3-3「宗教と国」考(教会にて③)【柳生烏丸 視点】
文字数 1,162文字
「というと……」
信仰の見解に対する師匠、その話の続きを促してみる。
「まぁ、思い上がりなわけですよね。『この腐敗した世を私が正す』といった具合の。偽預言者、もっといってしまえば
「しかし世直しをしたい、という気持ちは尊きものでもあるはずで、そう断じてしまうのも、いささか夢がないのでは……」
『夢』というのも違う気がするが、現状に甘んじるだけというのも『怠惰』という気もするが。
「地に足がついていればね。さすれば良き結果にも結びつきやすいでしょうが。そして寛容の徳を忘れなければ。ただでさえ人は独善に陥りやすいのに『私は世のために戦っている正義である』なんて自覚を持ってしまえば、その世直し行動に少し邪魔少し合わないだけで、その対象を『敵であり悪である』と決めつけ裁きたがる怪物のような精神に堕ちてしまいやすくなる」
「話を戻します。そのような事態がこの土地で連鎖的に起こってしまった。つまりはそういう見解でしょうか」
「そうですね、この内乱に関すれば独裁者もソレだし、反乱軍もソレだし、立国しようとしているカルト団体もソレでありそれ以上に彼らは女性に対する暴力が止まらないアレな感じだし。独裁者援助外国も反乱軍支援国家もソレかもしれません。そもそも彼らは自国への利益があってこそ」
「それはまぁ、……『国』ですから」
自国の利益を第一にするだけでも、政治家としては上等の類いではあるだろう。
「そうですね。外国が力を貸すというのは、大あれ小あれその異国が確保する利権があってこそですよ。有史以来そこまでお人好しの国家などないはずですし、そんな国がもしあったとしても……それこそ独善の匂いが香り立つというか、あんまり褒められるようなものでもないと思いますよ、褒められるためにする、というのもどこか違う気がしますし……まぁ、どちらにせよ、ただ日常を送っていた庶民にとってはいい迷惑。ロクデモナイことこの上なしかも」
「けっきょく、それほどの罪過もなくして苦しむのは、弱き民草というわけですか」
悲しいなぁ。
「人であるかぎり原罪からは逃れられないとしても、戦乱の苦しみは度を超えていますからね。そしてこの地の人々を更なる苦しみを味あわせてる大猿王 聖天大聖 孫悟空を、私たちがなんとかしなければならない。とにかく独裁者である大統領側の誰か、もしかしたら大統領本人に変幻しているところまでは突き止めました。では場所を変えて、これからの予定を考えてみましょうか」