第18話 母さまの消失と私がすべきこと

文字数 5,041文字

 しばらくの沈黙が流れた後、ヴィルの声が静かに空気を裂いた。その視線は、私の手に握られているマウザーグレイルにじっと注がれていた。

「その剣だが、素性が謎だな。お前もよく知らないと言っていたが」

「うん……」

 私は視線を落とし、心の中でかすかな記憶の断片を必死に掘り起こそうとした。

 マウザーグレイルが私に何をもたらしたのか、どんな意味が込められているのかを思い出そうとするのだが、まるで霧に包まれた過去に手を伸ばしているようで、心は昔の情景に締めつけられるような痛みを感じた。その一つ一つが心の奥で小さな鋭い刺のように引っかかってくる。

「この剣は家の壁の高いところにずっと掛けられていたの。物心つくころにはもうそこにあったから、いつからあるのか、どうしてそこにあるのか、何の意味があるのか、いつも不思議に思ってた」

 私は言葉を選びながら、記憶の奥底に潜り込んでいった。

「一度だけ、好奇心からその剣に触れようとしたことがあったの。でも、その時は父さまにひどく叱られて、それからは絶対に触らないようにしていたわ」

「そういえば、あいつはお前が剣に触れることを許さなかったんだったな?」

 ヴィルの言葉には、深い理解と共感が込められているように感じられた。しかし、その問いかけは私の心にさらなる波紋を広げた。

「それとは別の話よ」

 私は当時感じた恐怖を思い出しながら、心の中で揺れる感情を抑えようとした。

「どういうことだ?」

 ヴィルは剣に視線を落とし、眉間に深いしわを寄せていた。

「言ったでしょ? わからないことだらけだって。これは、私たち家族にとって、あまりにも危険なものだったってことよ」

 ヴィルはその言葉を黙って受け止め、ゆっくりと頷いた。

「ある時、母さまが剣を抱きしめて、すごく真剣な顔で話しかけてるのを見たことがあったの」

 私はその光景を思い出しながら手で空中をなぞるように振る。母さまの表情と、剣に向かうその優しい仕草が鮮明に浮かぶ。そこには明らかな親愛の情が感じられた。

「気になって尋ねてみたら、『ミツル、この剣には心があるのよ。まだあなたには早いけれど、大きくなったら、きっとわかるようになるわ』って言っていた。時々、そうやって剣と話をするんだって」

「心が? 剣に?」

「うん、母さまは本当にその心と会話をしているようだった。私には意味がよくわからなかったけれど、すごく神秘的で、何だかとても重要なことのように感じた」

 私はその時の感覚を再現しようとして、胸のあたりに手を置く。

「でも、三年前、大変なことが起きたの。急に家が激しく揺れ始めて、驚いて母さまを呼びに行ったら、部屋からまぶしい光が漏れていて、母さまがその中に立っていた」

 ヴィルの表情が固まる。私の言葉に耳を傾けながら、彼の眉がさらに深く寄せられた。

「何があったんだ? まさかその剣が原因か?」

「ええ、そう……」

 私は手を強く握りしめ、当時の感情を思い出そうとする。心臓が再び鼓動を速め、手のひらに汗が滲む。

「剣が急に光り輝いて、部屋が真っ白になって、私にはどうしていいかわからなくなった。母さまが『まだ早すぎる』って言ってて、それと『まだ力を解き放ってはだめ』と言ってたと思う。すごく焦っているのが私にもわかった」

「力? その剣に秘められた力なのか?」

「うん。たぶんね……」

 当時の恐怖が再び表れる。心の奥に潜む不安が、私の声に乗り移ってくる。ヴィルの目が鋭くなり、その表情に影が差す。

「母さまが光の中に向かって、剣に手を伸ばそうとするのを見たとき、私は怖くて、『やめて』って叫んだけど、母さまには全然届いていなかった。手が剣に届いた瞬間、目の前が真っ白になって、何も見えなくなった……。目を開けたときには光は消えていて、剣が床に転がっているだけで……母さまの姿はもうどこにもなかった」

 ヴィルが身体を乗り出し、顔を近づけて尋ねた。

「消えた? まさか死んだってことか?」

「そんなことあるわけないでしょ!!」

 瞬間的に怒りがこみ上げ、私は思わず叫び声を上げた。

 ヴィルの目が驚きと共に広がり、口を少し開けて固まった。

 その反応を見た私の心は、もやもやとした感情でいっぱいになり、冷たい空気が流れるような気がした。

「ああ、すまない……」

 ヴィルが申し訳なさそうに呟きながら、沈黙に包まれた。肩が落ち、視線は床に向けられた。私にはその静寂が重苦しく、胸に圧し掛かるように感じられ、息が詰まりそうだった。

