第64話 開いた扉の先で

文字数 5,447文字

 薄暗い舞台の中、私たちだけを包み込む優しい光が、旅立ちを祝福していた。手を繋いで歩き出すその瞬間、演劇が終わり、私の一時の夢の幕が静かに下りた。

 ウォルターとメイヴィスにとって、この瞬間は希望の旅立ちであり、新たな未来への出発を意味する。しかし、私には、この場面が心の奥深くでの決別を意味している。間もなく訪れる自分の消失と、茉凜への未練が交錯するこの瞬間、私はその感情を一つ一つ噛みしめながらも、心の中で火山が噴火するような激しい感情に押しつぶされそうになっていた。

 劇が進むにつれて、これまで曖昧だった茉凜への思いが、私の心の中で次第に形を成し、まるで嵐が私を襲うかのように、感情が抑えきれないほど溢れ出していた。そして、最後の最後で私はメイヴィスから離れ、自分の本当の気持ちと心からの願いを自覚してしまった。

 彼女の唇に触れることで、私の中の深い感情が一気に現実のものとなった。一方通行の無理やりの触れ合いだったけれど、その瞬間、私の心には強烈な痛みとともに強く刻まれた。心の奥底で抑えきれない激情が爆発し、涙とともに激しい感情が流れ出した。

 これで、私の心の中の茉凜への思いはすっかりはっきりとしてしまった。後悔や未練が心に渦巻く中で、私は自分を無理に納得させようとしていたが、それは虚しく、心の中で痛みが深まるばかりだった。

 私の物語が終わりを迎えるとき、茉凜が抱いているだろう感情もまた、過去の一部として静かに収束していくだろうと思っていた。しかし、現実には、感情の波に飲まれてただ耐えるしかなかった。

 舞台の光の中で、ウォルターとメイヴィスの旅立ちを見守りながら、自分の中の感情と向き合う準備が整ったはずだった。茉凜への思いが消えることはないけれど、それでも私は目的に向かって進まなければならないという決意を固めようとしていた。

 そのつもりだったのに……。

 なぜだろう、どうしても涙が止まらない。私はもっと強い人間だと思っていたのに、こんなにも弱くて、悲しみと悔しさに押しつぶされている自分が信じられず、涙を流すたびに、心の中で何かが崩れ落ちていくのを感じていた。私の中の強さや決意が、こんなにも脆いものであるとは思いもしなかった。

 茉凜への思いが、こんなにも私の心に深く刻まれている。それを痛感するばかりで、どうしても収められない感情が私を引き裂いていた。私は、この先に待ち受けている茉凜とのお別れに向けて強くなりたかった。この演劇を通して、自分の中の未練や後悔が整理されると思っていた。でも、現実には涙とともに溢れ出る感情が私を包み込み、その重さにただひたすら耐えているだけだった。

 こんな泣き虫が私の本当の姿なのか。涙が止まらない自分を受け入れながら、私はまだ前に進む力を探して迷っている。

 観客の万雷の拍手や声援も、まるで遠くから聞こえてくるようで、焦りと絶望に苛まれながら舞台袖へと逃げ込みたかった。そして、その瞬間、茉凜の顔を見ることができなかった。彼女の口から何が出てくるかを考えると、身もすくむような恐怖と共に、心の中で再び感情の嵐が巻き起こっていた。
 
 舞台袖に入ると、ようやく息をつくことができた。身体には今まで味わったことのない疲労感が押し寄せ、立っていることさえ難しく、ふらついてしまった。そんな私を、茉凜はそっと支えてくれた。

「だいじょうぶ? 弓鶴くん、がんばったもんね」

 彼女の言葉は、私の心にしみわたる温かさをもたらしたが、同時に信じられない思いが湧き上がってきた。

 「どうしてあんなことをしたの?」とか「どうしてキスなんか?」と訊かれると思っていたから。私の突然の行動に、彼女がどれほど動揺しているかと想像していたのに、彼女は私を気遣ってくれたのだ。

