第38話 一対の翼の物語

文字数 5,309文字

 嵐のような期末試験期間が終わり、真凜はまるで魂が抜けたかのようにぐったりとした姿を見せていた。彼女の顔には、試験の疲れと精神的な疲労が色濃く刻まれていて、その様子を目の当たりにするたびに、私の胸はキュッと締めつけられるような痛みを覚えた。試験対策に全力で協力してきた私も、彼女を疲弊させた要因の一つだと思うと、その痛みは一層深くなった。

 それでも、心の中で自分に言い聞かせながら、私は真凜を励まし続けた。彼女がこの試練を乗り越えた先には、きっと楽しい夏休みが待っていると信じていた。彼女のためにできることは全てやりたかったし、その先で真凜が笑顔でいられるように、何としてもサポートしたかった。

 そして、試験がようやく終わった時、真凜はまさに英雄だった。彼女は自分のすべきことを全てやり遂げ、その勇気と努力に、私は心から敬意を表したい気持ちでいっぱいだった。

 その時、初めて私から彼女に提案をした。「一緒に遊びに行こう」と。

 私の提案に対する彼女の反応は、目を見張るほど鮮やかだった。生気を失っていたはずの真凜の目が、まるで朝日のように輝きを取り戻し、その輝きが私の心を温かく包み込んだ。

 これまで、私はいつも真凜に引っ張られてばかりで、自分から何かを提案することはほとんどなかった。けれど、最近は何かが変わった気がする。真凜の笑顔をもっと見たいと、自然にそう思えるようになっていたのだ。

 試験対策の時間も、彼女と過ごす時間がとても楽しく、充実していた。その時間が、私にとってかけがえのないものになっていた。

 あの試練を通じて、私たちの間にあった見えない壁が少しずつ薄れていくのを感じていた。距離が縮まっていくのを実感しながら、友達と呼べる関係になれたのかもしれないと、ふと思うこともあった。

 もちろん、どんなに良い時期でも終わりが訪れることを理解している。でも今、この瞬間だけは、彼女と一緒にいることが私にとって唯一無二の幸せであり、心から大切にしたい時間だと改めて実感していた。真凜の笑顔が、私にとって何よりの宝物なのだ。

        ◇        ◇      

 夕焼けが空をオレンジ色に染める中、帰り道を歩く私と真凜。彼女の笑顔は、まるで沈む太陽に照らされて、より一層輝きを増していた。まるで彼女の心の中に、温かい光が満ちているかのようで、その姿を見るだけで私の心もじんわりと温かくなっていった。

 今日は一日中、彼女に引っ張られっぱなしだった。真凜はまるで子供のような無邪気さで、好きなものを次々と口にし、気になるお店を一軒ずつ覗いていった。彼女の目が輝くたびに、私も自然とその世界に引き込まれていくのを感じた。真凜は海に行きたがっているようで、水着選びに時間をかける姿は、あまりにも愛らしくて、見ているだけで心が和んだ。

 その後、私たちはゲームセンターに立ち寄った。クレーンゲームの前に立つと、私はその操作がさっぱりわからず、何度挑戦してもぬいぐるみが取れなかった。焦りとイライラが募り、ついには筐体を蹴りたい衝動に駆られそうになった。それでも、真凜はその熟練の手つきで、私が「欲しいな」と小さく呟いたぬいぐるみを見事に取ってくれた。

 その瞬間、彼女がぬいぐるみを私に渡してくれたとき、心の奥底から広がる喜びがあまりにも大きくて、自然と笑みがこぼれてしまった。真凜の笑顔が、私の内側から幸せを引き出し、まるで心の中に咲いた花がふわりとほころぶような感覚だった。

 その笑顔に気づいた真凜も、まるで自分のことのように嬉しそうに笑っていた。彼女の喜びが、私の喜びをより深くしてくれた。

 そのとき、私はふと気づいた。今、この瞬間、私は自分の感情を素直に曝け出しているのだと。心の奥底から湧き上がる感情に身を委ね、ただ純粋にその幸せを楽しんでいる自分がいた。こんな風に自分をさらけ出すことができるのは、真凜の存在があってこそだと、心から感じていた。

