第8話 ヴィルとの対決

文字数 6,067文字

 翌日の昼過ぎ、私はハンターギルドに到着した。

 エレダンの魔獣ハンターギルドは、冒険者ギルドのように多種多様な依頼を受けるのではなく、魔獣の体内から採取される魔石を手に入れることに特化している。この魔石は高い有用性を持ち、サイズや純度の高いものは含有する魔力量の高さから高値で売れる。ギルドはハンターたちから魔石を買い上げ、その収益で運営されている。

 ハンターの活動は基本的に自由だ。ソロで活動するもよし、パーティーを組むもよし。私はいつもソロだ。人付き合いは苦手だし、自分の力をあまり人に見せたくないという理由もある。

 ギルドのマップには、毎日更新される魔獣の出没情報が掲載されている。このマップはギルドハウス内に掲示されており、全てのハンターが自由に閲覧できる。

 狩り場の選択も自由で、ハンターたちはマップと出現した魔獣のタイプを見て、自分の力量に合った狩り場を選ぶ。難易度もマップ上で判別でき、各々が自己裁量と自己責任で行動する。

 また、ギルド内にハンターの階級は存在せず、評価基準は稼ぎが全て。成果を上げた者が報酬を得るというシンプルな仕組みだ。

「さてと……」

 私はギルドハウス内を見回した。ヴィルとの約束の時間までまだ少しあったけれど、彼は必ず来るという確信があった。

 受付カウンターに向かおうとすると、何人かの同業者とすれ違う。その中の一人が私に声を掛けてきた。それは馴染みのある顔だった。

「よお、ミツル。調子はどうだい?」

「まあまあ、といったところね。マティウス、あなた怪我はもういいの?」

 右腕に痛々しい包帯を巻いた中肉中背の彼は、ハンターたちの中では一風変わったスキルの持ち主で、専門は罠職人(トラッパー)だ。彼の罠は魔獣用の特別製で、発動すると強烈な雷撃ダメージでスタン効果を与える。彼はその術式に適応する大気属性の魔術師としての才を兼ね備えていた。

「こんなのはかすり傷さ。ところで酒場で耳にしたんだが、なんでも果たし合いをするとか?」

 私は激しく疑問に感じて、マティウスをじっと睨んだ。

「なによ、その物騒な話。どうしてそんな変な噂になってるの?私がこれからするのは、単なる手合わせよ。練習試合みたいなもの」

「そうか? けど昨夜からみんなで賭けになってるみたいだぜ。黒髪のグロンダイル対素性の知れない謎の剣士ってな」

 私は悪態をつきたくなった。

「呆れた……。私を賭けの対象にするなんて、なんて暇人なの?」

 その言葉とともに、他の連中もやってきて、私を取り囲んだ。

 髭をたくわえた巨漢の斧使い、ボッツーリが笑いながら言った。

「よお、もちろん俺はお前に賭けたぞ。なにせ向かうところ敵なしの黒髪のグロンダイルだからな」

 彼の笑顔には期待がこもっていたが、私の内心はその逆だった。

 少しキザに決めた長身の槍使い、マークは「ふふん」と格好をつけて言った。

「そうさ、君は最強なんだ。負けるはずがないよ」

 その「最強」という言葉が、私の耳に重く響いた。強いといっても私が相手にしてきたのは魔獣で、それも雑魚ばかりだ。それに対人経験はまるで無いと言っていい。ましてや、これから待ち受けている相手というのは……。

 ヴィルから放たれた独特の雰囲気。そして、父さまの友人であったという過去。それらを考えれば、父さまと同格の力量の持ち主であろうことは、容易に想像がつく。そして、私は彼に剣で立ち向かわなければならない。

