プロローグ
文字数 753文字
身体を満たす液体の温もりは、まるで母の愛情そのもので、全身がその愛に抱かれているようだった。時折、優しく包み込むような波が私を揺らし、心地よい眠気が全身に広がる。私はこの瞬間が永遠に続いてほしいと願った。
その時、どこからか聞こえてくる優しい声が、まるで母親の愛のささやきのように、私の心にそっと触れた。その声は穏やかで、柔らかく、私の奥深くにまで響いていく。
「ありがとう、美鶴。すべてはあなたのおかげよ」
その声が誰のものなのか、私にはわからなかった。けれど、どこか懐かしく、そして温かい感情が胸の奥で広がり、自然と涙が滲んだ。記憶の糸は遠く霞んでいて、夢と現実の境界がゆっくりと溶けていくようだった。
「わたしは、自分の過ちであなたに多くの重荷を背負わせてしまったわ。それでも、あなたはその呪いの連鎖を断ち切ってくれた。あなたのおかげで、わたしは再び自由になれたの」
声が語り続ける中で、私の心に温かな感謝と愛がじんわりと染み込んでいった。どこかで涙が一筋、静かに頬を伝い、母親のような存在が私を見守り、支えてくれているような安心感があった。
「これからは、あなたが新たな命として生きる番。どんな困難が待っていても、あなたは一人じゃないわ。あなたの中には、それを乗り越える力があるのだから」
その言葉は、私の心に深く刻まれ、内に秘めた希望の光を照らし出してくれた。その光はやがて私の手を導き、私はゆっくりとその輝きに向かって手を伸ばしていった。