第65話 死刑宣告

文字数 7,231文字

 私は自分の部屋のベッドに横たわり、薄暗い天井をぼんやりと見つめていた。部屋は静かで、機械のかすかな音だけが耳に響いていた。心の中で、あの瞬間を何度も反芻していた――茉凜の手を強く握り、皆の元へ戻ろうとした、あの瞬間。

 でも、視界がふっと暗くなり、私の意識はそこで途切れてしまった。そこからの記憶は全くない。ただ、冷たいシーツの感触だけが、ここが現実であることを私に教えていた。

 どうしてあの時、何が起こったのか、わからない。身体は重く、まるで自分のものではないように感じられていた。

 誰もいないこの部屋で、私は一人、静かに思い出を辿りながら、胸の奥に渦巻く寂しさを押し込めていた。それでも、なぜか冷静だった。泣きたくても涙は出ないし、感情すらも麻痺しているように感じた。私がどこに向かおうとしていたのか、わからないままでいた。

    ◇        ◇

 私は自分のしてしまったことに耐えられなくなり、舞台から逃げ出した。胸の奥に広がる恐怖と罪悪感を抱え、茉凜から遠ざかるように、校庭の隅に立ついつもの木にたどり着くと、その幹に縋りついて泣いた。木の冷たい感触が少しだけ現実を思い出させてくれるけれど、心の中の痛みは消えなかった。

 しばらくすると、茉凜が私を見つけて追いかけてきた。彼女は私を探し出し、優しい声で話しかけてくれた。茉凜のその声が耳に届くと、心がさらに締め付けられるようだった。こんな私を見つけて、どうして怒らないんだろう?叱られるべきは私なのに、彼女は何も言わず、ただ私を抱きしめてくれた。

 私は、そんなことをされる資格なんてない。茉凜の優しさに甘えるなんて、してはいけないことだ。それなのに、あの瞬間、彼女に抱きしめられている自分がとても嬉しかったのだ。救われた気持ちになってしまった。心の中で、こんなに悪いことをしている私が、彼女にこんなふうに慰められるなんて許されないのに。

 その時、私は「メイヴィス」という仮の姿を借りて、茉凜に縋ってしまった。彼女に本当の私として抱きしめてもらうことはできない。だから、せめて別の誰かとしてなら――その卑怯さに気づいていながら、私は彼女のぬくもりに甘えてしまった。本当はもっとずっと触れていたい。でも、私は私のままでは茉凜に触れることも、気持ちを伝えることもできない。弟の体に閉じ込められた私が、彼女に触れるためには、仮の顔に頼るしかなかった。

 こんな自分がひどくて、情けなくて、茉凜の前で何も言えない私自身が、どうしようもなく嫌になる。それでも彼女に触れてしまう。

 私は茉凜に、ずっと憧れていた。彼女のかっこよさ、優しさ、そして笑顔――その全てが、私の心を支えてくれた。彼女がいなかったら、どれだけ私が孤独だったか、想像もつかない。日常が繰り返される中で、私はますます彼女に惹かれていった。茉凜がいるだけで、世界が少しだけ温かく感じられた。

 「メイヴィス」という役を受けたのは、洸人が言ったように、脚本上の運命に囚われた巫女という設定に、自分を重ねたから。そして何よりも大きな理由は、茉凜が私の相手役だったからだ。彼女と一緒に舞台に立てる、彼女と近くで見つめ合う――それだけで十分だった。

 舞台の上では、彼女と手を取り合い、役柄として抱きしめてもらえる。その瞬間は、現実の私には手に入らない夢のようなひとときだった。黒鶴の発動時以外では、こんなに彼女と近づくことなんてできない。だからこそ、舞台の上で触れるその手には、特別な意味があった。

 たとえそれが役柄上の偽りであっても、私にとっては嘘ではなかった。茉凜に触れ、彼女の温かさを感じることができる。それは、私にとってとても大切で、現実にはない特別な瞬間だった。

 私はいつも彼女の優しさに救われ、彼女の笑顔に惹かれ続けてきた。そしてその気持ちは、舞台上での「メイヴィス」としてだけではなく、私自身のものだった。それがどれだけ危ういものか、どれだけ脆くて儚いものか、わかってたけれど、やめられなかった。

 メイヴィスはウォルターと共に、精霊の泉で静かに舞った。その姿には一片の悲壮感もなく、まるで全てが輝いているかのように手を取り合い、「ずっと一緒にいようね」って、そんな甘い約束を交わしていた。希望に満ちた彼らの未来がそこに広がっていた。

