まずは冒頭のツカミ

文字数 533文字

それから毎日、観は悠里を見かけたけど、そんなナンパなんかできるわけがない。それとなく校内を探してみたけど、いなかった。
 廃屋の中に、悠里の姿が現れる。家の奥の扉から、出たり入ったり。

 ある日の夕暮れ時のことだった。僕は帰り道で、彼女を見かけた。尾行とかそういうんじゃないけど、つい、後を追いかけた。でも、気が付いてみると、もういない。

 次の日も、次の日も、日が沈む頃に彼女を見かけた。その度に、何度となく後を追いかけてみて、見失う。

 そんなことを繰り返しているうちに、僕はとうとう、山の中の崖っぷちに立つ廃屋で彼女を発見した……。

誰?
いや、何でも……。
こっちへ来て。あなたは誰? どうしてここにいるの?
 観を廃屋に引きずり込んだ悠里は、事情を洗いざらい吐かせる……。
本当です、もう、何にも隠してません、ごめんなさい、帰ります!
あなた以外にもう1人、私に近づくものがいたら、私は壊れてしまう。だから、私のことは誰にも言わないで。
 動かなくなった悠里を残して、観の語りが始まる。
 悠里は、はるか未来から過去の風俗調査を目的として送り込まれたアンドロイドでした。対人コミュニケーションが取れる最低限の人工知能しか搭載されていないので、関われる人間は1人が限界なのです……。
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登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

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