誰もが生きて語り出す

文字数 499文字

 都築あきらが、夕方になると姿を消す観をためらいがちに問い詰める。
最近、見ないんだけど、夕方。ねえ、何してんの? いっつも。
いや、別にいいだろ、出歩かなくたって。
いっつもさ、どっか行ってるじゃん。
 そこで小菅総一郎が茶々を入れるのをいいことに、観は話をそらそうと無駄な努力をする。
あきら見てんじゃん、夕方出ていくの。
そういう意味で聞いてんじゃないんだってば!
うっわー、バレた、恥ずかし~っ。
な、男には知られたくない秘密が……。
何よそれ、いやらしい!
だから悪い、小菅、これ以上は……。
いや、正直に言え、そういう本を隣町まで歩いて買いに行ってますって。
山越えて?
尾行られてんじゃん、観。
え……おい、小菅! 墓穴掘ってんだろ! フォローになってないし!
ダメだ観、もうごまかしきれん、諦めろ! あきらも頭冷やせ、こいつにはもう夜中に逢引する彼女がいる!
いや逢引って何だよ、いつの人間だよお前、っていうか彼女じゃないし!
何よ、不潔フケツ不潔! 観のバカ! 変態! 大っ嫌い!
 泣きながら教室を出て行くあきらを観と小菅が止めようとする。ムキになって騒ぐあきらの前に担任が出てきて、騒ぎが大きくなる。暗転……。
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登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

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