第37話 期末試験という名の現実 

文字数 5,593文字

 穏やかな日常が戻り、私たちはいつものように屋敷で過ごしていた。七月が近づき、夏の陽射しがリビングの窓から柔らかく差し込んでいた。

 あの事件以来、私たちの距離は少し縮まったように感じていた。茉凜に対する気持ちも、以前ほどぎこちなくはない。彼女の存在が少しずつ、私にとって自然なものになってきていた。

 私は窓際に腰掛け、本を静かに開いた。山奥の小さな家で育った私にとって、ネットもなければ、テレビも衛星放送だけ。だから、読書が唯一の娯楽だった。その癖は今も変わらず、こうして夏の柔らかな光に包まれてページをめくると、懐かしい安心感が広がる。

 その横で、茉凜はソファにだらしなく寝転び、スマホを手にして何かを調べていた。彼女の笑い声や小さな声が、時折静かな部屋に響き、楽しそうに何かに夢中になっているのが伝わってくる。

「ここ、どうかな? 行ってみたいと思わない?」

 彼女は興奮した様子で、スマホを私に見せてきた。私は本から目を離し、適当に相槌を打つ。

「ああ、いいかもな」

 正直に言うと、どこに行くかとか、何をするかはあまり興味はなかった。ただ、茉凜がこうして楽しそうに話してくる姿を見るたびに、私は心の中で穏やかな笑みを浮かべていた。それが私にとって、何よりの喜びだったのだ。

 そんな何気ない、しかし心温まる光景が、私たちの日常だった。穏やかな午後の空気と、茉凜の陽気な声が、私の生活に柔らかいぬくもりを与えてくれていた。

 それにしても、彼女は一体何をそんなに浮かれているのだろう。確かに夏休みが近いし、いろいろと行動プランを考えるのもわかる。だが、その前にある現実的な問題を彼女はまるで忘れているかのようだ。

「おい、茉凜。お前は一体何をはしゃいでいるんだ?」

 私の問いに、茉凜はスマホから顔を上げて、目をぱちくりと瞬かせた。彼女の顔には無邪気な輝きが宿り、まるで子供が宝物を見つけたかのような表情を浮かべていた。

「そんなの決まってるじゃない。もうすぐ夏休みだよ? どこで遊ぼうかとか、どんな場所に行こうか考えるだけで、ワクワクして仕方ないの! それに、実家にも帰って、久しぶりに両親の顔も見たいしね」

 その言葉には、純粋な喜びが溢れていた。しかし、私はその能天気な言葉に、驚愕するしかなかった。どうしてそんなに無邪気に夏休みのことだけ考えられるのか?目の前に迫る現実をまるで意識していない。

 彼女の楽しげな様子は、私にはまるで終末を目前に控えた人々が「ええじゃないか、ええじゃないか」と陽気に騒ぐ祭りのように見えた。その無邪気な歓喜が、現実の厳しさと無関係なことに私は途方に暮れる。何か深刻な問題が起こっているのに、それを全く意に介さない様子に、少し嫉妬すら覚えるほどだった。

 仕方なく、私は冷酷王子としての威厳を取り戻すことにした。まぁ、ほんの少しの悪戯心があったことは認める。

「お前はあまりにも欲望に忠実すぎる。すぐ間近に未曾有の危機が迫っているというのに、それに気づいていないようだ」

 彼女はきょとんとした顔で、「危機って?なに?」と、心底不思議そうに問い返してきた。それに私は、頭を抱えるしかなかった。この現実の厳しさを知らない彼女に、どうしても言わなければならない。冷徹な決意を込め、厳しい口調で告げた。

「テストだ、期末試験だ。そんなこともわからないのか?」

 茉凜は一瞬凍りついたように固まり、次の瞬間、目を大きく見開いた。その表情はまるで地面が突然崩れ落ちたかのように驚愕に満ちていた。世界が終わると言っても、ここまでの反応を見せるだろうかと思うほどの、天変地異でも降りかかったような顔だった。

