2-1 えーと、どこで蛇に会えるかな?【てんゆう、いずれ辿り着く】
文字数 1,137文字
出雲駅の近く、河原での決闘じみた争い。如意棒術と日本刀術とのぶつかり合い。
あの剣撃おいて私は……正直、狂気じみたナニカを感じてとってしまったのだ。
冷静なる恐慌ともいえる、孫行者と分身との仙縁を斬り刻みたる、あの猛攻。
正気であるのは確かだが、どこかブレている武娘仙(彼女による自称)
そのような戦慄のともなった動きと表情であったことは間違いなくて……。
柳生烏丸。もはや愛弟子といって良いほどの、距離を縮めたくてしかたない小柄な美女。
その人物の……一人、刀を振り続ける姿に観えた滑稽なほどに深刻な悲しみ。
この女性は孤独なのだ。まっとうな精神では堪え難いほどのソレに、心法を鍛えし絶妙なる剣士が気づきもしないのが、寂寥満ちるほどに哀れに思えた。
いまこの場は闇ではなく、朧げに光るコケに囲まれている。眼力を鍛えた我ら、周りを見通すにはそれで十分。そんな状況下、私たちは参道じみた地下の細長い洞窟、暗くてジメジメしている場所を歩き続けていた。
道すがらに聞かせてもらった彼女の人生の概略は、ずいぶんと端折られたものであっても、自覚のない人恋しさが匂い立つような代物であって、こちらの目頭が少し熱くなったのは内緒だ。
この歩みを始める直前に訪れた場所。
ヤマタノオロチの八頭と一尾の先を祀っているというのが九谷神社であった。
どことなく戦場の陣中を思わせるような、最近の言葉ではパワースポット(どの文化圏でも安易に外来語に頼るべきではないが)とでも言えば良いのか、いずれにせよ極上の霊地。ここら随一であろう神殿じみた古代よりの施設、その裏にある大きな山、そこには流星が突き刺さって穿たれた痕のような洞窟があり、私たちはソレを辿るように、ひたすらに地下深くへと歩みを進めつづけている。
これから我らは封じられている大蛇怪 ヤマタノオロチを、キリスト教へと改心させ、その助力を請う。教会やモスクを破壊するという罪を侵してまわっている、道を踏み外せし斉天大聖 孫悟空を、これなるオロチ荒神をもって打倒する心積りであるのだ。
「烏丸さん。確認も兼ねて、これから私たちが相対する存在について語りませんか?」
前をズンズンと進む彼女が振り向く、まごうことなき犬っぽさ、それでいてどことなく猫らしい、そんな可愛い表情を見せてくれる、……ああ愛おしいなぁ。
「ヤマタノオロチ……八岐大蛇 。ええ、その話題を楽しみながら、我らが ∵ 使命 を果たせるように心身を整えていきましょう!。草薙の剣、別名 天叢雲剣という伝説の宝物 こそが、そもそもこの日の本における皇室において……」
あの剣撃おいて私は……正直、狂気じみたナニカを感じてとってしまったのだ。
冷静なる恐慌ともいえる、孫行者と分身との仙縁を斬り刻みたる、あの猛攻。
正気であるのは確かだが、どこかブレている武娘仙(彼女による自称)
そのような戦慄のともなった動きと表情であったことは間違いなくて……。
柳生烏丸。もはや愛弟子といって良いほどの、距離を縮めたくてしかたない小柄な美女。
その人物の……一人、刀を振り続ける姿に観えた滑稽なほどに深刻な悲しみ。
この女性は孤独なのだ。まっとうな精神では堪え難いほどのソレに、心法を鍛えし絶妙なる剣士が気づきもしないのが、寂寥満ちるほどに哀れに思えた。
いまこの場は闇ではなく、朧げに光るコケに囲まれている。眼力を鍛えた我ら、周りを見通すにはそれで十分。そんな状況下、私たちは参道じみた地下の細長い洞窟、暗くてジメジメしている場所を歩き続けていた。
道すがらに聞かせてもらった彼女の人生の概略は、ずいぶんと端折られたものであっても、自覚のない人恋しさが匂い立つような代物であって、こちらの目頭が少し熱くなったのは内緒だ。
この歩みを始める直前に訪れた場所。
ヤマタノオロチの八頭と一尾の先を祀っているというのが九谷神社であった。
どことなく戦場の陣中を思わせるような、最近の言葉ではパワースポット(どの文化圏でも安易に外来語に頼るべきではないが)とでも言えば良いのか、いずれにせよ極上の霊地。ここら随一であろう神殿じみた古代よりの施設、その裏にある大きな山、そこには流星が突き刺さって穿たれた痕のような洞窟があり、私たちはソレを辿るように、ひたすらに地下深くへと歩みを進めつづけている。
これから我らは封じられている
「烏丸さん。確認も兼ねて、これから私たちが相対する存在について語りませんか?」
前をズンズンと進む彼女が振り向く、まごうことなき犬っぽさ、それでいてどことなく猫らしい、そんな可愛い表情を見せてくれる、……ああ愛おしいなぁ。
「ヤマタノオロチ……