ベッドの上のセンパイ

文字数 499文字

……センパイ?
 2つ目のシーンを書き終わって、僕は背後にセンパイの気配がないのに気がついた。昼過ぎまでセンパイは、一行書くごとに小うるさく書き直しを命じていた。その声がいつの間にか聞こえなくなっていた。道理で作業が進んだわけである。
 だが、いくら書けても、かすみセンパイのOKが出なければ意味がない。
「センパイ……あの……」
 キーを叩きながら声をかけると、低い叱咤の声が飛ぶ。
真崎!
 思わず身体をすくめたが、その声は僕の背後からのものではなかった。
 ちらりと振り向こうとすると、また叱られた。
集中しろ。
はい。

 やっぱり監視されてた……。

 再びパソコンに向かう。
 そりゃ、センパイだって一休みしたいだろうなと思いながらキーを叩き続ける。
 あとでまとめて書き直す羽目になるかもしれないが。
 でも、何でそんな効率の悪い事を……? 最初に全部書いてきたときは、あんなに怒ったのに……。

言うことは全部言ったからね。同じ間違いをしないように。アタシは寝る。

 え……?

 センパイの眠たげな声に誘われて、つい、そっちを見てしまった。

見るな!
 その一喝は、とてもベッドの上で睡魔に襲われている人の声とは思えなかった。
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登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

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