「どうして……」

 私は小さく呟いた。その声は自分でもよく分からないほど震えていた。

「ん? なにか?どうかした?」

 茉凜は私を覗き込むように言った。こわごわと顔を向けると、そこにはいつもの、いや、いつも以上に穏やかな茉凜の微笑みがあり、私を包み込んでくれていた。その笑顔は、私の心に深い温もりをもたらし、私の感情を一層混乱させた。

「どうして……」

 また同じ言葉が漏れた。胸がどんどん熱くなり、涙が溢れて止まらなかった。その笑顔が嬉しくて、すぐにでも彼女の胸に飛び込みたくなるほどで、その衝動が私を圧倒していた。どうして、こんなにも茉凜の存在が私の心に深く根を下ろしているのか、私自身理解しきれなかった。

「ごめんなさい!!」

 その瞬間、私は咄嗟に走り出していた。まるで時間切れを迎えて舞踏会から逃げ出すシンデレラのように、ただ必死に。茉凜の優しい言葉と微笑みが、私の中で暴れ狂う感情を引き裂くように感じられ、逃げることでその混乱から解放されようとしていた。しかし、どこへ逃げてもその心の痛みは消えず、ただ必死に走り続けるしかなかった。

      ◇           ◇

 私は脇目も振らずに走り続けていた。学園祭の喧騒の中、人々が行き交う中をただひたすらに。茉凜から逃げることだけに集中していて、周りにいる人々の存在などまるで気にならなかった。もしこの中に刺客が紛れ込んでいたら、という考えすら浮かばなかった。ただ、彼女から逃げることが全てだった。

 緑色の長い髪が風になびき、白いドレスがひらひらと揺れるその姿が、人々の視線を一瞬で集めた。だけど、それさえも私にはどうでもよかった。今の私の顔を茉凜に見られるのが、ただひたすらに嫌だった。彼女にどう答えたらいいかわからなかったから、それがただ恐ろしかった。

 気づけば、校庭のはずれにある目立たない場所、いつもの木の前に立っていた。ここは、茉凜やみんなとお昼にお弁当を食べる日常の場所。時々、彼女の厚意に甘えて膝枕をしてもらったこともあったりして、ここで二人っきりで話すことが、私にとってとても幸せな時間だった。
 
 息が荒く、胸が痛む。それ以上に心が苦しくて、私は太い木の幹に頭をつけてただ泣き続けていた。

「やっぱり、ここに来てしまうんだ……」

 そんな言葉とともに、手のひらで涙を拭い、木の感触を確かめるように抱きしめた。胸の奥で心が痛み、涙が止まらなくなる。けれど、何もする気力が湧かない。

「私はどうしたらいいの?」

 自然と漏れた言葉が、涙に溶け込んで消えていく。周囲の喧騒も、今の私にはまるで関係がない。

 メイヴィスとしての役柄に完全に没頭し、自分には決して訪れることのないハッピーエンドを迎えるという一時の夢。それだけで満足できるはずだったのに、終わりの瞬間に私は美鶴としての自分に戻ってしまった。

 茉凜への想いを抑えきれなかった自分が、どうしようもなく情けない。なんて馬鹿なのだろう。それだけは絶対に駄目なことだと分かっていたのに。彼女だって「今のままでいい」と自分の気持ちを押し殺しているというのに。

 私が逃げてこうして涙を流している間にも、彼女はただ静かに気持ちを押し込めているのに。そんな彼女の優しさに対して、私の心はただ自分の弱さをさらけ出すばかりだった。

「やっぱりここにいたんだ」

 茉凜の声がして、私は自分は愚かだと思った。彼女がここに来ることなど分かりきっていたはずなのに。逃げ場など無いと理解しながらも、それでも彼女にはここに来てほしくなかった。

「こないでっ!!」

 私の声は完全にメイヴィスの役柄、いや美鶴そのままで、制御不能になっていることに気づいた。大切なはずの氷の王子様の仮面がどこを探しても見つからない。それは、私自身と私が抱く願望がなさしめたことなのか。そんな自分が恐ろしかった。

