第50話 共同戦線

文字数 8,892文字

どうしてこんなに心が痛むんだろう
彼女の微笑みは、いつも優しさでいっぱい
弓鶴に向けられたその光は
私が受け取るべきものじゃないのに

虚しさだけが心の中に広がって
どうしてこんなにも嬉しいと感じてしまうのだろう
その優しさに依存している自分が
どれほど愚かで哀れなのか、ただ思い知るだけなのに

偽り続けるこの罪悪感が
最後まで私の心を締め付けるんだろう
いつも いつも心の中で繰り返す
『ごめんね、ごめんね』って……

彼女の温もりに包まれるたび
その切なさが深く、心にしみ込んでくる
受け入れる資格なんてないのに
ただその優しさに依存し続けるしかないなんて
こんなの、ほんとに残酷すぎるよ
 
       ◇         ◇

私たち三人の共同戦線が、静かに、しかし確実に始まった。正直なところ、赤の流儀に秀でた明の知識と技術は、私にとって計り知れない支えとなっていた。その優れた技術は、私の不安を和らげ、心に光をもたらしてくれた。

 深淵の長い歴史の中で築かれてきた流儀は、四つの色に分かれ、それぞれの術者は一種類の流儀しか扱えない。赤は熱を操り、青は水、白は大気を司る。それは血統に深く受け継がれ、例えば真坂は赤の熱の操作を、柚羽は白の大気を自在に扱うといった具合だ。それぞれの流儀によって、具現化できる範囲は明確に定められている。

 流儀でのイメージの具現化には、明確な理論が存在しない。ただ重要なのは、心の中で実現したい現象をしっかりとイメージし、それを精霊子の集積によって形成された疑似精霊体に伝えるという、シンプルでありながら深いプロセスだ。想念と感覚が鍵となる。

 そのため、現象の結果をしっかりとイメージし、その感覚を少しずつ掴みながら、明確な形にしていく必要がある。明が何年もかけて磨き上げてきた技術を、私のような初心者が一朝一夕で習得するのは、正直なところ難しいと痛感するばかりだった。

 それでも、進むしかないのだ。目の前に立ちはだかる試練を乗り越えなければ、深淵の呪いに囚われた人々の未来には希望がない。私はその決意を胸に、ひたむきに前へ進むしかなかった。

 ある日、明が愛用している金属の棒を取り出した。その棒は、以前茉凜に対して振るわれたもので、長さはほぼ木刀と同じだ。素材は耐火性に優れた特殊な合金で、二千度以上の高温にも耐えるという。さらに、高い強度と耐摩耗性を持ち合わせていた。

 しかし、その重さが問題だった。私が手にすると、重くて堪らないと思うその棒を、明はまるで軽い羽のように扱ってみせた。その身体操作術はまさに見事で、重い金属の棒が軽々と宙を舞う様子は、まるで熟練の舞踏を見ているかのようだった。彼女の動きには無駄がなく、重さを感じさせない優雅さがあった。私の心は、その技術に深い感銘を受けた。

 一方で、私──弓鶴は、華奢な体つきで、幼い頃にほんの少し父から古流武術を少し学んだ程度で、その棒を構えること自体が、まるで重力が倍増したかのような感覚を覚えた。

 明の軽やかさと、自分の不器用さを比べると、その差が痛感された。私にとって、金属の棒はただの重さでしかなく、持つだけで精一杯だったのだ。

 明は、その金属の棒に場裏を纏わせる技術を見せてくれた。棒がじわじわと赤熱化し、目に見えない熱の波動が辺りを包み込んでいく様子に、私はただただ圧倒されるばかりだった。場裏は通常、球体状に形成されると思っていた私にとって、その薄く均等に纏わせる技術には驚きしかなかった。

 明が棒に施したのは、まるで焼き付けるような精密な制御だった。その制御力は恐ろしいほどの精度で、まさに高位術師としての本領を発揮していた。

 場裏の事象干渉フィールドは、刀身にだけ展開されており、周囲に熱を伝えることはなく、握る部分には全く届ていなかった。その精密さに、私の心はただ圧倒されるしかなかった。

 自分の未熟さを痛感しながらも、その技術に対する尊敬と畏怖の念が、私の中で強く募っていった。

「これを俺に真似しろと? 無理に決まってるだろ」

 最初から心が折れそうだった。しかし、明はあっさりと答えた。

「あなたの黒の器の容量と力は大きすぎて、場裏を上手に制御しないと、大規模破壊兵器になりかねないよ? たとえばあたしからコピーした赤なら、下手すると街一つ燃やし尽くしちゃうかもね」

 その言葉に、背筋が凍りついた。確かに、曽良木との対決の際、私は制限なしに巨大な炎の壁を作り出してしまった。炎そのものはすぐに消え、幸いにも開けた空き地だったから事なきを得たが、もしあれが森林の中だったなら、山一つ燃やし尽くすどころでは済まなかっただろう。

