センパイとの幸福な2日間

文字数 548文字

 話の方向性が決まってしまえばあとは一気に書くだけだ。
 ……というのは甘かった。
 僕はまだ、原稿を書かせてもらえなかった。
話には進め方ってものがある!
 かすみセンパイが主張して譲らなかったところから察するに、どうやら、台本というのは筆に任せて書くものではないらしい。
 だが、物事には締め切りってものがある。
早く書けオラ!

 同じ2年生がせっついたのは、キャストもスタッフも台本の完成を待っているからだ。

 僕も早く書きたかった。

連休ぐらいゆっくりしたい……。

 前の僕なら多分そう思っただろうけど、ストーリーの流れが見えてきたら、いても立ってもいられなくなったのだ。

 それに加えて、かすみセンパイへの心配もあった。

周りのプレッシャー、かかってるよな、相当。

 僕がせっつかれているわけだから、舞台監督として面倒見ると言ったかすみセンパイだって責められてると考えるのが当然だろう。

 それでも僕は、「早く原稿を書きたい」とは言い出せなかった。

口にしたら最後、かすみセンパイの大激怒が爆発するよな。


 周りのプレッシャーからは逃げれば済むけど、放課後ずっと目の前に座っているセンパイの罵声からは逃げようがない。

 それに、僕に真剣に語りかけるセンパイの顔を見ていると、どうしても話を遮る気にはなれなかったのだった。

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登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

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