最後のピースがはまる

文字数 667文字

そこ、伏線いるからね。やってくる豪雨の情報は、最初の辺りで忘れないように。

 そう言いながら、かすみセンパイはルーズリーフの真ん中に線を引く。僕の無知丸出しの質問にいちいち答えながら、しゃっしゃかと描いたのはこの図だった。

 

 もっとも、この図が完成するまでにはセンパイも相当、僕のまどろっこしい質問に我慢を重ねなければならなかったろうと思う。
この真ん中だけ細いの、何の線ですか?
コレが引き割り幕。
 線を境にした一方には「廃屋」と書かれ、もう一方には大きなマルが描かれた。装置の置き場所らしかった。
他に何を?
ここに第1シーンで、廃屋の中のメカを置く。
 小屋の奥にメカがあるのは分かったけど、教室のシーンだってあるのだ。小屋の装置はどこへやるんだろう。
 動かすの、時間かかりますよ。
動かさない。
 引っかかったな、とでも言うように、センパイは悪戯っぽく笑った。何が何だか、さっぱり分からなかった。装置を動かさないと、場面が変わったことが分からない。
じゃあ、どうやって教室作るんですか?

机とか椅子は、最初から置いておく。小屋の中にだってそのくらいあるだろうし、第2シーンと第3シーンで引き割り幕を閉めれば教室になる。

第4シーンは?
 廃屋の外にたちはだかる観が、両親やあきら、総一郎、担任と睨み合うシーンだ。どうしても、壁とか扉の装置を置かなくちゃいけない。
キャストが運べる最小限のものを。観が引っ張って来られるように、ドアだけの装置にキャスター付けて。
 結構なムチャ振りを、かすみセンパイはさらっと言ってのけた。裏方の苦労が分かってんだろか。
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登場人物紹介

真崎周平(まさきしゅうへい)


やる気なし、その場にいるだけのほとんど幽霊演劇部員。高校2年生。

アニメオタクで事なかれ主義のどうしようもないダメ男だが、その場の勢いで引き受けた戯曲づくりに夢中になっていく。

安藤かすみ


舞台に情熱の全てを注ぐ演劇少女。演技演出戯曲執筆と、劇作の全てに通じる高校3年生。小柄だがプロポーションも抜群、但し本人に自覚は多分、ない。下級生の面倒見はいいが態度はキツい。実は照れ屋。

羽佐間観(はざま かん)


周作の台本に登場する主人公。

オクテな高校生だが、好奇心は強い。

紫藤悠里(しどう ゆうり)


周作の台本のヒロイン。

未来から来た精巧なアンドロイド。2人以上の人間と接触するとショートする。

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