「ああっ! それ、忘れてた!」

 その反応に私は呆れ果てた。「ああ、やっぱり」と心の中で舌を打ちながら、冷静を装って言葉を続けた。

「お前の成績はぎりぎりなんじゃなかったか? いいのか、それで? 赤点取ったらどうなるかわかっているよな?」

「あ、あ……」

「うちの学園は遅れた生徒を見捨てるようなことはしない。つまり、補習で夏休みが丸々吹き飛ぶ、という意味だがな」

 茉凜の顔はみるみる青ざめ、頬は真っ白になっていった。目はまるで嵐の海に放り出された小舟のように、必死に定まる場所を探して揺れ動いていた。それを見て、私は堪えきれずに吹き出しそうになった。彼女のリアクションがあまりにもコミカルで、まるで舞台で見ているコメディのワンシーンのように見えてきたからだ。

「そ、そんな……本気で言ってるの? 夏休みが突然全部消えるなんて、まるで波乱万丈の大スペクタクル映画みたいじゃない? ありえないよ!」

 その問いに、私は「なんてアホの子」と内心苦笑しながら、最近観たアニメに出てきた秘密結社の謎めいた司令官のように肘をつき、真剣そのものの表情で静かに頷いた。

「残念だが、波乱万丈でもスペクタクルでもない。これが現実という名の厳しくも容赦ない試練だ。そこからは決して逃れられない……」

 茉凜はしばらく口をパクパクさせ、言葉を失っていた。その瞳にはまるで人生の終焉を迎えたかのような深い恐怖が宿り、表情は絶望の暗雲に覆われた空のようだった。

「でも、補習なんて、そんなの耐えられるわけないよ! どうしよう……」

「だろうな」と私は冷静に答えた。

「夢に描いた理想の夏休みを楽しむためには、この試練を乗り越えなければならないということだ。理解できたか?」

 私の冷徹な言葉を受けて、茉凜はしばらく考え込んでから、意を決したように顔を上げた。そして、心からの決意を込めた表情で「う、うん……」と小さく返事をする。

「“うん”じゃない。“サー・イエス・サー!”と言え!」

 私は冗談めかして厳かに命じた。

 驚いた茉凜は大きく目を見開いて私をじっと見つめたが、その驚きは次第に真剣なものへと変わり、背筋を伸ばして凛とした態度を取った。

 「サ、サー・イエス・サー!」と言いながら、彼女は敬礼まで真似してみせる。だが、その様子はどうしても滑稽で、私は耐えきれずに笑いを漏らしそうになった。

 茉凜の返事に、私も思わず笑みがこぼれてしまった。彼女の真剣な顔と、このやりとりのギャップに、ふざけすぎた自分を少し反省しつつも、心の中では温かな笑いが広がっていた。

「よろしい。では、補習に縛られない自由な夏休みを目指して、今からしっかり試験勉強だ。いいな?」

 茉凜は少しふくれっ面をしながらも、気合いを入れ直すように頷いた。その姿は、まるで戦場へ向かう勇士のように決意に満ちていた。

「サー・イエス・サー! これより全力で勉強します!」

 その返事に満足しつつ、私は軽く肩をすくめた。彼女の未来を思い描きながら、少し楽しげな気持ちが胸に湧いてくる。

「その意気だ、茉凜。お前ならきっと乗り越えられるさ。なあに、この俺がみっちり教え込んでやる。みっちり、な。ふっふっふっ……」

 つい調子に乗って、鬼教官のように厳しい態度を取るも、内心では彼女を支えることができることに嬉しさを感じていた。

 茉凜は新たな決意を胸に、机に向かって勉強を始めた。その姿は、まるで苦境に立ち向かう兵士のようで、私にも彼女を全力で応援する責任感が芽生え始めた。

 だが、その勉強の日々は予想以上に厳しく、苦闘の連続だった。
       ◇          ◇          

 真凜にはいくつかの欠点があるとすれば、それは主に勉強に対する集中力の欠如といったところだろう。彼女の集中力は、まるで風船のように簡単に飛んでいってしまう。そして、その欠点は、彼女の晴れやかな性格の一部なのかもしれない。そんな無邪気で危機感ゼロな態度に、私はつい苦笑してしまうしかない。