「……ごめんなさい。冷静になれそうもない」

 ヴィルは目を伏せたまま、深いため息をついた。彼の肩がわずかに落ち、静かな困惑が漂っていた。

「わかっている。言いたくなければもういい。無理をする必要はない」

 彼の言葉は不器用ながらも、私を気遣う真摯なものだった。それが胸に響き、私は深呼吸をしながら心を落ち着けようとした。

 彼の優しさに感謝しながらも、私は勇気を振り絞って続けることに決めた。

「いいのよ……。ここから先は私の推測だけど、母さまはこの剣の力に巻き込まれて、どこかへ飛ばされたんじゃないかって思ってる」

 私の言葉を受けて、ヴィルの目が驚きに見開かれた。

「飛ばされた!? 転移の魔術なんて伝説上でしか聞いたことがないぞ」

「だから危険なのよ、これは……。いつからこの世界に存在していて、中に何が仕込まれているかなんて、全然わからないんだから」

「そうか……」

 ヴィルは深いため息をつき、その言葉が私の心に重くのしかかった。

 過去の傷をえぐり出し、さらに深い闇が広がるのを感じながら、私は言葉を続けた。

「それから、どうなったかって話よね……?」

「ああ……」

 ヴィルの声はわずかに掠れていた。

「父さまはこう言ったわ。『お母さんは必ずどこかで生きている』って。そして、父さまは私を知り合いに預けて、母さまを探しに行こうとした。でも、私は嫌だった。母さまがいなくなって、父さままで私を置いてどこかへ行ってしまう。私は一人ぼっちになってしまう。そんなの堪えられるわけがない。だから、父さまに縋りついて何度もお願いした……。そうしたら、父さまは『しょうがないな』って困った顔をして、笑ってくれた。私が旅に同行することを許してくれた。そして、私たちは旅に出た。この剣を携えてね」

 ヴィルは頷いてから、少し感慨深げに言った。

「あいつは結構寂しがり屋だったからな。きっと本音ではそうしたかったんだろう」

 その言葉に、私は悲しげに微笑みながらも心の奥で溢れる感情を抑えた。彼の理解が少しだけ救いになるように感じたが、それでも心の中に残るのは、あの選択が本当に正しかったのかという疑念だった。

「そうかもね……」

 私の声には、どうしようもない虚しさが滲んでいた。

 ヴィルの言葉が私の心に触れる一方で、その選択が私たちにどんな影響を及ぼしたのか、私自身にはまだ分からないままだった。

「でも、その時私が素直に言うことをきいていれば、旅についていかなければ、父さまは死ななくて済んだのかも……」

 私の胸は今にも張り裂けそうだった。過去の苦しみが、再び胸に重くのしかかってきた。

「私みたいな何もできない足手まといがいたせいで、父さまは命を落としたのかもって、ずっと思ってた……」

 その言葉が私の心から溢れ出し、息が詰まるほどの痛みを伴った。

「私がいたせいで、父さまは死んでしまったんだ。一人だったら、その場から逃げることだってできたはず……」

 私の声が震え、涙がこぼれそうになったとき、ヴィルが低い声で制止した。

「やめろ……」

 その声にはわずかな震えが混じり、彼もまた私と同じように心の奥で痛みを感じていることが伝わってきた。

 ヴィルの手が私に伸び、触れようとするも、ためらいがちに止まった。その様子から、彼の中にも深い葛藤があることが伺えた。

「お前のせいなんかじゃない」

 ヴィルの目が私を真っ直ぐに見つめていた。

 彼の言葉が心に響いても、それでも私の中に残る痛みを完全に癒すことはできないように感じられた。

「お前が責任を背負う必要はない。あいつならそう言うはずだ」

 ヴィルの言葉は温かさを伴っていたが、それだけでは私の痛みを完全に和らげることはできなかった。

「でも、もうどうしたって父さまは帰ってこない……」

 私の言葉は途切れ、涙がこぼれ落ちる。こぼれた涙が頬を伝い、無力感と悲しみが一層深く心に染み込んでいく。

 ヴィルは私の涙を見つめながら、静かに口を開いた。

「いい加減、過去に囚われるのはやめろ。自分を責めたい気持ちはよくわかる。だが、そんなことよりも大事なのは、お前がこれからどうしていくかだ。俺があいつだったなら、こう言うだろう──」

