衝撃の一言
文字数 723文字
複雑なジグソーパズルの最後のピースがはまって、僕もセンパイをからかうくらいの余裕を感じていた。
言い負かされて、センパイは恥ずかしそうにうつむいた。
やってきた電車に乗り込むと、結構混んでいた。並んで吊革につかまると、至近距離でかすみセンパイは、すうっと息を吸い込んで言った。
やっぱり、うつむいたままだった。顔が赤かった。冷房が利いているのに。
センパイはしばらく黙ったままだった。僕も黙って次の言葉を待った。
無言で電車に揺られ続けているうちに、いくつもの駅が僕たちの前を通り過ぎた。その度に、目の前に座る乗客は入れ替わった。
センパイはしばらく黙ったままだった。僕も黙って次の言葉を待った。
無言で電車に揺られ続けているうちに、いくつもの駅が僕たちの前を通り過ぎた。その度に、目の前に座る乗客は入れ替わった。
やがて、かすみセンパイは思い切ったように口を開いた。ささやき声が、ためらいがちに聞こえる。
僕の心臓がドキっと鳴った。かすみセンパイの口から、まさかそんなベタなお誘いの言葉が……。え? これ、ひょっとすると? ひょっとすると?
僕をキッと睨む目つきに、悩ましい不届きな妄想は粉砕された。
そりゃ、そうだよな……。
何でも両親共に観劇が趣味で、かなり遠方のマイナー劇団の公演まで泊りがけで見に行くことがあるという。
小学生までは一緒に旅行していたセンパイも、中学生の頃は吹奏楽部に入って練習に忙しくなり、一緒に行くことはなくなった。
留守を守るうちに、たいていの家事はできるようになったのだという。
それでも、このとき僕は、「もしかして手料理ぐらいご馳走になれるかな」などという、様々な意味で「甘い」期待をしていたのだった。