「場裏をうまく制御して、限定させた領域内でイメージを具現化させる。それが術者の本分だよ」

 明の言葉が胸に深く響いた。場裏を扱うには、その力を適切に制御することが不可欠だということを痛感した。それは単なる技術や知識だけでなく、自分自身の内面と向き合い、深く理解することによってのみ習得できるものだと理解した。

 それでも、どうしても上手くいかなかった。何度試みても、場裏の大きさやイメージの構築、出力の調整がうまくできない。明が「焦るな」と言ってくれたが、私には時間がない。強硬派がいつ大勢で襲ってくるかわからず、最近の静けさが不気味で、遠くから私たちの様子を伺っているのではないかと考えると、心が落ち着かない。

 その不安が、私の手に持つ棒の重さと、明の技術への尊敬の念をさらに強めていった。どれだけ努力しても、私の力はまだ未熟で、理想と現実の間に立ち尽くすしかなかった。

 その時、茉凜が突然思いついたような表情を浮かべた。彼女の瞳が輝き、まるで新しいアイデアが閃いたかのように見えた。

「弓鶴くん、試しにわたしたち三人で手を繋いでみない?」

 その言葉に、私も明も一瞬ぽかんとした。何の前触れもなく、茉凜が提案してきたのは、手を繋ぐという実に単純な行為だったが、その背後に何か深い意味があるのではないかと感じた。

「それが何になるというんだ?」

 私は半信半疑で訊ねた。

「よくわからないわ。あんた、何が言いたいの?」

  明も困惑の色を隠せない様子だった。

 茉凜は少しずつ説明を始めた。彼女の声には、何か確信めいたものが込められていた。

「弓鶴くんとわたしが繋がっている時、はっきりとはしないけど、イメージしているものが見えてくる気がするんだよね。弓鶴くんも、わたしを少し感じているって言ってたよね?」

「確かにそうだが、お前の手が重なってくるのをイメージとして感じる……」

 私はその感覚を思い出しながら、言葉を選んだ。

 その時の全身が温もりに包まれる感覚については、どうしても言葉にするのが恥ずかしくて、それ以上は言葉にできなかった。心の中で、その感覚がどこか曖昧で、複雑なものだったからだ。

「だとしたら、アキラちゃんもわたしと繋がれば、イメージが私を通して弓鶴くんに伝わるんじゃないかな?」

 「はあ?」 私と明は同時に驚きの声を上げた。こんな発想は全くなかったからだ。茉凜が気づくシンプルなことに、その時初めて驚きと共に感動を覚えた。

 後になってから、その提案がただの物理的な繋がりではないことに気づいた。手を繋ぐという行為は、私たちの心の奥深くで互いのイメージを共有し、感覚を通じて力を統合する方法だったのだと理解した。その時、私の中で何かが解けたような気がした。
 
 私たち三人は円を描くように立ち、手を繋いで向き合った。その瞬間、心の奥深くに静寂が広がり、私は目を閉じて、黒鶴の力を意識的に発動させた。周囲の音が遠くなり、呼吸の音だけが響く中、心を一つにしようと試みる。

 徐々に、私の内面に広がる白い画用紙の上に、茉凜と明の手が現れた。その感覚は、まるで手を差し伸べられたように、私の手を優しく導くものだった。彼女たちの手が私の手の上で滑るように動き、その温かさが心に染み込んでくる。私の心がそのイメージに寄り添い、彼女たちの存在が自然と一体となっていく。

 この感覚は、単なる触覚ではなく、深いところでの心の共鳴だった。手を繋ぐことで、私たちの思考と感覚が一つになり、黒鶴の力が以前よりも遥かに安定して感じられるようになった。彼女たちの手が私を導くことで、イメージの中でより鮮明に、より精緻なコントロールが可能になっていく。

 二つの手が、言葉を超えて私の手を取り、まるで無言の指導者のように私を導いていった。その手の動きは優しく、まるで空中に絵を描くかのように、私の手の中に流れ込んでくる。指先の感触から伝わる微細な振動や温もりは、まるで手が描く線が心の中に深く刻まれていくかのようだった。

 その感覚に身を任せ、私は自然とその線をなぞっていく。疑問や不安が心の中に浮かぶ暇もなく、ただその動きに身を委ねるだけで、心が穏やかになり、一つの流れに溶け込んでいく。まるでお遊戯のようなこの行為が、私の内面に静かに溶け込み、深い理解をもたらしていた。

 こうして、私たちの心が一つになり、黒鶴の場裏の真の力を引き出すためのヒントが、自然と浮かび上がってきた。手を繋ぎながら、私の中に広がるイメージが鮮明になり、黒鶴の力を如何にして制御し、具現化するかの新たな視点が見えてきた。彼女たちとのこの繋がりが、私にとって新たな可能性を切り開いてくれたのだ。

      ◇         ◇

 黒鶴の恐ろしさは、ただ単に複数の場裏を展開できるだけにとどまらない。それは、一つの場裏で一種類の流儀しか扱えない普通の術者と比べて、複数の場裏で異なる事象操作を行える能力にある。この能力がもたらすのは、通常の術者が到底成し得ない高度な操作であり、それこそが黒鶴の真の力だ。