 茉凜は私の全力の拒絶に対しても怯むことなく近づいてきた。その足音の一つ一つが、私を震えさせた。

「お願いだから、来ないで……あっちにいって……」

 精一杯の懇願だった。しかし、彼女はそれを許さなかった。

「だめだよ……」

 そう言って、茉凜は私を背後から優しく抱きしめてくれた。

 ふわりと漂う彼女の髪の香りが私を包み込み、心が引き寄せられてしまう。

 「いやだ、いやだ」と必死に首を振って抗っても、彼女は私を離そうとはしなかった。

 その温もりと優しさが私の内面に深く浸透し、涙が止まらなかった。力強い抱擁は、私が心の奥底で求めていたものだった。混乱していた心が少しずつ静まり始め、安心感が広がる一方で、その安堵は逆に、胸の奥に新たな苦しみを呼び覚ましていた。

 こんなこと、許されていいわけがない。

 彼女の温もりがこれほどまでに心地よいのに、どうしても素直に受け入れることができない自分が、たまらなく辛かった。

「離して……」

「だめ、放ってなんておけないよ。今離しちゃったら、あなたどこにいっちゃうかわからない気がするもん」

 茉凜の言葉が私の心に刺さる。彼女の言う通り、私自身、糸の切れた凧のように、どこに行ってしまうのか、本当にわからなくなっていた。

「きっと役に入り込みすぎちゃったんだね……だから今は頭の中が混乱しているだけ。でも、それってすごいことだよ、普通の人にはなかなかできないことだもん」

 彼女の言葉には、私を励まそうとする優しさが込められている。しかし、私の心の中では、彼女に対して申し訳ない気持ちが渦巻いていた。

「ごめんなさい……あんなことしちゃって……」

 ただお詫びしたくてたまらなかった。茉凜が私の暴挙を受け入れてくれたことはありがたいけれど、それでも私の心は重苦しく、彼女の期待を裏切ってしまった罪悪感が消えない。

「ああ、あれかー……。さすがにちょっとびっくりしちゃったかな……。でも、クライマックスのメイヴィスの気持ちだったら、そうしてもおかしないかなって思ったから、無問題だよ」

 茉凜の冷静な対応に救われた気がした。彼女はメイヴィスを演じる私に寄り添い、私の行動を受け入れてくれていた。その優しさに胸が締め付けられる。

「ただ、ちょっと残念な気持ちはあるかな……。役の上とはいっても、わたしにとって……その……ちゃんとした初めてだったので……」

 茉凜の言葉が心に深く刺さった。彼女にとっての大切な瞬間をこんな私が奪ってしまったことが、耐え難い苦しみだった。

「ごめんなさい……」

 肩を震わせながら謝罪を繰り返す私に、茉凜は急に慌てたように言った。

「ああ、そんなに謝らなくてもいいから、平気平気。あくまで劇の上でのことなんだから、そんなに気にしない気にしない」

 茉凜のその言葉は、優しさに溢れていたのに、私の心は苦しさでいっぱいだった。茉凜が好きなのは弓鶴で、私ではない。それがわかっていながら、私は自分の欲望で彼女の気持ちを踏みにじってしまった。この罪悪感は、どうしても消すことができない。

「劇は大成功だったし、演劇部のみんなもすっごく満足してたから。まあ、観客がなんだか騒がしかったのはアレだけど……でも私たちはやり遂げたんだ。これも、あなたが頑張ったおかげだよ」

 泣き続ける私の頭を、茉凜は不自由な左手で優しく撫でてくれた。その触れ合いに、私の心は少しずつ温かく溶けていくような感覚を覚えた。

「……もう、あなたがこんなに泣き虫さんだと、わたしも困っちゃうなぁ」

 呆れたように言う彼女の声には、まるで母親や年の離れた姉のような温かさがあった。でも、その彼女の温かさが、私の弱さを一層浮き彫りにしてしまう。こんなにも優しくて、こんなにも理解してくれる茉凜に対して、私は何も返すことができない。それが、さらに涙を止められなくする。

