最大の救いにして最大の敵
文字数 538文字
僕の伸ばした手は空を切った。センパイの手がするっと下に動いたからである。
その時、携帯が再び鳴った。
両親にそんな暴言など吐いたことなどないが、本当に電話に出ていたらそう言っていたろう。
携帯を取ろうとしていた僕の手は、止まっていた。
携帯を取ろうとしていた僕の手は、止まっていた。
かすみセンパイの手が、タンクトップの裾にかかっていた。
もがいたせいか、体が火照っているのだろう。よほど暑いのか、その手はじりじりとタンクトップをたくし上げていた。
もがいたせいか、体が火照っているのだろう。よほど暑いのか、その手はじりじりとタンクトップをたくし上げていた。
見てはいけない。だが、体が言うことをきかない。
だが、頭の片隅で理性がそう叫んだ瞬間、何事もなかったかのように携帯電話の電源は手の中で切られていた。
センパイの様子をうかがう。
センパイの様子をうかがう。
まだ、眼を覚ます気配はない……。
そのとき、パソコンのハードが仕事を急かすようにカカカと鳴った。
ぶんぶんと頭を振ると、再びセンパイの手はベッドの下へと垂れ下がり、タンクトップは素肌を晒す危機を免れた。