センパイと過ごす夢の……

文字数 414文字

 窓の外で、桜の木がざあっと風に揺れる音がした。先輩の身体に映る光と影もきらきらと騒いだ。
大会出る以上、ウチにはウチの伝統と面子があるのよ。台本の質は落とせない。アンタに書かせると言った以上、最高のものに仕上げる義務がアタシにはある。
 分かりました。僕は何の予定もありません。
 大きく頷いて言ったけど、本当にないのだった。かと言って、家にも居たくなかった。あのオフクロや、ゴロゴロしている頼りないオヤジと一緒にいたくなかった。だからと言って出かければ、オフクロがうるさい。僕にとっては願ってもないことだった。
 そんなわけで、僕は一も二もなく了解した。
 かすみセンパイの顔が喜びに輝いた。窓の外で、また初夏の風がどっと吹いた。
 ありがとう……。

 僕の予想では、その一言がセンパイの口から出るはずだった。いや、僕の妄想の中では、かすみセンパイは感動で僕にしがみつきさえしていたのだ。
 だが、それはあくまでも予想と妄想に過ぎなかった。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色