 内心の不安と期待が交錯する中、私はその言葉を聞き流そうとした。プレッシャーが私を包み込むが、それでも前に進むしかない。

「そう簡単に済むような相手じゃないだろうけどね……」

 そう呟くと、私は受付カウンターに座るギルドマスターのベルデンさんに話しかけた。

「こんにちは」
 
 細身で清潔な身なりの彼は、この荒くれ者ばかりのハンターたちの中にあって、唯一の常識人ともいえた。

「こんにちは、グロンダイルさん。昨日はご苦労さまでした。カイルくんたちから聞きましたよ。よく彼らを救けてくれましたね」

「それは、まあ……。たまたま通りがかっただけだし」

 少し顔を赤らめながら、私はそう答えた。そして、要件を伝えるために話題を切り替えた。

「マスター、これから修練場の方を使わせてもらいたいんだけど、いいかしら?」

「今はみんな狩りに出払っていますし、どうぞご自由にお使いください」

「ありがとう」

 そう言って奥に向かおうとした私に、ベルデンさんが一言、冷静に告げた。

「ご存知かとは思いますが、損害が生じた場合は実費での現状回復が求められますので、お忘れなきように」

 さすが勘定にはシビアだ。私がこれかをしようとしている事も耳にしているのだろう。

「わかったわ。ちょっと危険かもしれないから、誰も立ち入らないようにして」

「わかりました。ではご武運を」

       ◇         ◇

 奥へと進み、修練場の扉を開けた瞬間、私はびっくりした。

 そこにはすでにヴィルの姿があったのだ。彼は腕組みして、無言で私を待っていた。まさか先に来ているとは思いもしなかった。

「よう、来たか」

 彼の鋭い視線が私を捉えた瞬間、その威圧感に圧倒されそうになった。それでも私は一歩前に出て、毅然とした態度で彼に向き合った。

「ええ、約束どおりにね」

 私の答えに、ヴィルは満足そうに微笑んだ。そして、彼は距離を置いて向き合うとゆっくりと剣を抜いた。余計な言葉などいらない。そういう意味なのだろう。

 私もまた、彼と同じように剣を鞘から抜いた。刃のない刀身が差し込む日の光を反射して煌めき、修練場の空気が一層引き締まった。

 私は彼の剣をじっと観察した。その剣は、彼の大柄な体格に比べて不釣り合いなほど短かった。体格とリーチの利を生かす戦い方をするのがセオリーと思っていた私は、完全に予想を外されてしまった。きっと何か深い理由があるに違いないと直感した。

 ヴィルは己の剣を確かめながら私に言った。

「始める前に、ルールを決めよう」

「ルール?」

「こうしよう。俺の打ち込みに二回耐えられたら、それでも立っていられたなら、お前の勝ちだ。あと魔術は自由に使っていい。ただし、ここをぶっ壊さない程度にしとけ」

 彼の申し出に、私は少し戸惑っていた。

 手練れの相手に剣を当てることなど、私には困難だとわかっている。でもたった二回の鍔迫り合いでいいのだろうか。それで何がわかるというのだろう。だけど、決めた以上は素直に受け入れるしかない。

 私は頷いた。

「それでいいわ」

「では、いくぞ……」

 ヴィルの低く静かな声が修練場全体に響き渡り、その瞬間、私たちは互いに臨戦態勢に入った。張り詰めた緊張感が空気を支配し、私の心もそれに応じて高まっていく。

 そんな時、茉凜の声が私の心の奥底に静かに降りてきて、その柔らかな響きが全身を包み込んだ。



 その言葉は、私の心に確かな安堵をもたらした。彼女の力――それがどれほどの助けになるのか、私にはもう分かっている。彼女はいつも、私にとっての光なのだから。

「うん、力を貸して。あなたの『導き手』の力、マザーグレイルの予知の視界を使ってみる」

 一瞬の沈黙があり、茉凜はためらうように、小さな声で応えた。



「もちろん、わかってるよ」

 茉凜の未来視は、単なる異能ではない。それは彼女が私に示してくれる、道しるべ――無数の並行する世界の中から、最も現実に近い未来の断片を見せてくれる光。それでも、決して確定されたものではなく、予測に過ぎないのだ。彼女が見る未来は、揺らぎ、かすかに異なることもあるけれど、それでもその力には計り知れない価値がある。

 前世の彼女は、この力を任意に制御することができなかった。しかし今は違う。今の茉凜は、まるで剣の中に宿る静かな管理者のように、未来の糸を織り上げ、運命を静かに見守っている。

