アリストテレスと黄門さま
文字数 703文字
言ってる本人は大真面目だが、理屈はムチャクチャだった。そんな大昔の人に僕の台本の書き方を指図されたくない。
僕は嫌味たっぷりに質問した。そのくせ、また怒られるんじゃないかという気はしていたのである。だが、かすみセンパイは諭すように説明した。
かすみセンパイは頼山陽の起承転結を黒板消しで一気に消した。
代わりに、黒板にゆっくりと「水戸黄門」と書いて解説する。
はじめ……黄門様がやってきた土地についての情報。
なか……事件が起こる。
おわり……印籠が出て解決。
例がベタすぎて反論の余地がない。
ようやく負けを認めたのに、センパイの一喝が飛んだ。
訳がわからないできょとんとしていると、かすみセンパイは腕組みをして僕を睨みつけた。
僕は指を折って数えた。
連休まであと4日しかない。宿題が出る連休に、台本書く余裕があるワケがない。最終日に徹夜は絶対イヤだった。
そんな泣き言は許さないとばかりに、かすみセンパイはつかつかと僕に歩み寄る。
掌で、机をバンと叩いた。
どっちもイヤだったけど、選択の余地はなかった。