そして、男を試されるとき

文字数 421文字

起こさなきゃ……。
 とりあえず、僕は再び手首を掴んでみようと手を伸ばす。だが、その試みは最悪の結果を招いた。
あ……あう、あ、ん! ……ん!
かすみセンパイが寝返りを打った。その反動で、掌が飛んでくる。
おおっとお!
 かわそうとした僕は、バランスを崩した。もんどり打って倒れこむ。
わ、うわ、わわっとっとっとお!
 シーツの上に横たわる、センパイの体の上に……。
 しまった!
くう……くふ、んふ、ふ……。

 起き上がろうとしたが、センパイはどんな夢を見ているのやら、細く滑らかな感触の腕が、僕を羽交い絞めにする。

 温かく、柔らかな身体が押し付けられる。

せ、センパイ、かすみセンパイ、部内恋愛禁止……とかいう以前に、問題だろこの状況は!
 逃れようと僕はもがいたが、ダメだった。僕の身体にも、昨夜までの疲れが溜まっていた。
 僕の意識が遠のいていく。
……やっぱり、徹夜は身体によくない。

 最後に考えたのは、そんなことだった。

 日は、そろそろ暮れかかっていた……。

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登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

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