そして、夏がやってくる

文字数 338文字

 じゃ、配役は以上で。キャストは10分後に稽古場へ。スタッフは外で装置!
真崎、ナグリ(金槌)とガチ(釘)持ってこい!
はい!
……おい、真崎! 真崎……周作くん。
……はい?
 配役が終わった後、かすみセンパイは僕のそばにそっと近寄って囁いてくれたのだ。
 あの晩、微かに甘い吐息を漏らしていた唇で……。
結構、紳士だね。

 あの一言だけでも、僕は充分報われたと思っている。
 わかってます、センパイ。部員としても男としても、僕は全然修行が足りません。
 だいたい、ウチは部内恋愛禁止です。


 だけど、いつか。
 だから僕は今日も、夏に向かう日射しの中で大道具のハンマーを振るう。
 眩しさに顔を上げると、真っ青な空から桜の枝をすり抜けてきた、無数の光条(ビーム)が僕の顔に向けて降り注いでくる……。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色