 例えば、雷を発生させる方法を考えてみると、赤の熱の操作で場裏内の大気を加熱し、別の場裏で冷却することで、温度差による不安定な気象条件を作り出すことができる。このように複数の場裏を駆使して雷の発生環境を整えることで、自然現象を自在に操る力を得ることが可能になる。しかし、この高度な操作には、精密な精神的集中とエネルギーの管理が求められる。

 しかし、私にとって、黒鶴の能力を使うことは非常に大きな精神的な負担を伴う。脳や精神にかかる負担が重く、その代償は計り知れない。

 そして、茉凜は私にとって唯一の支えでありながら、同時に最大の弱点でもある。彼女が抱える雷によって死の淵に追いやられた過去は、私がその技術を使うことに対する躊躇を生んでいた。

 茉凜がそのトラウマに苦しむ姿を目にするたび、私の心もまた痛みで満たされる。この複雑な感情と葛藤の中で、私は雷を発生させる技術を封印する決断を下すことにした。

 結局、茉凜の言う通りだった。彼女は単なる深淵の黒鶴の安全装置ではなく、もっと深い何かを宿しているように感じられた。

 精神的な交感を通じて場裏と精霊子を感じ取り、術者間のイメージさえも伝える能力を持つ彼女の存在が、私の力を制御し、引き出すための鍵となっていた。それはただの技術や知識の問題ではなく、私と茉凜の間に築かれた深い絆と理解に根ざしていた。

 この事実をどう考えたらいいのか、私の心に浮かんだのはただ一つの可能性だった。彼女は解呪にとって不可欠な導き手、つまり精霊の器であるデルワーズと対を成す、世界と世界を渡るための場所と時を指し示す羅針盤、マウザーグレイルと呼ばれる存在なのかもしれない。もし茉凜の中にそれが宿っているとしたら、その力が私の解呪に対しても深い意味を持つのだろうと感じ始めていた。

 いくつかの根拠がその思いを裏付けていた。彼女の落雷事故と私の解呪の失敗がほぼ同時期に起きたこと。私たちが同じような夢をそれぞれの視点で見ていたこと。そして、彼女が絶対的危機に瀕した時に現れる、正体不明の異常な回避能力。これらの出来事が、私の直感を強化し、茉凜の存在が単なる偶然ではないと感じさせた。

 これまでは、その事実に深く触れないようにしていた。解呪のプロセスにおいて、茉凜の存在がどうしても必要だったからだ。しかし、そのリスクを背負わせるべきなのか、私の心は複雑に揺れていた。

 場裏をコントロールするためのヒントを得ても、その喜びは心の中でどうしても素直には湧かなかった。

        ◇         ◇

 学校での私たちは、二人の休戦協定もあって、ようやく一応の平穏を取り戻していた。お昼休みになると、私たちは茉凜が心を込めて作ってくれたお弁当を囲んで座っていた。その場の雰囲気は、どこか暖かく、まるで柔らかな光に包まれているようだった。

 明は心からほっとした表情を見せていた。彼女は最初こそ少し抵抗感を示していたが、私との距離が少しずつ縮まるにつれて、心の中での安定を感じているようだった。その様子を見ると、彼女の内面が少しずつ和らいでいっているのがわかった

 茉凜は以前のように私に積極的に話しかけることはなかった。彼女の目は、まるで誰かの背中をそっと支えるような優しさを持っていた。控えめに振る舞うその姿は、私たちの関係を再構築しようとする彼女なりの気配りだと感じられた。その優しさが、私の心には複雑な感情を呼び起こす。彼女が自分の思いを抑え込んで、私たちのために行動しているのだということが、私には深く理解できていたからだ。

『この気持ちが彼にとって重荷になるなら、今はそれでいいの。今はこのままでいいんだ……』

 茉凜の言葉が私の心に重くのしかかっていた。彼女が自分の思いに蓋をして、ただひたすら解呪の時を願っているのだと思うと、胸が張り裂けそうになる。彼女が内心でどれほど苦しんでいるかを想像すると、私自身の苦悩が何倍にも増して、心を締め付けた。

 お弁当の時間が終わり、各々の教室に戻るとき、私は茉凜の控えめな姿勢を見ながら、心の中で彼女の苦しみを分かち合う方法を探っていた。彼女が私たちのために尽くす姿が、私の心に複雑な感情を呼び起こすと同時に、その感情が私自身の選択をさらに困難にしていることを実感していた。

   ◇           ◇

 そんな日々がしばらく続く中で、洸人と灯子も私たちの輪に加わるようになった。洸人は以前の冷たさや達観した雰囲気を脱ぎ捨て、明るくなっていた。その変化をもたらしたのは、きっと灯子の存在なのだろうと、私は心の中で密かに微笑んだ。灯子が洸人の硬い殻を少しずつ溶かしていったのを感じると、私の心にも微かな安堵が広がった。