 そして、半ば強引に、という言葉がぴったりなプリクラの体験もした。初めてのその場所は、まるで夢の中に迷い込んだような、不思議でカラフルな世界だった。機械の中から現れる派手な背景や、ピカピカ光る装飾が、私を一瞬で異次元へと連れ去った。どこかコミカルで、少し滑稽なその世界で、私たちは自然と笑い合っていた。

 プリクラが完成し、出来上がった写真を手に取った瞬間、目の前に現れたのは、まるで別人のような面白おかしい顔をした私たちだった。顔が引きつっているわけでもないのに、その表情はとてもユニークで、思わず笑ってしまった。真凜が描き入れた可愛らしい落書きもあって、その絵がまた一層私たちの表情を引き立てていた。

 その写真を見た瞬間、胸の奥がポカポカと温かくなり、自然と頬がほころんだ。恥ずかしさと嬉しさが入り混じりながらも、その全てが心地よく、私は照れくさそうに笑い続けていた。真凜と過ごすこの特別な時間が、どれほど私にとって大切で、かけがえのないものであるかを実感しながら、心からの笑顔が溢れていた。

       ◇        ◇

 その日の出来事を振り返りながら、私は自然とほほえみがこぼれていた。楽しい一日が心に深く刻まれて、どこか幸せな気持ちが湧き上がってくる。そんな私の顔を、真凜は嬉しそうに見つめていた。

 「弓鶴くん、ありがとうね。私のために頑張って応援してくれて。それに、こんなにも楽しい……」と、彼女の言葉は、一瞬、何かを躊躇しているような空気を漂わせた。口ごもったその瞬間、私は彼女の心の中にひっかかりがあることを感じ取った。

 けれど、真凜はすぐに顔を振り払うようにして、慌てて言い直した。

「とにかく、遊びに誘ってくれて嬉しかったよ」

 その言葉を聞いて、私は少しほっとした。真凜のその気持ちが、なんだか心の奥に温かい灯りをともしてくれるようだった。

 私は微笑みながら頷いた。

「頑張ったのは真凜だ。俺は大したことはしていない。でも、こうして試験が終わって、一緒に楽しい時間を過ごせたのは本当に良かった。最近は、いろいろと大変なこともあったから……」

「うん、そうだね。やっぱり、耐えて耐えて、その後の解放感って最高だよ。今日は本当に楽しかった」

 真凜は笑顔で応じた。その表情は、まるで心の中に幸せの花が咲いたように輝いていた。

 ふと気がつくと、私たちの距離は以前よりもぐっと近くなっていた。その瞬間、胸の奥で微かにドキドキとした感覚が広がり、体がほんのりと熱くなった。けれど、その熱さは決して不快なものではなく、むしろ心地よく、ふんわりと全身を包み込んでいるようだった。その感覚に包まれて、私は思わずもう一度微笑んだ。

 その時、真凜が「そうだ」と思い出したように手提げ袋から小さな紙包みを取り出した。私の目はその動きに引き寄せられ、何だろうと気になって訊ねてしまった。

「どうしたんだ?」

 すると、真凜は少しおどけたように微笑みながら答えた。

「さて、弓鶴くんに質問。これは何でしょうか?」

 「わかるわけないだろう」と、私が素っ気なく答えると、真凜はぷくっと頬を膨らませて、不満そうな顔をした。その表情があまりにも可愛らしくて、つい目を逸らしてしまいそうになった。

「つまらないの。まあ、いいや」

 真凜は軽く肩をすくめながら、紙包みを開け始めた。

 その瞬間、彼女の指先からチェーンでぶら下がる小さな物が姿を現し、夕日の光を受けてキラキラと輝いていた。私は思わず顔を近づけ、それをじっと見つめた。それは、黒い翼の片翼を模したようなデザインだった。翼の細かなディテールが巧みに彫られていて、光の中で妖しく輝く様子が、まるで魔法のように美しかった。