 彼の声には確固たる決意があり、その眼差しはまっすぐに私を見つめていた。

「──『どんなに絶望の淵に追い込まれようとも、顔を上げろ、立ち上がれ、前に進め』とな」

 その言葉が、まるで父さまの声が耳元で囁かれているかのように私の心に響いた。

 ヴィルの声が私の身体を跳ねさせ、その瞬間、心の奥で固まっていた何かが解けるのを感じた。涙が止まり、私の胸に少しずつ希望の光が差し込んでくるのを感じた。

「……私にそんなことができるのかな……」

 私の声は不安に満ちていて、ヴィルはそれを諭すように続けた。

「いいか? 過去に自分を縛り続けていては、いつまでも前には進めない。悲しみも苦しみも乗り越えて、その先の未来を切り開くんだ。お前が自分を許して前に進むことで、あいつの名誉も守られるんだ」

 ヴィルの言葉は、厳しさの中に深い優しさと励ましが込められていた。

「そうすることで、お前自身が生きている事の意味も意義も証明することができる。お前が自分を信じることで、未来に向かうことができるんだ」

 ヴィルの言葉が心に染み渡るにつれて、私の心の奥底で固まっていたものが少しずつ解けていくのを感じた。

 彼の言葉には、私を支え、前に進む勇気を与えてくれる力があった。そうだ、こんな私の姿を見たら、きっと父さまは私を叱るだろう。その期待を裏切らないためにも、私は自分を信じて前に進まなければならない。

「それに、あいつの願いは俺の願いでもある」

 ヴィルの言葉に、私は一瞬驚きの表情を浮かべた。

「えっ?」

 その瞳には優しさと決意が宿り、彼の口元には温かい微笑みが浮かんでいた。

「前へ進む強さを証明しろ。俺はお前を全力で支えるつもりだ。ユベルの代わりとはいわんが、それくらいはさせてくれ」

 彼の言葉は、まるで深い海の底から引き上げられるような、希望の光が差し込む感覚をもたらしてくれた。彼の励ましと支えが、私を停滞の闇から引き出してくれるように感じた。

 そして、ヴィルは新たな問いを投げかけた。

「お前はこれから何がしたい? 何を望む?」

 その問いに対する答えは、心の奥底でしっかりと決まっていた。

「私は母さまを探し出したい。きっと、きっとどこかで生きていて、私のことを待っているはずだから」

 私の声には揺るぎない決意が込められていた。

 ヴィルはその答えに満足そうに頷き、立ち上がりながら私に手を差し出した。その手には彼の全力の意思が込められていることがわかった。

「なら、決まりだな」

 私はその手をしっかりと受け取ることに決めた。ヴィルの手の強い意味を理解し、躊躇せずにその手を取った。

「うん……。私、やれるだけのことはやってみる。どんなに時間がかかっても、絶対に諦めない」

 私の言葉が力強く響き渡ると、ヴィルは私の小さな手をしっかりと握り返してくれた。その温かさが、私の全身に広がっていくのを感じ、心の中で力がみなぎってくるのを感じた。

「よし、それでいい」

 ヴィルの言葉に、私は心の中で小さな決意を固めた。

 父さまも、母さまも、そして私自身も、まだ終わっていない物語の中にいる。これからの道は険しいかもしれないけれど、私は立ち止まらずに進むことを決めた。

 しかし、隠された真実はもっと残酷だ。

 それだけはヴィルにも言えなかった。彼にマウザーグレイルの名を明かさないのもその一つ。だとしても、私は父さまの遺志を継いで、母さまを探さなければならない。下を向いてばかりではいけない。

 一年前、この世界で生きてきた私の中で目覚めた前世の私。この世界に転生した理由と、それがもたらした悲劇の落とし前は、必ずつけなければならない。

 それが私と茉凜がすべきこと……。
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登場人物紹介

ミツル・グロンダイルのキャラクター設定

基本情報年齢: 12歳(外見年齢)


外見: この大陸では珍しい黒髪と薄緑の透き通った瞳。美しい容貌だが、体型は少し少年のようで、まな板の寸胴であることに敏感。自称年齢: 21歳(前世の記憶を持つため)