 洸人は明るくこう言った。

「不思議なものだね。まさか、三家の後継者が揃い踏みするとは。こんな日が来るとは思ってもみなかった。それに、皆が同じ願いを抱いているなんて信じられないし、とても嬉しいよ」

 洸人の言葉に、私は心の底から同感した。かつては権謀術数に明け暮れていた三家が、こうして共に同じ希望に向かって進んでいる光景は、まるで夢のようだった。彼の言葉は、私たちの努力と団結が実を結びつつある証のように感じられ、心の中で小さな希望の灯がともった。

 しかし、洸人はその後、強硬派が本格的に私たちの抹殺を企てる可能性について語り始めた。

「上層部内の対立は確かなようだ。そこには虎洞寺氏の思惑もあるんだろうけどね。ただ、これまで静観していた連中も、君の存在を無視できなくなってきているのは事実だ。安全装置なんてどうせ偶然に過ぎず、いずれ自滅するだろうと高をくくっていたんだろうけど、いい気味だ」

 深淵の上帳というものには本拠地がなく、構成メンバーがそれぞれ各地に分散し、その実体も居場所も杳として知れない。虎洞寺氏ですら、会合への参加は毎回異なるホテルの暗い一室に並べられたスマホを通して会話するのみに限られている。その場にやって来るのは、スマホを持参した各構成メンバーの使いの者に過ぎないのだ。

 内部は解呪派と反解呪派に分裂し、混乱していると聞くが、後者の勢力の過激な強硬派は歯止めが効かなくなってきている。彼らは互いの場所が把握できていないことが幸いして、クーデターといった事態は今のところは避けられているものの、予想に反して自滅しない私を快く思わない強硬派が、事態の沈静化を図って狙ってくるだろうことは想像に難くない。

 静かな空気を突如として破ったのは、明の突然の立ち上がりだった。彼女の瞳には燃えるような激しい怒りが宿り、その声は震えるほどの決意を帯びていた。

「相手がそのつもりなら、このあたしが一人ずつぶっ殺してやる」

 彼女の言葉に私は心臓が一瞬、凍りついた。弓鶴を守るためには、どんな手段も厭わない彼女の気持ちを知っているからこそ、その決意の強さに恐れを感じた。彼女がどんなに思い詰めているか、命をかける覚悟がどれほど深いかを、私は痛いほど理解していた。そして、彼女の過激な行動が引き起こすかもしれない未来の混乱を想像するだけで、心が締め付けられるようだった。

「明!!」

 私は声を上げて、必死に彼女を止めようとした。

「それだけはよせ。そんなことをしても、奴らをいたずら刺激するだけだ」

 しかし、明は私の言葉に耳を貸さなかった。彼女の目がぎらつき、声に力が込められているのを見て、私の心はますます不安になった。

「こっちから揺さぶりをかけてやるんだよ。このままされるがままなんて、我慢できるかって」

 それを聞いた私は、深くため息をつきながら、冷静に諭すように言った。

「上帳の何人かを始末できたとしても、それをきっかけに上層部は混乱し、ますます収拾がつかなくなるだろう。必要のない血が流れ、強硬派は死物狂いで仕掛けてくることになるだろう。それこそ一般人を巻き込むような騒ぎになってもおかしくない。それでもいいのか?」

 私が本当に伝えたかったのは、明に人を殺めてほしくないという強い思いだった。彼女の心の中の激しい怒りが、彼女自身を壊してしまうのではないかという恐れがあった。暴力に対抗するために暴力を用いることが、どれほどの痛みを生むかを心の底から理解していたからだ。

 明は、一瞬黙り込んでから、呼吸を次第に落ち着かせていった。

「そうか……そうだね……」

 その声は、かすかに震えていた。彼女の心がようやく冷静さを取り戻し、私はほっとした。

 そして、私は一同を見回して言った。

「状況はますます厳しくなるだろうが、俺は前に進むしかない。皆、力を貸してくれ」

 一同は静かに、しかし確固たる意志を持って賛同してくれた。

 私は皆の希望を背負っているのだ。決して立ち止まることなど許されない。そう思った。

        ◇         ◇

 場裏の制御技術が急激に進化する過程で、私はその成長に驚きを隠せなかった。

 茉凜と明、そして洸人の支えによって、私の技術は予想を超える速さで高められていった。白の場裏を基盤に、明の赤、洸人の青を次々と習得することで、私はついに複数の場裏を同時に制御する能力を手に入れた。その結果、赤、青、白の場裏を同時に操ることができるようになった。

 特に驚くべきは、場裏の枠を超えた技術の発展だった。異なる場裏を組み合わせることで、新たな技術を生み出すことに成功したのだ。瞬時に水を集め、熱操作で凍結させ、それを大気の圧縮で打ち出す、といった複合的な操作が可能になり、その技術が場裏の可能性を飛躍的に広げるだろうと確信した。

 その一連の流れは、かつては想像すらできなかった技術だった。まるで魔法のように、異なる要素が調和し、新たな力を生み出す。この技術は、場裏の枠を超えて、新たな可能性を切り開いていると実感していた。

