞬間だった。

 茉凜の涙を拭い、再びその明るい笑顔を見せてくれるその姿が、私の心に温かさと切なさをもたらす。彼女の笑顔は、私にとって唯一の光であり、同時に私が背負うべき重荷の象徴でもあった。

「これからも、ずっといっしょだよ」

 茉凜の言葉が、私の胸に深く響く。その一言には、彼女が私と共に歩む未来への願いと希望が込められいて、どうしても痛みは避けられなかった。

 茉凜の目に映る私の姿は、彼女が想い描く明るい未来の一部であり、同時にその未来には私が存在しないことを私自身が知っている。彼女の言葉には、彼女の期待と願いが詰まっていて、その期待に応えることができない自分に対する切なさと悔しさが、私の心を圧迫する。

 小さく頷きながら、その言葉に込められた深い意味を感じ取るたびに、心の奥底で切なさが募る。茉凜が抱く願いと期待が、私の心を震わせ、同時に私が背負うべき宿命を思い起こさせる。

 私の決意は、新たに固められる。しかし、その決意がどれほど辛いものであるかを思うと、胸の奥で悲しみが渦巻く。茉凜の期待と願いが、私の心に深い痛みをもたらし、私がその期待に応えられないことへの切なさが、胸に広がっていくばかりだった。
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登場人物紹介

ミツル・グロンダイルのキャラクター設定

基本情報年齢: 12歳(外見年齢)


外見: この大陸では珍しい黒髪と薄緑の透き通った瞳。美しい容貌だが、体型は少し少年のようで、まな板の寸胴であることに敏感。自称年齢: 21歳(前世の記憶を持つため)


性格: 冷淡に見えながらも実は直情的で、一人でいることを好む。時折無邪気な一面を見せることがある。前世の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動き、冷静な大人の一面と子供っぽさが共存する複雑なキャラクター。


好物

食事に関しては美味しいものを少しだけなタイプ。剣の中の茉凜がアルコール依存になってしまったため。最近はお酒も嗜む。


社会的関係: 引っ込み思案で人付き合いが苦手なため、孤独を好む。しかし、孤独を埋めるために時折無邪気な一面を見せる。自分の力や能力に対する内なる葛藤と向き合いながら、過去の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動く。


ミツル・グロンダイルの物語における役割

憧れの存在: ユベル・グロンダイル(父)の影響を強く受けており、彼の戦闘スタイルや技術に憧れを抱く。父の遺志を継いで魔獣を狩る役割を担う。

遺産と使命: 父が遺した白きマウザーグレイルを持ち、彼の意志を継ぐ重要な役割を果たしている。彼女の能力と背景は、物語の重要な要素となっている。

謎と葛藤: 彼女の能力と前世の記憶には深い謎があり、物語の進行とともにその全容が明かされる可能性がある。彼女の内面的な葛藤や成長は、物語の核心に深く関わっている。


前世の名前: 柚羽 美鶴(ゆずは みつる)

年齢: 不明(死後、弟の弓鶴に憑依しているため、年齢としては弓鶴の年齢に準じる)

性別: 女性(現在は弟の弓鶴に憑依中)

出身地:九州地方某県の山中の柚羽家(深淵の三家の一つ、始まりの回廊の守護者)

職業: 柚羽家の後継者で深淵の始まりの回廊の巫女


 美鶴は深淵の三家の一つである柚羽家の長女であり、始まりの回廊の守護者。柚羽家襲撃事件で両親を失った後、叔父の虎洞寺氏に保護された。その後、両親の死の真相を知り、自ら人身御供になる覚悟を決め、柚羽家の後継者となった。彼女は密かに深淵の根源の再生を図り、解呪に臨んだが、その試みは失敗し、死亡した。


その後

 美鶴はデルワーズの画策により、弟の弓鶴と意識と記憶の全情報を交換させることで、彼に憑依する形で生き延びる。弟を取り戻すために再び解呪に進もうとした際、茉凜と出会う。茉凜が持つ「黒」の力の安全装置としての役割によって、二人は運命共同体となることが決まる。


 自らが女性であることに対する戸惑いと、茉凜に対する淡い感情を抱くようになり、自分が本当は弟ではないことや、茉凜が見ているのは弟であることに苦悩する。


 美鶴は両親の死の真相を知った後、自らが柚羽家の後継者として深淵の根源の再生を図ろうとしたが、その試みが失敗したことに対する責任感を抱えている。


 茉凜の猛烈なアタックに対して、次第に閉じていた心を開き始めると共に、彼女に対して淡い心を抱く。しかし、自分が本来女性であることや、それを知られることを怖れて受け入れることに苦しんでいる。


