そして、夏がやってくる
文字数 338文字
配役が終わった後、かすみセンパイは僕のそばにそっと近寄って囁いてくれたのだ。
あの晩、微かに甘い吐息を漏らしていた唇で……。
あの晩、微かに甘い吐息を漏らしていた唇で……。
あの一言だけでも、僕は充分報われたと思っている。
わかってます、センパイ。部員としても男としても、僕は全然修行が足りません。
だいたい、ウチは部内恋愛禁止です。
だけど、いつか。
だから僕は今日も、夏に向かう日射しの中で大道具のハンマーを振るう。
眩しさに顔を上げると、真っ青な空から桜の枝をすり抜けてきた、無数の光条(ビーム)が僕の顔に向けて降り注いでくる……。