 しかし、それはさておき、現実に向き合わなければならない。

 真凜は、毎朝早くから、そして夕食後も、私の指導で机に向かっていた。だが、彼女の集中力は、予想通りすぐに途切れてしまう。最初はペンを持つ手が止まり、次第に目がうつろに。そして、最後にはいつものように、机に顔を伏せてうとうとし始めるのだ。

「真凜、寝るな!」

 私は思わず声を荒げた。

「ちょっとだけ……もう少しだけ……」

 彼女は目を半開きにし、眠気に抗おうとするが、その抵抗もいつも束の間。私は大きくため息をつきながら、次にどうしたら彼女を起こせるか考えた。

 試した手段は数知れず。小刻みな休憩を挟んで、リフレッシュさせようとしたり、課題が終わるたびに「冷たい飲み物が待ってるぞ」と甘い誘惑をちらつかせたり。とにかく、真凜が飽きないように、できる限りの工夫を凝らしていたのだが、どうやら私の思いやりが伝わる前に、眠気が先に勝ってしまうらしい。

 「ああ、これが現実、これが運命か……」と私は、思わず自分に問いかけるように独り言をつぶやいた。気がつけば、勉強の進まない茉凜を見守る私は、もはや観客のような気分でいた。彼女の頑張りがどこか遠い星の出来事のように感じられるほど、状況は深刻になっていた。

 それでも、茉凜の集中力のなさには驚かされるばかり。私の忍耐も限界に達し、いらいらとした感情が心の中で沸騰していった。けれども、彼女の頭を引っぱたくのは忍びない。どうにかして集中させたかったが、手段を選ばざるを得なかった。

 そこで、私は「氷嚢作戦」を決行することに決めた。これは、居眠りしかけたら氷を入れた氷嚢を額に当てるという、どこか古風でシンプルな作戦だ。

 最初のうちは、茉凜も何とか持ち直していたが、次第にその作戦の効果も薄れてきた。私の中で、まるで悪党の実験室の中で計画を練っているような気分が芽生え始めた。これがどこまでエスカレートするか、私自身も興味津々だった。

 そして、私は氷嚢から氷を取り出し、それを指で掴んで茉凜の首筋に「ぴとっと」這わせてみた……。

「びゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 茉凜は、まるで見知らぬ宇宙人に突然遭遇したかのような絶叫を上げて、椅子から飛び上がった。私はその反応に思わず笑いがこみ上げてきて、体が震えるほど笑ってしまった。彼女の驚きのあまりの真っ赤な顔と、予想以上の効果に、心の中での満足感がじわじわと広がっていくのを感じた。

「どうした? 驚いたか?」

「も、もう、なんてことするのよ! びっくりするじゃない!」

 茉凜は顔を真っ赤にして私に不満の目を向けたが、その表情の可愛らしさには、さらに笑いをこらえきれなかった。まるでコメディ映画の一場面のようで、私の心はすっかり楽しげな気分になっていた。彼女のそんな反応を見ているだけで、私の中のイタズラ心はさらに燃え上がるばかりだったのだ。

 しかし、その効果もすぐに薄れてきた。どうしたものかと考えた末、机の上に剣山を置くことに決めた。

 過激すぎるかもしれないと思ったが、これまでの事例から彼女には正体不明の本能的な危機回避能力があることがわかっていた。つまり、どんなに眠くても、彼女の脳内にある危機管理システムが自然と働くというわけだ。もちろん、ぎりぎりのところで止めるつもりだったが、これもまた一つの挑戦というわけだ。

 案の定、真凜がうとうとしているとき、彼女の頭が机にぶつかりそうになると、彼女は本能的な危機感から目をぱちっと開けた。その瞬間、剣山が視界に入った彼女は、大きな声を上げて驚いた。

「な、なによっ、これっ!?」

 真凜の声が部屋中に響き渡った。彼女の驚きと怒りが入り混じった声は、まるで雷鳴のように力強かった。その時、彼女の目はまるで大きな瞳の中に怒りの火花を散らすかのように、まぶたを大きく開けていた。