 だが、その力には大きなリスクがある。予知視を使うたびに、彼女の現実の視界は並行世界を覗き見る視界に切り替わる。背景は暗闇に包まれ、ただ見るべきものだけが白くかすんだ像として浮かび上がる。そして、その視界に従って行動しようとすると、認識と現実の動作とでずれが生じしまうのだ。わずかなタイムラグが生まれ、思ったよりも身体が遅れて反応してしまう。

 それでも、私はためらわなかった。茉凜に対する信頼が、私の中には揺るぎなく存在していたからだ。

「ありがとう、茉凜。あなたを信じて、全力でやってみる」

 私は茉凜の力に、何度も救われてきた。そのことを思えば、これ以上の支えはない。彼女が導いてくれるからこそ、私はここまで歩んでこれたのだ。

 茉凜はいつも、不確実な未来の中から、私に進むべき道を照らしてくれる。彼女の力がなければ、数々の試練を乗り越えることなどできなかっただろう。前世から受け継がれたその力――バルファの異世界から来たマウザーグレイルが、彼女に与えたものなのだと、私は深く理解している。

 茉凜が、私の心にそっと微笑んだ気がした。



その柔らかな言葉は、まるで小さな光が心の中に灯ったようだった。彼女がいる限り、私はどんな困難も乗り越えられる。

 ヴィルは剣を上段に構えた。その構えは一風変わっていて、まるで時代劇に出てくる示現流の蜻蛉の構えにも似ていた。下半身をどっしりと落ち着け、その威圧感は一層の緊張感を生み出していた。

 私は心を冷静さを保ちながら、戦略を練る。そう、私は決して無策でここに来たわけではない。数々の経験と準備を重ね、今ここに立っているのだ。これからの戦いには、私のすべてをかけるつもりだ。

 この狭い修練場を破壊しない程度に、深淵の黒鶴(※1)の場裏(※2)と現象の具現化を使う。使うとすれば、流儀白の大気炸裂(エアバースト)だ。

 時々、気合いをいれるために、技の名前を叫ぶこともあるけれど、本当はそんなものは必要ないし、格好をつけていられる相手ではない。

 私が持っている異能で形成するのは、小さな『場裏』と呼ばれる白い靄に包まれた球体状の限定領域。その中で私のイメージに基づいた事象が具現化される。

 そこで急速に圧縮した大気を一気に解放する。それはいわば空気の爆弾のようなもので、相手を突き飛ばすにも、盾として使うにも、自分自身を加速させる為にも使える。これを相手の目の前で発動させれば、攻撃を防御し、その勢いを減衰させることも可能なはずだ。

 私は手の内を悟られないように背後に隠すように場裏を展開させ、圧縮された大気を準備する。気配を消して静かに広げるのが肝心だ。

 でも、ヴィルの動きが読めない。

 彼はじっと私を見つめ、微動だにせず、ただ、猛烈な威圧感だけを放っている。私の心は焦燥感に包まれる。

 緊張が走る。ヴィルの威圧感は、確実に私の心を圧迫していた。その中で、私は茉凜と心を通わせながら、準備を整えようとしていた。呼吸が次第に深くなり、心を集中させていくそのプロセスは、まるで時間が遅くなるようにも感じられた。

 茉凜の声が心の奥深くに静かに響き、私の焦りを和らげるように囁く。



「うん……」

 私は息を静かに吸い込みながら、心の中で茉凜との絆が深まっていくのを感じた。その微細な感覚を頼りに、私はヴィルの動きを待ち続けた。

 ヴィルの視線は冷徹で、無言のまま私を見つめている。彼の呼吸は均等で、体の動きには無駄がなく、剣はしっかりと構えられている。

 その圧倒的な気迫と力の溜まりを前に、私は深い集中力を持ってその瞬間を待った。

「来る!」

 その一言が私の心を引き締めた瞬間、ヴィルの体がわずかに動き、彼の気配が一変するのを感じた。私はその変化に即座に反応し、茉凜との深い絆を武器に、全身全霊で戦いに挑む準備を整えた。

