ダメ出しと素肌とカップ麺

文字数 486文字

そこ伏線。
あ……。
かすみセンパイに頭を小突かれて、僕は悠里のセリフを最後だけ削る。
バッテリーが切れるのが分かっていたら、なんとかしようとするはずじゃない。ドラマの中で突発的に起こる事件っていうのはね、分かっていれば避けられたことでなくちゃいけないの。
 いきなりそんな事件が起こったんじゃ、ご都合主義って言われませんか?
 センパイは身体を傾けて僕の顔を覗き込んだ。長い髪がさらりと流れ落ちる。
そこよ。何か、バッテリー切れをほのめかす方法はない?
一気に充電できなくて、悠里がすぐスタミナ切れ起こすとか。
 かすみセンパイのほうをちらっと見て、反応を確かめた。タンクトップのストラップが外れて、肩の辺りがむき出しになっていた。
見るな。

 慌ててストラップを引き寄せると、センパイは再び、見下ろすように僕の背後に立つ。
 こんな具合に午前中は過ぎて、僕の昼飯はカップ麺となった。

 

ほとんど約束通りですね。
 ほとんど、というのはかすみセンパイもカップ麺で済ませたからである。
別にアンタに気を遣ってるワケじゃないから。
 センパイは僕に背中を向けたまま、胡坐かいて肩をすぼめて麺を啜っていた。
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登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

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