 「これが何か?」と、私は困惑しながら問いかけた。真凜は自信満々に「ふふん」と笑いながら、嬉しそうに答えた。

「見てわからない? キーホルダーだよ」

「それはわかるが、こんな物をどうして?」

 真凜は一瞬考え込みながら言葉を選び、ゆっくりと答えた。

「さっき寄った雑貨屋さんで見つけたの。これって、弓鶴くんが黒鶴を使う時に出てくる、黒い翼に似てるかなって思って」

「そ、そうか……」

 私はその言葉の意味をやっと理解し、彼女が黒い翼をどのように捉えているのか、少し興味を抱いた。

「アクセサリーもあったんだけど、日常的に使うのは難しいかなって思って。これならカバンにつけておけるし、気軽に持ち歩けるでしょ」

 真凜はそう言いながら、紙袋からもう一つ同じようなキーホルダーを取り出し、私に差し出した。私がそれをじっと見つめると、しばらく躊躇った後、ゆっくりと受け取った。すぐに、そのキーホルダーが真凜の物と対称の形をしていることに気がついた。

「これって、もしかしてペアになっているのか?」

 「うん……」と、真凜は少しはにかんだように答えた。その恥ずかしそうに頬を赤らめる姿が、私の心に柔らかな波紋を広げた。

 真凜は私の手の中のキーホルダーをじっと見つめ、静かに言った。

「あの黒い翼、わたし、いつもすごく綺麗だなって思ってたの」

 その言葉が心に深く響いた。あの実体の無い存在を、真凜がどのように感じているのかを知ることで、私の心の中に新たな感情が芽生えた。彼女にとって、その翼はただの力の象徴ではなく、美しさと価値を持つ存在だったのだと気づかされた。

 今まで、あれは私にとっては狂気と隣り合わせの力の象徴でしかなかった。それでも、真凜の目を通して少しだけ違った景色が見えたような気がした。

 「あれは、そんなにいいものなのか?」と、私は少し自嘲気味に訊ねた。内心では、自分の感覚と真凜の感じ方の違いに戸惑いを覚えながら、彼女の反応を待っていた。しかし、真凜は微笑みながらも、その瞳に真剣さを滲ませていた。

「うん、とっても素敵だと思う。それにね……」

 真凜はそこで言葉を詰まらせ、その微妙な表情が何かを伝えたくても言葉にできずにいる様子を浮かべていた。彼女の手が私の手の上のキーホルダーに近づくにつれて、その小さな物がどうしてこれほど特別なのか、少しずつ理解できるような気がした。

 そして、互いの二つのキーホルダーが寄り添い、一対の翼のように重なった瞬間、私は驚きのあまり息を呑んだ。そして、真凜の目には優しさと、私に伝えたい強い思いが宿っていた。

「これはふたつでひとつ。そのどちらかが欠けてもだめなんだ。それは、わたしたちも同じなのかもって……」

 その言葉に、私は胸がぎゅっと締め付けられるような感覚を覚えた。真凜の言葉が、私の心の奥深くに響き渡り、彼女の気持ちをひしひしと感じ取ることができた。彼女の真摯な思いが込められたキーホルダーが、私にとっては単なる物以上の重みを持っていることに気づいた。

「前にわたし言ったよね。辛いことも悲しいことも、半分こにしたいって。これにはそんな……そんな願いを込めたいって思ってる……」

 真凜の声は消え入りそうで、彼女の感情が伝わってくるその微かな響きに、私の心もまた震えた。彼女が言いたいことは、言葉にするのが難しいほど深い感情と願いが詰まっているのだと感じた。私はどう答えたらいいのか分からず、ただ黙ってその言葉を受け入れるしかなかった。