 私は彼女のその姿を見て、心の中でこっそりと笑みを浮かべていた。彼女がこんなにも可愛らしい反応をするなんて、予想以上だったからだ。彼女の驚きと困惑が一体となった表情は、まるで絵画の中のひとコマのようで、見ているだけで楽しくなってしまう。

 「見てわからないか? 剣山だ」と、わざとらしくもったいぶった口調で答える私の声には、少しばかりサディスティックな楽しさがにじんでいた。

 「わかってるわよ! なんでこんなものがここにあるの!? あなた、まさか……」と、真凜はさらに顔を真っ赤にして、目を大きく開けたまま怒りをぶつけてきた。その様子に、私は思わずにやりと笑ってしまった。彼女がこんなに困惑し、また驚き、そして少しの恥ずかしさを見せる姿は、私のいたずら心を大いに満たしてくれて、まるで自分が正真正銘の悪役になったかのような気分さえ味わえた。

 「俺が置いたんだ。どうだ、目が覚めただろ?」と、少し嘲笑的に言ってみると、彼女の顔には困惑と怒りが入り混じっていた。

 「ひ、ひどいっ! あなたって最低の冷酷どSだわ!」と、彼女は顔を真っ赤にして叫び、まるで火の玉が飛び出すような勢いで怒っていた。その叫び声を聞きながら、私は申し訳ないと思いつつも、心の中では楽しさと満足感が渦巻いていた。彼女の反応があまりにも魅力的で、私のいたずら心を大いに満たしてくれたからだ。

 最終的には、真凜が渋々ながらも勉強に取り組み始めた。机に向かう彼女の姿には、少しばかり安心感を覚えつつも、心の中では彼女の成長を願う気持ちが溢れていた。勉強を続ける彼女を見ながら、ふと心に一つの考えが浮かんだ。

 もし試験を無事にクリアしてくれたら、ご褒美に彼女の好きな美味しいものをたくさん食べさせてあげたいと思った。彼女は食べることが大好きで、その幸せそうな顔を見るのが私の楽しみでもあったからだ。そんな光景を想像しながら、心の中には温かい期待感が広がっていた。

 「楽あれば苦あり。禍を転じて福と為す」といったところだろうか。心の中でそっと呟きながら、彼女が努力を実らせるように、支え続けようと決心した。
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登場人物紹介

ミツル・グロンダイルのキャラクター設定

基本情報年齢: 12歳(外見年齢)


外見: この大陸では珍しい黒髪と薄緑の透き通った瞳。美しい容貌だが、体型は少し少年のようで、まな板の寸胴であることに敏感。自称年齢: 21歳(前世の記憶を持つため)


性格: 冷淡に見えながらも実は直情的で、一人でいることを好む。時折無邪気な一面を見せることがある。前世の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動き、冷静な大人の一面と子供っぽさが共存する複雑なキャラクター。


好物

食事に関しては美味しいものを少しだけなタイプ。剣の中の茉凜がアルコール依存になってしまったため。最近はお酒も嗜む。


社会的関係: 引っ込み思案で人付き合いが苦手なため、孤独を好む。しかし、孤独を埋めるために時折無邪気な一面を見せる。自分の力や能力に対する内なる葛藤と向き合いながら、過去の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動く。


ミツル・グロンダイルの物語における役割

憧れの存在: ユベル・グロンダイル(父)の影響を強く受けており、彼の戦闘スタイルや技術に憧れを抱く。父の遺志を継いで魔獣を狩る役割を担う。

遺産と使命: 父が遺した白きマウザーグレイルを持ち、彼の意志を継ぐ重要な役割を果たしている。彼女の能力と背景は、物語の重要な要素となっている。

謎と葛藤: 彼女の能力と前世の記憶には深い謎があり、物語の進行とともにその全容が明かされる可能性がある。彼女の内面的な葛藤や成長は、物語の核心に深く関わっている。


