4-12  結末の知らせ(カトリック仙人天佑 視点)

文字数 1,046文字

「これはこれは、老君にしてはご機嫌のよろしく。お久しぶりでございます、さきほどは女武者からの額への鉄輪の一撃、悶絶必死の衝撃でありました」


 いままでの激闘はどこのいったのか、孫悟空は老君の声の方へと礼をとる。

「大昔、お前が斉天大聖を名乗り天界で大暴れした時にも、その頭蓋にワシがぶち当てたやつじゃ。効果も抜群、悟空、ほどなくお前はこの巨大な猿体からも痕跡を残さずして消えてしまうじゃろう」

「私は消えてしまう運命なわけですね……、罰ですか、これは」

「しらんがな、それこそ天佑の言うところの、ワシらの住んどる天界を遙か下見おろしているという、キリスト教の最高存在なん者がいるとしたら、この会話さえも運命の一場面としてつくりあげられたものかもしれないがな」

 最高存在には三つのペルソナがありまして、と解説したくなってくるカトリック仙人である私こと天佑であったが、しばらくは老君に任そうと思えた。いまのうちだ。ヤマタノオロチさんたちの傷を治療できるのであれば癒しておこう。老君と孫悟空の会話に片方の耳を傾けたまま、大蛇への治療に取りかかる。

「老君様、私は天竺で仏教が一度滅びたことが耐え難い。その心情は理解してもらいますか」

「それに対しての心持ちは十分すぎるほどに通じるわい。世界大戦後の中華世界で道教がどのように扱われたかに関しては、いくらでもクダを巻くことができそうじゃ」

「そうですか、そうですよね、人の生活によりそって魂の平安を願う教えがあれば、守るべきだ。布教のない宗教なんてものはないが、無理のない形であれば、旧来のその土地の教えと混ざり合う、譲れぬところと譲れるところを吟味し、平和にやっていくのに越したことはない」

「まぁそこらへんのところは、人並みに理念をもちいたとしても、似たよで曖昧になっていくかもな、人によっては軟弱にとられかねない、やわらかな方向にもっていかせるしかないから、気にくわない者にはそれとて耐え難いかもな、まぁ、そういうのはとりあえずおいといて」

「……おいといて?」

「悟空や、さっきから おぬしの言葉、まじりけなしの斉天大聖 孫悟空とは口調が違うのに気づいてはいるかい?。天界で暴れてた頃には考えられぬ礼儀正しさ、無礼者であることを褒めるわけではないが、かの石猿の無法には驕慢傲慢ではあっても、はちきれんばかりの若さに満ちていた。老いるはずのない幻像が老いるとは、まぁなさけない」

「ということは、もう『この私』は本来の姿から外れてしまっている、そういうわけですか」
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登場人物紹介

柳生烏丸(やぎゅう からすまる)


ヒロイン


柳生剣士でありながら女仙


キリスト教 正教会信徒


詳細は後日

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