 そして、スイッチが切り替わるように瞬時にして視界が真っ暗になる。そして、茉凜の存在が私の中に流れ込み、未来の断片が白い像として浮かび上がっていった。

 ヴィルの動きが次第に明らかになっていくのを感じる。心の中で急かされるように、私は遅れを取らないよう必死に反応した。

 エアバーストの準備が整い、場裏の中で圧縮された大気がじわじわと膨張を始めた。

 ヴィルの爆発的な加速が、視界の端で鋭く光り、その剣が一瞬で振り下ろされる気配が迫ってくる。その瞬間の速さに、私の身体がついていけるかどうか、不安が心をよぎった。

 背中に隠していた場裏が、私の前に瞬間移動し、その表面の一部が解除されて、圧縮された空気が一気に解放されて、私の前へと飛び出す。心の中で希望と不安が交錯しながら、剣を振り下ろすヴィルに向かってエアバーストが発動した。

 だが、その圧倒的な力は私の計算を超えていた。

 ヴィルの剣が空気の塊を引き裂き、爆風が修練場の壁に亀裂を入れる。その剣の勢いは私の予想をはるかに超え、圧縮解放された大気をものともせずに引き裂いた。

 ありえない。その光景に私は驚愕し、心が支配される。

 ヴィルの剣から放たれる力には、私が想像していた以上の威力と技巧が込められていた。圧倒的な力が心と身体を圧迫し、視界が暗転する中で、止まることなく未来の断片が、白い像として次々と浮かび上がる。

 私は瞬時に反応し、刃のないマウザーグレイルの刀身をもう片手で支え、両腕の力で正面に掲げる準備を整えた。しかし、予知視界に対する身体の動きが遅れ、間に合うかどうかわからない。

 体がその衝撃を受け止める準備が整う前に、ヴィルの剣が一瞬で刀身に直撃した。刃のない刀身が、猛烈な剣撃を受け止めようと必死に耐え、全身に走る凄まじい衝撃が私を打ちのめす。

 堪えろ。言葉にならない叫びが頭の中で弾ける。受け止めきれない力に身体が後ろに押しやられそうになるが、背後に残しておいたもう一個の場裏の中で急速に圧縮された大気が、ほんの少しだけ衝撃緩衝として寄与した。

 それでも、その衝撃の重みに私の身体は耐えられず、心は押し潰されるような感覚に包まれていた。

「これほどとは……」

 一撃の鋭さと重さ。それはとても人間技とは思えなかった。その圧倒的な力の前に、私はただ圧倒されるばかりだった。


※1 深淵の黒鶴
 この世界の魔術は魔石から魔力を抽出するが、彼女の異能はそれとはアプローチが根本的に異なる、この世界に見えない形で漂う、精霊の残滓である精霊子を集めて変換することで実現する。
 深淵は私たちの世界で魔術を再現させた異能で、四大属性に基づくスキルは四種類の色で分類されている。
 この他に定義されない番外規格がミツルの黒であり、全属性を使いこなし、規格外の精霊子に対する感受性と器の容量を誇る。ただし、常に暴走の危険性と背中合わせであり、心をつなぎとめる安全装置が不可欠。

※2 場裏は深淵の術者が、異能の力を実現させるために作る限定領域。
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登場人物紹介

ミツル・グロンダイルのキャラクター設定

基本情報年齢: 12歳(外見年齢)


外見: この大陸では珍しい黒髪と薄緑の透き通った瞳。美しい容貌だが、体型は少し少年のようで、まな板の寸胴であることに敏感。自称年齢: 21歳(前世の記憶を持つため)


性格: 冷淡に見えながらも実は直情的で、一人でいることを好む。時折無邪気な一面を見せることがある。前世の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動き、冷静な大人の一面と子供っぽさが共存する複雑なキャラクター。


好物

食事に関しては美味しいものを少しだけなタイプ。剣の中の茉凜がアルコール依存になってしまったため。最近はお酒も嗜む。


社会的関係: 引っ込み思案で人付き合いが苦手なため、孤独を好む。しかし、孤独を埋めるために時折無邪気な一面を見せる。自分の力や能力に対する内なる葛藤と向き合いながら、過去の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動く。