前世の名前: 柚羽 美鶴(ゆずは みつる)

年齢: 不明(死後、弟の弓鶴に憑依しているため、年齢としては弓鶴の年齢に準じる)

性別: 女性(現在は弟の弓鶴に憑依中)

出身地:九州地方某県の山中の柚羽家(深淵の三家の一つ、始まりの回廊の守護者)

職業: 柚羽家の後継者で深淵の始まりの回廊の巫女


 美鶴は深淵の三家の一つである柚羽家の長女であり、始まりの回廊の守護者。柚羽家襲撃事件で両親を失った後、叔父の虎洞寺氏に保護された。その後、両親の死の真相を知り、自ら人身御供になる覚悟を決め、柚羽家の後継者となった。彼女は密かに深淵の根源の再生を図り、解呪に臨んだが、その試みは失敗し、死亡した。


その後

 美鶴はデルワーズの画策により、弟の弓鶴と意識と記憶の全情報を交換させることで、彼に憑依する形で生き延びる。弟を取り戻すために再び解呪に進もうとした際、茉凜と出会う。茉凜が持つ「黒」の力の安全装置としての役割によって、二人は運命共同体となることが決まる。


 自らが女性であることに対する戸惑いと、茉凜に対する淡い感情を抱くようになり、自分が本当は弟ではないことや、茉凜が見ているのは弟であることに苦悩する。


 美鶴は両親の死の真相を知った後、自らが柚羽家の後継者として深淵の根源の再生を図ろうとしたが、その試みが失敗したことに対する責任感を抱えている。


 茉凜の猛烈なアタックに対して、次第に閉じていた心を開き始めると共に、彼女に対して淡い心を抱く。しかし、自分が本来女性であることや、それを知られることを怖れて受け入れることに苦しんでいる。


 美鶴は茉凜と共に深淵の根源の解呪に挑む中で、茉凜の存在が自らにとってどれほど重要であるかを認識し始める。しかし、彼女は自分の感情と状況に苦悩し、特に自分が女性として抱く感情や、茉凜が見ているのが自分ではなく弟であることに対して深い悩みを抱えている。


深淵の黒鶴

 精霊子に対する感受性が極めて高く、世界に漂うすべての精霊子を集積できる。彼女の前世の名前(美鶴)と組み合わせて【黒鶴】と呼ばれる。限定された空間(場裏)を形成し、その中でイメージ通りの現象を具現化。四大元素すべてを制御可能で、並列起動による複合行使も可能。背中に現れる翼は物質的ではなく、彼女の願望を投影したもの。


場裏

 限定された空間を形成し、その中で事象を操作。色で呼称される流儀に基づき、たとえば赤であれば熱の操作に関わり、イメージのままに具現化できる。詠唱や魔道具を必要としない強力な魔術として認識されている。戦闘と


能力の影響

 ミツルの戦闘スタイルは、前世の影響を色濃く受け継いでおり、流動的で柔軟な戦術が特徴。彼女の能力は瞬時に強力な現象を引き起こすことができ、そのため精神的な負荷が非常に大きい。精神崩壊や自我喪失のリスクが伴う。


精神的負荷

 精霊子の収集と能力の使用により、大脳辺縁系に過大な負荷がかかり、精神的な負担が大きい。特に精霊子への感受性が高い彼女は、負荷に耐えきれず暴走する危険がある。

ヴィル・ブルフォード

 ミツルの前にふらりと現れた、ぼさぼさ頭の無精髭の中年剣士。『黒髪のグロンダイル』の噂を聞きつけて訪れたという、彼の真意と思惑は?