 真凜の思いが形となったこのキーホルダーが、私にはとても重いものに感じられた。彼女の期待に応えられない自分を悔やむ気持ちが、心の奥で燻っていた。

 それを察したのか、真凜は少し慌てた様子で、戸惑いながら言った。

「あ、あの、そんなに深い意味はないから、気に入らなかったら受け取らなくても、いいから……」

 彼女がこんなにも複雑な表情を見せるのは初めてで、私はどうしていいかわからなくなっていた。その表情から、真凜が悩んでいる様子が、心に染み込んできた。

 私は心臓が制御不能なくらい高鳴り、体が急に熱くなるのを感じた。嬉しさと感動が込み上げ、私の心の奥深くまで届いた。

 どう答えるべきか迷っていた私に、真凜は少し照れくさそうに微笑んで、こう言った。

「これはさ、友情の証みたいなものだから。そんなに気にしないで」

 その言葉に、私はほっとしたような、でも少し寂しい気持ちを抱いた。真凜が言いたいことはもっと深いものだったかもしれないけれど、私にはそれを掘り下げる勇気がなかった。だから、私ができるのは、この瞬間に合わせた答えをすることだけだった。

「友情か……。そうだな、俺たちは友達だ。これはその証として大切にするよ」

 そう言いながら、私はキーホルダーを手に取り、それを胸にしっかりと当てた。真凜の気持ちを感じ取りながら、自分の心がどこかで彼女の期待に応えたいと願っているのを感じた。しかし、現実の障害がそれを妨げる限り、私は自分の気持ちを誤魔化しながら、この瞬間を過ごすしかなかった。

 真凜の期待に応えられない自分を悔やみながらも、彼女の思いが形となったこのキーホルダーを大切にしようと決めた。そして、彼女の温かな気持ちに触れながら、心の奥で静かに響く感情と向き合っていた。
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登場人物紹介

ミツル・グロンダイルのキャラクター設定

基本情報年齢: 12歳(外見年齢)


外見: この大陸では珍しい黒髪と薄緑の透き通った瞳。美しい容貌だが、体型は少し少年のようで、まな板の寸胴であることに敏感。自称年齢: 21歳(前世の記憶を持つため)


性格: 冷淡に見えながらも実は直情的で、一人でいることを好む。時折無邪気な一面を見せることがある。前世の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動き、冷静な大人の一面と子供っぽさが共存する複雑なキャラクター。


好物

食事に関しては美味しいものを少しだけなタイプ。剣の中の茉凜がアルコール依存になってしまったため。最近はお酒も嗜む。


社会的関係: 引っ込み思案で人付き合いが苦手なため、孤独を好む。しかし、孤独を埋めるために時折無邪気な一面を見せる。自分の力や能力に対する内なる葛藤と向き合いながら、過去の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動く。


ミツル・グロンダイルの物語における役割

憧れの存在: ユベル・グロンダイル(父)の影響を強く受けており、彼の戦闘スタイルや技術に憧れを抱く。父の遺志を継いで魔獣を狩る役割を担う。

遺産と使命: 父が遺した白きマウザーグレイルを持ち、彼の意志を継ぐ重要な役割を果たしている。彼女の能力と背景は、物語の重要な要素となっている。

謎と葛藤: 彼女の能力と前世の記憶には深い謎があり、物語の進行とともにその全容が明かされる可能性がある。彼女の内面的な葛藤や成長は、物語の核心に深く関わっている。


前世の名前: 柚羽 美鶴(ゆずは みつる)

年齢: 不明(死後、弟の弓鶴に憑依しているため、年齢としては弓鶴の年齢に準じる)

性別: 女性(現在は弟の弓鶴に憑依中)

出身地:九州地方某県の山中の柚羽家(深淵の三家の一つ、始まりの回廊の守護者)

