思わぬアクシデント

文字数 428文字

あ……。

 連休3日目の朝、僕たちは学校正門の前で呆然と立ち尽くしていた。
 学校の門には、張り紙がしてあった。
「上下水道の緊急点検につき、全館閉館とします」

 このあいだの水道騒ぎは、それだったらしい。
 体育会の部員たちがぞろぞろと帰っていく。最後に僕たちだけが取り残された。

ど~する?
市の図書館とか……。
僕の思いつきを、センパイは力ない声で却下した。
私語厳禁。打ち合わせできないでしょ……。
 行き場所はなかった。かすみセンパイの了解なしに先を書くわけにはいかない。
歩きながら考えよ。帰る方向一緒じゃない?
 仕方ない、というニュアンスたっぷりの深い溜息が、唯一の解決策だった。僕たちは、とぼとぼと帰途についた。
センパイ、帰りの駅は?
 聞いてみたら、僕の乗り換え駅だった。とりあえず、最終打ち合わせはなんとかなりそうだ。
 学校最寄りの駅までは、歩いて10分。好天に恵まれたのはいいが、衣替え前の冬服では結構暑い。
 歩きながら、かすみセンパイはふうふう言っていた。
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登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

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