「私は……」

 何かを言おうとしても、言葉が詰まり、喉が締め付けられるような感覚に襲われる。どんな言い訳をしても、彼女にはきっと伝わらない、そんな気がしてならなかった。

「弓鶴くん、今はなにも言わなくてもいいよ。ただここにいて、わたしと一緒にいるだけでいいんだ……」

 茉凜の声は、まるで心を包み込むように優しく、温かかった。私はただ、何も言わずに頷くだけだった。彼女に抱きしめられながら泣き続けるうちに、私の心は少しずつ解きほぐされていった。

 でも、同時に私は理解していた。茉凜の優しさに甘えているだけでは、前に進むことはできないということを。彼女の純粋な愛情に依存してしまえば、私は自分を見失ってしまうかもしれない。それでも、今はもう少しだけ、彼女の温もりの中にいたかった。

「ありがとう、茉凜……」

 ようやく口に出せた言葉は、それだけだった。自分に苛立ちを感じながらも、私は彼女に寄りかかるしかなかった。

 茉凜は、舞台上で私の本当の姿を見ても、その優しさを崩さなかった。それがただの演じている役柄だと、彼女はそう解釈してくれたのだろう。この瞬間だけは、彼女の優しさに救われた気がした。

 けれど、どうあっても覆らない運命は、茉凜との別れが絶対に避けられないということ。それは最初から決まっていたことで、私は彼女に憎まれてでも、この罪を背負って消えていくしかないのだと、深く理解していた。

「落ち着いたら、みんなのところに帰ろうね」

 茉凜の声が、私を現実へと引き戻す。彼女は微笑みながら一歩下がり、右手を差し出してくれた。その手の温もりを感じた瞬間、私は涙を拭い、少し躊躇った後、その手を取った。彼女の指先から伝わる温かさが、私の心の傷をそっと癒してくれるようだった。

「ごめんね……」

 そう、心の中で呟いた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ミツル・グロンダイルのキャラクター設定

基本情報年齢: 12歳(外見年齢)


外見: この大陸では珍しい黒髪と薄緑の透き通った瞳。美しい容貌だが、体型は少し少年のようで、まな板の寸胴であることに敏感。自称年齢: 21歳(前世の記憶を持つため)


性格: 冷淡に見えながらも実は直情的で、一人でいることを好む。時折無邪気な一面を見せることがある。前世の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動き、冷静な大人の一面と子供っぽさが共存する複雑なキャラクター。


好物

食事に関しては美味しいものを少しだけなタイプ。剣の中の茉凜がアルコール依存になってしまったため。最近はお酒も嗜む。


社会的関係: 引っ込み思案で人付き合いが苦手なため、孤独を好む。しかし、孤独を埋めるために時折無邪気な一面を見せる。自分の力や能力に対する内なる葛藤と向き合いながら、過去の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動く。


ミツル・グロンダイルの物語における役割

憧れの存在: ユベル・グロンダイル(父)の影響を強く受けており、彼の戦闘スタイルや技術に憧れを抱く。父の遺志を継いで魔獣を狩る役割を担う。

遺産と使命: 父が遺した白きマウザーグレイルを持ち、彼の意志を継ぐ重要な役割を果たしている。彼女の能力と背景は、物語の重要な要素となっている。

謎と葛藤: 彼女の能力と前世の記憶には深い謎があり、物語の進行とともにその全容が明かされる可能性がある。彼女の内面的な葛藤や成長は、物語の核心に深く関わっている。


前世の名前: 柚羽 美鶴(ゆずは みつる)

年齢: 不明(死後、弟の弓鶴に憑依しているため、年齢としては弓鶴の年齢に準じる)

性別: 女性(現在は弟の弓鶴に憑依中)

出身地:九州地方某県の山中の柚羽家(深淵の三家の一つ、始まりの回廊の守護者)