ミツル・グロンダイルの物語における役割

憧れの存在: ユベル・グロンダイル(父)の影響を強く受けており、彼の戦闘スタイルや技術に憧れを抱く。父の遺志を継いで魔獣を狩る役割を担う。

遺産と使命: 父が遺した白きマウザーグレイルを持ち、彼の意志を継ぐ重要な役割を果たしている。彼女の能力と背景は、物語の重要な要素となっている。

謎と葛藤: 彼女の能力と前世の記憶には深い謎があり、物語の進行とともにその全容が明かされる可能性がある。彼女の内面的な葛藤や成長は、物語の核心に深く関わっている。


前世の名前: 柚羽 美鶴(ゆずは みつる)

年齢: 不明(死後、弟の弓鶴に憑依しているため、年齢としては弓鶴の年齢に準じる)

性別: 女性(現在は弟の弓鶴に憑依中)

出身地:九州地方某県の山中の柚羽家(深淵の三家の一つ、始まりの回廊の守護者)

職業: 柚羽家の後継者で深淵の始まりの回廊の巫女


 美鶴は深淵の三家の一つである柚羽家の長女であり、始まりの回廊の守護者。柚羽家襲撃事件で両親を失った後、叔父の虎洞寺氏に保護された。その後、両親の死の真相を知り、自ら人身御供になる覚悟を決め、柚羽家の後継者となった。彼女は密かに深淵の根源の再生を図り、解呪に臨んだが、その試みは失敗し、死亡した。


その後

 美鶴はデルワーズの画策により、弟の弓鶴と意識と記憶の全情報を交換させることで、彼に憑依する形で生き延びる。弟を取り戻すために再び解呪に進もうとした際、茉凜と出会う。茉凜が持つ「黒」の力の安全装置としての役割によって、二人は運命共同体となることが決まる。


 自らが女性であることに対する戸惑いと、茉凜に対する淡い感情を抱くようになり、自分が本当は弟ではないことや、茉凜が見ているのは弟であることに苦悩する。


 美鶴は両親の死の真相を知った後、自らが柚羽家の後継者として深淵の根源の再生を図ろうとしたが、その試みが失敗したことに対する責任感を抱えている。


 茉凜の猛烈なアタックに対して、次第に閉じていた心を開き始めると共に、彼女に対して淡い心を抱く。しかし、自分が本来女性であることや、それを知られることを怖れて受け入れることに苦しんでいる。


 美鶴は茉凜と共に深淵の根源の解呪に挑む中で、茉凜の存在が自らにとってどれほど重要であるかを認識し始める。しかし、彼女は自分の感情と状況に苦悩し、特に自分が女性として抱く感情や、茉凜が見ているのが自分ではなく弟であることに対して深い悩みを抱えている。


深淵の黒鶴

 精霊子に対する感受性が極めて高く、世界に漂うすべての精霊子を集積できる。彼女の前世の名前(美鶴)と組み合わせて【黒鶴】と呼ばれる。限定された空間(場裏)を形成し、その中でイメージ通りの現象を具現化。四大元素すべてを制御可能で、並列起動による複合行使も可能。背中に現れる翼は物質的ではなく、彼女の願望を投影したもの。


場裏

 限定された空間を形成し、その中で事象を操作。色で呼称される流儀に基づき、たとえば赤であれば熱の操作に関わり、イメージのままに具現化できる。詠唱や魔道具を必要としない強力な魔術として認識されている。戦闘と


能力の影響

 ミツルの戦闘スタイルは、前世の影響を色濃く受け継いでおり、流動的で柔軟な戦術が特徴。彼女の能力は瞬時に強力な現象を引き起こすことができ、そのため精神的な負荷が非常に大きい。精神崩壊や自我喪失のリスクが伴う。


精神的負荷

 精霊子の収集と能力の使用により、大脳辺縁系に過大な負荷がかかり、精神的な負担が大きい。特に精霊子への感受性が高い彼女は、負荷に耐えきれず暴走する危険がある。

ヴィル・ブルフォード

 ミツルの前にふらりと現れた、ぼさぼさ頭の無精髭の中年剣士。『黒髪のグロンダイル』の噂を聞きつけて訪れたという、彼の真意と思惑は?