 自らを『放浪のしがない剣士』と言う割に、その剣技は一流で、歴戦の強者。『雷光』とあだ名されると対魔獣戦のエキスパートで、その戦いぶりはミツルも舌を巻く。


年齢 48歳

身長 190センチ近い

体格 大柄で強靭

出身地 不明

職業  剣士、冒険者、元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長

髪: ぼさぼさの金髪。長さは無造作に伸びており、戦いの中で乱れたまま放置されている。

顔 無精ひげが顔全体に生えており、荒々しさと共に風格を漂わせている。

武器 中央に深い溝が彫られたブロードソード。鍛造で作られており、適度な粘りを持ち、滅多に折れない。


剣術スタイル

流派 雷光(らいこう)

特徴 巨体とその質量を生かした高速ダッシュ


戦闘スタイル

高速ダッシュ 雷のようなスピードで踏み込み、敵の懐に入り込む

敵の死角利用 相手の身体を死角として利用し、瞬時に繰り出される高速の斬撃で敵を仕留める

左手の傷 突きを繰り出す際に意図的に剣の先に左手を添え、敵の注意を引き付ける。実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、非常に巧妙。猪突猛進型でありながらも、臨機応変に対応できる柔軟さを持つ。これは、変幻自在で『型』のないユベルと毎日修練を積み重ねた結果(苦肉の策)による。


戦闘技術

片手剣術 基本的には片手でブロードソードを操るが、必要に応じて両刀も使うことができる。戦況に応じて剣の使い方を変え、迅速かつ的確に対応。


特殊技

雷光突き 瞬時に高速で踏み込み、突きを繰り出す技

閃光斬り 一瞬の隙を突き、相手の死角から高速で斬撃を繰り出す技


特徴と戦術

巨体と速度を生かして、魔獣の懐に入り込み、致命的な攻撃を繰り出す。視線誘導の技術で、敵の視線を引き付けてから攻撃する。


心理と性格

戦場での冷静な判断力と卓越した技術で、数々の戦場で名を馳せる。敵の動きを見極め、最適な攻撃や防御を選択する。どんな状況でも冷静に対応し、自信を持って戦う。猪突猛進型でありながら、変幻自在の戦術を使いこなす柔軟さを持つ。


元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長を務めた経験を持つ。騎士団時代の訓練と経験が、彼の戦術的な判断力と剣術の技術に大いに寄与している。特に、ユベルとの修練で得た経験が、彼の変幻自在な戦術に大きな影響を与えている。


その戦闘スタイル

一九〇センチ近い大柄な体躯を持ちながらも、その強靭な体に似合わぬほどの軽快さを誇る剣士。彼の手に握られているのは、ロングソードよりも短いブロードソードに近いもので、中央には深い溝が彫られている。この剣は鍛造で、適度な粘りを持ち、使い手によっては滅多に折れることがない。


ヴィルの剣術のスタイルは「雷光」と呼ばれ、彼の巨体とその質量を生かした高速ダッシュが特徴。彼は特に大きな魔獣を相手にするのが得意で、雷のようなスピードで踏み込むと、敵の懐に入り込み、相手の身体自体を死角として利用する。瞬時に繰り出される高速の斬撃で、敵を一気に仕留める。


特筆すべきは、彼の左手に傷が絶えないこと。これは、突きを繰り出す際に意図的に剣の先に手を添えて、その手に注意を引き付けるためだ。敵がその手に視線を奪われている間に、実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、彼の戦術は非常に巧妙。


ヴィルの剣は基本的に片手で操られることが多いが、必要に応じて双剣で戦うこともできる。その柔軟な使い方と、雷光のような素早さを駆使して、彼は戦場でその名を轟かせた。

茉凜(マリン)のキャラクター設定


基本情報年齢: 17歳

身長: 173センチ

プロポーション:高跳びの選手かファッションモデルのようなスラリとしたかっこいいスタイル。ただし本人は自覚なしで自信がない。 


外見: ミルクティーブラウンの髪、大きな瞳、お日様のような笑顔。純粋で優しい少女の姿が特徴的。


性格: 天真爛漫でポジティブ。どんな困難な状況でも明るさを失わず、死の淵の絶対的不利な状況でも輝く。特に追い込まれるとスイッチが切り替わり、予知視界を用いる能力が発揮される。


背景前世: 元々は私たちの世界に住んでいた人物。異世界に突然放り込まれ、さらに剣の中に転生させられるという過酷な運命を辿る。


役割: ミツルの相棒であり、恋人(?)。彼女の無条件の愛情と楽観的な性格がミツルの心の支えとなっている。過去のトラウマ: 落雷事故によるトラウマがあるが、それを嘆くことなく明るさを保ち続ける。ミツルにとっては大きな支え。