職業: 柚羽家の後継者で深淵の始まりの回廊の巫女


 美鶴は深淵の三家の一つである柚羽家の長女であり、始まりの回廊の守護者。柚羽家襲撃事件で両親を失った後、叔父の虎洞寺氏に保護された。その後、両親の死の真相を知り、自ら人身御供になる覚悟を決め、柚羽家の後継者となった。彼女は密かに深淵の根源の再生を図り、解呪に臨んだが、その試みは失敗し、死亡した。


その後

 美鶴はデルワーズの画策により、弟の弓鶴と意識と記憶の全情報を交換させることで、彼に憑依する形で生き延びる。弟を取り戻すために再び解呪に進もうとした際、茉凜と出会う。茉凜が持つ「黒」の力の安全装置としての役割によって、二人は運命共同体となることが決まる。


 自らが女性であることに対する戸惑いと、茉凜に対する淡い感情を抱くようになり、自分が本当は弟ではないことや、茉凜が見ているのは弟であることに苦悩する。


 美鶴は両親の死の真相を知った後、自らが柚羽家の後継者として深淵の根源の再生を図ろうとしたが、その試みが失敗したことに対する責任感を抱えている。


 茉凜の猛烈なアタックに対して、次第に閉じていた心を開き始めると共に、彼女に対して淡い心を抱く。しかし、自分が本来女性であることや、それを知られることを怖れて受け入れることに苦しんでいる。


 美鶴は茉凜と共に深淵の根源の解呪に挑む中で、茉凜の存在が自らにとってどれほど重要であるかを認識し始める。しかし、彼女は自分の感情と状況に苦悩し、特に自分が女性として抱く感情や、茉凜が見ているのが自分ではなく弟であることに対して深い悩みを抱えている。


深淵の黒鶴

 精霊子に対する感受性が極めて高く、世界に漂うすべての精霊子を集積できる。彼女の前世の名前(美鶴)と組み合わせて【黒鶴】と呼ばれる。限定された空間(場裏)を形成し、その中でイメージ通りの現象を具現化。四大元素すべてを制御可能で、並列起動による複合行使も可能。背中に現れる翼は物質的ではなく、彼女の願望を投影したもの。


場裏

 限定された空間を形成し、その中で事象を操作。色で呼称される流儀に基づき、たとえば赤であれば熱の操作に関わり、イメージのままに具現化できる。詠唱や魔道具を必要としない強力な魔術として認識されている。戦闘と


能力の影響

 ミツルの戦闘スタイルは、前世の影響を色濃く受け継いでおり、流動的で柔軟な戦術が特徴。彼女の能力は瞬時に強力な現象を引き起こすことができ、そのため精神的な負荷が非常に大きい。精神崩壊や自我喪失のリスクが伴う。


精神的負荷

 精霊子の収集と能力の使用により、大脳辺縁系に過大な負荷がかかり、精神的な負担が大きい。特に精霊子への感受性が高い彼女は、負荷に耐えきれず暴走する危険がある。

ヴィル・ブルフォード

 ミツルの前にふらりと現れた、ぼさぼさ頭の無精髭の中年剣士。『黒髪のグロンダイル』の噂を聞きつけて訪れたという、彼の真意と思惑は?

 自らを『放浪のしがない剣士』と言う割に、その剣技は一流で、歴戦の強者。『雷光』とあだ名されると対魔獣戦のエキスパートで、その戦いぶりはミツルも舌を巻く。


年齢 48歳

身長 190センチ近い

体格 大柄で強靭

出身地 不明

職業  剣士、冒険者、元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長

髪: ぼさぼさの金髪。長さは無造作に伸びており、戦いの中で乱れたまま放置されている。

顔 無精ひげが顔全体に生えており、荒々しさと共に風格を漂わせている。

武器 中央に深い溝が彫られたブロードソード。鍛造で作られており、適度な粘りを持ち、滅多に折れない。


剣術スタイル

流派 雷光(らいこう)

