一気呵成
文字数 1,028文字
日が陰ってきたのを感じて、僕はパソコンを打つ手を止めた。3つ目のシーンも書き終わっていた。
だが、まだシーンは3つ残っている。
だが、まだシーンは3つ残っている。
第4シーンだ。大雨の中で観と、彼を連れ戻そうとするその他の登場人物が対峙する。豪雨に流される廃屋。地すべりから観を助ける周囲の人々。観は、両親や友人、先生が自分を心配しているのを知る。
1袖のSS(ステージサイドスポット)は生明かり(カラーフィルターを使わない白色校)を観に当てる。
2袖のには深い青色が入っていて、崖崩れのシーンでは扉ごと濁流に呑まれかかった観を照らし出す仕掛けになっている。
第5シーンだ。
それでも観は皆を振り切って、流された廃屋を川沿いに追う。上手と下手の花道に分かれて、互いの思いを語り合う観と悠里。悠里は濁流に沈む。
このシーンでは、下手花道にぼんやりと現れた悠里は、上がり框沿いに上手花道へと駆ける観を見つめながら、セリフと共にゆっくりと退場していくわけである。
観の叫びも空しく、悠里が濁流に沈むと、エンディングとなる第6シーンがやってくる。
引き割り幕が開くと、そこには廃屋の残骸が無残に横たわっている。悠里を探しにやってきた観は、トタン屋根を引き剥がしにかかる。
幻影はそんなやりとりの後、再び下手花道へと消える。上手花道を歩きだした観は元の大人に戻っている。