性格: 冷淡に見えながらも実は直情的で、一人でいることを好む。時折無邪気な一面を見せることがある。前世の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動き、冷静な大人の一面と子供っぽさが共存する複雑なキャラクター。


好物

食事に関しては美味しいものを少しだけなタイプ。剣の中の茉凜がアルコール依存になってしまったため。最近はお酒も嗜む。


社会的関係: 引っ込み思案で人付き合いが苦手なため、孤独を好む。しかし、孤独を埋めるために時折無邪気な一面を見せる。自分の力や能力に対する内なる葛藤と向き合いながら、過去の記憶と現在の状況の狭間で揺れ動く。


ミツル・グロンダイルの物語における役割

憧れの存在: ユベル・グロンダイル(父)の影響を強く受けており、彼の戦闘スタイルや技術に憧れを抱く。父の遺志を継いで魔獣を狩る役割を担う。

遺産と使命: 父が遺した白きマウザーグレイルを持ち、彼の意志を継ぐ重要な役割を果たしている。彼女の能力と背景は、物語の重要な要素となっている。

謎と葛藤: 彼女の能力と前世の記憶には深い謎があり、物語の進行とともにその全容が明かされる可能性がある。彼女の内面的な葛藤や成長は、物語の核心に深く関わっている。


前世の名前: 柚羽 美鶴(ゆずは みつる)

年齢: 不明(死後、弟の弓鶴に憑依しているため、年齢としては弓鶴の年齢に準じる)

性別: 女性(現在は弟の弓鶴に憑依中)

出身地:九州地方某県の山中の柚羽家(深淵の三家の一つ、始まりの回廊の守護者)

職業: 柚羽家の後継者で深淵の始まりの回廊の巫女


 美鶴は深淵の三家の一つである柚羽家の長女であり、始まりの回廊の守護者。柚羽家襲撃事件で両親を失った後、叔父の虎洞寺氏に保護された。その後、両親の死の真相を知り、自ら人身御供になる覚悟を決め、柚羽家の後継者となった。彼女は密かに深淵の根源の再生を図り、解呪に臨んだが、その試みは失敗し、死亡した。


その後

 美鶴はデルワーズの画策により、弟の弓鶴と意識と記憶の全情報を交換させることで、彼に憑依する形で生き延びる。弟を取り戻すために再び解呪に進もうとした際、茉凜と出会う。茉凜が持つ「黒」の力の安全装置としての役割によって、二人は運命共同体となることが決まる。


 自らが女性であることに対する戸惑いと、茉凜に対する淡い感情を抱くようになり、自分が本当は弟ではないことや、茉凜が見ているのは弟であることに苦悩する。


 美鶴は両親の死の真相を知った後、自らが柚羽家の後継者として深淵の根源の再生を図ろうとしたが、その試みが失敗したことに対する責任感を抱えている。


 茉凜の猛烈なアタックに対して、次第に閉じていた心を開き始めると共に、彼女に対して淡い心を抱く。しかし、自分が本来女性であることや、それを知られることを怖れて受け入れることに苦しんでいる。


 美鶴は茉凜と共に深淵の根源の解呪に挑む中で、茉凜の存在が自らにとってどれほど重要であるかを認識し始める。しかし、彼女は自分の感情と状況に苦悩し、特に自分が女性として抱く感情や、茉凜が見ているのが自分ではなく弟であることに対して深い悩みを抱えている。


深淵の黒鶴

 精霊子に対する感受性が極めて高く、世界に漂うすべての精霊子を集積できる。彼女の前世の名前(美鶴)と組み合わせて【黒鶴】と呼ばれる。限定された空間(場裏)を形成し、その中でイメージ通りの現象を具現化。四大元素すべてを制御可能で、並列起動による複合行使も可能。背中に現れる翼は物質的ではなく、彼女の願望を投影したもの。


場裏

 限定された空間を形成し、その中で事象を操作。色で呼称される流儀に基づき、たとえば赤であれば熱の操作に関わり、イメージのままに具現化できる。詠唱や魔道具を必要としない強力な魔術として認識されている。戦闘と


能力の影響

 ミツルの戦闘スタイルは、前世の影響を色濃く受け継いでおり、流動的で柔軟な戦術が特徴。彼女の能力は瞬時に強力な現象を引き起こすことができ、そのため精神的な負荷が非常に大きい。精神崩壊や自我喪失のリスクが伴う。


精神的負荷

 精霊子の収集と能力の使用により、大脳辺縁系に過大な負荷がかかり、精神的な負担が大きい。特に精霊子への感受性が高い彼女は、負荷に耐えきれず暴走する危険がある。

ヴィル・ブルフォード

 ミツルの前にふらりと現れた、ぼさぼさ頭の無精髭の中年剣士。『黒髪のグロンダイル』の噂を聞きつけて訪れたという、彼の真意と思惑は?