 彼らには、私たちには決して訪れない幸せな結末が用意されていた。厳しい試練の道が待っていても、それを共に乗り越えると、二人は信じて疑わない。どんな苦難があっても、彼らは手を取り合い、共に歩んでいくことを望んでいた。

 そう、それが私がずっと見たかった「ひとときのゆめ」だった。彼らの幸せな姿に、自分を重ねたかったのかもしれない。現実では手に入らないけれど、せめて舞台の上でだけは、その夢のような光景に浸ることができた。

 本当はその余韻の中で、ずっとその夢の世界に留まっていたかったのに――私は、"私"に戻ってしまった。

 現実の自分に引き戻され、夢は儚く消えていった。彼らの幸せは私にはない。メイヴィスの姿を借りて、そのひとときを味わっただけで、結局、私は現実の自分に戻らざるを得なかったのだ。

 私の夢は終わってしまった。夢の中では、彼らは希望に満ちあふれ、幸せな未来が約束されていた。それに比べて、私はどうだろう。茉凜に抱かれるあの瞬間すら、偽りの姿に頼るしかない私が、彼女に本当の気持ちを伝えることなんて、到底できない。

 急に、虚無感が押し寄せてきた。幸せに満ちたメイヴィスの物語が終わった瞬間、私の背後には、怖ろしい末路が黒い口を開けて待っていた。メイヴィスにはウォルターがいて、ずっと一緒にいられるというのに、私はすべてを失う運命にある。それが怖くて、羨ましくて、嫉妬めいた感情すら湧いてきて、胸を締め付けた。

 目の前に立つウォルターの姿は、もう茉凜にしか見えなかった。彼女を放したくない――その衝動が私の全身を駆け抜けた。抑えきれない感情が膨れ上がり、理性がどこかへ消えていった。

 私の心に潜んでいた感情が、どうしても抑えきれなくなったのだ。

 茉凜は、舞台の出来事を役柄上のトラブルだと言って、私を気遣ってくれた。彼女は表向きには平静を保っているように見えたけれど、私にはわからない。心の奥底では、彼女がどう感じているのか。ショックを受けていないはずがない。でも、彼女は何も言わない。それが、さらに私を不安にさせた。

 そして、明もまた複雑な心境に違いない。茉凜と明との関係を支える“休戦協定”のような微妙なバランスを、私は壊してしまった。二人の間に築かれた繊細な距離感を、私の行動が破壊してしまったのだ。

 その意味はとても重いものだろう。茉凜に対して抱いている気持ちを、自覚しながらも隠していた私が、とうとうその線を越えてしまったのだから。

 私の中には、茉凜への強い思いと、それを隠し続けることへの葛藤があった。けれど、あの瞬間、私はそれを抑えきれなかった。

 私は、なんて愚かなんだろう。

    ◇        ◇

 その後、ドアが静かに開き、医者が入ってきた。彼は虎洞寺氏の古くからの親友、新城聡(あらしろ さとし)医師だった。彼は私が弓鶴の身体に入ってからというもの、何度も診察を受けてきたので、もう見慣れた顔だった。その落ち着いた佇まいは、いつもと変わらず、私に安心感をもたらしてくれた。彼もまた血族で、根源の欠片の声が聴けない者として、郭外で生きてきた人物だった。

 新城医師は私の正体を知っていたが、極めて現実主義的な彼は、そのことを特別視することなく、私を普通の男の子として扱ってくれた。そのざっくばらんで率直な態度は、私にとって心地よいものでありながら、一方でどこか心の奥底にぽっかりと開いた穴を感じさせた。それは、彼が私の抱える複雑な内面を完全には理解できないという現実から来るものだった。

 彼の目は私を深く見つめ、静かな声で告げた。

「言いにくいことだが、君が言っていた最も恐れていた事態が、今まさに現実のものとなりつつある。これは、ただ事ではない。極めて深刻な状況だと言わざるを得ない」

 その言葉が、私の身体の内部で静かに進行していた異常の正体を示すものであることを、私は即座に理解した。

「俺はオカルトなど信じない。現実に根ざした医療こそが真実だと信じてきた。だから、かつて君が話していたことを受け入れる気にはなれなかった。しかし――」

 彼は言葉を切り、深いため息をついた後、私の体内を映し出したレントゲンとMRIの画像を、大きなタブレットに映し出し、指で拡大して見せた。その画面に映し出された画像には、私の身体の各所に点々と白い影が浮かび上がっていた。それらは、まるで暗闇に潜む静かな脅威のように、冷たく無機質な現実としてそこに存在していた。