職業: 柚羽家の後継者で深淵の始まりの回廊の巫女


 美鶴は深淵の三家の一つである柚羽家の長女であり、始まりの回廊の守護者。柚羽家襲撃事件で両親を失った後、叔父の虎洞寺氏に保護された。その後、両親の死の真相を知り、自ら人身御供になる覚悟を決め、柚羽家の後継者となった。彼女は密かに深淵の根源の再生を図り、解呪に臨んだが、その試みは失敗し、死亡した。


その後

 美鶴はデルワーズの画策により、弟の弓鶴と意識と記憶の全情報を交換させることで、彼に憑依する形で生き延びる。弟を取り戻すために再び解呪に進もうとした際、茉凜と出会う。茉凜が持つ「黒」の力の安全装置としての役割によって、二人は運命共同体となることが決まる。


 自らが女性であることに対する戸惑いと、茉凜に対する淡い感情を抱くようになり、自分が本当は弟ではないことや、茉凜が見ているのは弟であることに苦悩する。


 美鶴は両親の死の真相を知った後、自らが柚羽家の後継者として深淵の根源の再生を図ろうとしたが、その試みが失敗したことに対する責任感を抱えている。


 茉凜の猛烈なアタックに対して、次第に閉じていた心を開き始めると共に、彼女に対して淡い心を抱く。しかし、自分が本来女性であることや、それを知られることを怖れて受け入れることに苦しんでいる。


 美鶴は茉凜と共に深淵の根源の解呪に挑む中で、茉凜の存在が自らにとってどれほど重要であるかを認識し始める。しかし、彼女は自分の感情と状況に苦悩し、特に自分が女性として抱く感情や、茉凜が見ているのが自分ではなく弟であることに対して深い悩みを抱えている。


深淵の黒鶴

 精霊子に対する感受性が極めて高く、世界に漂うすべての精霊子を集積できる。彼女の前世の名前(美鶴)と組み合わせて【黒鶴】と呼ばれる。限定された空間(場裏)を形成し、その中でイメージ通りの現象を具現化。四大元素すべてを制御可能で、並列起動による複合行使も可能。背中に現れる翼は物質的ではなく、彼女の願望を投影したもの。


場裏

 限定された空間を形成し、その中で事象を操作。色で呼称される流儀に基づき、たとえば赤であれば熱の操作に関わり、イメージのままに具現化できる。詠唱や魔道具を必要としない強力な魔術として認識されている。戦闘と


能力の影響

 ミツルの戦闘スタイルは、前世の影響を色濃く受け継いでおり、流動的で柔軟な戦術が特徴。彼女の能力は瞬時に強力な現象を引き起こすことができ、そのため精神的な負荷が非常に大きい。精神崩壊や自我喪失のリスクが伴う。


精神的負荷

 精霊子の収集と能力の使用により、大脳辺縁系に過大な負荷がかかり、精神的な負担が大きい。特に精霊子への感受性が高い彼女は、負荷に耐えきれず暴走する危険がある。

ヴィル・ブルフォード

 ミツルの前にふらりと現れた、ぼさぼさ頭の無精髭の中年剣士。『黒髪のグロンダイル』の噂を聞きつけて訪れたという、彼の真意と思惑は?

 自らを『放浪のしがない剣士』と言う割に、その剣技は一流で、歴戦の強者。『雷光』とあだ名されると対魔獣戦のエキスパートで、その戦いぶりはミツルも舌を巻く。


年齢 48歳

身長 190センチ近い

体格 大柄で強靭

出身地 不明

職業  剣士、冒険者、元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長

髪: ぼさぼさの金髪。長さは無造作に伸びており、戦いの中で乱れたまま放置されている。

顔 無精ひげが顔全体に生えており、荒々しさと共に風格を漂わせている。

武器 中央に深い溝が彫られたブロードソード。鍛造で作られており、適度な粘りを持ち、滅多に折れない。


剣術スタイル

流派 雷光(らいこう)