 自らを『放浪のしがない剣士』と言う割に、その剣技は一流で、歴戦の強者。『雷光』とあだ名されると対魔獣戦のエキスパートで、その戦いぶりはミツルも舌を巻く。


年齢 48歳

身長 190センチ近い

体格 大柄で強靭

出身地 不明

職業  剣士、冒険者、元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長

髪: ぼさぼさの金髪。長さは無造作に伸びており、戦いの中で乱れたまま放置されている。

顔 無精ひげが顔全体に生えており、荒々しさと共に風格を漂わせている。

武器 中央に深い溝が彫られたブロードソード。鍛造で作られており、適度な粘りを持ち、滅多に折れない。


剣術スタイル

流派 雷光(らいこう)

特徴 巨体とその質量を生かした高速ダッシュ


戦闘スタイル

高速ダッシュ 雷のようなスピードで踏み込み、敵の懐に入り込む

敵の死角利用 相手の身体を死角として利用し、瞬時に繰り出される高速の斬撃で敵を仕留める

左手の傷 突きを繰り出す際に意図的に剣の先に左手を添え、敵の注意を引き付ける。実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、非常に巧妙。猪突猛進型でありながらも、臨機応変に対応できる柔軟さを持つ。これは、変幻自在で『型』のないユベルと毎日修練を積み重ねた結果(苦肉の策)による。


戦闘技術

片手剣術 基本的には片手でブロードソードを操るが、必要に応じて両刀も使うことができる。戦況に応じて剣の使い方を変え、迅速かつ的確に対応。


特殊技

雷光突き 瞬時に高速で踏み込み、突きを繰り出す技

閃光斬り 一瞬の隙を突き、相手の死角から高速で斬撃を繰り出す技


特徴と戦術

巨体と速度を生かして、魔獣の懐に入り込み、致命的な攻撃を繰り出す。視線誘導の技術で、敵の視線を引き付けてから攻撃する。


心理と性格

戦場での冷静な判断力と卓越した技術で、数々の戦場で名を馳せる。敵の動きを見極め、最適な攻撃や防御を選択する。どんな状況でも冷静に対応し、自信を持って戦う。猪突猛進型でありながら、変幻自在の戦術を使いこなす柔軟さを持つ。


元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長を務めた経験を持つ。騎士団時代の訓練と経験が、彼の戦術的な判断力と剣術の技術に大いに寄与している。特に、ユベルとの修練で得た経験が、彼の変幻自在な戦術に大きな影響を与えている。


その戦闘スタイル

一九〇センチ近い大柄な体躯を持ちながらも、その強靭な体に似合わぬほどの軽快さを誇る剣士。彼の手に握られているのは、ロングソードよりも短いブロードソードに近いもので、中央には深い溝が彫られている。この剣は鍛造で、適度な粘りを持ち、使い手によっては滅多に折れることがない。


ヴィルの剣術のスタイルは「雷光」と呼ばれ、彼の巨体とその質量を生かした高速ダッシュが特徴。彼は特に大きな魔獣を相手にするのが得意で、雷のようなスピードで踏み込むと、敵の懐に入り込み、相手の身体自体を死角として利用する。瞬時に繰り出される高速の斬撃で、敵を一気に仕留める。


特筆すべきは、彼の左手に傷が絶えないこと。これは、突きを繰り出す際に意図的に剣の先に手を添えて、その手に注意を引き付けるためだ。敵がその手に視線を奪われている間に、実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、彼の戦術は非常に巧妙。


ヴィルの剣は基本的に片手で操られることが多いが、必要に応じて双剣で戦うこともできる。その柔軟な使い方と、雷光のような素早さを駆使して、彼は戦場でその名を轟かせた。

茉凜(マリン)のキャラクター設定


基本情報年齢: 17歳

身長: 173センチ

プロポーション:高跳びの選手かファッションモデルのようなスラリとしたかっこいいスタイル。ただし本人は自覚なしで自信がない。 


外見: ミルクティーブラウンの髪、大きな瞳、お日様のような笑顔。純粋で優しい少女の姿が特徴的。


性格: 天真爛漫でポジティブ。どんな困難な状況でも明るさを失わず、死の淵の絶対的不利な状況でも輝く。特に追い込まれるとスイッチが切り替わり、予知視界を用いる能力が発揮される。


