ドラマの構成はポエムとは違う

文字数 457文字

なんで起承転結じゃダメなんですか。
 納得しないで不貞腐れてみせる僕の顔なんか見もしないで、かすみセンパイは制服の小さな背中を向けた。まだ衣替えじゃないので、紺のブレザーだ。早くブラウスになってほしい。
劇は事件で展開する。
 そう言いながら、凄まじい勢いで黒板にカッカッと字を書き並べる。その端っこまで書いて振り向いた。ぜーはー言いながら、チョークで黒板を叩く。
 カン、という音で、そんなセンパイに見とれていた僕は我に返った。
……え、あ、はい!
起承転結ってのは漢詩の構成。

 かすみセンパイが窓から離れると、そこには、大きく、こう書かれていた。


  起 大阪本町 糸屋の娘
  承 姉は十六 妹は十四
  転 諸国諸大名は弓矢で殺す
  結 糸屋の娘は目で殺す

なんですかコレは?
 僕の素朴な疑問を、かすみセンパイの命令が低い声で遮った。
立て。声出して読む!
なんで……。
読め!
おおさか……ほんまち……。
 有無を言わさない叱咤で質問を封じられた僕は、仕方なくぼぞぼそと読んでみた。でも、かすみセンパイは承知しない。
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登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

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