 美鶴は茉凜と共に深淵の根源の解呪に挑む中で、茉凜の存在が自らにとってどれほど重要であるかを認識し始める。しかし、彼女は自分の感情と状況に苦悩し、特に自分が女性として抱く感情や、茉凜が見ているのが自分ではなく弟であることに対して深い悩みを抱えている。


深淵の黒鶴

 精霊子に対する感受性が極めて高く、世界に漂うすべての精霊子を集積できる。彼女の前世の名前(美鶴)と組み合わせて【黒鶴】と呼ばれる。限定された空間(場裏)を形成し、その中でイメージ通りの現象を具現化。四大元素すべてを制御可能で、並列起動による複合行使も可能。背中に現れる翼は物質的ではなく、彼女の願望を投影したもの。


場裏

 限定された空間を形成し、その中で事象を操作。色で呼称される流儀に基づき、たとえば赤であれば熱の操作に関わり、イメージのままに具現化できる。詠唱や魔道具を必要としない強力な魔術として認識されている。戦闘と


能力の影響

 ミツルの戦闘スタイルは、前世の影響を色濃く受け継いでおり、流動的で柔軟な戦術が特徴。彼女の能力は瞬時に強力な現象を引き起こすことができ、そのため精神的な負荷が非常に大きい。精神崩壊や自我喪失のリスクが伴う。


精神的負荷

 精霊子の収集と能力の使用により、大脳辺縁系に過大な負荷がかかり、精神的な負担が大きい。特に精霊子への感受性が高い彼女は、負荷に耐えきれず暴走する危険がある。

ヴィル・ブルフォード

 ミツルの前にふらりと現れた、ぼさぼさ頭の無精髭の中年剣士。『黒髪のグロンダイル』の噂を聞きつけて訪れたという、彼の真意と思惑は?

 自らを『放浪のしがない剣士』と言う割に、その剣技は一流で、歴戦の強者。『雷光』とあだ名されると対魔獣戦のエキスパートで、その戦いぶりはミツルも舌を巻く。


年齢 48歳

身長 190センチ近い

体格 大柄で強靭

出身地 不明

職業  剣士、冒険者、元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長

髪: ぼさぼさの金髪。長さは無造作に伸びており、戦いの中で乱れたまま放置されている。

顔 無精ひげが顔全体に生えており、荒々しさと共に風格を漂わせている。

武器 中央に深い溝が彫られたブロードソード。鍛造で作られており、適度な粘りを持ち、滅多に折れない。


剣術スタイル

流派 雷光(らいこう)

特徴 巨体とその質量を生かした高速ダッシュ


戦闘スタイル

高速ダッシュ 雷のようなスピードで踏み込み、敵の懐に入り込む

敵の死角利用 相手の身体を死角として利用し、瞬時に繰り出される高速の斬撃で敵を仕留める

左手の傷 突きを繰り出す際に意図的に剣の先に左手を添え、敵の注意を引き付ける。実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、非常に巧妙。猪突猛進型でありながらも、臨機応変に対応できる柔軟さを持つ。これは、変幻自在で『型』のないユベルと毎日修練を積み重ねた結果(苦肉の策)による。


戦闘技術

片手剣術 基本的には片手でブロードソードを操るが、必要に応じて両刀も使うことができる。戦況に応じて剣の使い方を変え、迅速かつ的確に対応。


特殊技

雷光突き 瞬時に高速で踏み込み、突きを繰り出す技

閃光斬り 一瞬の隙を突き、相手の死角から高速で斬撃を繰り出す技


特徴と戦術

巨体と速度を生かして、魔獣の懐に入り込み、致命的な攻撃を繰り出す。視線誘導の技術で、敵の視線を引き付けてから攻撃する。


心理と性格

戦場での冷静な判断力と卓越した技術で、数々の戦場で名を馳せる。敵の動きを見極め、最適な攻撃や防御を選択する。どんな状況でも冷静に対応し、自信を持って戦う。猪突猛進型でありながら、変幻自在の戦術を使いこなす柔軟さを持つ。


元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長を務めた経験を持つ。騎士団時代の訓練と経験が、彼の戦術的な判断力と剣術の技術に大いに寄与している。特に、ユベルとの修練で得た経験が、彼の変幻自在な戦術に大きな影響を与えている。


その戦闘スタイル

一九〇センチ近い大柄な体躯を持ちながらも、その強靭な体に似合わぬほどの軽快さを誇る剣士。彼の手に握られているのは、ロングソードよりも短いブロードソードに近いもので、中央には深い溝が彫られている。この剣は鍛造で、適度な粘りを持ち、使い手によっては滅多に折れることがない。


ヴィルの剣術のスタイルは「雷光」と呼ばれ、彼の巨体とその質量を生かした高速ダッシュが特徴。彼は特に大きな魔獣を相手にするのが得意で、雷のようなスピードで踏み込むと、敵の懐に入り込み、相手の身体自体を死角として利用する。瞬時に繰り出される高速の斬撃で、敵を一気に仕留める。