背景前世: 元々は私たちの世界に住んでいた人物。異世界に突然放り込まれ、さらに剣の中に転生させられるという過酷な運命を辿る。


役割: ミツルの相棒であり、恋人(?)。彼女の無条件の愛情と楽観的な性格がミツルの心の支えとなっている。過去のトラウマ: 落雷事故によるトラウマがあるが、それを嘆くことなく明るさを保ち続ける。ミツルにとっては大きな支え。


能力と役割能力: マウザーグレイル経由の予知視界。死の淵での絶対的不利な状況でも特に有効で、剣の中にあるこの能力が最大の武器である。


役割: ミツルの『深淵の黒鶴』を制御するための安全装置(セーフティ)として機能。暴走を防ぐ唯一の手段として、ミツルとの接触と精神的な感応が必要。自身の全てを捧げる覚悟を持ち、ミツルを守ることを使命としている。


心情と内面愛情: ミツルに対して無条件の愛情を注いでおり、彼女の存在はミツルにとって欠かせない心の拠り所となっている。愛情が恋であることに気づきながらも、その感情を告白することはできない。


支え: ミツルの冷たい態度や無口さの裏に隠された繊細な心を理解し、彼の孤独や苦しみを誰よりも感じ取っている。彼の心の支えとなることを自分の使命と感じ、彼を守るために自分の全てを捧げる覚悟を持っている。


内面の葛藤: 弓鶴(ミツル)が自分にとって特別でなくなるのではないかという不安を抱えながらも、彼の幸せを最優先に考え、自分の感情を抑え込んでいる。仲直りを図る際には自分を押し殺して彼らの関係を修復しようとするなど、内面的には複雑な感情が渦巻いている。

白きマウザーグレイル

基本情報正式名称: 精霊器接続式対魔族兵装 MW-CSV-DD MAUSER-GRELL(マウザーグレイル)

形状: 純白のロングソード

特徴: 刃に相当する部分がなく、実質的には何物も斬れない

構造と材質材質: 不明。構成素材については詳細が不明だが、非常に高い堅牢さを誇る。

耐久性: どんな魔獣の攻撃にもヒビ一つ入らないほどの堅牢さを持つ。

重量: 見た目よりも軽量で、非力なミツルでも自在に扱える。

機能と特性魔導兵装: 剣の形をとった魔導兵装であり、実際には物理的に斬ることはできない。

潜在能力: 現在のところ、ミツルもその実体と潜在能力については把握していない。

補助機能: ミツルの持つスキル「真凜」が安全装置として補助を行っている。

戦闘における役割安全装置: ミツルが持つ「深淵の黒鶴」の能力を制御するための安全装置として機能する。マウザーグレイルが実際の戦闘では使われないが、その存在がミツルの能力の安定に寄与している。

象徴的な意味: 剣そのものは物理的な攻撃力を持たないが、深い意味や力を秘めている可能性がある。特に、ミツルの精神的、象徴的な支えとしての役割を果たしている。

謎と疑問実体の不明: 現状、剣の具体的な機能やその実体についてはミツル自身も把握していない。剣の持つ潜在的な力や目的については謎に包まれている。発見される

可能性: 今後のストーリー展開で、その真の力や役割が明らかになる可能性がある。

ユベル・グロンダイル

 ミツルの父で、『閃光』の異名を持つ変幻自在の剣術を操る天才。すでに故人である。


ユベル・グロンダイルのキャラクター概要

年齢と外見:

年齢:50代外見:かつて金髪だったが、現在は黒く染めている。無精髭を蓄え、スリムで筋肉質な体型。優雅な立ち姿と流れるような戦闘動作が特徴。


役割と経歴:

元リーディス王国銀翼騎士団右翼リーダーであり、対魔獣戦のエキスパート。リーディス王国の銀翼騎士団に所属し、多くの戦場を経験。特に魔獣戦においてその名を馳せた。


基本戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の極みであり、その動きは流動的でまるで水のように変幻自在。力強さでは他の剣士に劣ることもあるが、素早さと身軽さで魔獣を屠る。ステップワークや変則的な体術を駆使し、敵の動きを予測させない巧妙な戦術を展開。回転しながらの斬撃や舞うような動きで敵の意識を散らし、戦局を有利に進める。