 「これが現実だ……」と彼は言った。その声には、耐え難い現実に直面した苦悩が色濃く滲んでいた。彼の指がタブレットのスクリーンを示し、画像に映し出された結晶体の輝きがその言葉を裏付けていた。

「俺が信じたくなかったことの証明だ。まったくばかげているとしか言いようがないが」

 彼の声は、科学と信念の狭間で揺れる彼自身の内面の葛藤を露わにしたもので、彼の信じる医学の枠を超えているという痛切な認識が含まれていた。

「すべて君が予見していた通りだった」

 その言葉は、私の中でぐっと沈み込むような感覚を呼び起こした。最初から避けられない運命が、今まさに現実のものとなっているのだという冷厳な認識が広がっていた。

「そうですか……」

 私の答えは、受け入れざるを得ない現実の受容に過ぎなかった。言葉では表現しきれない深い混乱と虚無感が、私の心の中で波のように押し寄せていた。

「検体を採取して、今調べてもらっているが、一見してこれは人体の内部で生成される物質ではないと感じた。まるで磨かれた宝石のようにきらきらと輝いているんだからな……。こんなものが体内で発生するなど、到底考えられない」

 声が深刻さを増し、彼の表情には不可解な事態に対する驚愕と無力感が色濃く表れていた。結晶体の異常な輝きが、彼の信じる医学の枠を超えた現実の証拠であり、その異物の存在が医師の技術と知識の限界を超えていることを示していた。

「でしょうね……」

 私の短い答えは、彼の言葉に対する同意であり、私自身の受け入れの証だった。自分の体内で進行している変異は、当然起こるべくして起きたもので、何の驚きもなかった。

「これが、君が言っていた精霊子の受容結晶体(キャパシタ)か?」

「はい……」

 医師の問いに対して、私は淡々と答えた。その言葉は、現実と不可思議の狭間で揺れる私たちの立場を明確にするものであった。

「そうか、無茶苦茶だな……」

 彼の言葉は、驚きと失望を隠せないまま、私の内面の困難さを反映していた。

 私が直面している運命が、医師の理論や信念をも超えた、未知の領域であることは、明白な事実だった

「ええ、無茶苦茶ですよ、こんなの……」

 私の答えは、現実の厳しさと私自身の内面の混乱を反映していた。それは、医師の苦悩と私の運命が交錯する中での、唯一の理解できる真実だった。

 私よりも遥かに素質に恵まれた、デルワーズが言うところの“儀式の適格者”である弓鶴でも限界はいつか来る。これ以上黒鶴を使って器の容量を拡大させようとすれば、体内の結晶はますます増殖し、肉体への負荷が増加していくだろう。それは、耐え難い苦痛と生命維持の危険をもたらすことになる。

 それはかつて私自身が体験し、確かに実証された現実であり、避けがたい終焉が刻一刻と迫っていることを告げるものであった。

 私には大きな決断が求められていた。手をこまねいている暇はない。この弓鶴の身体が朽ち果てる前に、彼の意識と記憶を取り戻し、その無垢な日常へと還すために、急いで解呪の道を進まなければならない。

 私の心臓が鼓動するたびに、その白い影たちが微かに揺らいでいるように見えた。それは、私の恐れが生み出した幻影なのだろうか。それとも、これが私の運命の一部として告げる真実の姿なのだろうか。

 新城医師は私の体内の画像をじっと見つめながら、目に浮かんだ深い苦悩を隠すことはなかった。彼の顔には、その信頼される経験と知識が映し出されている一方で、根深い迷いと戸惑いが交錯していた。

「俺は医師として、数え切れないほどの症例を扱ってきた。どんなに複雑な症状でも、解決策を見いだす自信があった。しかし、君の体内に存在するこの異物は、俺の医学的理解を根本から覆すものだ」

 彼は一瞬、言葉を飲み込み、深く息を吐いた。彼の声は重く、痛みを含んでいた。

「俺は、深淵のような非現実的な存在が許せないと常に思っていた。だからこそ、現実主義を貫き、医療の現場では根拠のある科学を信じてきた。しかし、この現象は、その信念さえも揺るがすものだ。俺は医師として、この事実をどう受け入れればいいのか、もはや途方に暮れている」

