センパイに逃げ道ふさがれた
文字数 572文字
最近知ったのだが、ここの演劇部で台本を書くということには、たいへんな覚悟がいるらしい。
なにしろ、担当者は台本を書いてくるそばから、完成まで部員全員の罵詈雑言を浴びせられるというのである。
大会を勝ちあがるためには、それくらいしなければならないのだろう。
そう考えると、誰も名乗り出なかったのも無理はない。
早く帰ってアニメ見たいばっかりに何も考えず手を挙げた僕がバカだったのだ。
オヤジから聞いた処世術の使い方を完全に間違えた。
「人がやらないことはサッサと引き受けて、会議を回せ」……。
それは、自分ができる仕事に限られるってことだ。
それだ。
フォローの一言にちょっと反省したんだけど、それは僕の判断の甘さについてであって、責任の問題じゃない。
その責任は、僕には重過ぎる。だが、僕はその責任問題を解決する方法を一つだけ準備してきていた。
思い切って、断ってしまうのだ。
思い切って、断ってしまうのだ。
口を開きかけたとき、かすみセンパイが僕の眉間に人差し指を突きつけた。
その気迫には、思わず息を呑んだ。