特徴 巨体とその質量を生かした高速ダッシュ


戦闘スタイル

高速ダッシュ 雷のようなスピードで踏み込み、敵の懐に入り込む

敵の死角利用 相手の身体を死角として利用し、瞬時に繰り出される高速の斬撃で敵を仕留める

左手の傷 突きを繰り出す際に意図的に剣の先に左手を添え、敵の注意を引き付ける。実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、非常に巧妙。猪突猛進型でありながらも、臨機応変に対応できる柔軟さを持つ。これは、変幻自在で『型』のないユベルと毎日修練を積み重ねた結果(苦肉の策)による。


戦闘技術

片手剣術 基本的には片手でブロードソードを操るが、必要に応じて両刀も使うことができる。戦況に応じて剣の使い方を変え、迅速かつ的確に対応。


特殊技

雷光突き 瞬時に高速で踏み込み、突きを繰り出す技

閃光斬り 一瞬の隙を突き、相手の死角から高速で斬撃を繰り出す技


特徴と戦術

巨体と速度を生かして、魔獣の懐に入り込み、致命的な攻撃を繰り出す。視線誘導の技術で、敵の視線を引き付けてから攻撃する。


心理と性格

戦場での冷静な判断力と卓越した技術で、数々の戦場で名を馳せる。敵の動きを見極め、最適な攻撃や防御を選択する。どんな状況でも冷静に対応し、自信を持って戦う。猪突猛進型でありながら、変幻自在の戦術を使いこなす柔軟さを持つ。


元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長を務めた経験を持つ。騎士団時代の訓練と経験が、彼の戦術的な判断力と剣術の技術に大いに寄与している。特に、ユベルとの修練で得た経験が、彼の変幻自在な戦術に大きな影響を与えている。


その戦闘スタイル

一九〇センチ近い大柄な体躯を持ちながらも、その強靭な体に似合わぬほどの軽快さを誇る剣士。彼の手に握られているのは、ロングソードよりも短いブロードソードに近いもので、中央には深い溝が彫られている。この剣は鍛造で、適度な粘りを持ち、使い手によっては滅多に折れることがない。


ヴィルの剣術のスタイルは「雷光」と呼ばれ、彼の巨体とその質量を生かした高速ダッシュが特徴。彼は特に大きな魔獣を相手にするのが得意で、雷のようなスピードで踏み込むと、敵の懐に入り込み、相手の身体自体を死角として利用する。瞬時に繰り出される高速の斬撃で、敵を一気に仕留める。


特筆すべきは、彼の左手に傷が絶えないこと。これは、突きを繰り出す際に意図的に剣の先に手を添えて、その手に注意を引き付けるためだ。敵がその手に視線を奪われている間に、実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、彼の戦術は非常に巧妙。


ヴィルの剣は基本的に片手で操られることが多いが、必要に応じて双剣で戦うこともできる。その柔軟な使い方と、雷光のような素早さを駆使して、彼は戦場でその名を轟かせた。

茉凜(マリン)のキャラクター設定


基本情報年齢: 17歳

身長: 173センチ

プロポーション:高跳びの選手かファッションモデルのようなスラリとしたかっこいいスタイル。ただし本人は自覚なしで自信がない。 


外見: ミルクティーブラウンの髪、大きな瞳、お日様のような笑顔。純粋で優しい少女の姿が特徴的。


性格: 天真爛漫でポジティブ。どんな困難な状況でも明るさを失わず、死の淵の絶対的不利な状況でも輝く。特に追い込まれるとスイッチが切り替わり、予知視界を用いる能力が発揮される。


背景前世: 元々は私たちの世界に住んでいた人物。異世界に突然放り込まれ、さらに剣の中に転生させられるという過酷な運命を辿る。


役割: ミツルの相棒であり、恋人(?)。彼女の無条件の愛情と楽観的な性格がミツルの心の支えとなっている。過去のトラウマ: 落雷事故によるトラウマがあるが、それを嘆くことなく明るさを保ち続ける。ミツルにとっては大きな支え。