 彼の眼差しは、科学と信念の狭間で揺れる深い苦悩を映し出していて、自身が直面している現実の矛盾を物語っていた。彼の手がタブレットのスクリーン上の画像を指し示すと、その光景はただの医学的なデータを超えて、私の体内で進行している見えない脅威を如実に示していた。

「この結晶体は単なる異物ではない。君の体内で生成される物質が、通常の生体反応とは全く異なる形で増殖している。これが人体に及ぼす影響は予想もつかない。おそらく、結晶体がさらに増殖すれば、体内の器官や組織に深刻な影響を及ぼすだろう」

 新城医師は苦悩の表情を浮かべながら、私に説明を続けた。

「結晶体が増殖すればするほど、その影響は多方面に及ぶ可能性がある。まず、体内の正常な機能が圧迫され、内臓の機能障害や循環系の問題が発生するかもしれない。また、体内の結晶体が増えることで、体の各部位で異常な圧力がかかり、激しい痛みや不調が引き起こされる可能性も高い。さらには、体全体の代謝が乱れ、免疫系にも影響を及ぼすかもしれない」

 彼は言葉を続けながら、眉間に深いシワを寄せた。

「最悪の場合、これらの影響が積み重なることで、命に関わる状況に陥る可能性も否定できない。結晶体の増殖が止まらない場合、身体の機能が限界に達し、耐えがたい苦痛や生命の危機が迫るかもしれない。その場合、余命が限られることも考えられる」

 新城医師は、まるで私の体内で進行するこの不可解な現象に対して、自身の医学的知識と信念が打ち砕かれるという深い葛藤がにじんでいた。

「君の体内に存在するこの結晶体が、今後どのような影響を及ぼすのか、そしてそれに対する治療法が見つかるのか、現時点では何も確定できない。ただ、この現実を受け入れ、最善の方法を模索するしかない」

 彼は、決して揺るがぬ信念で支えられていたはずの医師としての役割と、目の前に広がる現実の矛盾とに直面し、深い苦悩に包まれていた。

        ◇          ◇ 

 部屋から新城医師が去った後、しばらくしてから茉凜と明がやってきた。彼女たちの顔には心からの心配が浮かんでおり、その表情が私の心に重くのしかかっていた。

 舞台上でのトラブルが頭から離れず、私は冷静を装おうと必死に努めたけれど、内心では恐怖の渦に呑み込まれ、冷や汗がじわりと滲んでいた。

 彼女たちの優しい視線を受けていると、自分がどれほど平静を装っても、その裏に隠された深い不安があからさまに現れてしまいそうで、どうしようもなくなった。

 解呪への希望を抱き、私のために尽力してくれている彼女たちに、この真実を伝えることはできなかった。明が言ったように、解呪は命を賭けた戦いだ。その言葉の本当の意味を彼女はまだ知らない。彼女がどれほど強い意志を持っていても、これから向かうであろう試練の恐ろしさを完全には理解していないだろう。彼女の目にはまだ、私が抱えている恐怖の重みなど見えていない。

 茉凜がこの事実を知ったなら、彼女が受けるショックは計り知れない。彼女がどれほど強靭な心を持っていても、この現実を受け止めることは難しいだろう。彼女にこの暗い現実を明かすことがどれほど辛いことか、私にはわかっていた。彼女がどれほどに私を支えてくれても、この事実を知ったとき、彼女の心がどれほど深く傷つくかを想像するだけで、私の胸は締めつけられた。

 さらに、茉凜が「導き手」であるかどうかもまだ確証が持てていない。もし彼女が「マウザーグレイル」を宿しているなら、解呪の儀式は成功に近づく。だとしても、それはあまりにも大きなリスクであり、その不確実性が私の中でそれを明かすべきかどうかの葛藤を生じさせていた。

 彼女たちのために最善を尽くしたい一方で、その決断がどれほどの影響を及ぼすかを考えると、私の心は重く沈んでいった。

 彼女たちの前で微笑むことがどれほど難しいかを痛感していた。彼女たちの希望を裏切りたくはなかった。私が抱えている重荷を彼女たちに背負わせるわけにはいかないという気持ちが、私の心にずしりと響いていた。

 私の心は、一層深い迷宮へと迷い込んだように感じていた。彼女たちの存在が、私の決断と行動に対する重い責任を、一層際立たせていた。その責任の重さに押し潰されそうになりながらも、私はただひたすらに進んでいくしかない現実をひしひしと感じていた。