特徴 巨体とその質量を生かした高速ダッシュ


戦闘スタイル

高速ダッシュ 雷のようなスピードで踏み込み、敵の懐に入り込む

敵の死角利用 相手の身体を死角として利用し、瞬時に繰り出される高速の斬撃で敵を仕留める

左手の傷 突きを繰り出す際に意図的に剣の先に左手を添え、敵の注意を引き付ける。実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、非常に巧妙。猪突猛進型でありながらも、臨機応変に対応できる柔軟さを持つ。これは、変幻自在で『型』のないユベルと毎日修練を積み重ねた結果(苦肉の策)による。


戦闘技術

片手剣術 基本的には片手でブロードソードを操るが、必要に応じて両刀も使うことができる。戦況に応じて剣の使い方を変え、迅速かつ的確に対応。


特殊技

雷光突き 瞬時に高速で踏み込み、突きを繰り出す技

閃光斬り 一瞬の隙を突き、相手の死角から高速で斬撃を繰り出す技


特徴と戦術

巨体と速度を生かして、魔獣の懐に入り込み、致命的な攻撃を繰り出す。視線誘導の技術で、敵の視線を引き付けてから攻撃する。


心理と性格

戦場での冷静な判断力と卓越した技術で、数々の戦場で名を馳せる。敵の動きを見極め、最適な攻撃や防御を選択する。どんな状況でも冷静に対応し、自信を持って戦う。猪突猛進型でありながら、変幻自在の戦術を使いこなす柔軟さを持つ。


元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長を務めた経験を持つ。騎士団時代の訓練と経験が、彼の戦術的な判断力と剣術の技術に大いに寄与している。特に、ユベルとの修練で得た経験が、彼の変幻自在な戦術に大きな影響を与えている。


その戦闘スタイル

一九〇センチ近い大柄な体躯を持ちながらも、その強靭な体に似合わぬほどの軽快さを誇る剣士。彼の手に握られているのは、ロングソードよりも短いブロードソードに近いもので、中央には深い溝が彫られている。この剣は鍛造で、適度な粘りを持ち、使い手によっては滅多に折れることがない。


ヴィルの剣術のスタイルは「雷光」と呼ばれ、彼の巨体とその質量を生かした高速ダッシュが特徴。彼は特に大きな魔獣を相手にするのが得意で、雷のようなスピードで踏み込むと、敵の懐に入り込み、相手の身体自体を死角として利用する。瞬時に繰り出される高速の斬撃で、敵を一気に仕留める。


特筆すべきは、彼の左手に傷が絶えないこと。これは、突きを繰り出す際に意図的に剣の先に手を添えて、その手に注意を引き付けるためだ。敵がその手に視線を奪われている間に、実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、彼の戦術は非常に巧妙。


ヴィルの剣は基本的に片手で操られることが多いが、必要に応じて双剣で戦うこともできる。その柔軟な使い方と、雷光のような素早さを駆使して、彼は戦場でその名を轟かせた。

茉凜(マリン)のキャラクター設定


基本情報年齢: 17歳

身長: 173センチ

プロポーション:高跳びの選手かファッションモデルのようなスラリとしたかっこいいスタイル。ただし本人は自覚なしで自信がない。 


外見: ミルクティーブラウンの髪、大きな瞳、お日様のような笑顔。純粋で優しい少女の姿が特徴的。


性格: 天真爛漫でポジティブ。どんな困難な状況でも明るさを失わず、死の淵の絶対的不利な状況でも輝く。特に追い込まれるとスイッチが切り替わり、予知視界を用いる能力が発揮される。


背景前世: 元々は私たちの世界に住んでいた人物。異世界に突然放り込まれ、さらに剣の中に転生させられるという過酷な運命を辿る。


役割: ミツルの相棒であり、恋人(?)。彼女の無条件の愛情と楽観的な性格がミツルの心の支えとなっている。過去のトラウマ: 落雷事故によるトラウマがあるが、それを嘆くことなく明るさを保ち続ける。ミツルにとっては大きな支え。


