最初のダメ出し

文字数 414文字

(……でも、ここまでやったんだから!)

(……きっと努力ぐらいは、かすみセンパイだって!)

 認めてくれるに違いない、そう期待した僕はやっぱり甘かった。
書き直し。
 放課後の選択授業教室で、センパイはあの、上から目線でそう宣告した。
 僕が眠い目をこすりこすり、胸を張って提出した台本。
 それは今、背中を丸めて机に向かう僕の目の前にある。
 表紙におおきなバッテンを打たれて。
そんな、徹夜したのに……。
 ムダだと知りつつ、僕は抗議した。もちろん、かすみセンパイは聞いちゃいない。それどころか、怒鳴りつけられた。
誰が書いていいって言った!
あう……。
 徹夜からほぼ半日経った頭が、くわんくわんと揺れた。割れ鐘をかぶせられて横っ面を殴られたみたいだった。
 その頭に、センパイの説教が怒涛となって逆巻く。
 僕がせっかく書いた台本は丸められ、講釈師の扇子よろしくすぱんすぱんと机を叩いていた。
訳も分からずにいきなり台本書くと、こういう目にあうのよ。
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登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

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