サブカルの常識は舞台に通用しない

文字数 568文字

キャラには一貫性が……。
 その瞬間、かすみセンパイの一喝が僕の反論をアタマ打ちする。
キャラに一貫性があるのと変化がないのは違う!
 そしてセンパイが説明したのは、こういうことだった。
 キャラは一貫しているもの。しかし、状況の変化は最初とは異なる側面を引き出す。
 だけど、その、一人の人間に二つの性格があるということが理解できなかった。
それは二重人格……。
 再びの反論はムダに終わった。また、アタマ打ちの一喝である。
二重人格と内面の矛盾は違う!
 センパイはしつこく説明する。
 同じ状況下で違う行動をとれば二重人格だが、少しでも違いがあれば、その違いが変化を引き出したと見るべきだ、と。
 でも、キャラが決まっているから、それに応じて行動も決まってくるんじゃないんですか?
 途中でキャラが今までと違うことをしたら、アニメでもマンガでもラノベでも、読者はついてこられない。
 でも、それを口にすると、かすみセンパイはぴしゃりと言い返した。
最初から相反する性格があったのよ。
相反する性格があったら、二重人格じゃないですか。
 なおもこだわる僕の前で、かすみセンパイは、また目の前で机をぶっ叩いた。
くどい!
 目を怒らせたセンパイの顔が近づく。それは鼻と鼻とがぶつかるほどの距離まで近づいた。
……え?
 艶のある、可愛い唇が目の前に迫って、思わず息を呑んだ。
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登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

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