その12時間前

文字数 445文字

 結局、何箇所か加筆訂正するという条件付で台本は通った。
 その日のうちに配役も終わり、僕は大道具係の末端に戻った。
 大道具の仕事は、夜遅くなるものである。日が暮れても、しばらくは明かりのあるところに舞台装置を移して作業をする。一日でも早く完成させるためだ。
 今までは、日が暮れる前に帰っていた。だが、連休明けてからの僕は一味違う。
 実は、その朝までが大変だったのだ。
ただいま……いや、今までちょっと。
周作! 今までどこほっつき歩いてたの不良みたいに! 
……誰が不良だよ、自分の息子捕まえて。
今、夜中の何時だと思ってるの! 寝ないで待ってたんだからね!
うるさい、僕の人生だ口出しするな、何にもなかったよ、ちっとは信用しろ!
 近所迷惑も構わず、偉そうなタンカを切ってフテ寝して、次の朝は遅刻寸前の状態で学校へスベリ込んだ。
 因みに、警察に電話するだの何だの大騒ぎしたのを抑えたのはオヤジなんだそうだ。この件で、僕はオヤジを結構見直した。
 ところで、そもそも何で僕が午前様になったのかというと……
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登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

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