最初の期待はあっさりと……。

文字数 546文字

そういうわけです。すみませんでした。
 以上の言い訳を、僕はパソコンを打ちながら述べ立てた。傍目から見れば横着な態度だが、そのくらい時間が惜しかったのである。
 考えてみればセンパイが僕の自宅に電話してこなかったのは幸運だったが、その理由を尋ねる勇気はなかった。
 僕が電話をかけてくるのを、この部屋でじりじり待っている先輩の姿……
 想像するだけで背筋が凍った。
 それでも怖いもの見たさで、今のセンパイの顔色を伺おうと振り向く。
お茶なんか出さないからね。昼はカップ麺もって来てやるから。夕方までひたすら書き続けること。いい?
 タンクトップ姿のセンパイが、不機嫌全開で僕を見下ろしていた。
はい……。
 そうつぶやきはしたけれど、なんだかものすご~く損をしたような気分になっていた。
 それでも僕なりに、気遣って聞いてみる。
センパイは?
 かすみセンパイもカップ麺では済まない、と思ったのだ。ところが、センパイは悪戯っぽくニヤっと笑った。
自分で作って食べる。
はいはいそ~ですか。気を遣った僕がバカでした。
アタシの手料理でも食べられると思った?
 ちょっとだけ期待してました……
 うなだれる僕にセンパイは人差し指を突きつける。
待ちぼうけの罰。
 やっぱり損したな、僕。
 それでも覚悟を決めてキーボードを叩き始める。
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登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

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