「もう、『今のまま、このまま』ではいられないんだね……」

 その言葉が、心の中で静かにこぼれ落ちた。彼女たちの前で平静を装いつつ、私は避けられない運命に向かって歩むしかない現実を、ひしひしと感じていた。自分の中で進むべき道が決まっていくのと同時に、周囲の人たちに対する感謝と責任感が交錯していた。
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登場人物紹介

ミツル・グロンダイルのキャラクター設定

基本情報年齢: 12歳(外見年齢)


外見: この大陸では珍しい黒髪と薄緑の透き通った瞳。美しい容貌だが、体型は少し少年のようで、まな板の寸胴であることに敏感。自称年齢: 21歳(前世の記憶を持つため)


性格: 冷淡に見えながらも実は直情的で、一人でいることを好む。時折無邪気な一面を見せることがある。前世の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動き、冷静な大人の一面と子供っぽさが共存する複雑なキャラクター。


好物

食事に関しては美味しいものを少しだけなタイプ。剣の中の茉凜がアルコール依存になってしまったため。最近はお酒も嗜む。


社会的関係: 引っ込み思案で人付き合いが苦手なため、孤独を好む。しかし、孤独を埋めるために時折無邪気な一面を見せる。自分の力や能力に対する内なる葛藤と向き合いながら、過去の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動く。


ミツル・グロンダイルの物語における役割

憧れの存在: ユベル・グロンダイル(父)の影響を強く受けており、彼の戦闘スタイルや技術に憧れを抱く。父の遺志を継いで魔獣を狩る役割を担う。

遺産と使命: 父が遺した白きマウザーグレイルを持ち、彼の意志を継ぐ重要な役割を果たしている。彼女の能力と背景は、物語の重要な要素となっている。

謎と葛藤: 彼女の能力と前世の記憶には深い謎があり、物語の進行とともにその全容が明かされる可能性がある。彼女の内面的な葛藤や成長は、物語の核心に深く関わっている。


前世の名前: 柚羽 美鶴(ゆずは みつる)

年齢: 不明(死後、弟の弓鶴に憑依しているため、年齢としては弓鶴の年齢に準じる)

性別: 女性(現在は弟の弓鶴に憑依中)

出身地:九州地方某県の山中の柚羽家(深淵の三家の一つ、始まりの回廊の守護者)

職業: 柚羽家の後継者で深淵の始まりの回廊の巫女


 美鶴は深淵の三家の一つである柚羽家の長女であり、始まりの回廊の守護者。柚羽家襲撃事件で両親を失った後、叔父の虎洞寺氏に保護された。その後、両親の死の真相を知り、自ら人身御供になる覚悟を決め、柚羽家の後継者となった。彼女は密かに深淵の根源の再生を図り、解呪に臨んだが、その試みは失敗し、死亡した。


その後

 美鶴はデルワーズの画策により、弟の弓鶴と意識と記憶の全情報を交換させることで、彼に憑依する形で生き延びる。弟を取り戻すために再び解呪に進もうとした際、茉凜と出会う。茉凜が持つ「黒」の力の安全装置としての役割によって、二人は運命共同体となることが決まる。


 自らが女性であることに対する戸惑いと、茉凜に対する淡い感情を抱くようになり、自分が本当は弟ではないことや、茉凜が見ているのは弟であることに苦悩する。


 美鶴は両親の死の真相を知った後、自らが柚羽家の後継者として深淵の根源の再生を図ろうとしたが、その試みが失敗したことに対する責任感を抱えている。


 茉凜の猛烈なアタックに対して、次第に閉じていた心を開き始めると共に、彼女に対して淡い心を抱く。しかし、自分が本来女性であることや、それを知られることを怖れて受け入れることに苦しんでいる。


 美鶴は茉凜と共に深淵の根源の解呪に挑む中で、茉凜の存在が自らにとってどれほど重要であるかを認識し始める。しかし、彼女は自分の感情と状況に苦悩し、特に自分が女性として抱く感情や、茉凜が見ているのが自分ではなく弟であることに対して深い悩みを抱えている。


深淵の黒鶴

 精霊子に対する感受性が極めて高く、世界に漂うすべての精霊子を集積できる。彼女の前世の名前(美鶴)と組み合わせて【黒鶴】と呼ばれる。限定された空間(場裏)を形成し、その中でイメージ通りの現象を具現化。四大元素すべてを制御可能で、並列起動による複合行使も可能。背中に現れる翼は物質的ではなく、彼女の願望を投影したもの。


場裏

 限定された空間を形成し、その中で事象を操作。色で呼称される流儀に基づき、たとえば赤であれば熱の操作に関わり、イメージのままに具現化できる。詠唱や魔道具を必要としない強力な魔術として認識されている。戦闘と