 その瞬間、私は自分がファンタジー世界の魔法使いになったかのような錯覚に陥った。現実とファンタジーの境界が曖昧になる感覚。私の技術が進化するにつれて、まるで魔法のような力を手に入れたかのような気がしてしまったのだ。

        ◇        ◇

 茉凜の優しさに触れるたび、私の心は複雑な感情に揺さぶられていた。

 日々の穏やかな時間が永遠に続くことを願わずにはいられなかった。しかし、私たちが避けられない運命に向かって進んでいることも理解していた。その現実に対する覚悟を決められずにいる自分が、もどかしく、心の中で葛藤が収まることはなかった。

 デルワーズとの約定に従い、弟の身体を精霊子を集める器として、マウザーグレイルを宿した導き手と共に始まりの回廊へ向かうことは、解呪への定められた道だった。

 しかし、本当にこの道を進むべきなのか、私はまだ迷っていた。両親が遺した願いを叶え、深淵の血族を呪いから解放すること、皆の未来を切り開くこと、そして弟を取り戻すことは、私にとって何よりも大切な願いだった。それだけは譲れない。

 しかし、もし茉凜がその導き手なら、彼女をその旅に連れていかなければならない。その時が来たら、私の正体が知られてしまうかもしれない。そして、彼女とはそこでお別れしなければならないのだ。

 その未来を想像するだけで、胸が締め付けられ、涙がこぼれそうになる。彼女を傷つけることが恐ろしいと感じると、心が痛んで仕方なかった。それでも、私は進むべきなのか――その問いに答えを見つけることができず、立ち止まったままだった。

 こうして、私たちの穏やかな時間は、嵐の前の静けさのように流れていった。日々の安らぎが、心の奥底に潜む不安をしばしば忘れさせてくれるかのようだった。しかし、その静けさの背後には、いつか訪れるであろう試練への恐れが静かに潜んでいた。

 九月も半ばを過ぎた頃、私の前に突如として大きな出来事が降りかかった。それはまさに青天の霹靂であり、私が予想だにしなかった事態だった。その出来事は、私のアイデンティティを根底から揺るがすものであり、心の奥底にひっそりと閉じ込めていた秘密と向き合わせることを余儀なくさせた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ミツル・グロンダイルのキャラクター設定

基本情報年齢: 12歳(外見年齢)


外見: この大陸では珍しい黒髪と薄緑の透き通った瞳。美しい容貌だが、体型は少し少年のようで、まな板の寸胴であることに敏感。自称年齢: 21歳(前世の記憶を持つため)


性格: 冷淡に見えながらも実は直情的で、一人でいることを好む。時折無邪気な一面を見せることがある。前世の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動き、冷静な大人の一面と子供っぽさが共存する複雑なキャラクター。


好物

食事に関しては美味しいものを少しだけなタイプ。剣の中の茉凜がアルコール依存になってしまったため。最近はお酒も嗜む。


社会的関係: 引っ込み思案で人付き合いが苦手なため、孤独を好む。しかし、孤独を埋めるために時折無邪気な一面を見せる。自分の力や能力に対する内なる葛藤と向き合いながら、過去の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動く。


ミツル・グロンダイルの物語における役割

憧れの存在: ユベル・グロンダイル(父)の影響を強く受けており、彼の戦闘スタイルや技術に憧れを抱く。父の遺志を継いで魔獣を狩る役割を担う。

遺産と使命: 父が遺した白きマウザーグレイルを持ち、彼の意志を継ぐ重要な役割を果たしている。彼女の能力と背景は、物語の重要な要素となっている。

謎と葛藤: 彼女の能力と前世の記憶には深い謎があり、物語の進行とともにその全容が明かされる可能性がある。彼女の内面的な葛藤や成長は、物語の核心に深く関わっている。


前世の名前: 柚羽 美鶴(ゆずは みつる)

年齢: 不明(死後、弟の弓鶴に憑依しているため、年齢としては弓鶴の年齢に準じる)

性別: 女性(現在は弟の弓鶴に憑依中)

出身地:九州地方某県の山中の柚羽家(深淵の三家の一つ、始まりの回廊の守護者)

職業: 柚羽家の後継者で深淵の始まりの回廊の巫女


 美鶴は深淵の三家の一つである柚羽家の長女であり、始まりの回廊の守護者。柚羽家襲撃事件で両親を失った後、叔父の虎洞寺氏に保護された。その後、両親の死の真相を知り、自ら人身御供になる覚悟を決め、柚羽家の後継者となった。彼女は密かに深淵の根源の再生を図り、解呪に臨んだが、その試みは失敗し、死亡した。


その後

 美鶴はデルワーズの画策により、弟の弓鶴と意識と記憶の全情報を交換させることで、彼に憑依する形で生き延びる。弟を取り戻すために再び解呪に進もうとした際、茉凜と出会う。茉凜が持つ「黒」の力の安全装置としての役割によって、二人は運命共同体となることが決まる。


