恐怖の先輩が頭を下げる

文字数 481文字

 そんなわけで2日間はあっという間に消化され、連休まで残すところあと1日となってしまった。
 終礼で渡された山のような宿題を抱えて放課後の選択教室に行くと、いつものようにかすみセンパイが待っていた。だが、今日はちょっと様子が違った。
 目が合うまでにいきなり、頭を下げたのだ。 
ゴメン! 連休、空けて!
え……って?
 教室の入り口で、僕は面食らって立ち尽くした。かすみセンパイはつかつかと僕に歩み寄り、ぐいと腕を掴んで教室の中に引っ張り込んだ。
 後ろ手に戸を閉めて、僕を窓際まで引っ張っていく。
 外から射し込む光は、もう初夏の眩しさだった。
 桜の葉陰を全身に映して、先輩は真剣な眼差しで言った。
 両親と泊りがけで、プロの芝居見に行く予定だったけど、アタシだけキャンセルした。そうでもしないと、部活のみんなに申し訳立たない。
あの……え?
 何の話かさっぱりわからなかった。そんなことにはお構いなしに、かすみセンパイはなおも話し続ける。
 連休は、休みにすることになってる。本当は、台本読み込んでもらうためだけど、今回はそれができない。舞台監督として、最大のミスだと思ってる。
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登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

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