初めての……女の子の部屋

文字数 530文字

 さて……。
 普通ならここで、僕は思いがけず、生まれて初めて女の子の部屋に入るというドキドキのシチュエーションが待っているのだが、世の中はそんなに甘くない。
……。
……。
 僕がセンパイの部屋に入ったのは、こともあろうに連休5日目の朝だった。
 薄いピンクの壁紙。
 薄いブルーのカーテン。
 うっすらとモスグリーンのかかった絨毯。
 そして……木目の麗しい、真っ白なシーツのかかった、ベッド。
何見てる。
 かすみセンパイが背後から僕の後頭部をしばき上げた。
いえ……。
センパイは僕の背中をどんと突いた。部屋の中に踏み込んで、机を指差す。
そこ座れ。
 僕は言われるままに椅子に座った。机の上には、電源の入ったノートパソコンがある。
 センパイは、僕の背後に立った。あの上から目線を頭のてっぺんに感じる。
あの、御両親は……。
 今朝、帰るとかいう話だったが。
今晩遅く帰るって。いい年してドコほっつき歩いてるんだか。
溜息ひとつついて、センパイはまた、僕の後頭部を小突いた。
話をそらすな。
……。
 うなだれながらディスプレイ上のファイルを選択していると、容赦のない追い討ちがかける。
昨日一日何やってたのよ。ずっと待ってたんだからね。来られないなら来られないで、連絡するのが当たり前でしょう?
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登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

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