 自らを『放浪のしがない剣士』と言う割に、その剣技は一流で、歴戦の強者。『雷光』とあだ名されると対魔獣戦のエキスパートで、その戦いぶりはミツルも舌を巻く。


年齢 48歳

身長 190センチ近い

体格 大柄で強靭

出身地 不明

職業  剣士、冒険者、元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長

髪: ぼさぼさの金髪。長さは無造作に伸びており、戦いの中で乱れたまま放置されている。

顔 無精ひげが顔全体に生えており、荒々しさと共に風格を漂わせている。

武器 中央に深い溝が彫られたブロードソード。鍛造で作られており、適度な粘りを持ち、滅多に折れない。


剣術スタイル

流派 雷光(らいこう)

特徴 巨体とその質量を生かした高速ダッシュ


戦闘スタイル

高速ダッシュ 雷のようなスピードで踏み込み、敵の懐に入り込む

敵の死角利用 相手の身体を死角として利用し、瞬時に繰り出される高速の斬撃で敵を仕留める

左手の傷 突きを繰り出す際に意図的に剣の先に左手を添え、敵の注意を引き付ける。実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、非常に巧妙。猪突猛進型でありながらも、臨機応変に対応できる柔軟さを持つ。これは、変幻自在で『型』のないユベルと毎日修練を積み重ねた結果(苦肉の策)による。


戦闘技術

片手剣術 基本的には片手でブロードソードを操るが、必要に応じて両刀も使うことができる。戦況に応じて剣の使い方を変え、迅速かつ的確に対応。


特殊技

雷光突き 瞬時に高速で踏み込み、突きを繰り出す技

閃光斬り 一瞬の隙を突き、相手の死角から高速で斬撃を繰り出す技


特徴と戦術

巨体と速度を生かして、魔獣の懐に入り込み、致命的な攻撃を繰り出す。視線誘導の技術で、敵の視線を引き付けてから攻撃する。


心理と性格

戦場での冷静な判断力と卓越した技術で、数々の戦場で名を馳せる。敵の動きを見極め、最適な攻撃や防御を選択する。どんな状況でも冷静に対応し、自信を持って戦う。猪突猛進型でありながら、変幻自在の戦術を使いこなす柔軟さを持つ。


元リーディス王国銀翼騎士団右翼副長を務めた経験を持つ。騎士団時代の訓練と経験が、彼の戦術的な判断力と剣術の技術に大いに寄与している。特に、ユベルとの修練で得た経験が、彼の変幻自在な戦術に大きな影響を与えている。


その戦闘スタイル

一九〇センチ近い大柄な体躯を持ちながらも、その強靭な体に似合わぬほどの軽快さを誇る剣士。彼の手に握られているのは、ロングソードよりも短いブロードソードに近いもので、中央には深い溝が彫られている。この剣は鍛造で、適度な粘りを持ち、使い手によっては滅多に折れることがない。


ヴィルの剣術のスタイルは「雷光」と呼ばれ、彼の巨体とその質量を生かした高速ダッシュが特徴。彼は特に大きな魔獣を相手にするのが得意で、雷のようなスピードで踏み込むと、敵の懐に入り込み、相手の身体自体を死角として利用する。瞬時に繰り出される高速の斬撃で、敵を一気に仕留める。


特筆すべきは、彼の左手に傷が絶えないこと。これは、突きを繰り出す際に意図的に剣の先に手を添えて、その手に注意を引き付けるためだ。敵がその手に視線を奪われている間に、実際の攻撃は横や下から繰り出されるため、彼の戦術は非常に巧妙。


ヴィルの剣は基本的に片手で操られることが多いが、必要に応じて双剣で戦うこともできる。その柔軟な使い方と、雷光のような素早さを駆使して、彼は戦場でその名を轟かせた。