能力と役割能力: マウザーグレイル経由の予知視界。死の淵での絶対的不利な状況でも特に有効で、剣の中にあるこの能力が最大の武器である。


役割: ミツルの『深淵の黒鶴』を制御するための安全装置(セーフティ)として機能。暴走を防ぐ唯一の手段として、ミツルとの接触と精神的な感応が必要。自身の全てを捧げる覚悟を持ち、ミツルを守ることを使命としている。


心情と内面愛情: ミツルに対して無条件の愛情を注いでおり、彼女の存在はミツルにとって欠かせない心の拠り所となっている。愛情が恋であることに気づきながらも、その感情を告白することはできない。


支え: ミツルの冷たい態度や無口さの裏に隠された繊細な心を理解し、彼の孤独や苦しみを誰よりも感じ取っている。彼の心の支えとなることを自分の使命と感じ、彼を守るために自分の全てを捧げる覚悟を持っている。


内面の葛藤: 弓鶴(ミツル)が自分にとって特別でなくなるのではないかという不安を抱えながらも、彼の幸せを最優先に考え、自分の感情を抑え込んでいる。仲直りを図る際には自分を押し殺して彼らの関係を修復しようとするなど、内面的には複雑な感情が渦巻いている。

白きマウザーグレイル

基本情報正式名称: 精霊器接続式対魔族兵装 MW-CSV-DD MAUSER-GRELL(マウザーグレイル)

形状: 純白のロングソード

特徴: 刃に相当する部分がなく、実質的には何物も斬れない

構造と材質材質: 不明。構成素材については詳細が不明だが、非常に高い堅牢さを誇る。

耐久性: どんな魔獣の攻撃にもヒビ一つ入らないほどの堅牢さを持つ。

重量: 見た目よりも軽量で、非力なミツルでも自在に扱える。

機能と特性魔導兵装: 剣の形をとった魔導兵装であり、実際には物理的に斬ることはできない。

潜在能力: 現在のところ、ミツルもその実体と潜在能力については把握していない。

補助機能: ミツルの持つスキル「真凜」が安全装置として補助を行っている。

戦闘における役割安全装置: ミツルが持つ「深淵の黒鶴」の能力を制御するための安全装置として機能する。マウザーグレイルが実際の戦闘では使われないが、その存在がミツルの能力の安定に寄与している。

象徴的な意味: 剣そのものは物理的な攻撃力を持たないが、深い意味や力を秘めている可能性がある。特に、ミツルの精神的、象徴的な支えとしての役割を果たしている。

謎と疑問実体の不明: 現状、剣の具体的な機能やその実体についてはミツル自身も把握していない。剣の持つ潜在的な力や目的については謎に包まれている。発見される

可能性: 今後のストーリー展開で、その真の力や役割が明らかになる可能性がある。

ユベル・グロンダイル

 ミツルの父で、『閃光』の異名を持つ変幻自在の剣術を操る天才。すでに故人である。


ユベル・グロンダイルのキャラクター概要

年齢と外見:

年齢:50代外見:かつて金髪だったが、現在は黒く染めている。無精髭を蓄え、スリムで筋肉質な体型。優雅な立ち姿と流れるような戦闘動作が特徴。


役割と経歴:

元リーディス王国銀翼騎士団右翼リーダーであり、対魔獣戦のエキスパート。リーディス王国の銀翼騎士団に所属し、多くの戦場を経験。特に魔獣戦においてその名を馳せた。


基本戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の極みであり、その動きは流動的でまるで水のように変幻自在。力強さでは他の剣士に劣ることもあるが、素早さと身軽さで魔獣を屠る。ステップワークや変則的な体術を駆使し、敵の動きを予測させない巧妙な戦術を展開。回転しながらの斬撃や舞うような動きで敵の意識を散らし、戦局を有利に進める。


家族との関係:

妻:メイレア(元リーディス王国の第三王女)。非常に深い愛情を持ち、二人の関係はミツルにとって時折恥ずかしくなるほどの愛情表現がなされていた。娘:ミツルにとってユベルは憧れの対象であり、彼の戦闘スタイルや技術に強く影響を受けている。

最後の旅と戦い:

妻メイレアの行方不明後、ユベルは娘ミツルを連れて探索の旅に出る。愛する妻を取り戻すため、家族の絆を守るための決意を持っていた。未知の魔獣との戦いで命を落とし、その犠牲によってミツルは生き延びることができた。

白きマウザーグレイル:

ユベルが妻との絆として持っていた白きマウザーグレイルは、ミツルに託された。この剣はユベルの思いと愛情を象徴し、ミツルにとっては父の遺志を継ぐ重要なアイテム。


お尋ね者:

尊敬を集める存在だったが、妻を誘拐した罪が科せられ、お尋ね者として追われていた。ユベル・グロンダイルの戦闘スタイル


「柔」の戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の戦術を体現し、流動的で変幻自在な動きが特徴。彼の動きは舞踏家のように優雅でありながら、非常に戦術的で緻密。


ステップワークと回転体術:

軽やかなステップワークで敵の攻撃を避け、回転しながらの斬撃で敵を翻弄。体操選手やフィギュアスケーターを彷彿とさせる華麗な動きが特徴。


対魔獣戦の特化:

魔獣の懐に自在に出入りし、相手の身体を盾として利用することで最短距離からの攻撃を実現。風のように迅速で、敵の反応を許さない。

彼の戦闘スタイルを際立たせている。

前世での二人

 それは第二章で語られる。

虎洞寺健

美鶴と弓鶴の叔父で、保護者であり協力者。

能力が実用に耐えない血族が所属する郭外のリーダーで、自身は多数の企業を成功に導いた実業家で資産家。その貢献によって上層部にも大きな発言力を持ち、水面下で二人の活動をサポートする。彼の目的は深淵の呪いからの解放と深淵の解体である。

佐藤さん

 柚羽家のお手伝いさんで、美鶴の理解者。昔からの柚羽家のお手伝いさんで、その家事能力は超人。茉凜の料理の師匠。

真坂明

 15歳の少女で、身長は152センチメートル。黒のショートカットが特徴的で、衣装は、黒のクロップトップと高腰のパンツ、袖にディテールが施されたオープンジャケットで、全体的にクールでスタイリッシュな印象。均整の取れたスタイルも、洗練された雰囲気に一役買っている。

性格は情熱的で、自分が思ったことをはっきりと口にするタイプ。弓鶴の元許嫁であり、真坂家の次期後継者としての重責を担っている。また、「深淵の赤の流儀」の高度な術者でもあり、その実力は並外れている。彼女の存在感は、その内に秘めた強い意志と、家の名に恥じない実力から来ている。

明は破談後も弓鶴を想い続けており、それが彼女の能力の原動力になっている。自身が家の後継者となり、弓鶴を婿として迎えようと決意した結果、兄二人を殺害してしまう。

柚羽 美鶴

 ミツルの前世で転生時二十歳。その過去はダイジェストとして第二章で語られる。ミツルの内向的なところは彼女の成分。

 前世では茉凜に対して次第に恋心を抱いていくが、さまざまな問題が障害となって、素直に気持ちを伝えられずにいた。

 彼女のバルファへの転生がグロンダイル家にもたらした影響が、ミツルが戦い旅する理由。

鳴海沢洸人

深淵の血族、上帳を構成する三家の一つ、鳴海沢の長子。流儀青の強力な使い手。弓鶴の確保のために遣わされるが敗退し、その後弓鶴と茉凜の監視役として転校してくる。

数年前に暗殺に失敗し、その後始末として対象を家族諸共惨殺したことがきっかけで、殺せない欠陥品になってしまった。強力な血を残すために家に留め置かれ、鬱々とした日々を送っていた彼を変えたのは、深淵の始まりの回廊の巫女からの言葉だった。 

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み