能力と役割能力: マウザーグレイル経由の予知視界。死の淵での絶対的不利な状況でも特に有効で、剣の中にあるこの能力が最大の武器である。


役割: ミツルの『深淵の黒鶴』を制御するための安全装置(セーフティ)として機能。暴走を防ぐ唯一の手段として、ミツルとの接触と精神的な感応が必要。自身の全てを捧げる覚悟を持ち、ミツルを守ることを使命としている。


心情と内面愛情: ミツルに対して無条件の愛情を注いでおり、彼女の存在はミツルにとって欠かせない心の拠り所となっている。愛情が恋であることに気づきながらも、その感情を告白することはできない。


支え: ミツルの冷たい態度や無口さの裏に隠された繊細な心を理解し、彼の孤独や苦しみを誰よりも感じ取っている。彼の心の支えとなることを自分の使命と感じ、彼を守るために自分の全てを捧げる覚悟を持っている。


内面の葛藤: 弓鶴(ミツル)が自分にとって特別でなくなるのではないかという不安を抱えながらも、彼の幸せを最優先に考え、自分の感情を抑え込んでいる。仲直りを図る際には自分を押し殺して彼らの関係を修復しようとするなど、内面的には複雑な感情が渦巻いている。

白きマウザーグレイル

基本情報正式名称: 精霊器接続式対魔族兵装 MW-CSV-DD MAUSER-GRELL(マウザーグレイル)

形状: 純白のロングソード

特徴: 刃に相当する部分がなく、実質的には何物も斬れない

構造と材質材質: 不明。構成素材については詳細が不明だが、非常に高い堅牢さを誇る。

耐久性: どんな魔獣の攻撃にもヒビ一つ入らないほどの堅牢さを持つ。

重量: 見た目よりも軽量で、非力なミツルでも自在に扱える。

機能と特性魔導兵装: 剣の形をとった魔導兵装であり、実際には物理的に斬ることはできない。

潜在能力: 現在のところ、ミツルもその実体と潜在能力については把握していない。

補助機能: ミツルの持つスキル「真凜」が安全装置として補助を行っている。

戦闘における役割安全装置: ミツルが持つ「深淵の黒鶴」の能力を制御するための安全装置として機能する。マウザーグレイルが実際の戦闘では使われないが、その存在がミツルの能力の安定に寄与している。

象徴的な意味: 剣そのものは物理的な攻撃力を持たないが、深い意味や力を秘めている可能性がある。特に、ミツルの精神的、象徴的な支えとしての役割を果たしている。

謎と疑問実体の不明: 現状、剣の具体的な機能やその実体についてはミツル自身も把握していない。剣の持つ潜在的な力や目的については謎に包まれている。発見される

可能性: 今後のストーリー展開で、その真の力や役割が明らかになる可能性がある。

ユベル・グロンダイル

 ミツルの父で、『閃光』の異名を持つ変幻自在の剣術を操る天才。すでに故人である。


ユベル・グロンダイルのキャラクター概要

年齢と外見:

年齢:50代外見:かつて金髪だったが、現在は黒く染めている。無精髭を蓄え、スリムで筋肉質な体型。優雅な立ち姿と流れるような戦闘動作が特徴。


役割と経歴:

元リーディス王国銀翼騎士団右翼リーダーであり、対魔獣戦のエキスパート。リーディス王国の銀翼騎士団に所属し、多くの戦場を経験。特に魔獣戦においてその名を馳せた。


基本戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の極みであり、その動きは流動的でまるで水のように変幻自在。力強さでは他の剣士に劣ることもあるが、素早さと身軽さで魔獣を屠る。ステップワークや変則的な体術を駆使し、敵の動きを予測させない巧妙な戦術を展開。回転しながらの斬撃や舞うような動きで敵の意識を散らし、戦局を有利に進める。


家族との関係:

妻:メイレア(元リーディス王国の第三王女)。非常に深い愛情を持ち、二人の関係はミツルにとって時折恥ずかしくなるほどの愛情表現がなされていた。娘:ミツルにとってユベルは憧れの対象であり、彼の戦闘スタイルや技術に強く影響を受けている。

最後の旅と戦い:

妻メイレアの行方不明後、ユベルは娘ミツルを連れて探索の旅に出る。愛する妻を取り戻すため、家族の絆を守るための決意を持っていた。未知の魔獣との戦いで命を落とし、その犠牲によってミツルは生き延びることができた。

白きマウザーグレイル:

ユベルが妻との絆として持っていた白きマウザーグレイルは、ミツルに託された。この剣はユベルの思いと愛情を象徴し、ミツルにとっては父の遺志を継ぐ重要なアイテム。


お尋ね者:

尊敬を集める存在だったが、妻を誘拐した罪が科せられ、お尋ね者として追われていた。ユベル・グロンダイルの戦闘スタイル


「柔」の戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の戦術を体現し、流動的で変幻自在な動きが特徴。彼の動きは舞踏家のように優雅でありながら、非常に戦術的で緻密。


ステップワークと回転体術:

軽やかなステップワークで敵の攻撃を避け、回転しながらの斬撃で敵を翻弄。体操選手やフィギュアスケーターを彷彿とさせる華麗な動きが特徴。


対魔獣戦の特化:

魔獣の懐に自在に出入りし、相手の身体を盾として利用することで最短距離からの攻撃を実現。風のように迅速で、敵の反応を許さない。

彼の戦闘スタイルを際立たせている。

前世での二人

 それは第二章で語られる。

虎洞寺健

美鶴と弓鶴の叔父で、保護者であり協力者。

能力が実用に耐えない血族が所属する郭外のリーダーで、自身は多数の企業を成功に導いた実業家で資産家。その貢献によって上層部にも大きな発言力を持ち、水面下で二人の活動をサポートする。彼の目的は深淵の呪いからの解放と深淵の解体である。

佐藤さん

 柚羽家のお手伝いさんで、美鶴の理解者。昔からの柚羽家のお手伝いさんで、その家事能力は超人。茉凜の料理の師匠。

真坂明

 15歳の少女で、身長は152センチメートル。黒のショートカットが特徴的で、衣装は、黒のクロップトップと高腰のパンツ、袖にディテールが施されたオープンジャケットで、全体的にクールでスタイリッシュな印象。均整の取れたスタイルも、洗練された雰囲気に一役買っている。

性格は情熱的で、自分が思ったことをはっきりと口にするタイプ。弓鶴の元許嫁であり、真坂家の次期後継者としての重責を担っている。また、「深淵の赤の流儀」の高度な術者でもあり、その実力は並外れている。彼女の存在感は、その内に秘めた強い意志と、家の名に恥じない実力から来ている。

明は破談後も弓鶴を想い続けており、それが彼女の能力の原動力になっている。自身が家の後継者となり、弓鶴を婿として迎えようと決意した結果、兄二人を殺害してしまう。

柚羽 美鶴

 ミツルの前世で転生時二十歳。その過去はダイジェストとして第二章で語られる。ミツルの内向的なところは彼女の成分。

 前世では茉凜に対して次第に恋心を抱いていくが、さまざまな問題が障害となって、素直に気持ちを伝えられずにいた。

 彼女のバルファへの転生がグロンダイル家にもたらした影響が、ミツルが戦い旅する理由。

鳴海沢洸人

深淵の血族、上帳を構成する三家の一つ、鳴海沢の長子。流儀青の強力な使い手。弓鶴の確保のために遣わされるが敗退し、その後弓鶴と茉凜の監視役として転校してくる。

数年前に暗殺に失敗し、その後始末として対象を家族諸共惨殺したことがきっかけで、殺せない欠陥品になってしまった。強力な血を残すために家に留め置かれ、鬱々とした日々を送っていた彼を変えたのは、深淵の始まりの回廊の巫女からの言葉だった。 

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