特筆すべきは、彼の左手に傷が絶えないこと。これは、突きを繰り出す際に意図的に剣の先に手を添えて、その手に注意を引き付けるためだ。敵がその手に視線を奪われている間に、実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、彼の戦術は非常に巧妙。


ヴィルの剣は基本的に片手で操られることが多いが、必要に応じて双剣で戦うこともできる。その柔軟な使い方と、雷光のような素早さを駆使して、彼は戦場でその名を轟かせた。

茉凜(マリン)のキャラクター設定


基本情報年齢: 17歳

身長: 173センチ

プロポーション:高跳びの選手かファッションモデルのようなスラリとしたかっこいいスタイル。ただし本人は自覚なしで自信がない。 


外見: ミルクティーブラウンの髪、大きな瞳、お日様のような笑顔。純粋で優しい少女の姿が特徴的。


性格: 天真爛漫でポジティブ。どんな困難な状況でも明るさを失わず、死の淵の絶対的不利な状況でも輝く。特に追い込まれるとスイッチが切り替わり、予知視界を用いる能力が発揮される。


背景前世: 元々は私たちの世界に住んでいた人物。異世界に突然放り込まれ、さらに剣の中に転生させられるという過酷な運命を辿る。


役割: ミツルの相棒であり、恋人(?)。彼女の無条件の愛情と楽観的な性格がミツルの心の支えとなっている。過去のトラウマ: 落雷事故によるトラウマがあるが、それを嘆くことなく明るさを保ち続ける。ミツルにとっては大きな支え。


能力と役割能力: マウザーグレイル経由の予知視界。死の淵での絶対的不利な状況でも特に有効で、剣の中にあるこの能力が最大の武器である。


役割: ミツルの『深淵の黒鶴』を制御するための安全装置(セーフティ)として機能。暴走を防ぐ唯一の手段として、ミツルとの接触と精神的な感応が必要。自身の全てを捧げる覚悟を持ち、ミツルを守ることを使命としている。


心情と内面愛情: ミツルに対して無条件の愛情を注いでおり、彼女の存在はミツルにとって欠かせない心の拠り所となっている。愛情が恋であることに気づきながらも、その感情を告白することはできない。


支え: ミツルの冷たい態度や無口さの裏に隠された繊細な心を理解し、彼の孤独や苦しみを誰よりも感じ取っている。彼の心の支えとなることを自分の使命と感じ、彼を守るために自分の全てを捧げる覚悟を持っている。


内面の葛藤: 弓鶴(ミツル)が自分にとって特別でなくなるのではないかという不安を抱えながらも、彼の幸せを最優先に考え、自分の感情を抑え込んでいる。仲直りを図る際には自分を押し殺して彼らの関係を修復しようとするなど、内面的には複雑な感情が渦巻いている。

白きマウザーグレイル

基本情報正式名称: 精霊器接続式対魔族兵装 MW-CSV-DD MAUSER-GRELL(マウザーグレイル)

形状: 純白のロングソード

特徴: 刃に相当する部分がなく、実質的には何物も斬れない

構造と材質材質: 不明。構成素材については詳細が不明だが、非常に高い堅牢さを誇る。

耐久性: どんな魔獣の攻撃にもヒビ一つ入らないほどの堅牢さを持つ。

重量: 見た目よりも軽量で、非力なミツルでも自在に扱える。

機能と特性魔導兵装: 剣の形をとった魔導兵装であり、実際には物理的に斬ることはできない。

潜在能力: 現在のところ、ミツルもその実体と潜在能力については把握していない。

補助機能: ミツルの持つスキル「真凜」が安全装置として補助を行っている。

戦闘における役割安全装置: ミツルが持つ「深淵の黒鶴」の能力を制御するための安全装置として機能する。マウザーグレイルが実際の戦闘では使われないが、その存在がミツルの能力の安定に寄与している。

象徴的な意味: 剣そのものは物理的な攻撃力を持たないが、深い意味や力を秘めている可能性がある。特に、ミツルの精神的、象徴的な支えとしての役割を果たしている。

謎と疑問実体の不明: 現状、剣の具体的な機能やその実体についてはミツル自身も把握していない。剣の持つ潜在的な力や目的については謎に包まれている。発見される

可能性: 今後のストーリー展開で、その真の力や役割が明らかになる可能性がある。

ユベル・グロンダイル

 ミツルの父で、『閃光』の異名を持つ変幻自在の剣術を操る天才。すでに故人である。


ユベル・グロンダイルのキャラクター概要

年齢と外見:

