客引き

文字数 1,053文字

「やはり、空を飛ぶのは疲れるのか?」

「そこそこね、常に早歩きしているぐらいの感覚よ」

「そんなもんなのか」

 そんな会話をしていると、マルクエンが声を掛けられた。

「そこのお兄さん!! 美味しいパスタとデザートのお店はいかがですか?」

 声の主は猫耳の小柄な亜人だ。

「えっ、私ですか?」

「そうです、お兄さんと彼女さんですにゃ!!」

 ラミッタは自分を彼女扱いされたことに赤面し、プンプンと怒り出した。

「私がこんな奴の彼女!? ないない、ありえないから」

「あら、そうだったのですか? これは失礼。仲が良さそうなのでてっきり」

「はぁー? どこをどう見たら仲良く見えるのよ!!」

「まぁまぁ、ウチのお店どうですか? 美味しいパスタとデザートのお店です!」

 パスタと言われマルクエンは、ふむと考える。

「良いんじゃないのか? ちょうどパスタにしようかと話していたんです」

「それは奇遇! なんとも奇遇!! 是非ぜひ当店へ!」

 彼女と勘違いされたラミッタはむくれて渋々だったが、二人は店に入ることにした。

 ファンシーでにぎやかな店内を見て、マルクエンは防具をギルドに預けておいて良かったなと思う。

「二名様ご案内ですにゃー!!」

 席に通され、メニューを見る。様々な種類のパスタがあり、マルクエンは悩む。

「うーん。どれにしようか」

「早く決めなさいよ」

「ラミッタはもう決まっているのか?」

「私はイカスミパスタがあるから、これにするわ」

 イカスミと聞いてマルクエンは驚く。

「イカ? イカって触手がもじゃもじゃのあの?」

「それしかないでしょう」

 ラミッタは呆れ顔で返す。

「確かイカのスミってインクに使うんじゃ無かったか? 食べられるのか!?」

「食べられるわよ……」

 そうなのかと不思議そうな顔をするマルクエン。

「食べてみたら?」

「い、いや、私はカニのクリームパスタにする。大盛りも出来るみたいだな」

「そう。デザートはどうするの?」

 そう言えばデザートもオススメだったなと思い。メニュー裏面のデザートを見る。

 イチオシは写し絵がでかでかと載っている『いちごパフェ』だ。

「私はこのパフェを頼む」

「私もデザートはそれでいいわ」

 早速、マルクエンは近くに居た店員に注文をし、一息つく。

「お客様、失礼します」

 ウェイトレスが紅茶を持ってきたので、マルクエンはキョトンとする。

「あの、紅茶は注文しておりませんが……」

「こちら、ランチパスタのサービスでございます」

「おぉ、ありがたい」

 紅茶に砂糖まで付いてきた。マルクエンは砂糖をたっぷり入れて口を付ける。
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