最後の戦い
文字数 576文字
何時には帰る、と返すのがオフクロとの約束なのだが、今回はそれをしなかった。後で絶対に追及されるが、「忘れていた」とシラを切り通すしかない。
できるわけがないのだ。いつ完成するか分からないし、台本が完成しないと帰れないし、このまま帰ったら完成できない。
できるわけがないのだ。いつ完成するか分からないし、台本が完成しないと帰れないし、このまま帰ったら完成できない。
両の拳をぎゅっと握って立ち上がった、その時だった。
やった! 起きてくれる!
そう思って振り向くと、事態は更に悪くなっていた。
そう思って振り向くと、事態は更に悪くなっていた。
……センパイが苦しげに喘いでいた。
悪い夢でも見ているのだろうか、頭をじたばたと左右に振る。その度に、艶やかな黒髪が白いシーツの上に乱れ、こぼれた。
僕は息をおおきく吸い込んだ。かすみセンパイの部屋を満たす甘い空気がすっと肺を満たす。
悪い夢でも見ているのだろうか、頭をじたばたと左右に振る。その度に、艶やかな黒髪が白いシーツの上に乱れ、こぼれた。
僕は息をおおきく吸い込んだ。かすみセンパイの部屋を満たす甘い空気がすっと肺を満たす。
理性! 僕はこの二文字を眼前にイメージした。
部活で習った鍛錬法だ。実際に見えるわけではない。だが、もしかしたらないかもしれないものが、そこに確かな物体として存在する、と僕は信じることができた。
部活で習った鍛錬法だ。実際に見えるわけではない。だが、もしかしたらないかもしれないものが、そこに確かな物体として存在する、と僕は信じることができた。
僕はベッドに歩み寄った。
かすみセンパイは四肢を大きく広げ、シーツに横たわっている。黒髪が放射状に広がっている。
素肌を剥き出しにしたしなやかな腕は、手を伸ばしたすぐそこにある。