能力の影響

 ミツルの戦闘スタイルは、前世の影響を色濃く受け継いでおり、流動的で柔軟な戦術が特徴。彼女の能力は瞬時に強力な現象を引き起こすことができ、そのため精神的な負荷が非常に大きい。精神崩壊や自我喪失のリスクが伴う。


精神的負荷

 精霊子の収集と能力の使用により、大脳辺縁系に過大な負荷がかかり、精神的な負担が大きい。特に精霊子への感受性が高い彼女は、負荷に耐えきれず暴走する危険がある。

ヴィル・ブルフォード

 ミツルの前にふらりと現れた、ぼさぼさ頭の無精髭の中年剣士。『黒髪のグロンダイル』の噂を聞きつけて訪れたという、彼の真意と思惑は?

 自らを『放浪のしがない剣士』と言う割に、その剣技は一流で、歴戦の強者。『雷光』とあだ名されると対魔獣戦のエキスパートで、その戦いぶりはミツルも舌を巻く。


年齢 48歳

身長 190センチ近い

体格 大柄で強靭

出身地 不明

職業  剣士、冒険者、元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長

髪: ぼさぼさの金髪。長さは無造作に伸びており、戦いの中で乱れたまま放置されている。

顔 無精ひげが顔全体に生えており、荒々しさと共に風格を漂わせている。

武器 中央に深い溝が彫られたブロードソード。鍛造で作られており、適度な粘りを持ち、滅多に折れない。


剣術スタイル

流派 雷光(らいこう)

特徴 巨体とその質量を生かした高速ダッシュ


戦闘スタイル

高速ダッシュ 雷のようなスピードで踏み込み、敵の懐に入り込む

敵の死角利用 相手の身体を死角として利用し、瞬時に繰り出される高速の斬撃で敵を仕留める

左手の傷 突きを繰り出す際に意図的に剣の先に左手を添え、敵の注意を引き付ける。実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、非常に巧妙。猪突猛進型でありながらも、臨機応変に対応できる柔軟さを持つ。これは、変幻自在で『型』のないユベルと毎日修練を積み重ねた結果(苦肉の策)による。


戦闘技術

片手剣術 基本的には片手でブロードソードを操るが、必要に応じて両刀も使うことができる。戦況に応じて剣の使い方を変え、迅速かつ的確に対応。


特殊技

雷光突き 瞬時に高速で踏み込み、突きを繰り出す技

閃光斬り 一瞬の隙を突き、相手の死角から高速で斬撃を繰り出す技


特徴と戦術

巨体と速度を生かして、魔獣の懐に入り込み、致命的な攻撃を繰り出す。視線誘導の技術で、敵の視線を引き付けてから攻撃する。


心理と性格

戦場での冷静な判断力と卓越した技術で、数々の戦場で名を馳せる。敵の動きを見極め、最適な攻撃や防御を選択する。どんな状況でも冷静に対応し、自信を持って戦う。猪突猛進型でありながら、変幻自在の戦術を使いこなす柔軟さを持つ。


元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長を務めた経験を持つ。騎士団時代の訓練と経験が、彼の戦術的な判断力と剣術の技術に大いに寄与している。特に、ユベルとの修練で得た経験が、彼の変幻自在な戦術に大きな影響を与えている。


その戦闘スタイル

一九〇センチ近い大柄な体躯を持ちながらも、その強靭な体に似合わぬほどの軽快さを誇る剣士。彼の手に握られているのは、ロングソードよりも短いブロードソードに近いもので、中央には深い溝が彫られている。この剣は鍛造で、適度な粘りを持ち、使い手によっては滅多に折れることがない。


ヴィルの剣術のスタイルは「雷光」と呼ばれ、彼の巨体とその質量を生かした高速ダッシュが特徴。彼は特に大きな魔獣を相手にするのが得意で、雷のようなスピードで踏み込むと、敵の懐に入り込み、相手の身体自体を死角として利用する。瞬時に繰り出される高速の斬撃で、敵を一気に仕留める。


特筆すべきは、彼の左手に傷が絶えないこと。これは、突きを繰り出す際に意図的に剣の先に手を添えて、その手に注意を引き付けるためだ。敵がその手に視線を奪われている間に、実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、彼の戦術は非常に巧妙。


ヴィルの剣は基本的に片手で操られることが多いが、必要に応じて双剣で戦うこともできる。その柔軟な使い方と、雷光のような素早さを駆使して、彼は戦場でその名を轟かせた。