茉凜(マリン)のキャラクター設定


基本情報年齢: 17歳

身長: 173センチ

プロポーション:高跳びの選手かファッションモデルのようなスラリとしたかっこいいスタイル。ただし本人は自覚なしで自信がない。 


外見: ミルクティーブラウンの髪、大きな瞳、お日様のような笑顔。純粋で優しい少女の姿が特徴的。


性格: 天真爛漫でポジティブ。どんな困難な状況でも明るさを失わず、死の淵の絶対的不利な状況でも輝く。特に追い込まれるとスイッチが切り替わり、予知視界を用いる能力が発揮される。


背景前世: 元々は私たちの世界に住んでいた人物。異世界に突然放り込まれ、さらに剣の中に転生させられるという過酷な運命を辿る。


役割: ミツルの相棒であり、恋人(?)。彼女の無条件の愛情と楽観的な性格がミツルの心の支えとなっている。過去のトラウマ: 落雷事故によるトラウマがあるが、それを嘆くことなく明るさを保ち続ける。ミツルにとっては大きな支え。


能力と役割能力: マウザーグレイル経由の予知視界。死の淵での絶対的不利な状況でも特に有効で、剣の中にあるこの能力が最大の武器である。


役割: ミツルの『深淵の黒鶴』を制御するための安全装置(セーフティ)として機能。暴走を防ぐ唯一の手段として、ミツルとの接触と精神的な感応が必要。自身の全てを捧げる覚悟を持ち、ミツルを守ることを使命としている。


心情と内面愛情: ミツルに対して無条件の愛情を注いでおり、彼女の存在はミツルにとって欠かせない心の拠り所となっている。愛情が恋であることに気づきながらも、その感情を告白することはできない。


支え: ミツルの冷たい態度や無口さの裏に隠された繊細な心を理解し、彼の孤独や苦しみを誰よりも感じ取っている。彼の心の支えとなることを自分の使命と感じ、彼を守るために自分の全てを捧げる覚悟を持っている。


内面の葛藤: 弓鶴(ミツル)が自分にとって特別でなくなるのではないかという不安を抱えながらも、彼の幸せを最優先に考え、自分の感情を抑え込んでいる。仲直りを図る際には自分を押し殺して彼らの関係を修復しようとするなど、内面的には複雑な感情が渦巻いている。

白きマウザーグレイル

基本情報正式名称: 精霊器接続式対魔族兵装 MW-CSV-DD MAUSER-GRELL(マウザーグレイル)

形状: 純白のロングソード

特徴: 刃に相当する部分がなく、実質的には何物も斬れない

構造と材質材質: 不明。構成素材については詳細が不明だが、非常に高い堅牢さを誇る。

耐久性: どんな魔獣の攻撃にもヒビ一つ入らないほどの堅牢さを持つ。

重量: 見た目よりも軽量で、非力なミツルでも自在に扱える。

機能と特性魔導兵装: 剣の形をとった魔導兵装であり、実際には物理的に斬ることはできない。

潜在能力: 現在のところ、ミツルもその実体と潜在能力については把握していない。

補助機能: ミツルの持つスキル「真凜」が安全装置として補助を行っている。

戦闘における役割安全装置: ミツルが持つ「深淵の黒鶴」の能力を制御するための安全装置として機能する。マウザーグレイルが実際の戦闘では使われないが、その存在がミツルの能力の安定に寄与している。

象徴的な意味: 剣そのものは物理的な攻撃力を持たないが、深い意味や力を秘めている可能性がある。特に、ミツルの精神的、象徴的な支えとしての役割を果たしている。

謎と疑問実体の不明: 現状、剣の具体的な機能やその実体についてはミツル自身も把握していない。剣の持つ潜在的な力や目的については謎に包まれている。発見される

可能性: 今後のストーリー展開で、その真の力や役割が明らかになる可能性がある。

ユベル・グロンダイル

 ミツルの父で、『閃光』の異名を持つ変幻自在の剣術を操る天才。すでに故人である。


ユベル・グロンダイルのキャラクター概要

年齢と外見:

年齢:50代外見:かつて金髪だったが、現在は黒く染めている。無精髭を蓄え、スリムで筋肉質な体型。優雅な立ち姿と流れるような戦闘動作が特徴。


役割と経歴:

元リーディス王国銀翼騎士団右翼リーダーであり、対魔獣戦のエキスパート。リーディス王国の銀翼騎士団に所属し、多くの戦場を経験。特に魔獣戦においてその名を馳せた。


基本戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の極みであり、その動きは流動的でまるで水のように変幻自在。力強さでは他の剣士に劣ることもあるが、素早さと身軽さで魔獣を屠る。ステップワークや変則的な体術を駆使し、敵の動きを予測させない巧妙な戦術を展開。回転しながらの斬撃や舞うような動きで敵の意識を散らし、戦局を有利に進める。