 自らが女性であることに対する戸惑いと、茉凜に対する淡い感情を抱くようになり、自分が本当は弟ではないことや、茉凜が見ているのは弟であることに苦悩する。


 美鶴は両親の死の真相を知った後、自らが柚羽家の後継者として深淵の根源の再生を図ろうとしたが、その試みが失敗したことに対する責任感を抱えている。


 茉凜の猛烈なアタックに対して、次第に閉じていた心を開き始めると共に、彼女に対して淡い心を抱く。しかし、自分が本来女性であることや、それを知られることを怖れて受け入れることに苦しんでいる。


 美鶴は茉凜と共に深淵の根源の解呪に挑む中で、茉凜の存在が自らにとってどれほど重要であるかを認識し始める。しかし、彼女は自分の感情と状況に苦悩し、特に自分が女性として抱く感情や、茉凜が見ているのが自分ではなく弟であることに対して深い悩みを抱えている。


深淵の黒鶴

 精霊子に対する感受性が極めて高く、世界に漂うすべての精霊子を集積できる。彼女の前世の名前(美鶴)と組み合わせて【黒鶴】と呼ばれる。限定された空間(場裏)を形成し、その中でイメージ通りの現象を具現化。四大元素すべてを制御可能で、並列起動による複合行使も可能。背中に現れる翼は物質的ではなく、彼女の願望を投影したもの。


場裏

 限定された空間を形成し、その中で事象を操作。色で呼称される流儀に基づき、たとえば赤であれば熱の操作に関わり、イメージのままに具現化できる。詠唱や魔道具を必要としない強力な魔術として認識されている。戦闘と


能力の影響

 ミツルの戦闘スタイルは、前世の影響を色濃く受け継いでおり、流動的で柔軟な戦術が特徴。彼女の能力は瞬時に強力な現象を引き起こすことができ、そのため精神的な負荷が非常に大きい。精神崩壊や自我喪失のリスクが伴う。


精神的負荷

 精霊子の収集と能力の使用により、大脳辺縁系に過大な負荷がかかり、精神的な負担が大きい。特に精霊子への感受性が高い彼女は、負荷に耐えきれず暴走する危険がある。

ヴィル・ブルフォード

 ミツルの前にふらりと現れた、ぼさぼさ頭の無精髭の中年剣士。『黒髪のグロンダイル』の噂を聞きつけて訪れたという、彼の真意と思惑は?

 自らを『放浪のしがない剣士』と言う割に、その剣技は一流で、歴戦の強者。『雷光』とあだ名されると対魔獣戦のエキスパートで、その戦いぶりはミツルも舌を巻く。


年齢 48歳

身長 190センチ近い

体格 大柄で強靭

出身地 不明

職業  剣士、冒険者、元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長

髪: ぼさぼさの金髪。長さは無造作に伸びており、戦いの中で乱れたまま放置されている。

顔 無精ひげが顔全体に生えており、荒々しさと共に風格を漂わせている。

武器 中央に深い溝が彫られたブロードソード。鍛造で作られており、適度な粘りを持ち、滅多に折れない。


剣術スタイル

流派 雷光(らいこう)

特徴 巨体とその質量を生かした高速ダッシュ


戦闘スタイル

高速ダッシュ 雷のようなスピードで踏み込み、敵の懐に入り込む

敵の死角利用 相手の身体を死角として利用し、瞬時に繰り出される高速の斬撃で敵を仕留める

左手の傷 突きを繰り出す際に意図的に剣の先に左手を添え、敵の注意を引き付ける。実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、非常に巧妙。猪突猛進型でありながらも、臨機応変に対応できる柔軟さを持つ。これは、変幻自在で『型』のないユベルと毎日修練を積み重ねた結果(苦肉の策)による。


戦闘技術

片手剣術 基本的には片手でブロードソードを操るが、必要に応じて両刀も使うことができる。戦況に応じて剣の使い方を変え、迅速かつ的確に対応。


特殊技

雷光突き 瞬時に高速で踏み込み、突きを繰り出す技

閃光斬り 一瞬の隙を突き、相手の死角から高速で斬撃を繰り出す技


特徴と戦術

巨体と速度を生かして、魔獣の懐に入り込み、致命的な攻撃を繰り出す。視線誘導の技術で、敵の視線を引き付けてから攻撃する。


心理と性格

戦場での冷静な判断力と卓越した技術で、数々の戦場で名を馳せる。敵の動きを見極め、最適な攻撃や防御を選択する。どんな状況でも冷静に対応し、自信を持って戦う。猪突猛進型でありながら、変幻自在の戦術を使いこなす柔軟さを持つ。


元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長を務めた経験を持つ。騎士団時代の訓練と経験が、彼の戦術的な判断力と剣術の技術に大いに寄与している。特に、ユベルとの修練で得た経験が、彼の変幻自在な戦術に大きな影響を与えている。