茉凜(マリン)のキャラクター設定


基本情報年齢: 17歳

身長: 173センチ

プロポーション:高跳びの選手かファッションモデルのようなスラリとしたかっこいいスタイル。ただし本人は自覚なしで自信がない。 


外見: ミルクティーブラウンの髪、大きな瞳、お日様のような笑顔。純粋で優しい少女の姿が特徴的。


性格: 天真爛漫でポジティブ。どんな困難な状況でも明るさを失わず、死の淵の絶対的不利な状況でも輝く。特に追い込まれるとスイッチが切り替わり、予知視界を用いる能力が発揮される。


背景前世: 元々は私たちの世界に住んでいた人物。異世界に突然放り込まれ、さらに剣の中に転生させられるという過酷な運命を辿る。


役割: ミツルの相棒であり、恋人(?)。彼女の無条件の愛情と楽観的な性格がミツルの心の支えとなっている。過去のトラウマ: 落雷事故によるトラウマがあるが、それを嘆くことなく明るさを保ち続ける。ミツルにとっては大きな支え。


能力と役割能力: マウザーグレイル経由の予知視界。死の淵での絶対的不利な状況でも特に有効で、剣の中にあるこの能力が最大の武器である。


役割: ミツルの『深淵の黒鶴』を制御するための安全装置(セーフティ)として機能。暴走を防ぐ唯一の手段として、ミツルとの接触と精神的な感応が必要。自身の全てを捧げる覚悟を持ち、ミツルを守ることを使命としている。


心情と内面愛情: ミツルに対して無条件の愛情を注いでおり、彼女の存在はミツルにとって欠かせない心の拠り所となっている。愛情が恋であることに気づきながらも、その感情を告白することはできない。


支え: ミツルの冷たい態度や無口さの裏に隠された繊細な心を理解し、彼の孤独や苦しみを誰よりも感じ取っている。彼の心の支えとなることを自分の使命と感じ、彼を守るために自分の全てを捧げる覚悟を持っている。


内面の葛藤: 弓鶴(ミツル)が自分にとって特別でなくなるのではないかという不安を抱えながらも、彼の幸せを最優先に考え、自分の感情を抑え込んでいる。仲直りを図る際には自分を押し殺して彼らの関係を修復しようとするなど、内面的には複雑な感情が渦巻いている。

白きマウザーグレイル

基本情報正式名称: 精霊器接続式対魔族兵装 MW-CSV-DD MAUSER-GRELL(マウザーグレイル)

形状: 純白のロングソード

特徴: 刃に相当する部分がなく、実質的には何物も斬れない

構造と材質材質: 不明。構成素材については詳細が不明だが、非常に高い堅牢さを誇る。

耐久性: どんな魔獣の攻撃にもヒビ一つ入らないほどの堅牢さを持つ。

重量: 見た目よりも軽量で、非力なミツルでも自在に扱える。

機能と特性魔導兵装: 剣の形をとった魔導兵装であり、実際には物理的に斬ることはできない。

潜在能力: 現在のところ、ミツルもその実体と潜在能力については把握していない。

補助機能: ミツルの持つスキル「真凜」が安全装置として補助を行っている。

戦闘における役割安全装置: ミツルが持つ「深淵の黒鶴」の能力を制御するための安全装置として機能する。マウザーグレイルが実際の戦闘では使われないが、その存在がミツルの能力の安定に寄与している。

象徴的な意味: 剣そのものは物理的な攻撃力を持たないが、深い意味や力を秘めている可能性がある。特に、ミツルの精神的、象徴的な支えとしての役割を果たしている。

謎と疑問実体の不明: 現状、剣の具体的な機能やその実体についてはミツル自身も把握していない。剣の持つ潜在的な力や目的については謎に包まれている。発見される

可能性: 今後のストーリー展開で、その真の力や役割が明らかになる可能性がある。

ユベル・グロンダイル

 ミツルの父で、『閃光』の異名を持つ変幻自在の剣術を操る天才。すでに故人である。


ユベル・グロンダイルのキャラクター概要

年齢と外見:

年齢:50代外見:かつて金髪だったが、現在は黒く染めている。無精髭を蓄え、スリムで筋肉質な体型。優雅な立ち姿と流れるような戦闘動作が特徴。


役割と経歴:

元リーディス王国銀翼騎士団右翼リーダーであり、対魔獣戦のエキスパート。リーディス王国の銀翼騎士団に所属し、多くの戦場を経験。特に魔獣戦においてその名を馳せた。


基本戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の極みであり、その動きは流動的でまるで水のように変幻自在。力強さでは他の剣士に劣ることもあるが、素早さと身軽さで魔獣を屠る。ステップワークや変則的な体術を駆使し、敵の動きを予測させない巧妙な戦術を展開。回転しながらの斬撃や舞うような動きで敵の意識を散らし、戦局を有利に進める。


家族との関係:

妻:メイレア(元リーディス王国の第三王女)。非常に深い愛情を持ち、二人の関係はミツルにとって時折恥ずかしくなるほどの愛情表現がなされていた。娘:ミツルにとってユベルは憧れの対象であり、彼の戦闘スタイルや技術に強く影響を受けている。

最後の旅と戦い:

妻メイレアの行方不明後、ユベルは娘ミツルを連れて探索の旅に出る。愛する妻を取り戻すため、家族の絆を守るための決意を持っていた。未知の魔獣との戦いで命を落とし、その犠牲によってミツルは生き延びることができた。

白きマウザーグレイル:

ユベルが妻との絆として持っていた白きマウザーグレイルは、ミツルに託された。この剣はユベルの思いと愛情を象徴し、ミツルにとっては父の遺志を継ぐ重要なアイテム。


お尋ね者:

尊敬を集める存在だったが、妻を誘拐した罪が科せられ、お尋ね者として追われていた。ユベル・グロンダイルの戦闘スタイル


「柔」の戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の戦術を体現し、流動的で変幻自在な動きが特徴。彼の動きは舞踏家のように優雅でありながら、非常に戦術的で緻密。


ステップワークと回転体術:

軽やかなステップワークで敵の攻撃を避け、回転しながらの斬撃で敵を翻弄。体操選手やフィギュアスケーターを彷彿とさせる華麗な動きが特徴。


対魔獣戦の特化:

魔獣の懐に自在に出入りし、相手の身体を盾として利用することで最短距離からの攻撃を実現。風のように迅速で、敵の反応を許さない。

彼の戦闘スタイルを際立たせている。

前世での二人

 それは第二章で語られる。

虎洞寺健

美鶴と弓鶴の叔父で、保護者であり協力者。

能力が実用に耐えない血族が所属する郭外のリーダーで、自身は多数の企業を成功に導いた実業家で資産家。その貢献によって上層部にも大きな発言力を持ち、水面下で二人の活動をサポートする。彼の目的は深淵の呪いからの解放と深淵の解体である。

佐藤さん

 柚羽家のお手伝いさんで、美鶴の理解者。昔からの柚羽家のお手伝いさんで、その家事能力は超人。茉凜の料理の師匠。

真坂明

 15歳の少女で、身長は152センチメートル。黒のショートカットが特徴的で、衣装は、黒のクロップトップと高腰のパンツ、袖にディテールが施されたオープンジャケットで、全体的にクールでスタイリッシュな印象。均整の取れたスタイルも、洗練された雰囲気に一役買っている。

性格は情熱的で、自分が思ったことをはっきりと口にするタイプ。弓鶴の元許嫁であり、真坂家の次期後継者としての重責を担っている。また、「深淵の赤の流儀」の高度な術者でもあり、その実力は並外れている。彼女の存在感は、その内に秘めた強い意志と、家の名に恥じない実力から来ている。

明は破談後も弓鶴を想い続けており、それが彼女の能力の原動力になっている。自身が家の後継者となり、弓鶴を婿として迎えようと決意した結果、兄二人を殺害してしまう。

柚羽 美鶴

 ミツルの前世で転生時二十歳。その過去はダイジェストとして第二章で語られる。ミツルの内向的なところは彼女の成分。

 前世では茉凜に対して次第に恋心を抱いていくが、さまざまな問題が障害となって、素直に気持ちを伝えられずにいた。

 彼女のバルファへの転生がグロンダイル家にもたらした影響が、ミツルが戦い旅する理由。

鳴海沢洸人

深淵の血族、上帳を構成する三家の一つ、鳴海沢の長子。流儀青の強力な使い手。弓鶴の確保のために遣わされるが敗退し、その後弓鶴と茉凜の監視役として転校してくる。

数年前に暗殺に失敗し、その後始末として対象を家族諸共惨殺したことがきっかけで、殺せない欠陥品になってしまった。強力な血を残すために家に留め置かれ、鬱々とした日々を送っていた彼を変えたのは、深淵の始まりの回廊の巫女からの言葉だった。 

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