家族との関係:

妻:メイレア(元リーディス王国の第三王女)。非常に深い愛情を持ち、二人の関係はミツルにとって時折恥ずかしくなるほどの愛情表現がなされていた。娘:ミツルにとってユベルは憧れの対象であり、彼の戦闘スタイルや技術に強く影響を受けている。

最後の旅と戦い:

妻メイレアの行方不明後、ユベルは娘ミツルを連れて探索の旅に出る。愛する妻を取り戻すため、家族の絆を守るための決意を持っていた。未知の魔獣との戦いで命を落とし、その犠牲によってミツルは生き延びることができた。

白きマウザーグレイル:

ユベルが妻との絆として持っていた白きマウザーグレイルは、ミツルに託された。この剣はユベルの思いと愛情を象徴し、ミツルにとっては父の遺志を継ぐ重要なアイテム。


お尋ね者:

尊敬を集める存在だったが、妻を誘拐した罪が科せられ、お尋ね者として追われていた。ユベル・グロンダイルの戦闘スタイル


「柔」の戦術:

ユベルの戦闘スタイルは「柔」の戦術を体現し、流動的で変幻自在な動きが特徴。彼の動きは舞踏家のように優雅でありながら、非常に戦術的で緻密。


ステップワークと回転体術:

軽やかなステップワークで敵の攻撃を避け、回転しながらの斬撃で敵を翻弄。体操選手やフィギュアスケーターを彷彿とさせる華麗な動きが特徴。


対魔獣戦の特化:

魔獣の懐に自在に出入りし、相手の身体を盾として利用することで最短距離からの攻撃を実現。風のように迅速で、敵の反応を許さない。

彼の戦闘スタイルを際立たせている。

前世での二人

 それは第二章で語られる。

虎洞寺健

美鶴と弓鶴の叔父で、保護者であり協力者。

能力が実用に耐えない血族が所属する郭外のリーダーで、自身は多数の企業を成功に導いた実業家で資産家。その貢献によって上層部にも大きな発言力を持ち、水面下で二人の活動をサポートする。彼の目的は深淵の呪いからの解放と深淵の解体である。

佐藤さん

 柚羽家のお手伝いさんで、美鶴の理解者。昔からの柚羽家のお手伝いさんで、その家事能力は超人。茉凜の料理の師匠。

真坂明

 15歳の少女で、身長は152センチメートル。黒のショートカットが特徴的で、衣装は、黒のクロップトップと高腰のパンツ、袖にディテールが施されたオープンジャケットで、全体的にクールでスタイリッシュな印象。均整の取れたスタイルも、洗練された雰囲気に一役買っている。

性格は情熱的で、自分が思ったことをはっきりと口にするタイプ。弓鶴の元許嫁であり、真坂家の次期後継者としての重責を担っている。また、「深淵の赤の流儀」の高度な術者でもあり、その実力は並外れている。彼女の存在感は、その内に秘めた強い意志と、家の名に恥じない実力から来ている。

明は破談後も弓鶴を想い続けており、それが彼女の能力の原動力になっている。自身が家の後継者となり、弓鶴を婿として迎えようと決意した結果、兄二人を殺害してしまう。

柚羽 美鶴

 ミツルの前世で転生時二十歳。その過去はダイジェストとして第二章で語られる。ミツルの内向的なところは彼女の成分。

 前世では茉凜に対して次第に恋心を抱いていくが、さまざまな問題が障害となって、素直に気持ちを伝えられずにいた。

 彼女のバルファへの転生がグロンダイル家にもたらした影響が、ミツルが戦い旅する理由。

鳴海沢洸人

深淵の血族、上帳を構成する三家の一つ、鳴海沢の長子。流儀青の強力な使い手。弓鶴の確保のために遣わされるが敗退し、その後弓鶴と茉凜の監視役として転校してくる。

数年前に暗殺に失敗し、その後始末として対象を家族諸共惨殺したことがきっかけで、殺せない欠陥品になってしまった。強力な血を残すために家に留め置かれ、鬱々とした日々を送っていた彼を変えたのは、深淵の始まりの回廊の巫女からの言葉だった。 

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