年齢:50代外見:かつて金髪だったが、現在は黒く染めている。無精髭を蓄え、スリムで筋肉質な体型。優雅な立ち姿と流れるような戦闘動作が特徴。


役割と経歴:

元リーディス王国銀翼騎士団右翼リーダーであり、対魔獣戦のエキスパート。リーディス王国の銀翼騎士団に所属し、多くの戦場を経験。特に魔獣戦においてその名を馳せた。


基本戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の極みであり、その動きは流動的でまるで水のように変幻自在。力強さでは他の剣士に劣ることもあるが、素早さと身軽さで魔獣を屠る。ステップワークや変則的な体術を駆使し、敵の動きを予測させない巧妙な戦術を展開。回転しながらの斬撃や舞うような動きで敵の意識を散らし、戦局を有利に進める。


家族との関係:

妻:メイレア(元リーディス王国の第三王女)。非常に深い愛情を持ち、二人の関係はミツルにとって時折恥ずかしくなるほどの愛情表現がなされていた。娘:ミツルにとってユベルは憧れの対象であり、彼の戦闘スタイルや技術に強く影響を受けている。

最後の旅と戦い:

妻メイレアの行方不明後、ユベルは娘ミツルを連れて探索の旅に出る。愛する妻を取り戻すため、家族の絆を守るための決意を持っていた。未知の魔獣との戦いで命を落とし、その犠牲によってミツルは生き延びることができた。

白きマウザーグレイル:

ユベルが妻との絆として持っていた白きマウザーグレイルは、ミツルに託された。この剣はユベルの思いと愛情を象徴し、ミツルにとっては父の遺志を継ぐ重要なアイテム。


お尋ね者:

尊敬を集める存在だったが、妻を誘拐した罪が科せられ、お尋ね者として追われていた。ユベル・グロンダイルの戦闘スタイル


「柔」の戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の戦術を体現し、流動的で変幻自在な動きが特徴。彼の動きは舞踏家のように優雅でありながら、非常に戦術的で緻密。


ステップワークと回転体術:

軽やかなステップワークで敵の攻撃を避け、回転しながらの斬撃で敵を翻弄。体操選手やフィギュアスケーターを彷彿とさせる華麗な動きが特徴。


対魔獣戦の特化:

魔獣の懐に自在に出入りし、相手の身体を盾として利用することで最短距離からの攻撃を実現。風のように迅速で、敵の反応を許さない。

彼の戦闘スタイルを際立たせている。

前世での二人

 それは第二章で語られる。

虎洞寺健

美鶴と弓鶴の叔父で、保護者であり協力者。

能力が実用に耐えない血族が所属する郭外のリーダーで、自身は多数の企業を成功に導いた実業家で資産家。その貢献によって上層部にも大きな発言力を持ち、水面下で二人の活動をサポートする。彼の目的は深淵の呪いからの解放と深淵の解体である。

佐藤さん

 柚羽家のお手伝いさんで、美鶴の理解者。昔からの柚羽家のお手伝いさんで、その家事能力は超人。茉凜の料理の師匠。

真坂明

 15歳の少女で、身長は152センチメートル。黒のショートカットが特徴的で、衣装は、黒のクロップトップと高腰のパンツ、袖にディテールが施されたオープンジャケットで、全体的にクールでスタイリッシュな印象。均整の取れたスタイルも、洗練された雰囲気に一役買っている。

性格は情熱的で、自分が思ったことをはっきりと口にするタイプ。弓鶴の元許嫁であり、真坂家の次期後継者としての重責を担っている。また、「深淵の赤の流儀」の高度な術者でもあり、その実力は並外れている。彼女の存在感は、その内に秘めた強い意志と、家の名に恥じない実力から来ている。

明は破談後も弓鶴を想い続けており、それが彼女の能力の原動力になっている。自身が家の後継者となり、弓鶴を婿として迎えようと決意した結果、兄二人を殺害してしまう。

柚羽 美鶴

 ミツルの前世で転生時二十歳。その過去はダイジェストとして第二章で語られる。ミツルの内向的なところは彼女の成分。

 前世では茉凜に対して次第に恋心を抱いていくが、さまざまな問題が障害となって、素直に気持ちを伝えられずにいた。

 彼女のバルファへの転生がグロンダイル家にもたらした影響が、ミツルが戦い旅する理由。

鳴海沢洸人

深淵の血族、上帳を構成する三家の一つ、鳴海沢の長子。流儀青の強力な使い手。弓鶴の確保のために遣わされるが敗退し、その後弓鶴と茉凜の監視役として転校してくる。

数年前に暗殺に失敗し、その後始末として対象を家族諸共惨殺したことがきっかけで、殺せない欠陥品になってしまった。強力な血を残すために家に留め置かれ、鬱々とした日々を送っていた彼を変えたのは、深淵の始まりの回廊の巫女からの言葉だった。 

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