家族との関係:

妻:メイレア(元リーディス王国の第三王女)。非常に深い愛情を持ち、二人の関係はミツルにとって時折恥ずかしくなるほどの愛情表現がなされていた。娘:ミツルにとってユベルは憧れの対象であり、彼の戦闘スタイルや技術に強く影響を受けている。

最後の旅と戦い:

妻メイレアの行方不明後、ユベルは娘ミツルを連れて探索の旅に出る。愛する妻を取り戻すため、家族の絆を守るための決意を持っていた。未知の魔獣との戦いで命を落とし、その犠牲によってミツルは生き延びることができた。

白きマウザーグレイル:

ユベルが妻との絆として持っていた白きマウザーグレイルは、ミツルに託された。この剣はユベルの思いと愛情を象徴し、ミツルにとっては父の遺志を継ぐ重要なアイテム。


お尋ね者:

尊敬を集める存在だったが、妻を誘拐した罪が科せられ、お尋ね者として追われていた。ユベル・グロンダイルの戦闘スタイル


「柔」の戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の戦術を体現し、流動的で変幻自在な動きが特徴。彼の動きは舞踏家のように優雅でありながら、非常に戦術的で緻密。


ステップワークと回転体術:

軽やかなステップワークで敵の攻撃を避け、回転しながらの斬撃で敵を翻弄。体操選手やフィギュアスケーターを彷彿とさせる華麗な動きが特徴。


対魔獣戦の特化:

魔獣の懐に自在に出入りし、相手の身体を盾として利用することで最短距離からの攻撃を実現。風のように迅速で、敵の反応を許さない。

彼の戦闘スタイルを際立たせている。

前世での二人

 それは第二章で語られる。

虎洞寺健

美鶴と弓鶴の叔父で、保護者であり協力者。

能力が実用に耐えない血族が所属する郭外のリーダーで、自身は多数の企業を成功に導いた実業家で資産家。その貢献によって上層部にも大きな発言力を持ち、水面下で二人の活動をサポートする。彼の目的は深淵の呪いからの解放と深淵の解体である。

佐藤さん

 柚羽家のお手伝いさんで、美鶴の理解者。昔からの柚羽家のお手伝いさんで、その家事能力は超人。茉凜の料理の師匠。

真坂明

 15歳の少女で、身長は152センチメートル。黒のショートカットが特徴的で、衣装は、黒のクロップトップと高腰のパンツ、袖にディテールが施されたオープンジャケットで、全体的にクールでスタイリッシュな印象。均整の取れたスタイルも、洗練された雰囲気に一役買っている。

性格は情熱的で、自分が思ったことをはっきりと口にするタイプ。弓鶴の元許嫁であり、真坂家の次期後継者としての重責を担っている。また、「深淵の赤の流儀」の高度な術者でもあり、その実力は並外れている。彼女の存在感は、その内に秘めた強い意志と、家の名に恥じない実力から来ている。

明は破談後も弓鶴を想い続けており、それが彼女の能力の原動力になっている。自身が家の後継者となり、弓鶴を婿として迎えようと決意した結果、兄二人を殺害してしまう。

柚羽 美鶴

 ミツルの前世で転生時二十歳。その過去はダイジェストとして第二章で語られる。ミツルの内向的なところは彼女の成分。

 前世では茉凜に対して次第に恋心を抱いていくが、さまざまな問題が障害となって、素直に気持ちを伝えられずにいた。

 彼女のバルファへの転生がグロンダイル家にもたらした影響が、ミツルが戦い旅する理由。

鳴海沢洸人

深淵の血族、上帳を構成する三家の一つ、鳴海沢の長子。流儀青の強力な使い手。弓鶴の確保のために遣わされるが敗退し、その後弓鶴と茉凜の監視役として転校してくる。

数年前に暗殺に失敗し、その後始末として対象を家族諸共惨殺したことがきっかけで、殺せない欠陥品になってしまった。強力な血を残すために家に留め置かれ、鬱々とした日々を送っていた彼を変えたのは、深淵の始まりの回廊の巫女からの言葉だった。 

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