ジグソーパズルのあとのご褒美

文字数 375文字

 センパイは舞台の端にナナメ線を引いて、「花道」と書いた。
第5シーンでは、上手花道に観、下手花道に悠里が立つ。そこで悠里と観が花道から去る。
 引き割り幕の奥に、再びおおきなマルが描かれた。
またですか?
 そうは言ったけど、僕のアイデアを形にしてステージに立ち上げていくセンパイに、実はドキドキしていた。そりゃ、センパイは可愛いけど、そういうのとは何か違う昂奮があった。
第5シーン終わったら、残骸の中で締めのナレーション。最後のシーンで引き割り幕が開くと、そこには流された廃屋の残骸。その中に観が立っている。
 かすみセンパイは引き割り幕の奥から、花道へ矢印を引いた。
あ……センパイ。
ここで最初のシーンに戻るの! 話は最後まで……。

 ムッとしてみせる顔は、ちょっと笑っていた。どこへ行くのかさっぱりだった演出プランがあっさりまとまって、ほっとしたんだろう。

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登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

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