2-14 うん、偏見は良くない。でもムカつく【てんゆう、戦うかも(精神で)】

文字数 1,239文字

 信頼して良い者かどうか、我らカトリック仙人一行、測られている最中のようで。

「何段階くらい突破いたしましたら、主イエス・キリストの御心にその身を預けてもらえますか」

「元々は遠い土地からの教えなので『様々な全てを納得できるまで』とは言いません。我我(われわれ)らとしても、このまま永劫に倒されるべき怪物としての存在に甘んじたくはないのさ。孫悟空討伐、成し得たら新たな伝説としての土台が形作られる、こちらとしても好機であることは間違いない、が、それでもキリスト教のにおいてどうしても気になることが幾つかある」

「それはいかなる」

「かの母に執着した英雄スサノオに退治されたがゆえかもしれないのだけれど、聖母マリア崇拝のことがやたらと気になりまして」

『おっと、これは痛いところをつく』という内心を抑えつつ、カトリック公式の見解をまずは伝える。

「違います、マリア様のことは『崇敬』しているのです。決して我らは『崇拝』しているわけではない」

 『父のような主』『イエス・キリスト』『聖霊』の三つのペルソナを持てど、その唯一のみが崇拝対象である。その教義を三位一体という。宗派が数あれど、その要件を満たさねばキリスト教とは認めがたい。

「『崇拝じゃないよ、崇敬だよ』って、言い訳とは決めつけないけど、そりゃあ苦しくないかい。特にカトリック旧教は聖母にこだわりすぎると、新教プロテスタントの連中に批判されてるぐらいだろう」

 極東の妖魔(デーモン)にしては我らの信仰について詳しいな、まぁ宗教全般に詳しい者にしたら常識の範囲か。もちろん聖母マリアには唯一絶対神としての属性はないので、崇拝対象とはいえない。なので我らカトリック、聖母への祈りは『崇敬』として、信仰対象への『崇拝』とは厳密に区別している。……とはいえ

「まぁぶっちゃけた話をしますと欧米社会というのは元々、日本よりずっと父権的な側面が強いところがありまして、『崇拝』だと誤解されるほどの聖母への『崇敬』をもってして、女性性の価値を社会全体に認めさせる必要があったというか」
 
「どちらにせよ、『母なる者』にとり憑かれてはいやしないか、そして君がその宗派を選んだのは、自らの母への憧憬なり執着が影響してはいないかい」

「なにを言うかと思えば」

『あ、これ精神攻撃くるな』と相手の出方が理解できたので、心のうちで身構える。

「君の母親は牛魔王の(めかけ)の玉面公主、悲惨な死に方したよね。豚の妖怪に殴り殺された。しかもそいつは仏弟子 八戒ときた」

 ふぅん、そういう攻め方をしてくるか、動揺などしてやるものかよ。

「君がキリスト教を選んだのは、そういうところが原因なんじゃないのかなぁって」

 これはある種の生命に対する偏見、もしくは我らが聖典旧約聖書からの悪の印象なのだろうか。それでも、こちらを伺い舌舐めずりするような表情を見ながら思ってしまったのだ。『やはり(へび)だな』と。
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登場人物紹介

柳生烏丸(やぎゅう からすまる)


ヒロイン


柳生剣士でありながら女仙


キリスト教 正教会信徒


詳細は後日

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