能力と役割能力: マウザーグレイル経由の予知視界。死の淵での絶対的不利な状況でも特に有効で、剣の中にあるこの能力が最大の武器である。


役割: ミツルの『深淵の黒鶴』を制御するための安全装置(セーフティ)として機能。暴走を防ぐ唯一の手段として、ミツルとの接触と精神的な感応が必要。自身の全てを捧げる覚悟を持ち、ミツルを守ることを使命としている。


心情と内面愛情: ミツルに対して無条件の愛情を注いでおり、彼女の存在はミツルにとって欠かせない心の拠り所となっている。愛情が恋であることに気づきながらも、その感情を告白することはできない。


支え: ミツルの冷たい態度や無口さの裏に隠された繊細な心を理解し、彼の孤独や苦しみを誰よりも感じ取っている。彼の心の支えとなることを自分の使命と感じ、彼を守るために自分の全てを捧げる覚悟を持っている。


内面の葛藤: 弓鶴(ミツル)が自分にとって特別でなくなるのではないかという不安を抱えながらも、彼の幸せを最優先に考え、自分の感情を抑え込んでいる。仲直りを図る際には自分を押し殺して彼らの関係を修復しようとするなど、内面的には複雑な感情が渦巻いている。

白きマウザーグレイル

基本情報正式名称: 精霊器接続式対魔族兵装 MW-CSV-DD MAUSER-GRELL(マウザーグレイル)

形状: 純白のロングソード

特徴: 刃に相当する部分がなく、実質的には何物も斬れない

構造と材質材質: 不明。構成素材については詳細が不明だが、非常に高い堅牢さを誇る。

耐久性: どんな魔獣の攻撃にもヒビ一つ入らないほどの堅牢さを持つ。

重量: 見た目よりも軽量で、非力なミツルでも自在に扱える。

機能と特性魔導兵装: 剣の形をとった魔導兵装であり、実際には物理的に斬ることはできない。

潜在能力: 現在のところ、ミツルもその実体と潜在能力については把握していない。

補助機能: ミツルの持つスキル「真凜」が安全装置として補助を行っている。

戦闘における役割安全装置: ミツルが持つ「深淵の黒鶴」の能力を制御するための安全装置として機能する。マウザーグレイルが実際の戦闘では使われないが、その存在がミツルの能力の安定に寄与している。

象徴的な意味: 剣そのものは物理的な攻撃力を持たないが、深い意味や力を秘めている可能性がある。特に、ミツルの精神的、象徴的な支えとしての役割を果たしている。

謎と疑問実体の不明: 現状、剣の具体的な機能やその実体についてはミツル自身も把握していない。剣の持つ潜在的な力や目的については謎に包まれている。発見される

可能性: 今後のストーリー展開で、その真の力や役割が明らかになる可能性がある。

ユベル・グロンダイル

 ミツルの父で、『閃光』の異名を持つ変幻自在の剣術を操る天才。すでに故人である。


ユベル・グロンダイルのキャラクター概要

年齢と外見:

年齢:50代外見:かつて金髪だったが、現在は黒く染めている。無精髭を蓄え、スリムで筋肉質な体型。優雅な立ち姿と流れるような戦闘動作が特徴。


役割と経歴:

元リーディス王国銀翼騎士団右翼リーダーであり、対魔獣戦のエキスパート。リーディス王国の銀翼騎士団に所属し、多くの戦場を経験。特に魔獣戦においてその名を馳せた。


基本戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の極みであり、その動きは流動的でまるで水のように変幻自在。力強さでは他の剣士に劣ることもあるが、素早さと身軽さで魔獣を屠る。ステップワークや変則的な体術を駆使し、敵の動きを予測させない巧妙な戦術を展開。回転しながらの斬撃や舞うような動きで敵の意識を散らし、戦局を有利に進める。


家族との関係:

妻:メイレア(元リーディス王国の第三王女)。非常に深い愛情を持ち、二人の関係はミツルにとって時折恥ずかしくなるほどの愛情表現がなされていた。娘:ミツルにとってユベルは憧れの対象であり、彼の戦闘スタイルや技術に強く影響を受けている。

最後の旅と戦い:

妻メイレアの行方不明後、ユベルは娘ミツルを連れて探索の旅に出る。愛する妻を取り戻すため、家族の絆を守るための決意を持っていた。未知の魔獣との戦いで命を落とし、その犠牲によってミツルは生き延びることができた。

白きマウザーグレイル:

ユベルが妻との絆として持っていた白きマウザーグレイルは、ミツルに託された。この剣はユベルの思いと愛情を象徴し、ミツルにとっては父の遺志を継ぐ重要なアイテム。


お尋ね者:

尊敬を集める存在だったが、妻を誘拐した罪が科せられ、お尋ね者として追われていた。ユベル・グロンダイルの戦闘スタイル


「柔」の戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の戦術を体現し、流動的で変幻自在な動きが特徴。彼の動きは舞踏家のように優雅でありながら、非常に戦術的で緻密。


ステップワークと回転体術:

軽やかなステップワークで敵の攻撃を避け、回転しながらの斬撃で敵を翻弄。体操選手やフィギュアスケーターを彷彿とさせる華麗な動きが特徴。


対魔獣戦の特化:

魔獣の懐に自在に出入りし、相手の身体を盾として利用することで最短距離からの攻撃を実現。風のように迅速で、敵の反応を許さない。

彼の戦闘スタイルを際立たせている。

前世での二人

 それは第二章で語られる。

虎洞寺健

美鶴と弓鶴の叔父で、保護者であり協力者。

能力が実用に耐えない血族が所属する郭外のリーダーで、自身は多数の企業を成功に導いた実業家で資産家。その貢献によって上層部にも大きな発言力を持ち、水面下で二人の活動をサポートする。彼の目的は深淵の呪いからの解放と深淵の解体である。

佐藤さん

 柚羽家のお手伝いさんで、美鶴の理解者。昔からの柚羽家のお手伝いさんで、その家事能力は超人。茉凜の料理の師匠。

真坂明

 15歳の少女で、身長は152センチメートル。黒のショートカットが特徴的で、衣装は、黒のクロップトップと高腰のパンツ、袖にディテールが施されたオープンジャケットで、全体的にクールでスタイリッシュな印象。均整の取れたスタイルも、洗練された雰囲気に一役買っている。

性格は情熱的で、自分が思ったことをはっきりと口にするタイプ。弓鶴の元許嫁であり、真坂家の次期後継者としての重責を担っている。また、「深淵の赤の流儀」の高度な術者でもあり、その実力は並外れている。彼女の存在感は、その内に秘めた強い意志と、家の名に恥じない実力から来ている。

明は破談後も弓鶴を想い続けており、それが彼女の能力の原動力になっている。自身が家の後継者となり、弓鶴を婿として迎えようと決意した結果、兄二人を殺害してしまう。

柚羽 美鶴

 ミツルの前世で転生時二十歳。その過去はダイジェストとして第二章で語られる。ミツルの内向的なところは彼女の成分。

 前世では茉凜に対して次第に恋心を抱いていくが、さまざまな問題が障害となって、素直に気持ちを伝えられずにいた。

 彼女のバルファへの転生がグロンダイル家にもたらした影響が、ミツルが戦い旅する理由。

鳴海沢洸人

深淵の血族、上帳を構成する三家の一つ、鳴海沢の長子。流儀青の強力な使い手。弓鶴の確保のために遣わされるが敗退し、その後弓鶴と茉凜の監視役として転校してくる。

数年前に暗殺に失敗し、その後始末として対象を家族諸共惨殺したことがきっかけで、殺せない欠陥品になってしまった。強力な血を残すために家に留め置かれ、鬱々とした日々を送っていた彼を変えたのは、深淵の始まりの回廊の巫女からの言葉だった。 

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