その戦闘スタイル

一九〇センチ近い大柄な体躯を持ちながらも、その強靭な体に似合わぬほどの軽快さを誇る剣士。彼の手に握られているのは、ロングソードよりも短いブロードソードに近いもので、中央には深い溝が彫られている。この剣は鍛造で、適度な粘りを持ち、使い手によっては滅多に折れることがない。


ヴィルの剣術のスタイルは「雷光」と呼ばれ、彼の巨体とその質量を生かした高速ダッシュが特徴。彼は特に大きな魔獣を相手にするのが得意で、雷のようなスピードで踏み込むと、敵の懐に入り込み、相手の身体自体を死角として利用する。瞬時に繰り出される高速の斬撃で、敵を一気に仕留める。


特筆すべきは、彼の左手に傷が絶えないこと。これは、突きを繰り出す際に意図的に剣の先に手を添えて、その手に注意を引き付けるためだ。敵がその手に視線を奪われている間に、実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、彼の戦術は非常に巧妙。


ヴィルの剣は基本的に片手で操られることが多いが、必要に応じて双剣で戦うこともできる。その柔軟な使い方と、雷光のような素早さを駆使して、彼は戦場でその名を轟かせた。

茉凜(マリン)のキャラクター設定


基本情報年齢: 17歳

身長: 173センチ

プロポーション:高跳びの選手かファッションモデルのようなスラリとしたかっこいいスタイル。ただし本人は自覚なしで自信がない。 


外見: ミルクティーブラウンの髪、大きな瞳、お日様のような笑顔。純粋で優しい少女の姿が特徴的。


性格: 天真爛漫でポジティブ。どんな困難な状況でも明るさを失わず、死の淵の絶対的不利な状況でも輝く。特に追い込まれるとスイッチが切り替わり、予知視界を用いる能力が発揮される。


背景前世: 元々は私たちの世界に住んでいた人物。異世界に突然放り込まれ、さらに剣の中に転生させられるという過酷な運命を辿る。


役割: ミツルの相棒であり、恋人(?)。彼女の無条件の愛情と楽観的な性格がミツルの心の支えとなっている。過去のトラウマ: 落雷事故によるトラウマがあるが、それを嘆くことなく明るさを保ち続ける。ミツルにとっては大きな支え。


能力と役割能力: マウザーグレイル経由の予知視界。死の淵での絶対的不利な状況でも特に有効で、剣の中にあるこの能力が最大の武器である。


役割: ミツルの『深淵の黒鶴』を制御するための安全装置(セーフティ)として機能。暴走を防ぐ唯一の手段として、ミツルとの接触と精神的な感応が必要。自身の全てを捧げる覚悟を持ち、ミツルを守ることを使命としている。


心情と内面愛情: ミツルに対して無条件の愛情を注いでおり、彼女の存在はミツルにとって欠かせない心の拠り所となっている。愛情が恋であることに気づきながらも、その感情を告白することはできない。


支え: ミツルの冷たい態度や無口さの裏に隠された繊細な心を理解し、彼の孤独や苦しみを誰よりも感じ取っている。彼の心の支えとなることを自分の使命と感じ、彼を守るために自分の全てを捧げる覚悟を持っている。


内面の葛藤: 弓鶴(ミツル)が自分にとって特別でなくなるのではないかという不安を抱えながらも、彼の幸せを最優先に考え、自分の感情を抑え込んでいる。仲直りを図る際には自分を押し殺して彼らの関係を修復しようとするなど、内面的には複雑な感情が渦巻いている。

白きマウザーグレイル

基本情報正式名称: 精霊器接続式対魔族兵装 MW-CSV-DD MAUSER-GRELL(マウザーグレイル)

形状: 純白のロングソード

特徴: 刃に相当する部分がなく、実質的には何物も斬れない

構造と材質材質: 不明。構成素材については詳細が不明だが、非常に高い堅牢さを誇る。

耐久性: どんな魔獣の攻撃にもヒビ一つ入らないほどの堅牢さを持つ。

重量: 見た目よりも軽量で、非力なミツルでも自在に扱える。

機能と特性魔導兵装: 剣の形をとった魔導兵装であり、実際には物理的に斬ることはできない。

潜在能力: 現在のところ、ミツルもその実体と潜在能力については把握していない。

補助機能: ミツルの持つスキル「真凜」が安全装置として補助を行っている。

戦闘における役割安全装置: ミツルが持つ「深淵の黒鶴」の能力を制御するための安全装置として機能する。マウザーグレイルが実際の戦闘では使われないが、その存在がミツルの能力の安定に寄与している。

象徴的な意味: 剣そのものは物理的な攻撃力を持たないが、深い意味や力を秘めている可能性がある。特に、ミツルの精神的、象徴的な支えとしての役割を果たしている。

謎と疑問実体の不明: 現状、剣の具体的な機能やその実体についてはミツル自身も把握していない。剣の持つ潜在的な力や目的については謎に包まれている。発見される

可能性: 今後のストーリー展開で、その真の力や役割が明らかになる可能性がある。

ユベル・グロンダイル

 ミツルの父で、『閃光』の異名を持つ変幻自在の剣術を操る天才。すでに故人である。


ユベル・グロンダイルのキャラクター概要

年齢と外見:

年齢:50代外見:かつて金髪だったが、現在は黒く染めている。無精髭を蓄え、スリムで筋肉質な体型。優雅な立ち姿と流れるような戦闘動作が特徴。


役割と経歴:

元リーディス王国銀翼騎士団右翼リーダーであり、対魔獣戦のエキスパート。リーディス王国の銀翼騎士団に所属し、多くの戦場を経験。特に魔獣戦においてその名を馳せた。


基本戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の極みであり、その動きは流動的でまるで水のように変幻自在。力強さでは他の剣士に劣ることもあるが、素早さと身軽さで魔獣を屠る。ステップワークや変則的な体術を駆使し、敵の動きを予測させない巧妙な戦術を展開。回転しながらの斬撃や舞うような動きで敵の意識を散らし、戦局を有利に進める。


家族との関係:

妻:メイレア(元リーディス王国の第三王女)。非常に深い愛情を持ち、二人の関係はミツルにとって時折恥ずかしくなるほどの愛情表現がなされていた。娘:ミツルにとってユベルは憧れの対象であり、彼の戦闘スタイルや技術に強く影響を受けている。

最後の旅と戦い:

妻メイレアの行方不明後、ユベルは娘ミツルを連れて探索の旅に出る。愛する妻を取り戻すため、家族の絆を守るための決意を持っていた。未知の魔獣との戦いで命を落とし、その犠牲によってミツルは生き延びることができた。

白きマウザーグレイル:

ユベルが妻との絆として持っていた白きマウザーグレイルは、ミツルに託された。この剣はユベルの思いと愛情を象徴し、ミツルにとっては父の遺志を継ぐ重要なアイテム。


お尋ね者:

尊敬を集める存在だったが、妻を誘拐した罪が科せられ、お尋ね者として追われていた。ユベル・グロンダイルの戦闘スタイル


「柔」の戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の戦術を体現し、流動的で変幻自在な動きが特徴。彼の動きは舞踏家のように優雅でありながら、非常に戦術的で緻密。


ステップワークと回転体術:

軽やかなステップワークで敵の攻撃を避け、回転しながらの斬撃で敵を翻弄。体操選手やフィギュアスケーターを彷彿とさせる華麗な動きが特徴。


対魔獣戦の特化:

魔獣の懐に自在に出入りし、相手の身体を盾として利用することで最短距離からの攻撃を実現。風のように迅速で、敵の反応を許さない。

彼の戦闘スタイルを際立たせている。

前世での二人

 それは第二章で語られる。

虎洞寺健

美鶴と弓鶴の叔父で、保護者であり協力者。

能力が実用に耐えない血族が所属する郭外のリーダーで、自身は多数の企業を成功に導いた実業家で資産家。その貢献によって上層部にも大きな発言力を持ち、水面下で二人の活動をサポートする。彼の目的は深淵の呪いからの解放と深淵の解体である。

佐藤さん

 柚羽家のお手伝いさんで、美鶴の理解者。昔からの柚羽家のお手伝いさんで、その家事能力は超人。茉凜の料理の師匠。

真坂明

 15歳の少女で、身長は152センチメートル。黒のショートカットが特徴的で、衣装は、黒のクロップトップと高腰のパンツ、袖にディテールが施されたオープンジャケットで、全体的にクールでスタイリッシュな印象。均整の取れたスタイルも、洗練された雰囲気に一役買っている。

性格は情熱的で、自分が思ったことをはっきりと口にするタイプ。弓鶴の元許嫁であり、真坂家の次期後継者としての重責を担っている。また、「深淵の赤の流儀」の高度な術者でもあり、その実力は並外れている。彼女の存在感は、その内に秘めた強い意志と、家の名に恥じない実力から来ている。

明は破談後も弓鶴を想い続けており、それが彼女の能力の原動力になっている。自身が家の後継者となり、弓鶴を婿として迎えようと決意した結果、兄二人を殺害してしまう。

柚羽 美鶴

 ミツルの前世で転生時二十歳。その過去はダイジェストとして第二章で語られる。ミツルの内向的なところは彼女の成分。

 前世では茉凜に対して次第に恋心を抱いていくが、さまざまな問題が障害となって、素直に気持ちを伝えられずにいた。

 彼女のバルファへの転生がグロンダイル家にもたらした影響が、ミツルが戦い旅する理由。

鳴海沢洸人

深淵の血族、上帳を構成する三家の一つ、鳴海沢の長子。流儀青の強力な使い手。弓鶴の確保のために遣わされるが敗退し、その後弓鶴と茉凜の監視役として転校してくる。

数年前に暗殺に失敗し、その後始末として対象を家族諸共惨殺したことがきっかけで、殺せない欠陥品になってしまった。強力な血を残すために家に留め置かれ、鬱々とした日々を送っていた彼を変えたのは、深淵の始まりの回廊の巫女からの言葉だった。 

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み